◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 卸価格の公開範囲は、会員限定表示と得意先別価格をどう重ねるかで決まり、全部か無かの判断にはなりません。
- 卸価格の切替を得意先の会社単位で止めるか、支店や部署の階層まで下ろすかを、設計の前に決めてください。
- 10,000件の取引先数と30,000SKUの商品数がEC-Rider Primo有料プランの上限で、自社の実数と並べると公開範囲の見当が付きます3。
- 43.1%がBtoB-EC全体のEC化率で、受注の電子化が進む一方、卸価格をどこまで見せるかは会社ごとに分かれます1。
目次

卸価格公開とBtoB EC化の進み方
卸価格公開とは、全面公開か非公開かではなく、「誰に、どこまで見せるか」を会員限定表示と得意先別価格の重ね方で決める仕組みです。得意先の組織階層、取引先の件数、取扱商品の数を数え、製品側の上限と突き合わせれば、個別見積もりに残す範囲まで決まります。
午後三時の営業企画部。得意先からの電話を受けた担当者が、受話器の向こうの「いつもの掛け率で見積もりを」という声を聞きながら、価格表のファイルを開きます。卸価格を公開しない方針のため、商品ページに価格は出ず、問い合わせのたびに得意先の区分を照合して返す運びになります。
ここで一つ、数字を置きます。43.1%が2024年時点のBtoB-EC全体のEC化率で、その他を除いた値です1。128兆8684億円が同じ年の卸売業のBtoB-EC市場規模で、前年比6.3%増という伸び方をしています1。受注そのものが画面へ移っても、「価格を出すか、出さないか」の判断は各社の手元に残ります。
「得意先ごとに掛け率を調べ、見積もりを作って送り返す」という毎日の往復は、電話と転記にかかる人時として、そのまま販売管理費に積み上がります。
得意先ごとの卸価格管理と公開範囲
この積み上がりを止める設計判断は、得意先ごとの卸価格をどこまで公開するかにかかっています。実際の設計は「誰にどの価格を見せるか」の組み合わせで、商品だけを見せる、会員にだけ価格を見せる、得意先ごとに違う価格を見せる、という段の重ね方になります。公開を広げるほど画面で注文が完結し、狭めるほど問い合わせ対応が担当者の手元に残ります。
会員限定表示との使い分け
会員限定表示は、ログインした相手にだけ価格を出す仕組みです。未ログインでは商品名と仕様まで、ログイン後に価格と在庫という分け方にすると、検索から来た見込み客に商品を見せつつ、卸価格は取引のある相手に限れます。「価格は載せられないが、商品は探させたい」という要望は、この形でおおむね収まります。
ただし、ログイン前に価格を出さないだけでは、見積もり依頼の件数は減りません。依頼のたびに得意先の区分を照合し、価格表から転記して返す往復が続きます。会員限定表示が解くのは「誰に見せるか」であって、「いくらで見せるか」ではありません。ここを分けて考えると、次に何を足すべきかが見えてきますね。
組織階層に応じた価格設計
得意先ごとの卸価格は、会社単位でまとめられるとは限りません。本社と支店で掛け率が違う、部署ごとに発注できる金額が違う、といった事情があるなら、価格の割り当ても会社の下の階層へ下ろす必要があります。問うべきは「何段まで分ける必要があるか」で、階層を増やすほど登録と保守の手間も増えます。
選定の場面では、この段数が製品ごとの上限として示されます。5階層までの組織階層で卸価格を切り替えられるというのがEC-Rider B2Bで案内されている対応上限で、2026年時点の値です2。自社の得意先を思い浮かべ、「本社・支店・課・担当」という並びが何段になるかを数えてから、この上限と比べてください。
多品目・多取引先に見る卸価格運用の規模感
日東電工CSシステム株式会社は、法人向けの販売サイトを持ち、全国の販売加盟店と取引している会社です4。ここで見ていただきたいのは、「何品目を、何社に向けて扱っているか」という規模のほうです。品目と取引先が増えるほど、価格の出し分けは人手の照合では追えなくなります。
規模を数字で見ます。3,800品種が2018年時点で法人向け販売サイトに載っていた製品の数で、自社の取扱品目と並べると桁の違いが見えます4。3,000社が2020年時点の全国の販売加盟店数で、得意先ごとに別の価格表を持つ運用なら、設定する対象はこの件数の規模になります4。
「品目や取引先が増えたから価格を隠す」という進め方もあれば、「増えたからこそ画面で出し分ける」という進め方もあります。どちらを選ぶかは、自社の品目数と取引先数を並べてから決めます。
EC化が進んでも卸価格の扱いは一律ではない
そうした数え上げの先でも、EC化を進めることと卸価格を公開することは、別の判断のままです。受注を画面へ移しても、価格は会員限定のままにする置き方と、標準価格だけ出して個別の掛け率は伏せる置き方が並びます。「EC化イコール価格の全面公開」と読み替えると、社内の合意は急に遠のきます。
市場の伸びと自社の設計は、分けて読んでください。6.3%増という前年からの伸びは、先に挙げた卸売業のBtoB-EC市場規模のものです1。伸びているのは電子的な受注の額であって、価格表示の方式が一つに寄ったわけではありません。「まわりが公開しているから」という理由は、この数字からは出てきません。
「うちも公開しないと遅れる」と急ぐ前に、「誰に、どこまで、どの価格を」という問いへ戻してください。次はその順序を、得意先の組織階層・取引先の件数・扱う商品の数という項目に分けて見ていきます。

上限設計から選ぶ卸価格の公開基準
公開範囲を決める順序は、得意先の組織階層、取引先の件数、扱う商品の数という並びで考えると迷いが減ります。どれも「増えたら手では回せなくなる」項目で、製品側の上限と自社の実数を突き合わせれば、判断は好みの問題から数の比較に変わります。順に見ていきます。
組織階層による卸価格切替の上限
得意先の組織をどこまで分けるかは、最初に決める項目です。「本社は本社、支店は支店」と運用が分かれている得意先を抱えているなら、階層での切替が要ります。
対応の上限は、製品ごとに数字で示されています。5階層までの組織階層で卸価格を切り替えられるというEC-Rider B2Bの案内が2026年時点の値で、自社の並びがこの段数に収まるかを確かめてください2。「実際に卸価格が変わる段」だけを数えれば、段数は思ったより少なく収まります。
取引先数の上限という基準
次に数えるのは取引先の件数です。「主要な得意先だけ登録して、残りは電話で」という運用は、件数が増えるほど例外の側が重くなります。
件数にも上限が置かれています。10,000件がEC-Rider Primo有料プランで扱える取引先数の上限で、2026年時点の条件です3。「いま何社に別の卸価格を出しているか」を得意先台帳から数え、この上限と並べてみてください。桁が離れているうちは、設計の自由度が残ります。
取扱商品数の上限という基準
最後に商品の数を数えます。「主力商品だけ価格を出す」と決めるのか、全品目を対象にするのかで、登録の量は大きく変わります。
商品数の上限も、同じ条件の中に示されています。30,000SKUがEC-Rider Primo有料プランで扱える商品数の上限で、取引先数と同じ2026年時点の条件です3。「全品目を一度に載せる」と決める前に、自社のSKU数をこの上限と比べてください。超えるなら、価格を出す範囲を主力品目に絞るか、上位の仕組みを検討するかの分かれ道になりますね。
ここから先は、条件の異なる会社ごとに、公開範囲の決め方と最初に手を付ける場所を見ていきます。
得意先の階層と取引先の件数、取扱商品の数を数え終えても、自社の値が製品側の上限に収まるかどうかは、条件を突き合わせないと判断が付きません。
実際の得意先台帳と品目一覧を持ち込めば、公開へ寄せられる範囲と見積もりに残す範囲の分かれ目を、その場で確かめられます。無料相談で要件を整理する
卸価格の公開範囲を決める前に数える項目
- 会員限定表示で足りる範囲と、得意先別価格が要る範囲を分ける
- 得意先の組織階層のうち、実際に卸価格が変わる段を数える
- 別の卸価格を出している取引先の件数を、得意先台帳から数える
- 卸価格を出す対象の商品数を、定番品と特注品に分けて数える
- 個別見積もりで返している依頼の件数を、直近の期の分まで数える
この並びに優劣の順序はありません。
数え終えたら、自社がどの条件に当てはまるかで、公開範囲の進め方は変わります。

条件別に見る卸価格の公開範囲の決め方
| 読み手の条件 | 卸価格の置き方 | 先に数える項目 |
|---|---|---|
| 得意先が限られる卸売事業者 | 会員限定表示から始める | 担当者を経由しないと通らない注文 |
| 本社と支店で掛け率が分かれるメーカー | 組織階層に沿って割り当てる | 卸価格が変わる段の数 |
| 取扱品目の多い事業者 | 定番品から順に価格を出す | 定番品と特注品の品目数 |
得意先が限られる卸売事業者の公開範囲
得意先の数が限られているうちは、卸価格の出し分けは人手でも回ります。「電話で済むのに、なぜ画面に出すのか」という声も、たいてい電話が鳴り続けている日に出てきます。この条件では、上限の数字より先に、注文が止まる場面があるかどうかを見てください。
ここでの基準は件数ではなく、受注が特定の担当者に紐づいているかどうかです。担当者を経由しないと通らない得意先があり、その人が不在の日に注文が翌日へ回っているなら、画面で完結する範囲を作る理由になります。「まだ少ないから」という判断は、増えてからでは間に合わない理由にもなります。
取り掛かりとしては、会員限定表示を先に入れ、得意先別の価格は後から足す順序が向きます。規模の目安を置きます。3,000社という販売加盟店を全国に持つ規模と比べれば、限られた得意先の設定量はごく小さく済みます4。難易度は低く、工数は商品と得意先の登録が中心の短い作業に収まります。
| 決める項目 | この条件での置き方 |
|---|---|
| 価格の表示 | 会員限定表示から入れる |
| 得意先別の卸価格 | 受注が担当者に紐づく得意先から登録する |
| 個別見積もり | 特注品と大口の商談だけ残す |
得意先の数が少ないうちは人手でも回るため、卸価格をいつ画面へ出すかの判断が後回しになりがちです。
担当者の不在で注文が翌日へ回った場面を挙げれば、会員限定表示だけで足りるかどうかを見極められます。無料相談で自社の条件を持ち込む
本社と支店で掛け率が分かれるメーカーの価格設計
同じ得意先でも、本社の購買と支店の現場で掛け率が違うことがあります。「本社価格で注文された分を、後から支店の価格へ直す」という手戻りが起きると、請求の照合まで巻き込みます。この条件では、公開の範囲より先に、価格を割り当てる単位を決めてください。
基準は取引先の件数ではなく、同じ得意先の中に何段の価格があるかです。本社、支社、営業所、課、担当という並びのうち、実際に卸価格が変わる段だけを数えてください。先に挙げた階層の上限に収まるなら、画面での切替にそのまま載せられます2。
手順としては、得意先の組織図を一枚にまとめ、価格が変わる段に印を付けてから登録に入ります。「組織図が社内に無い」という場合は、請求先と納品先の登録を並べるところから始めてください。難易度は中くらいで、工数は組織図の整理のほうに寄ると分かったところで、次は取扱品目の多い事業者の公開範囲に移ります。
| 価格が変わる単位 | 確かめること |
|---|---|
| 本社 | 全社で共通の掛け率があるか |
| 支店・営業所 | 支店ごとに掛け率が分かれているか |
| 部署・担当 | 発注できる金額が分かれているか |
同じ得意先の中で卸価格が何段に分かれているかは、組織図を開いて初めて数えられる事柄です。
自社の組織図を見ながら話せば、階層での切替に載せられる段と、手前でまとめるべき段が分かります。無料相談で自社の条件を持ち込む
取扱品目の多い事業者の公開範囲
品目が増えると、卸価格の出し分けは商品側の作業になります。「全品目に得意先別の価格を持たせる」と決めた時点で、登録の量は取引先の数だけ膨らみます。この条件では、公開するかどうかより、どの品目から公開するかを先に決めてください。
ここでの基準は、価格を出す品目をどこまで絞るかです。3,800品種という法人向け販売サイトの品目数は2018年時点の例で、自社の品目数がこの桁に近いなら、全品目を一度に載せる進め方は負担が重くなります4。「載せられるか」ではなく「どこから載せるか」を決めると、作業の順番が立ちます。
「まず定番品から」と決めて、売上の中心を占める品目だけ先に卸価格を出します。特注品は見積もりのまま残し、依頼が来た分だけ個別に返す形でかまいません。難易度は高めで、工数は商品データの整理が大半を占め、価格の登録は最後に回ります。
| 品目の区分 | 卸価格の見せ方 |
|---|---|
| 定番品 | 得意先別の卸価格を画面に出す |
| 準定番品 | 会員限定で標準価格まで出す |
| 特注品 | 価格を出さず見積もり依頼へ回す |

品目が多い会社ほど、どの商品から卸価格を出すかの順番が、公開そのものより重い判断になります。
自社の品目一覧を定番品と特注品に分けて示すと、先に価格を出す範囲の目安が立ちます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 数える項目 | 公開へ寄せる目安 | 見積もりに残す目安 |
|---|---|---|
| 得意先の組織階層 | 支店や部署ごとに卸価格が変わる | 本社でまとめて同じ掛け率で足りる |
| 取引先の件数 | 別の卸価格を持つ相手が増え続ける | 主要な得意先に限られる |
| 取扱商品の数 | 定番品が売上の中心を占める | 特注品と個別仕様が中心 |
| 問い合わせの中身 | 価格の確認だけの依頼が多い | 仕様相談を伴う依頼が多い |
| 担当者の関与 | 不在の日に注文が翌日へ回る | 常時対応できる体制がある |
卸価格の公開範囲は一度決めて終わりではなく、得意先と品目が増えるたびに設定と運用を見直す項目です。 いまの見積もり対応の件数と登録の手順を並べて相談すれば、次にどこから手を付けるかが決まります。
よくある質問
卸価格を公開すると、他社に価格を知られてしまいませんか。
得意先別の卸価格は、ログインした相手にだけ見せる設計にできます。未ログインでは商品名と仕様まで、ログイン後に価格と在庫という分け方にすれば、「検索から誰でも掛け率が見える」状態にはなりません。決めるのは全部か無かではなく、どの画面でどこまで出すかです。
標準価格だけ出して、掛け率は伏せる方法でもよいのでしょうか。
商品の存在と仕様を探させたいだけなら、その形でも足ります。ただし「標準価格は出ているのに、自分の価格が分からない」という状態は、得意先からの問い合わせを呼びます。見積もり依頼の件数が減らないなら、得意先別の価格まで下ろす判断に進んでください。
個別見積もりを全部なくす必要がありますか。
なくす必要はありません。特注品や大口の商談は見積もりに残し、定番品だけ画面で価格を出す、という分け方が取れます。「見積もりをやめる」ではなく「見積もりに回す品目を決める」と読み替えると、営業部門との合意も取りやすくなります。
得意先の担当者ごとに、見える卸価格を変えられますか。
得意先の組織階層に沿って価格を割り当てる形なら、本社と支店、部署といった単位で変えられます。ただし段を増やすほど登録と保守の手間が増えます。「実際に卸価格が変わる段だけを数える」ところから始めると、使われない階層を作らずに済みます。
卸価格を公開すると、既存の得意先から値下げを求められませんか。
見えるようになるのは、その得意先に設定した価格だけです。他社の掛け率が並んで見えるわけではないため、比較の材料がそのまま増えるとは限りません。心配が残るなら、「まず一部の得意先から」と決めて、範囲を段階的に広げてください。
基幹システムの価格表と二重管理になりませんか。
価格表を持つ場所を決めてから進めてください。基幹側を正として連携するのか、EC側で登録して基幹へ渡すのかを先に決めないと、「どちらが正しい価格か」を照合する作業が毎月増えます。先に決めておきたいのは、価格表を置く場所の取り決め。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介ページ・料金プラン条件」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社)」(2026年) 経路
画像の出典元
- A neat stack of cardboard boxes taped and placed on a wooden/Photo by Ayrat on Pexels
- Close-up of minimalist white cardboard boxes stacked with am/Photo by Castorly Stock on Pexels
- 40代前半の日本人男性が倉庫への納入をしている場面/画像:生成AI(自社)
- Pile of cardboard containers prepared for relocation on floo/Photo by SHVETS production on Pexels