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電話受注の属人化はなぜ残るのか|原因と診断手順

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 電話受注の属人化は、通話の時点で記録が生成されないという構造から生まれます。
  • 現場が電話を選ぶのには合理的な理由があり、電話をやめさせるだけでは解消しません。
  • 取適法(中小受託取引適正化法)や電子帳簿保存法という制度の面からも、記録の空白が問題になり始めています。
受注のイメージ
▽ 写真の出典元

電話受注の属人化とは何か——通話にしか記録が残らない状態

電話受注の属人化とは、注文内容とその判断根拠が通話した担当者の記憶と手元のメモにしか残らず、その担当者以外は同じ結論に到達できない状態です。中小企業庁が電気工事業界向けに行ったアンケートでは、現場での電話発注でミスの発生経験がある企業が69.2%にのぼります*1

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受注チャネルによって、授受の時点で残るものは異なる

検索結果の多くは、コールセンターや営業電話の応対品質を指す「電話対応の属人化」を扱っています。本記事が扱うのは、注文を電話で受ける受発注業務としての「電話受注」です。契約前の相談対応や苦情対応ではなく、注文内容の確定と基幹システムへの反映までを対象にします。

FAXは紙の書面が手元に残り、メールやWeb受注は電磁的な記録がシステムに残ります。電話だけは、話した内容がその場で消え、記録は担当者が後から書き起こすまで存在しません。この違いが、次章で説明する属人化の深さに直結します。

受注チャネル 授受の時点で残るもの 属人化との関係
電話 何も残らない(通話のみ) 担当者の記憶とメモが記録の代わりになる
FAX 紙の書面 誰が見ても内容を確認できる
メール・Web受注 電磁的記録(テキスト・データ) 検索や引き継ぎがしやすい

通話の記録は「後から作られる」——電話が属人化しやすい理由

電話受注では、担当者がまず通話しながら要点を聞き取ります。次に手元のメモや伝票へ書き写し、そのあとで基幹システムへ入力するという順序をたどります。記録は通話の瞬間ではなく、複数の手作業を経たあとに初めて生まれます。

中小企業庁の調査に協力した従業員数400名程度の電材卸会社では、月あたり約2万件の受注のうち6割にあたる約1万2千件が電話またはFAXによる注文でした*1。1社の事例であり業界平均ではありませんが、電話・FAXが受注全体の主要な部分を占める実態がうかがえます。

FAXやメールなら、入力後も元の書面やデータを見返して答え合わせができます。電話の場合は、話した内容そのものが記録として残らないため、基幹システムへの入力が正しいかどうかを確認する原本が存在しません。

「この前のあれ」「読み替え」「即答」「着信」——属人化を支える4つの要因

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4つの要因はいずれも「記録が生成されない」ことでつながっている

中小企業庁のヒアリングでは、電気工事店からの発注について「発注の際に『昨日のあれ。』は、問屋の技術力になっている」との声が確認されています*1。過去の取引履歴が担当者の記憶にあるからこそ、電話の会話だけで注文が成立します。

同調査では、受注した品番を発注先メーカーの品番に手作業で読み替えている実態が報告されています*1。読み替えの知識は担当者の頭の中にとどまり、マニュアルには残っていません。

電気工事会社の発注は「現場確認」を経て行われることが多く*1、現場からの電話にその場で価格や納期を答える必要が生じます。持ち帰って確認する余地が少ないため、経験のある担当者に頼らざるを得なくなります。

取引先は「あの人に電話すれば話が早い」という経験の積み重ねから、特定の担当者宛てに発注の電話をかけるようになります。着信の集中は本人の意図とは関係なく、取引の積み重ねの結果として生まれるものです。

中小企業庁の報告書は、この前のあれで通じる柔軟さが「電材卸会社の他社との比較優位」になっていると述べています*1。ヒアリングでも「担当者レベルだと個人の営業成績のためにもTELで対応している」との回答が記録されています*1。属人化は見過ごされているのではなく、現場と個人の双方にとって都合がよいために維持されているといえます。

自社の電話受注はどこまで属人化しているか——5指標で診断する

取適法のイメージ
▽ 写真の出典元
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診断は範囲設定から要因の判定まで4段階で進める

自社の属人化を測る5つの指標(順位根拠:測定の実施順序)

  1. 電話受注の件数比率——全受注件数のうち、電話で受けた件数の割合を数えます。
  2. 担当者別の受注件数の偏り——特定の担当者に受注が集中していないかを確認します。
  3. 通話から基幹入力までのリードタイム——通話終了からシステム入力完了までの時間を測ります。
  4. 問い合わせ返答に他者が答えられる割合——担当者以外が同じ問い合わせに答えられるかを調べます。
  5. 受注データの再利用率——一度入力した項目が後続工程で再入力なしに使える割合です。中小企業庁の実証調査では、鉄鋼業界で64.6%、電設業で78.4%という測定結果が報告されています*2

中小企業庁の実証調査は、受発注に必要な全項目のうち一度入力すれば後続工程で再入力が不要になる項目の割合を再利用率と定義しています。鉄鋼業界は共通項目480÷全項目743で64.6%、電設業は電設業共通EDI辞書項目内で313÷399の78.4%という結果でした*2。この数値は項目数をもとにした机上集計であり、個社の実測値ではない点に注意が必要です。

診断の総仕上げとして、1日だけ電話を別の担当者が受ける「不在テスト」で、止まる業務を確かめます。普段は表面化しない、読み替えの知識や価格判断の基準がどこで滞るかが明らかになります。

5指標の結果がそろったら、前章で整理した4つの要因のどれが強く効いているかを照らし合わせます。読み替えが原因なら品番マスタの整備、即答が原因なら価格・納期の判断基準の明文化というように、次に着手する対象を絞り込めます。

放置すると何が起きるか——ミスと工数、引き継ぎの断絶

中小企業庁の調査のうち電気工事業界向けアンケートでは、「現場において電話で発注を行った際に、受発注のミスが発生したことはありますか」という設問に対し、回答企業65社のうち45社が「はい」と答えました。割合にして69.2%です*1。この数値は電気工事業界を対象にした調査結果であり、業種を問わない一般値ではありません。

同調査は電子受発注に対応した効果も複数回答で尋ねています。「電話等の対人対応時間の削減」を効果として挙げた企業は、鉄鋼業界向けアンケートで47.7%(n=86)、電気工事業界向けアンケートで37.5%(n=48)、電材卸業界向けアンケートで72.4%(n=105)でした*1。いずれも業界ごとに実施された別々のアンケートで、複数回答のため合算はできません。

2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要は、社内ノウハウの蓄積・共有に「大いに」または「ある程度」取り組んでいる小規模事業者(有効回答3,499者)を対象に、その効果を尋ねています。「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」と回答した割合は43.6%、「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」は31.9%でした*3。この数値は、ノウハウの共有に既に取り組んでいる事業者の中での結果であり、全事業者を母集団にした割合ではありません。

可視化したコストを自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。

取適法と電子帳簿保存法から見る「記録が残らない」ことのリスク

中小受託取引適正化法(取適法。委託事業者と中小受託事業者の取引を適正化する法律)は、2026年1月1日に施行されました*6。公正取引委員会・中小企業庁のテキスト(令和7年11月)は、委託事業者に対し、発注時の明示事項を書面または電磁的方法により示す義務(4条明示)を課しています*4

同テキストは、違反行為事例の一つとして「急を要するため、委託事業者が中小受託事業者に口頭(電話)で発注し、その後、4条明示をしない場合」を挙げています*4。緊急時に電話で注文内容を伝えたとしても、その後すぐに4条明示をしなければ違反になります。

取適法の対象になる取引は、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託の5類型です*4。店舗が商品を仕入れるような単純な売買は、この5類型に含まれないため対象外です。自社の受注がどの類型に当たるかを、まず確認する必要があります。

電子帳簿保存法は電子取引を「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」と定義しています(第2条第5号)*5。保存義務があるのはこの電子取引の記録であり(第7条)*5、電磁的方式によらない口頭のやり取りは定義の対象に入りません。電話だけで完結した注文は、法律上も記録を残す仕組みの外に置かれているといえます。

電話を残したまま属人化を解く入り口

電子帳簿のイメージ
▽ 写真の出典元

4つの要因のうち、品番の読み替えや価格判断はルール化・データ化になじみます。棚卸から不在テストまでの具体的な解消手順は本記事の範囲を超えるため、別記事で扱います。

電話やFAXという受注チャネル自体を移す実務は、属人化の要因を特定したあとに着手する工程です。移行の進め方は別記事にまとめています。

受注窓口を一本化する取り組みや、受注ミスそのものを減らす予防策は、属人化とは別の切り口の打ち手です。詳しい方法は各記事で解説しています。

見直しの際に起きやすい失敗

電話でのやり取りをそのまま入力画面に置き換えただけでは、現場確認を経た即答や品番の読み替えといった例外処理が回らなくなります。例外の扱いを決めずに移行を進めると、結局は電話に逆戻りします。

「電話をなくすこと」が目的にすり替わると、本来の目的である記録を残すことが後回しになります。電話を残す判断も含め、記録を残す設計を優先する必要があります。

属人化の解消を担当者個人の評価と結びつけると、現場の反発を招きます。ベテラン担当者が長年培った価格交渉や取引先対応の経験は否定すべきものではなく、仕組みに落とし込む対象として扱うべきです。

5指標のような測定可能な基準を決めないまま着手すると、改善したかどうかを社内で説明できません。着手前に指標を数値で記録しておくことが欠かせません。

自社だけで診断から解消まで進めるには、業務フローの棚卸・品番マスタの整備・基幹システムの設定変更という複数の専門知識が必要になり、着手から定着までに相応の期間を要します。自社の商習慣を踏まえた要件整理を外部に相談すると、電話を残す設計とシステム設定の両方を同時に検討でき、内製だけで進めるより判断の手戻りを減らせます。

まとめ:電話受注の属人化を測る3つの視点

本稿では、電話受注の属人化がなぜ生まれ、どう診断できるかを整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、電話は授受の時点で記録が生成されないため、他チャネルより属人化が深くなります。第二に、属人化は放置されているのではなく、比較優位や個人の営業成績と結びつき、意図して維持されています。第三に、取適法や電子帳簿保存法という制度の面からも、記録の空白は看過できない論点になりつつあります。まずは5指標で自社の現状を数値化し、どの要因が効いているかを見極めることが、次の一歩につながります。


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よくある質問

電話受注をやめないと属人化は解消できませんか。

電話を残したままでも属人化の一部は解消できます。品番の読み替えや価格判断をルール化・データ化する取り組みは、チャネルを電話のまま残しても着手できるからです。電話をやめるかどうかは、記録を残す設計を整えたあとに判断する事項です。

通話録音を導入すれば属人化は解決しますか。

録音だけでは属人化は解決しません。録音は通話内容を後から確認する手段にとどまり、品番の読み替えや価格判断の基準そのものを可視化するものではないからです。録音を活用した対策の詳しい進め方は別記事で解説しています。

電話で受けた注文は電子帳簿保存法の保存対象になりますか。

なりません。電子帳簿保存法が定義する電子取引は「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」であり*5、電磁的方式によらない口頭のやり取りは定義に含まれないからです。ただし、通話後に注文内容をメールやシステムへ記録した場合、その記録は電子取引に当たる可能性があります。

取適法は自社の電話受注にも適用されますか。

取引の内容によります。取適法が適用されるのは製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託の5類型に該当する取引に限られ*4、単純な商品の仕入れのような売買契約は対象外だからです。自社で受けている取引がこの5類型に当てはまるかどうかを、まず確認する必要があります。

属人化の解消はどこから着手すればよいですか。

まず本記事の5指標で自社の現状を数値化することから始めます。どの要因が強く効いているかを特定したうえで、棚卸や設定移行といった具体的な解消手順に進む流れが現実的です。具体的な手順は別記事にまとめています。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:中小企業庁(委託先:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)「受発注のデジタル化に関する推進方策 報告書」(2022年3月31日)
  2. *2 出典:中小企業庁(委託先:同上)「電子受発注システム普及促進に向けた実証調査事業 報告書」(2023年3月31日)
  3. *3 出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要
  4. *4 出典:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法 テキスト」(令和7年11月)
  5. *5 出典:e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(第2条第5号・第7条)
  6. *6 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係

画像の出典元

  1. 受注のイメージ/Photo by Amr Taha™ on Unsplash
  2. 取適法のイメージ/Photo by 2H Media on Unsplash
  3. 電子帳簿のイメージ/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

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