◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
目次

対応が追いつかない・クレームが増えたと感じたら、何から判断するか
朝から電話が鳴りやまず、折り返しが追いつかない。
先週は数量を聞き違えて違う数を届けてしまい、取引先から厳しい言葉をもらった。
そんな日が続くと、電話での注文受付そのものをやめるべきではないかと考えたくなります。
ただ、やめるかどうかを決める前に切り分けておきたいことがあります。
電話には、取引先が他の手段に移りにくい場面でも注文を受け続けられるという効果があります。
一方で、口頭のやり取りを書き写し、入力し、確認するという工程の多さが、聞き取りの取り違えや特定の担当者への依存を生みます。
クレームの多くは、電話という手段そのものではなく、この工程のどこかで起きています。
自社のどの工程に負担が寄っているかを見たうえで、復唱と記録の型、取引先ごとの取り決めの共有から手を付けるのが、注文機会を守りながらトラブルを減らす道筋です。
「電話受注をやめるか、続けるか」という二択で考え始めると、判断が止まりやすくなります。
電話をやめても注文そのものがなくなるわけではなく、別の窓口に移るだけだからです。
問題は、移れる取引先と移れない取引先が混ざっていることにあります。
移れない相手が一定数いる状態で窓口を閉じると、減るのは業務量ではなく注文の件数になります。
そこで最初に立てたい問いは、電話をやめるかどうかではなく、いま困っているのは電話の受け方なのか、受けた後の処理なのか、という切り分けです。
起きているクレームの中身を並べてみると、その違いが見えてきます。
数量や商品を取り違えて出荷した、納期の認識が食い違っていた、という種類は、聞き取りから入力までのどこかで内容が変わっています。
一方、電話がつながらない、折り返しが来ない、担当者が不在で答えられない、という種類は、受電の体制と情報の共有範囲の問題です。
前者に復唱や記録の整備が効くのに対し、後者は人の配置や取り決めの共有を変えないと動きません。
同じ「電話のクレーム」でも、手当てする場所が違います。
切り分けの材料は、記憶ではなく記録から取ります。
受けた電話を一定期間だけ簡単に書き留めるだけでも、偏りは見えてきます。
日付と時間帯、取引先、用件の種類(新規の注文、数量や納期の変更、在庫の問い合わせ、納品後の連絡)、対応した人、通話の長さ。
この程度の項目で二週間ほど続けると、鳴っている電話の中で注文が占める割合が分かります。
注文以外の問い合わせが大半を占めているなら、負担の正体は受注業務ではなく問い合わせ対応の設計にあり、注文の受け方を変えても電話は鳴りやみません。
記録を取ると、クレームの起点も追えるようになります。
誤出荷が起きたとき、通話のメモに書かれていた数量と、システムに入力された数量を突き合わせれば、聞き違えたのか、書き写しでずれたのかが分かります。
どちらも「注文を間違えた」という結果は同じですが、直す場所は別です。
ここが分からないまま対策を打つと、すでにできていることを増やして、抜けている工程がそのまま残ります。
そのうえで、電話が自社の取引の何を支えているのかを数字で見ておくと、削ってよい部分と残すべき部分に線が引けます。
次に、受注手段の実態を調べた調査から、電話の効果がどこにあるのかを確認します。
| 起きていること | 見るところ | 確かめること |
|---|---|---|
| 電話が鳴り続けて出られない | 件数が集中する時間帯と用件の内訳 | 注文以外の用件がどれだけ混ざっているか |
| 数量や商品を取り違える | 聞き取りから入力までの書き写しの回数 | どの工程で内容が変わったか |
| 言った言わないになる | 通話の内容が残る形になっているか | 復唱と記録が同じ項目で行われているか |
| 担当者が不在だと答えられない | 取引先ごとの取り決めを知っている人の範囲 | 誰が受けても同じ結果になるか |
電話受注にはどのような効果があるのか(他の受注手段との違い)
受注手段の実態を調べた調査があります。
食品小売業・卸売業で受注業務を担当する106名に受注方法を尋ねたところ、電話を使っているのは50%、FAXは67%でした1。
これは2023年3月時点の食品業での結果であり、他の業種で同じ割合になるとは限りません。
それでも読み取れることがあります。
電話だけで受けている会社は少なく、多くの現場は複数の手段を併用しているという点です。
つまり、電話をどうするかという問いは、はじめから「全部か無か」ではなく、どの注文を電話で受け、どの注文を別の手段で受けるかという配分の問題として立てられます。
電話を残す理由がはっきり出ているのは、依存度を尋ねた設問です。
FAXまたは電話で受注している担当者80名のうち、58.8%が「廃止すると取引に支障が出る」と回答しています1。
半数を超える担当者が、いまの手段を閉じると取引そのものに影響が出ると見ているということです。
ここから言える電話受注の効果は、新しい注文を増やすことではなく、いまある取引を途切れさせずに受け続けられることです。
電話で受けると売上が伸びる、単価が上がるといったデータは、今回確認した資料の中にはありません。
効果を語る範囲は、受注機会の維持にとどめておくのが正確です。
なぜ廃止が取引の支障になるのかについて、この調査は理由まで尋ねていません。
ただ、現場の状況を思い浮かべると説明はつきます。
発注する側が店頭や作業場にいて、パソコンの前に座る時間がない。
棚を見ながら足りない分をその場で伝えたい。
締切の直前に一品だけ追加したい。
こうした場面では、書式に記入して送り返すより、番号を押して話す方が早く済みます。
これは調査から直接読み取れる事実ではなく、割合の背景として考えられる事情です。
電話に固有の働きとして、その場で答えが決まるという点もあります。
在庫が足りないとき、代替品に変えるのか、数量を減らすのか、翌日に回すのかを、通話中に決められます。
書面やフォームで受けた注文なら、いったん受け取って在庫を確認し、連絡を返し、相手の返答を待つという往復が発生します。
この双方向性が価値になるのは、条件が動く注文です。
裏を返せば、毎週同じ品目を同じ単位で頼むような定番の注文には、この双方向性はほとんど使われていません。
同じ電話でも、効果が出ている通話とそうでない通話が混ざっています。
自社の場合にどれだけ効果が効いているかは、取引先の側から確かめられます。
電話でしか注文してこない取引先が何社あり、その売上がどれくらいを占めているか。
別の手段を案内したときに移れそうな相手はどれくらいか。
調査の58.8%という数字は食品業の平均的な見立てであって、自社の答えではありません1。
取引先ごとに数えれば、電話を残す必要がある範囲は具体的な社名の一覧になります。
| 受注手段 | 調査での利用割合 | やり取りの形 | 注文内容の残り方 |
|---|---|---|---|
| 電話 | 50% | その場の口頭でのやり取り | 受け手が書き留めた記録に依存する |
| FAX | 67% | 相手が書いた書面を受け取る | 送られた書面がそのまま残る |
クレームやミスはなぜ起きやすいのか―業務負担に潜む構造
先に前提を置きます。
ここで参照する調査は、受注業務の課題と要望を尋ねたもので、クレームや苦情の発生率を尋ねた設問はありません1。
ですから「電話受注のクレーム原因はこれだ」と調査が示しているわけではありません。
本記事では、担当者が手間がかかると申告している工程ほど、取り違えや伝え漏れが起きやすいという見方で読み解きます。
これは編集部の見立てであり、因果を測ったデータではない点をふまえて読んでください。
調査では、FAX・Eメール・電話で受注している担当者90名に業務の課題を尋ね、注文書の手入力と注文確認の連絡が上位に挙がりました1。
電話で受けた注文は、耳で聞いた内容を紙やメモに書き、そこからシステムに入れ直すという経路をたどります。
工程が増えるほど、内容が書き換わる機会も増えます。
まず全体の流れを見ておきます。
注文書の手入力でミスが起きやすい理由
注文書の手入力に手間がかかると答えた担当者は60%で、挙がった課題の中で最も多くなっています1。
手間がかかるという申告は、時間の問題としてだけでなく、注意を使う工程だという意味でも読めます。
電話で受ける場合、この工程の前にもう一段階あります。
相手が話す速度に合わせて聞き取り、書き留める段階です。
ここで書いたメモが正しければ入力も正しくなり、メモの時点でずれていれば、入力を何度見直しても元には戻りません。
聞き取りでずれやすいのは、数字と単位です。
「にじゅう」と「じゅうに」、「ななケース」と「ななバラ」のように、音が近い、あるいは単位が省略されている場面があります。
取引先の中で「三」といえばケース単位を指すという暗黙の約束があると、その約束を知らない人が受けたときに数量が桁違いになります。
規格違いの同名商品も取り違えの起点です。
相手が急いでいたり、周囲が騒がしかったりすると、聞き返しづらい空気も生まれます。
そして電話で受けた注文の取り違えは、社内で気づかれないまま進みやすいという特徴があります。
相手が書いた注文書が手元にあれば、入力後に突き合わせて確認できます。
口頭で受けた注文は、突き合わせる相手が自分のメモしかありません。
結果として、誤りが見つかるのは荷物が届いた後、つまり取引先の側になります。
社内のミスが相手からの申し立てという形で戻ってくるため、同じ数の誤りでもクレームとして表面化しやすくなります。
確認の連絡が増える場面
注文確認の連絡に手間がかかると答えた担当者は41.1%でした1。
確認が必要になるのは、受けた内容のどこかに判断が要るときです。
在庫が指定数に足りない、希望された納期が通常の出荷の流れに合わない、数量が普段の注文と大きく違う、初めて出る品目が入っている、届け先がいつもと違う。
こうした注文は、受けた時点では確定せず、いったん保留になります。
保留の注文は、電話の負担を二重にします。
こちらから掛け直しても先方の担当者が席を外していれば折り返し待ちになり、その間に別の注文の電話が鳴ります。
処理が終わっていない注文が積み上がるほど、いま受けている電話に割ける注意も減ります。
対応が追いつかないという感覚は、受電の件数だけでなく、この未完了の件数から生まれていることがあります。
もう一つ、確認そのものより厄介なのが、確認した結果の残り方です。
「では半分だけ明日、残りは明後日で」と口頭で合意しても、その内容がどこにも書かれていなければ、翌々日に「聞いていない」と言われたときに確かめる手立てがありません。
確認の連絡は、注文内容を正しくするための工程であると同時に、内容を変更する工程でもあります。
変更の記録が残らない確認は、最初の注文よりも食い違いの種になりやすいと考えられます。
対応が特定の担当者に偏る(属人化)ことのリスク
オペレーションの属人化が発生していると答えた担当者は38.9%です1。
属人化とは、業務の進め方が特定の人の中にしかなく、他の人が同じようには行えない状態を指します。
電話受注では、取引先ごとの細かな取り決めが個人に溜まります。
「いつもの」が何を指すか、単位を省略したときの解釈、締切の例外を認めている相手、価格の取り決め。
これらは書類になっていないことが多く、長く担当している人ほど、書かなくても分かるので書かないという状態になります。
この状態は、通常は効率よく回ります。
崩れるのは、その人が不在のときです。
代わりに出た人は、内容をそのまま受けるしかなく、省略された部分を自分の常識で補います。
そこで解釈がずれると、いつもと違う数量や規格が出荷されます。
あるいは「担当が戻ってから折り返します」と答えることになり、相手からは対応が遅い窓口に見えます。
休暇や退職のたびに同じ不安が出るのは、業務が人に付いているからです。
記録の側にも同じ問題があります。
注文書の管理が煩雑だと答えた担当者は30%でした1。
過去の注文を探せない状態では、食い違いが起きたときに何を根拠に話すかがありません。
相手の記録だけが残っていれば、こちらは相手の記憶に合わせるしかなくなります。
属人化と記録の弱さは別の課題に見えますが、どちらも「後から誰でもたどれない」という同じ性質を持っています。
| 場面 | 特定の担当者だけが受けている場合 | 取り決めが共有されている場合 |
|---|---|---|
| 取引先の略称や単位の呼び方 | 本人の記憶の中にあり他の人は確認できない | 一覧を見て誰でも照合できる |
| 担当者が不在のとき | 折り返し待ちになるか解釈がずれる | 他の人が同じ手順で受けられる |
| 食い違いが起きたとき | 経緯を本人に聞かないと分からない | 記録から時系列をたどれる |
電話注文で表示・確認すべきこと(法令上のルール)
工程の話に加えて、電話での注文受付が法律上どう位置づけられるかも押さえておきます。
ここを取り違えると、必要のない規制を気にしたり、逆に必要な手当てを見落としたりします。
消費者庁の説明によれば、通信販売とは、事業者が新聞・雑誌・インターネット等で広告し、郵便や電話等の通信手段によって申込みを受ける取引をいい、電話勧誘販売に該当するものは除かれます2。
つまり、こちらから電話をかけて勧誘し契約に至る形は電話勧誘販売として別に規制され、かかってきた注文の電話を受ける形はそれとは異なる区分になります。
表示に関する定めも確認しておきます。
事業者が定める申込書面や最終確認画面など、様式に基づいて申込みの意思表示が行われる場合には、申込みの段階で一定の事項を表示することが義務付けられ、相手を誤認させるような表示は禁止されています2。
これに違反した場合は、行政処分や罰則の対象になります2。
注文用紙やWebの注文フォームを電話と併用しているなら、この部分は自社に直接関わります。
電話で口頭の合意を取り、後から書面やフォームで確定させる運用を取っている場合も、その書面や画面の側は対象です。
一方で、口頭だけで完結するやり取りに、同じ様式の表示義務がそのまま及ぶかどうかは、ガイドラインの本文まで確認しないと判断できません。
今回はその原文を確認できていないため、本記事では「電話での復唱は法律上の義務である」とは書きません。
ただし、申込みの段階で内容を分かる形で示し、誤認させないという考え方そのものは、様式の有無に関わらず電話のやり取りにも当てはめられます。
法的な義務としてではなく、食い違いを防ぐ実務の指針として使う、という位置づけです。
その指針を電話の場面に置き換えると、通話の終わりに読み上げる項目が決まります。
商品名と規格、数量と単位、単価または合計金額、納期、届け先、そして注文した方の名前。
相手が最後に「はい」と答えた内容が、その注文の中身になります。
読み上げる項目を誰が受けても同じにしておけば、後から食い違いが出たときに、何がどこまで合意されていたのかを同じ形で確かめられます。
相手に「言った言わない」を押し返すためではなく、自社の側が事実を確かめられるようにするための備えです。
| 区分 | 申込みのきっかけ | 電話の位置づけ |
|---|---|---|
| 通信販売 | 広告を見た相手からの申込み | 申込みを受ける通信手段の一つ |
| 電話勧誘販売 | 事業者からかけた電話での勧誘 | 勧誘そのものの手段 |
効果を保ちながらクレームを減らすには何を整えればよいか(続ける・見直すの判断軸)
ここまでで、電話が支えているのは既存取引の継続であること、クレームの起点は聞き取りから確認までの工程に寄りやすいこと、そして誤認を防ぐという考え方は電話の場面にも置き換えられることを見てきました。
これらを踏まえると、着手の順序が見えてきます。
手段そのものを入れ替えるより先に、いまの電話の受け方を揃える方が、取引に影響を出さずに始められます。
以下は効果を測定した手順ではなく、負担の所在と法令上の考え方から組み立てた提案です。
復唱・記録で誤認を防ぐ
復唱は多くの現場ですでに行われています。
整える余地があるのは、読み上げる項目が人によって違う点です。
ある人は品目と数量だけを繰り返し、別の人は納期まで確認する。
この差があると、どの注文にどこまでの合意があったのかが注文ごとに変わってしまいます。
前節で挙げた項目を紙一枚にまとめ、受電時に手元に置くだけでも揃います。
記録の側も同じ発想で揃えます。
受注メモの欄を固定し、日時、取引先名、電話をかけてきた方の名前、品目、数量、単位、納期、届け先、特記事項、受けた担当者名を書く場所を作ります。
欄があると、空欄が残ったときに聞き漏らしに気づけます。
自由に書き留める形式では、書かれていないことが「聞いていない」のか「聞いたが書かなかった」のかが後から区別できません。
確認の連絡で内容が変わったときも、変更後の数量と納期を同じ欄に書き足し、いつ誰と合意したかを残します。
この整備で何が変わるかは、控えめに見ておくのが妥当です。
誤りがなくなるわけではありません。
変わるのは、誤りに気づく時点です。
復唱の段階で気づけば通話中に直せ、メモと入力を突き合わせる段階で気づけば当日中に直せます。
荷物が着いてから相手に指摘される誤りが、社内で見つかる誤りに移っていく。
クレームの件数として表に出るものが減るのは、その結果です。
対応ルールを共有し属人化を防ぐ
属人化を挙げた担当者が38.9%いたことを踏まえると、共有すべき中身は取引先ごとの取り決めです1。
まず「いつもの」の中身を書き出します。
この取引先が単位を省略したときはケースなのかバラなのか、略称で呼ばれる商品はどの品番か、締切を過ぎた注文をどこまで受けているか、価格に個別の取り決めがあるか。
担当者本人に一件ずつ聞くより、直近の注文履歴を並べて、書かれていない前提を拾う方が早いことがあります。
次に、判断が分かれる場面の基準を決めます。
在庫が足りないとき、その場で代替品を勧めてよいのか、いったん折り返すのか。
いつもの数倍の数量が入ったとき、そのまま受けるのか確認するのか。
納期の特別対応を誰が判断するのか。
これらが決まっていれば、経験の浅い人が受けても、少なくとも危ない注文を素通りさせることはなくなります。
判断が要る注文を見分けられれば、あとは決まった人につなげば済みます。
全取引先を一度に整理するのは現実的ではありません。
注文件数の多い先、あるいは過去に食い違いが起きた先から順に手を付け、扱う人が増えたところで次に移る形が進めやすいでしょう。
共有の目的は、全員が同じ品質で受けられるようにすることではなく、誰が受けても取り返しのつく範囲に収めることです。
その範囲が広がるほど、特定の一人が電話から離れられない状態がほどけていきます。
電話以外の手段との併用を検討する場面
受け方を整えても件数そのものが減らない場合に、手段の配分を考えます。
ここで思い出したいのが、FAX・電話の廃止で取引に支障が出ると答えた担当者が58.8%いたという結果です1。
一斉に窓口を閉じる進め方は、業務量より先に注文に影響する可能性があります。
検討するのは廃止ではなく併用であり、どの注文を別の手段に移すかという選択になります。
移しやすいのは、条件が動かない注文です。
毎週決まった品目を頼む定期の発注、数量だけが変わる定番品の補充。
こうした注文は書面やフォームで受けても伝わる情報が減らず、むしろ品番と数量が相手の手で書かれる分、聞き取りの工程が一つ消えます。
電話に残すのは、在庫や納期の相談を伴う注文、急な変更、例外的な条件の取引です。
双方向のやり取りが価値になる通話だけが電話に残れば、一件あたりに使える時間も増えます。
どこまで移すかの判断は、いくつかの条件で変わります。
一日に受ける注文の件数、商材の規格や単位の多さ、取引先が別の手段を使える体制にあるか、受け手が何人いるか。
規格違いが多い商材ほど口頭の取り違えが起きやすく、様式に移す利点が大きくなります。
逆に、取引先の発注担当が作業の合間にしか連絡できない場合は、手段を変えても運用が定着しません。
取引先ごとに一社ずつ当たり、移れる先から段階的に進め、電話の窓口自体は残しておく。
この進め方であれば、注文機会を守りながら電話に集中している負担を薄められます。
どの工程から手を付けるかは、自社の負担がどこに寄っているかで変わります。
どの注文を電話に残し、どの注文を別の手段に移すかは、取引先の体制や商材の規格数によって答えが変わり、社内の記録だけでは線を引きにくい部分です。
受注の工程を一度書き出したうえで、取り違えが起きている箇所と、様式に移せる注文の範囲を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
電話受注に伴う業務負担の大きさ(調査回答割合順)
食品小売業・卸売業でFAX・Eメール・電話により受注している担当者90名の回答割合が高い順(2023年3月時点)で並べています。
- 注文書の手入力に手間がかかる 60%
- 注文確認の連絡に手間がかかる 41.1%
- オペレーションの属人化が発生している 38.9%
- 注文書の管理(保管義務)が煩雑である 30%
受け手の人数や商材の規格数が違えば、自社で重くなる工程の順番も変わります。直近で食い違いが起きた注文を一件ずつたどると、どの工程で止まっているかが具体的に見えます。
要点の整理
| 判断の軸 | 見るところ |
|---|---|
| 電話を残す価値 | 電話でしか注文してこない取引先の数と売上比率。食品業の調査では58.8%が廃止で取引に支障と回答している |
| クレームの起点 | 聞き取り・書き取り・入力・確認のどの工程で内容が変わったか。メモと入力内容を突き合わせて確認する |
| 法令上の区分 | 自社からかけて勧誘する電話か、かかってきた注文を受ける電話か。様式を使う申込みには表示のルールがある |
| 着手の順序 | 復唱と記録の型をそろえる、取引先ごとの取り決めを共有する、そのうえで手段の配分を見直す |
| 手段を移す注文 | 条件が動かない定期・定番の注文から。在庫や納期の相談を伴う注文は電話に残す |
復唱や記録の型を決めても、既存の取引先へどう案内し、どの順で移行するかという段取りは自社だけでは判断が分かれます。 取引先ごとの注文の中身を見ながら、電話を残す範囲と移行の順序を具体的に確かめられます。
よくある質問
電話受注をやめてWeb受注だけに切り替えても取引は維持できるか
取引先が別の手段に移れるかどうかで結果が変わります。
食品業の調査では、FAX・電話で受注している担当者80名のうち58.8%が、廃止すると取引に支障が出ると回答しています1。
この数字は業種と時点が限られた結果ですが、一斉の切替が注文そのものに影響しうることは示しています。
自社で確かめるなら、電話でしか注文してこない取引先を数え、その注文が売上に占める割合を出すところからです。
移れる先から順に案内し、電話の窓口は残したまま件数を減らしていく進め方であれば、注文機会を落とさずに負担を薄められます。
電話注文の内容を録音する場合、どんな点に注意すればよいか
録音の可否や取り扱いを定めた規定は、本記事で確認した資料の範囲には含まれていないため、法的な要件をここで示すことはできません。
実務として決めておきたいのは、録音している旨を相手にどう伝えるか、どれだけの期間保存するか、誰が聞ける状態にするか、注文内容の確認以外の目的に使わないことをどう担保するか、という点です。
自社の個人情報の取り扱い方針と照らして決める必要があります。
また、録音があっても該当する通話を探せなければ確認には使えません。
受注メモに通話の日時と担当者名を残し、録音と突き合わせられるようにしておくと、後から検証できる形になります。
注文書の保管義務はどのくらいの期間必要か
保管期間を定めた規定は、本記事で確認した資料には含まれていません。
取引に関する書類の保存期間は税務や会計上のルールによって定まるため、期間については所管の規定や顧問の税理士に確認してください。
業務の側から言えることは、保管が課題になっている現場が一定数あるという点です。
調査では、注文書の管理が煩雑だと答えた担当者が30%いました1。
期間を満たすことと、必要なときに一件を探し出せることは別の問題です。
取引先別・日付順のように探す軸を決めて並べておくと、食い違いが起きたときに根拠として使えます。
属人化を解消するために複数人で電話受注を分担するにはどうすればよいか
人数を増やすだけでは、解釈のずれが増えることがあります。
先に揃えるのは、受けたときに書き留める項目と、読み上げて確認する項目です。
そのうえで、取引先ごとの略称・単位・締切の取り決めを一覧にし、受電の席から見える場所に置きます。
もう一つ有効なのが、受ける工程と判断する工程を分けることです。
在庫不足や納期の特別対応など判断が必要な注文は、いったん折り返しにして決まった担当者へ回す。
この線引きがあれば、経験の浅い人でも受けられる注文の範囲が広がり、特定の一人に電話が集中する状態を緩められます。
クレームになりやすい注文内容や商材に傾向はあるか
本記事で参照した調査は受注業務の課題を尋ねたもので、クレームの発生率や商材別の傾向を尋ねた設問はありません1。
そのため、どの商材で起きやすいかを示すデータはここでは提示できません。
工程の構造から考えると、同じ品名で規格や単位が複数ある商材、略称で呼ばれる商材、数量変更や納期指定を伴う注文は、口頭のやり取りで取り違えが生じる余地が大きいと考えられます。
これは推測であり、確かめるには自社の記録が要ります。
過去に食い違いが起きた注文を並べ、品目・単位・変更の有無で分類すると、自社で注意すべき注文の型が見えてきます。