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電話受注の工数削減は自社の数字で試算する:作業別の測り方と移行率の置き方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 電話受注の工数は通話時間だけでなく、聞き取り・入力・確認連絡・変更対応・転記に分けて1〜2週間記録してから試算する
  • 移行率は得意先の社数ではなく注文の工数で置き、電話が残る分と新規運用工数を差し引いて削減工数を出す
  • 新規運用工数が固定的にかかるため、移行率の置き方で削減工数は大きく動き、3通りの幅で示すほうが判断材料になる
  • 入力ミス・変更対応・属人化の上乗せは自社の件数で裏づけた分に限り、人件費換算の基本試算とは別枠で示す
  • 事例の削減率は分母と前提を読み直してから比べ、数社で始めて実測した係数で試算を見直す

40代前半の日本人女性が建物前での荷物の受け取りをしている場面

事例の「◯割削減」を自社に当てはめる前に:電話受注の工数を作業別に測る

得意先からの電話を受け、聞き取った内容を販売管理へ打ち込み、あいまいな点は折り返して確かめる。
この流れをWeb受注に替えたら何時間減るのかと社内で問われ、手元には事例の「◯割削減」しかない。
そんな状態で答えに詰まっていませんか。
電話受注の工数削減は、自社の数字で試算できます。
まず工数を、聞き取り・入力・確認連絡・変更対応・転記に分けて測ります。
そのうえで電話が残る得意先の分と、新たに増える運用作業を差し引き、得意先の移行率を変数にして削減分を出します。
事例の数字は、分母と前提を確かめてから比べる相手として使います。

工数は通話時間だけではない

電話受注の工数というと、受話器を取ってから切るまでの時間を思い浮かべがちです。
しかし、受注担当者の手がふさがっているのは通話中だけではありません。
通話しながらメモを取り、切ったあとに販売管理の画面へ得意先・商品・数量・納品日を打ち込みます。
品番があいまいなら折り返して確かめます。
翌日に「数量を変えたい」と電話が来れば、入力済みの受注を探し出して直し、出荷の担当にも伝えます。

Web受注に替えたときに減るのは、このうちの一部です。
通話時間だけを測って削減見込みを出すと、入力や折り返しの分が抜けて、見込みは過小になります。
逆に、受注業務にかかる時間を丸ごと「電話受注の工数」として削減対象にすると、過大になります。
Web受注に替えても残る出荷手配や在庫の確認まで、減る計算になってしまうからです。
試算の出発点は、電話を起点に発生している作業を分け、作業ごとに時間を持つことです。

  • 聞き取り:通話で注文内容を受ける時間(聞き返しを含む)
  • 入力:メモや注文書の内容を販売管理・基幹システムへ打ち込む時間
  • 確認連絡:品番・数量・納期のあいまいな点を折り返して確かめる時間、受注確認を返す時間
  • 変更対応:受注後の数量変更・取消・追加を受けて、入力済みの受注を直す時間
  • 転記・保管:FAXで届いた注文書の転記や、注文書・メモの整理と保管

転記・保管を含めるのは、電話とFAXを同じ担当者が受けている職場が多いからではありません。
同じ人の同じ時間帯に混ざっている作業を分けておかないと、電話を減らしたときにどの時間が浮くのかを説明できないためです。
FAXの転記を別に記録しておけば、電話受注だけを置き換える場合と、FAXも含めて置き換える場合を、あとから分けて試算できます。

手間を感じる作業の偏り(食品業の調査)

どの作業から測り始めるかの手掛かりとして、食品の小売・卸売業で受注業務に携わる人への調査があります。
受注業務の仕組みを提供する株式会社ハンモックが2023年3月にインターネットで実施したもので、FAX・Eメール・電話で受注していると答えた90人に、手間に感じる点を複数回答で尋ねています1。
最も多かったのは注文書の手入力で60%でした。
続いて注文確認の連絡が41.1%、注文の変更対応が40%、オペレーションの属人化が38.9%、注文書の管理(保管義務)が30%です1。

この割合は、作業にかかった時間ではなく、手間を感じると答えた人の割合です。
手入力が60%だからといって、入力が工数の6割を占めるとは読めません。
FAXとEメールを含めた回答で、電話受注だけを切り出した数字でもありません。
対象は食品業に限られ、受注の仕組みを提供する企業が自社の事業に近い領域で行った調査でもあります。

それでも読み取れることはあります。
入力だけでなく、確認連絡や変更対応にも手間を感じている人が4割前後います。
この点は、測る作業を入力に絞らない理由になります。
自社でも同じ偏りがあるかは、記録を取るまで分かりません。
調査は「どこを測り漏らしやすいか」の目安として使い、工数そのものは自社の記録から出します。

1〜2週間の記録で測る項目

記録は、受注担当者が電話1件ごとに書き込める簡単な表で足ります。
秒単位の正確さより、件数と作業の種類を漏らさないことのほうが、あとで式に入れるときに効きます。
編集部の提案としては、次の項目を1〜2週間分残す形です。

  • 日時と得意先
  • 作業の種類(新規注文・変更・取消・問い合わせ)
  • 通話時間(目安でよい)
  • 通話後の入力時間
  • 折り返し確認の有無と、その時間
  • 注文の明細行数
  • 対応した担当者

期間を1〜2週間とするのは、曜日による波を一通り含めるためです。
週明けに注文が集中する、月末に変更が増えるといった波があるなら、その時期を含むように期間をずらします。
全件の記録が負担になる場合は、1日のうち決めた時間帯だけ、または担当者1人分だけでも、作業の内訳の比率はつかめます。
ただし、その場合は記録しなかった時間帯の件数を別に数えておき、比率を全体の件数に掛けて月間の工数へ戻します。

得意先と明細行数の欄は、のちほど移行率を置くときに使います。
どの得意先がどれだけの工数を占めているかが分かれば、「この得意先が移ると何時間減るか」を積み上げられるからです。
担当者の欄は、属人化を見るために残します。
特定の人にだけ電話が回っている、その人が休む日に折り返しが増える、といった偏りは、件数を担当者別に並べると見えてきます。
人件費の換算だけでは効果を説明しきれないとき、この記録が根拠になります。

受注業務の課題(株式会社ハンモック(調査実施:IDEATECH「リサピー」)「食品業の受注業務に関する実態調査」)
注文書の手入力に手間がかかる 60%、注文確認の連絡に手間がかかる 41.1%、注文の変更対応に時間がかかる 40%、オペレーションの属人化が発生している 38.9%、注文書の管理(保管義務)が煩雑である 30%

出典:株式会社ハンモック(調査実施:IDEATECH「リサピー」)「食品業の受注業務に関する実態調査」(2026-11-04取得・FAX・Eメール・電話で受注する食品小売・卸売業の担当者n=90、複数回答、2023年3月・同上)

Web受注に置き換えると、減る作業・残る作業・増える作業

減りやすい作業

得意先が自分で画面から注文を入れる形になると、その得意先の分については、受注担当者が電話で聞き取る作業が発生しなくなります。
入力のほうは、Web受注の注文がどう販売管理へ届くかで変わります。
注文データが販売管理へ取り込まれるなら、入力もなくなります。
受注担当者がWeb受注の画面を見ながら販売管理へ打ち直す運用なら、入力は「画面から画面への転記」に形を変えて残ります。
この違いで入力の削減率は大きく変わるため、作業別の削減率を置く前に、取り込みの範囲を見積の段階で確かめておく必要があります。

確認連絡も減りやすい作業です。
商品を一覧から選び、数量を数字で入れる形なら、「あの品番はどれか」「ケースかバラか」と折り返して聞く場面は減ります。
ただし、得意先が画面で商品を探しにくければ、注文の代わりに「どの商品を選べばよいか」という問い合わせの電話が来ます。
確認連絡の削減率は、商品マスタの品名や単位が、得意先にとって分かりやすく登録されているかに左右されます。

変更対応は、締め時刻まで得意先が自分で注文を直せる運用にするかどうかで変わります。
締め前の変更を得意先が画面で済ませられれば、受注担当者が入力済みの受注を探して直す作業は減ります。
締め後の変更を従来どおり電話で受けるなら、変更対応の多くは残ります。

電話が残る得意先の分

削減見込みを考えるうえで外せないのが、電話が残る分です。
先の調査では、FAX・電話で受注している担当者80人に、FAX・電話受注を廃止すると取引に支障が出るかを尋ねています。
結果は58.8%が「はい」、25.0%が「いいえ」でした1。
これは担当者の見立てであって、実際に移行を試みた結果ではありません。
それでも、受注側の担当者の半数を超える人が全面的な切り替えは難しいと見ていることは、試算で「全得意先が移る」と置かない理由になります。

電話が残る理由は得意先ごとに違います。
画面の操作に慣れていない得意先もあれば、発注担当者が現場から急ぎで電話してくる得意先もあります。
受注側の担当者に在庫や代替品を相談しながら注文したい、という得意先もあるでしょう。
こうした得意先の注文は、Web受注を始めても現状と同じ手順で処理されます。

さらに、Web受注へ移った得意先でも、急ぎの注文や例外的な注文は電話で来ることがあります。
つまり電話が残る分は、移らない得意先の注文と、移った得意先の一部の注文の二つから成ります。
得意先単位と注文単位の両方で残る分を見ておくと、見込みが膨らみにくくなります。

新たに増える作業

Web受注を始めると、これまでなかった作業も生まれます。

  • 商品マスタ・得意先別単価・届け先の登録と更新
  • 得意先へのID発行と、使い方の案内
  • 得意先からの操作の問い合わせへの対応
  • Web受注で入った注文の内容チェック(自動で取り込まない場合は画面移しも)
  • 電話とWebの二つの窓口で受けた注文の照合(同じ注文が両方から届いていないかなど)

このうち、マスタの初期登録と得意先への案内は、立ち上げ時に集中する作業です。
問い合わせ対応、マスタの更新、二つの窓口の照合は、移行が進む間ずっと続きます。
試算ではこの二つを分け、立ち上げ時の工数は初期費用の側に、続く工数は月々の運用工数の側に入れます。

誰がこれらの作業を担うかも見ておきます。
受注担当者が通常業務と並行して担うなら、浮いた時間の一部はそのまま新しい作業に吸収されます。
情報システムや営業の担当が引き受けるなら、受注担当者の時間は減っても、社内全体の工数は別の部署に移るだけの部分があります。
社内で説明するときは、どの部署の時間がどう動くかを分けて示すほうが、反論を受けにくくなります。

作業 移った得意先の注文 電話が残る注文
聞き取り 発生しなくなる 現状のまま
入力 自動取り込みならなくなる・打ち直しなら転記として残る 現状のまま
確認連絡 品番・単位の聞き返しは減る・商品の問い合わせに変わる場合がある 現状のまま
変更対応 締め前を得意先が直せれば減る 現状のまま
マスタ整備・得意先への案内 新たに発生 関係しない
二つの窓口の照合 新たに発生 新たに発生
Web受注へ移った注文と電話が残る注文での作業の変化(模式図)
移った注文では聞き取りなどが減り、電話が残る注文は現状のまま、どちらにも新たな運用作業が生じることを示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • Web受注へ移った注文
    • 聞き取りは発生しなくなる
    • 入力は取り込みならなくなり、打ち直しなら転記として残る
    • 確認連絡は減るが、商品の問い合わせに変わる場合がある
    • 変更対応は締め前を得意先が直せれば減る
  • 電話が残る注文
    • 移らない得意先の注文
    • 移った得意先の急ぎ・例外の注文
    • 現状と同じ手順で処理される
  • 新たに増える作業
    • 商品マスタ・単価・届け先の登録と更新
    • 得意先へのID発行と案内
    • 操作の問い合わせへの対応
    • 電話とWebの二つの窓口で受けた注文の照合

得意先の移行率を変数にした削減工数の式

式の組み立て

ここまでの整理を、一つの式にまとめます。
編集部が提案する形は次のとおりです。

月間削減工数 =(移行率 × 対象作業の現状工数 × 作業別削減率)を作業ごとに合計 − 新規運用工数

移行率は「移る得意先の数の割合」ではなく、「移る注文が電話受注の工数に占める割合」で置きます。
得意先が100社あって30社が移っても、その30社が少量の注文ばかりなら、減る工数は3割に届きません。
反対に、毎日まとまった明細を電話で読み上げてくる数社が移れば、社数の割合以上に工数は減ります。
記録に得意先と明細行数を残しておけば、得意先ごとの工数を合計して、どの得意先が移ると何時間減るかを積み上げられます。

作業別削減率は、移った注文について各作業がどれだけ減るかを表す係数です。
前節の仕分けに沿って、作業ごとに置きます。
聞き取りは、移った注文についてはほぼなくなると置けます。
入力は、自動で取り込むか打ち直すかで大きく変わります。
確認連絡と変更対応は、商品マスタの整い方や締めの運用しだいです。
根拠のある値がない段階では、楽観・中間・慎重の3通りを置いておくと、「その削減率はどこから来たのか」と聞かれたときに幅で答えられます。

新規運用工数には、移行率にかかわらず発生する部分があります。
得意先が数社しか移らなくても、マスタの更新や二つの窓口の照合は必要です。
この固定的な部分があるため、移行率が低いうちは削減工数が小さく、場合によってはマイナスになります。

移行率を仮置きして見る感度

仮の数値例で、式がどう動くかを見ます。
以下は式の動きを示すための仮定で、実績や相場ではありません。
全得意先が移ったと仮定した場合に減る工数(対象作業の現状工数 × 作業別削減率の合計)を月100時間、新規運用工数を月10時間と置きます。

移行率(仮置き) 減る工数 新規運用工数 月間削減工数
30% 30時間 10時間 20時間
50% 50時間 10時間 40時間
70% 70時間 10時間 60時間

移行率が30%から70%に上がると、月間削減工数は20時間から60時間へ3倍になります。
移行率の差は2倍余りなのに、削減工数の差は3倍に開きます。
新規運用工数が固定的にかかるためです。
社内説明で一つの数字だけを出すと、その数字が移行率の仮定に強く依存していることが見えなくなります。
3通りの移行率で並べて示すほうが、判断する側にとって材料になります。

移行率をいくつに置くかは、得意先の一覧を見ながら決めるのが現実的です。
たとえば、すでにメールで注文を送ってくる得意先、取引量が多く担当者同士の連絡が密な得意先、画面操作を嫌がりそうな得意先、というように分けます。
それぞれについて、日頃その得意先とやり取りしている受注担当や営業担当に、移る見込みを聞きます。
「この得意先は電話のままだろう」と答えた分は、最初から移らない側に入れておきます。

移行は一度には進みません。
案内を始めてすぐに移る得意先もあれば、半年たってから移る得意先もあります。
半年後・1年後と時期ごとに移行率を置いておくと、立ち上げから数か月の削減工数が小さい期間を、回収の判断に織り込めます。

月間削減工数を決める要素のつながり(模式図)
作業別の現状工数に移行率と作業別削減率を掛け、新規運用工数を引いて月間削減工数を出す関係を示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 電話受注の現状工数(作業別)
    • 移る得意先の注文分
    • 電話が残る注文分
  2. 移行率
    • 社数でなく注文の工数の割合で置く
    • 半年後・1年後など時期別に仮置きする
  3. 作業別削減率
    • 入力は取り込みの範囲で変わる
    • 確認連絡は商品マスタで変わる
    • 変更対応は締めの運用で変わる
  4. 新規運用工数
    • マスタ更新
    • 問い合わせ対応
    • 二つの窓口の照合
  5. 月間削減工数
    • 移る注文分の削減の合計から新規運用工数を引く

人件費換算だけで足りない場合:ミス・変更対応・属人化をどこまで効果に入れるか

基本の試算と拡張の試算

月間削減工数が出たら、人件費の単価を掛けて金額にするのが基本の試算です。
単価は、社内で他の投資判断に使っている人件費の単価があれば、それに合わせると比べやすくなります。

ここで、時間が減ることと支出が減ることは分けておきます。
受注担当者の残業が減る、繁忙期の応援や派遣の時間を減らせる、という形で現れれば、支出が減ります。
一方、所定時間内の作業が減って別の業務に回る場合、支出は変わらず、浮いた時間で何をするかが効果になります。
削減時間のうち、どれだけが残業や外部の人手の削減に当たるかを分けて示すと、「人は減らないのに何が得なのか」という問いに答えやすくなります。

基本の試算だけでは投資に見合わないとき、変更対応・入力ミスの訂正・属人化の解消を上乗せしたくなります。
調査でも、変更対応に時間がかかる(40%)、属人化が発生している(38.9%)と答えた担当者が4割前後いました1。
ただ、調査から分かるのは課題と感じている人の割合で、それを解消したときの金額は導けません。
上乗せは基本の試算とは別の枠に置き、自社の記録で裏づけられた分だけを入れます。
枠を分けておけば、上乗せ分を認めない立場の人にも、基本の試算だけで判断してもらえます。

自社の実績件数で裏づける

上乗せの根拠になるのは、自社で数えられる件数です。

  • 入力ミスの訂正:誤出荷・返品・再配送の件数、うち受注入力の誤りが原因だった件数、1件あたりの対応時間
  • 変更対応:受注後の変更・取消の件数と、1件の処理時間(作業別の記録の「変更」欄から出せる)
  • 属人化:担当者別の受注件数の偏り、特定の担当者の残業時間、その人が不在の日の折り返し件数

入力ミスについては、Web受注で得意先が自分で入れた注文でも誤りは起きます。
減るのは、電話の聞き間違いや、メモから画面への書き写し間違いによる誤りです。
得意先が商品や数量を選び間違える誤りは残ります。
過去の訂正記録で原因が分かるなら、聞き取りと転記に起因する分だけを削減の対象にします。
原因の記録がなければ、まず記録を取り始め、上乗せは次の見直しに回すほうが、社内で疑問を持たれにくい試算になります。

変更対応は、作業別の記録に件数と時間が残っていれば、基本の試算の中で扱えます。
上乗せの枠に入れるのは、変更が出荷の手配や在庫の引き当てのやり直しまで及び、受注担当者以外の時間も使っている場合です。
その場合は、出荷側で何件のやり直しがあったかを数えてから入れます。

属人化は、金額にしにくい効果です。
特定の担当者に電話が集中していれば、その人の休暇や異動で受注が滞るおそれがあります。
しかし、そのおそれを金額にする材料は、件数の記録ほどには揃いません。
無理に金額へ直すより、担当者別の件数の偏りや、不在日の折り返し件数といった事実を並べます。
そのうえで、金額の効果とは別に「業務の偏りがこう変わる見込み」として示すほうが、説明として通りやすくなります。

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導入・運用費用と照らして回収を判断する

回収月数の出し方

削減額が出たら、費用と比べて回収の見込みを出します。
編集部が提案する式は次のとおりです。

回収月数 =(初期費用 + 立ち上げ時の社内工数の金額)÷(月次削減額 − 月額費用 − 月々の運用工数の金額)

分子には、システムの初期費用に加えて、マスタの初期登録や得意先への案内に社内で使う時間を金額にして入れます。
分母は、削減工数を金額にした月次削減額から、月額費用と、問い合わせ対応や窓口の照合など続く運用工数を引いたものです。
削減工数の式で新規運用工数をすでに差し引いている場合は、ここで二重に引かないようにします。

分母がマイナスや小さな値になる場合、回収月数は出ないか、極端に長くなります。
そのときは、時期別に置いた移行率を使い、移行が進んだ時点で分母がどうなるかを見ます。
立ち上げから数か月は移行率が低く、月額費用だけがかかる期間が続きます。
その期間をどれだけ許容できるかが、判断の分かれ目になります。

回収と判断する基準は、社内で他の投資に使っている基準があれば、それに合わせます。
基準がない場合でも、移行率を慎重側に置いたときの回収月数を、契約期間やシステムの更新時期と並べると判断の材料になります。
慎重側でも契約期間内に回収できるなら説明は通りやすく、楽観側でしか回収できないなら、移行を進める手立てを先に考える必要があります。

見積で確認する費用項目

費用は製品や契約ごとに違い、一般的な相場で置き換えられるものではありません。
見積を取るときは、金額そのものより、どの費用がどこに含まれているかを揃えることが比較の前提になります。

  • 初期費用:設定・開設の費用に何が含まれるか(マスタ登録の代行、得意先への案内資料など)
  • 月額費用:得意先数・利用者数・注文件数などで料金が変わるか
  • 販売管理・基幹システムとの連携:受注データの取り込みが標準で済むか、開発や追加費用が要るか
  • 得意先側の負担:得意先に費用や端末の用意を求めるか
  • 立ち上げ時の社内工数:商品マスタ・得意先別単価の整備を、誰が何時間で行うか
  • 運用時の社内工数:問い合わせ窓口とマスタ更新を、誰が担うか

得意先側の負担は、移行率に直結します。
得意先に費用がかかる、あるいは使い始めるのに得意先の社内で手続きが要るとなれば、移行をためらう得意先が増えるでしょう。
見積の段階でこの点が分かれば、仮置きした移行率を見直すきっかけになります。

連携の範囲は、作業別削減率に直結します。
Web受注の注文が販売管理へ自動で届くなら、入力の削減率を高く置けます。
受注担当者が画面を見て打ち直す運用なら、減るのは聞き取りと確認連絡が中心です。
見積の連携の欄を読むときは、金額だけでなく、受注担当者の手元でどの転記が消えるのかを確かめます。

ベンダー事例の削減効果を比較対象に使うときの確認点

削減率の分母を確かめる

自社の試算ができたあと、ベンダーの導入事例と見比べると、事例の削減率のほうがずっと大きく見えることがあります。
そのとき自社の試算を疑う前に、事例の数字が何を分母にしているかを確かめます。

「受注業務の工数が◯割減った」という表現でも、分母が受注業務全体なのか、電話受注の処理時間だけなのか、Web受注に移った得意先の分だけなのかで、意味は大きく違います。
移った得意先の分だけを分母にすれば、電話が残る分は計算に入らないため、削減率は高く出ます。
自社の試算は電話が残る分と新規運用工数を差し引いているので、同じ土俵で比べるには、事例の数字が自社の式のどこに当たるかを読み直す必要があります。

分母のほかに、次の点も読み取れるかを見ます。

  • 導入前の受注件数と担当者数(規模が違えば、固定的な運用工数の重みが違う)
  • 対象業務の範囲(入力だけか、確認連絡や変更対応も含むか)
  • 電話・FAXの併用が続いているか
  • 測った時期(立ち上げ直後か、移行が進んだあとか)

これらが読み取れない事例は、自社の試算の正しさを測る物差しにはなりません。
事例は、自社の試算と大きく食い違うときに「どの係数の置き方が違うのか」を考えるきっかけとして使う程度に留めます。
事例のほうが削減率が大きいなら、自社が移行率を低く見すぎているのか、事例が移った得意先だけを分母にしているのか、という問いを立てられます。
事例のほうが小さいなら、自社が作業別削減率を高く置きすぎていないかを見直す材料になります。

小さく測って見直す

試算は、置いた係数が実際と合っているかを確かめて、初めて社内で使える数字になります。
全得意先へ一度に案内するより、移る見込みの高い数社から始めるほうが、係数を確かめやすくなります。
その得意先の分について作業別の時間を記録し、導入前の記録と比べれば、作業別削減率と新規運用工数を自社の実測で置き換えられます。

実測で係数を直したら、移行率の見込みを更新し、回収月数を出し直します。
そのうえで次に案内する得意先を決め、また測ります。
この繰り返しで、最初の試算は仮置きの多い数字から、自社の実績に基づく数字へ少しずつ変わっていきます。

社内には、最初の試算を出す段階で「何か月後に、どの係数を実測で置き換えるか」を一緒に示しておくと、仮置きであることへの懸念に先回りできます。
移行率・作業別削減率・新規運用工数のうち、どれが仮置きでどれが実測かを明記した試算表は、見直しのたびに更新できる資料になります。

小さく測って試算を見直す流れ(模式図)
作業別の記録、仮置きの試算、数社での開始、実測、係数の修正を経て再び記録へ戻る繰り返しの図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 作業別に記録する
  2. 係数を仮置きして試算する
  3. 移る見込みの高い数社で始める
  4. 移った注文の作業時間を測る
  5. 係数と移行率を直し回収月数を出し直す

作業別の記録を取り始めても、得意先ごとの移行見込みや、作業別削減率をどの値に置くかは、社内だけでは根拠を持ちにくい部分です。

記録した作業別の工数と得意先の一覧をもとに、移行率と作業別削減率の置き方、電話が残る分の見込み方を一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
測る単位 聞き取り・入力・確認連絡・変更対応・転記・保管に分け、1〜2週間記録する
移行率 得意先の社数ではなく注文の工数で置き、時期別に3通り仮置きする
差し引くもの 電話が残る注文と、マスタ更新・問い合わせ・窓口照合などの新規運用工数
上乗せ効果 自社の訂正件数・変更件数・担当者別件数で裏づけた分だけ、基本試算と別枠で示す
回収 初期費用と立ち上げ工数を、月額費用と運用工数を引いた月次削減額で割る
事例の扱い 分母・規模・対象範囲・併用・測定時期が読めるときだけ比較に使う
Business professionals collaborating over charts and data in a conference room.
▽ 写真の出典元

回収月数は、連携の範囲や得意先側の負担といった見積の中身で大きく変わり、見積書だけでは比べにくいことがあります。 見積の費用項目を試算の式のどこに入れるか、慎重側の移行率でも回収が見込めるかを、自社の数字で整理できます。

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よくある質問

電話受注の工数を測るとき、まず何日分の記録を取ればよいですか。

編集部の提案としては1〜2週間分です。
曜日による注文の波を一通り含めるためで、月末に変更が増えるなど月内の波があるなら、その時期を含むように期間をずらします。
全件の記録が難しければ、決めた時間帯や担当者1人分だけでも作業の内訳の比率はつかめます。
その場合は全体の件数を別に数え、比率を掛けて月間の工数へ戻します。

得意先の一部だけWeb受注に移行する場合、試算はどう変わりますか。

移行率を、移る得意先の社数ではなく、移る注文が電話受注の工数に占める割合で置きます。
注文の多い得意先が移るか、少量の得意先が移るかで、減る工数は社数の割合と大きくずれるためです。
得意先ごとの工数を記録から合計し、移る見込みの得意先の分だけを削減の対象にします。
新規運用工数は移る社数が少なくても一定程度かかるので、一部の移行では削減工数が小さく出ることがあります。

電話が残る得意先の注文は、削減工数からどう差し引きますか。

式では、移行率を掛けた分だけを削減の対象にするので、移らない得意先の注文は最初から削減に入りません。
注意が要るのは、移った得意先から急ぎや例外の注文が電話で来る分です。
移った得意先の作業別削減率を100%と置かず、電話で残る割合を見込んだ値にしておくと、この分を差し引けます。

入力ミスや訂正対応の削減は、金額にしてよいですか。

自社の記録で、受注入力の誤りが原因だった訂正の件数と1件あたりの対応時間が分かる分は、金額にできます。
ただし、Web受注でも得意先の選び間違いは起きるため、減るのは聞き間違いや書き写し間違いによる分です。
基本の試算とは別の枠に置き、根拠となる件数と一緒に示すと、社内で受け入れられやすくなります。
原因の記録がない場合は、記録を始めてから次の見直しで加えます。

導入費用の回収月数を出すとき、運用工数をどう入れますか。

立ち上げ時に集中するマスタの初期登録や得意先への案内は、金額にして初期費用の側に足します。
問い合わせ対応、マスタの更新、電話とWebの窓口の照合など続く作業は、月々の運用工数として月次削減額から引きます。
削減工数を出す段階で新規運用工数を差し引いている場合は、回収月数の式で二重に引かないようにします。

FAX転記が混在する場合、電話受注と分けて試算すべきですか。

分けて記録しておくことをお勧めします。
同じ担当者が電話とFAXを受けていても、置き換えの範囲によって減る作業が違うためです。
電話だけをWeb受注に替えるならFAXの転記は残り、FAXも含めて替えるなら転記も削減の対象になります。
記録の段階で分けておけば、範囲を変えた試算をあとから両方出せます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:株式会社ハンモック(調査実施:IDEATECH「リサピー」)「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)

画像の出典元

  1. Business professionals collaborating over charts and data in a conference room./Photo by Antoni Shkraba on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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