◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受領は検査をするかどうかを問わず、物を受け取り自社の管理下に置いた事実で、受領印は内容の合格を認めたものではない。
- 受領の記録には、その場で数えた数・外装の状態・検査前である旨を事実として書き、合否は検査後に別の通知で伝える。
- 取適法の対象取引では、支払期日は受領日から60日以内で、検収書の日付を遅らせても支払期日は延びない。
- 返品は直ちに発見できない不適合でも受領後6か月、やり直しは受領後1年が上限で、どちらも受領日から数える。
- 受領日・検査完了日と結果などの記録は2年間保存し、対象外の取引では契約書の起算日と通知期間を確かめる。
目次

サインを求められたとき、「受領」と「検収」で何を認めたことになるのか
荷物や成果物を受け取る場で受領印や確認メールを求められ、「中身まで問題なしと認めたことになるのでは」と手が止まることがあります。
取適法では、受領は検査をするかどうかに関係なく、物を自分の管理下に置いたという事実です。
検収は、検査をしたうえで合格とする判断です。
支払期日は検収書の日付ではなく受領日から数えます。
そこで、受領の記録には未検査・数量未確認などの留保を書き、合否は検査後に別の通知で伝える、という分け方を提案します。
受領は「自分の管理下に置いた事実」
取適法の運用基準は、「給付の受領」を次のように説明しています。
給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が給付の目的物を受け取り、自己の占有下に置くことです3。
占有下に置くとは、届いた物が自社の倉庫や作業場に入り、自社が管理している状態になったという意味です。
中身を開けたか、数を数えたか、規格どおりかを確かめたかは、この定義に含まれていません。
たとえば、外部に製造を委託していた部品が段ボール10箱で届き、運送担当者から受領印を求められた場面を考えます(仮の例です)。
箱を倉庫に入れた時点で、取適法の上では受領が成立しています。
受領印を押すかどうかで受領の成否が決まるわけではありません。
受領印は、その事実を記録する手段の一つです。
逆にいえば、受領印を押したからといって、10箱の中身がすべて注文どおりだと認めたことにはなりません。
受領という言葉が表すのは、「この日に、この物を、自社が受け取った」という事実までです。
これを押さえておくと、「サインしたら後で何も言えなくなるのでは」という不安は、記録に何をどう書くかという問題として扱えるようになります。
検収は「検査して合格とする判断」
検収は、受け取った物を検査し、注文した内容に合っていると判断することを指す言葉です。
取適法の資料は、受領とは別に、検査をした場合の検査完了日と結果を記録するよう求めています1。
制度の側でも、受け取った日と、検査を終えて結果を出した日を、別々の出来事として扱っているということです。
受領は物の置き場所が変わったという事実です。
一方、検収は中身を見て、受け入れてよいと決めた判断です。
事実は一度起きれば変わりませんが、判断には根拠が必要です。
検収の記録に、何を基準に、どこまで調べて合格としたのかが残っていれば、後で不具合が見つかったときに、どの段階で何を確かめていたのかを相手と共有しやすくなります。
取適法の対象にならない取引では、受領と検収の区別は契約書や発注書の文言で決まります。
仮に契約に「受領をもって検収とみなす」といった条項があれば、受領印が合格の意味を持つこともあります。
取引が取適法の対象かどうかは、委託の内容や事業者どうしの関係によって変わります。
公正取引委員会の資料で確かめ、対象外であれば契約の支払条件と検査の条項を読み合わせておく必要があります。
納期前の一時預かりは受領になるか
データやデザインのような情報成果物では、納期の前に「いったん見せてほしい」と預かることがあります。
公正取引委員会のよくある質問では、受領前に一時的に確認するための預かりは、そのことについて合意があれば受領にはならないとされています2。
ただし同じ回答は、検査を終えてから受領することを認める趣旨ではない、とも述べています2。
物品の場合は、原則として納品された時点が受領日です2。
納期前に届いた物について納期前に検査を終えたときは、検査終了時点を受領日としてもよいとされています2。
ただし、検査中に納期が来たときは、納期が受領日になります2。
物品でも情報成果物でも、「検査が終わるまでは受け取っていないことにする」という扱いを、際限なく続けられるわけではありません。
確認のために預かるなら、預かる前に、受領ではなく確認のためであることを相手と合意し、その合意をメールなどで残しておくことを提案します。
口頭だけで預かると、相手は「あの日に納品した」と考えていて、こちらは「まだ確認中」と考えている、という受領日の認識のずれが起きます。
受領日は後の支払期日や返品の期限の起点になるため、このずれは小さな問題では済みません。
| 観点 | 受領 | 検収 |
|---|---|---|
| 何を表すか | 物を受け取り自社の管理下に置いた事実 | 検査して注文どおりと判断した結果 |
| 検査との関係 | 検査をするかどうかを問わず成立 | 検査を前提とする |
| 記録に残す日付 | 受領日 | 検査完了日と結果 |
| 取適法で数え始める期限 | 支払期日・返品とやり直しの上限 | (これらの期限の起点にはならない) |
▼ 図の内容を文字で読む
- 受領
- 検査をするかどうかを問わず成立する
- 物を自分の管理下に置いた事実
- 記録に残すのは受領日
- 検収
- 検査をしたうえで合格とする判断
- 記録に残すのは検査完了日と結果
- 何を基準にどこまで調べたかを残す
- 取適法の対象外の取引
- 受領と検収の区別は契約書や発注書の文言で決まる
- 「受領をもって検収とみなす」条項があれば受領印が合格の意味を持つこともある
受領印・受領書・検収書・確認メールは、どの場面でどれを返すか
受領の記録と検査結果の記録を分ける
取適法では、受け取る側(法律上は委託事業者)が記録を作る義務を負います。
記録するのは、給付の内容、代金の額、給付を受領した日、検査をした場合の検査完了日と結果などで、書類または電磁的記録で作成し、2年間保存します1。
この記録事項から逆算すると、手元の書類は二つの役割に分けて考えられます。
一つは受領日を示す記録、もう一つは検査完了日と結果を示す記録です。
受領印と受領書は、受領の記録として扱うのが素直です。
運送伝票や納品書の控えに押す受領印は、その日に物が届いたことを示します。
受領書を別に作る場合も、書く内容は受領日、品名、その場で数えた範囲の数量、受け取った人、検査前であることにとどめる形を提案します。
検収書は、検査結果の記録として使います。
検査完了日、検査した項目、合格か不合格か、不合格ならその内容と数量を書き、受領書とは別の日付で出します。
一枚の書類に受領と検収を兼ねさせると、そこに書かれた日付が受領日なのか検査完了日なのかが曖昧になります。
その結果、支払期日の起算点を後から確かめにくくなります。
物品か成果物かで変わるのは、受領の記録をどんな形で残すかです。
物品なら、運送伝票や納品書への受領印が当日の記録になります。
データで納品される成果物には押す紙がないことが多いため、受け取りの記録はメールやシステム上の履歴になります。
そのぶん、次に述べる確認メールの書き方が記録の質を左右します。
なお、ここでの書類の割り振りは、取適法の記録事項から組み立てた一つの整理であり、公的に定められた標準の書式ではありません。
確認メールに書く一文
確認メールの「受け取りました」は、受領の記録にも検収の通知にも読めてしまう点に注意が要ります。
相手が「確認したうえで問題がなかった」という意味に受け取れば、検査が済んだと思われかねません。
どちらの意味なのかは、文面の中で明示しておくのが確実です。
受領の連絡なら、たとえば「本日、△△(品名)を〇箱受領しました(内容の検査は未了で、結果は検査完了後に別途ご連絡します)。」のような一文が考えられます(文例は提案です)。
受け取った日付と、検査前であることの二点が入っていれば、このメールは受領の記録として読まれます。
数を数えていない段階なら、箱数だけを書き、中身の数量は「未確認」と添えます。
検収の連絡なら、「〇月〇日に検査を完了し、△△〇箱を合格としました。」のように、検査完了日と結果を書きます。
不合格の品があれば、どの品がどう違ったのかと、その数量を同じメールに書きます。
受領のメールと検収のメールを同じスレッドで続けておくと、受領日から検査完了日までの経過を一続きで追えます。
担当者が替わっても、どの日付が何を意味するのかを取り違えにくくなります。
印紙税は名称でなく記載内容で見る
受領書を作るときに迷いやすいのが収入印紙です。
国税庁は、課税文書に当たるかどうかは、文書の名称や形式的な文言ではなく、記載されている文言などの実質的な意味で判断するとしています4。
「受領書」という題名だから印紙は関係ない、とも、関係ある、とも、名前だけでは決まりません。
判断が分かれるのは、その書類が何の受け取りを示しているかです。
印紙税の第17号文書は、売上代金に係る金銭または有価証券の受取書です5。
代金を受け取ったことを書いた受取書はこれに当たりうる一方、物品を受け取った事実だけを書いた受領書の扱いは、この資料だけでは確定できません。
受領書に代金の受け取りや支払済みといった文言を書き込むと、書類の性質が変わる可能性があります。
物の受け取りと代金のやり取りは別の書類に分けておくと、それぞれの書類が何を示すのかがはっきりします。
扱いに迷う書式は、税務署の相談窓口や税理士に確かめておくと安心です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受領の記録
- 受領印・受領書・受領のメール
- 受領日・品名・その場で数えた数量
- 検査前であることを書き添える
- 検査結果の記録
- 検収書・検収のメール
- 検査完了日・検査した項目・合格か不合格か
- 不合格ならその内容と数量
- 代金の書類
- 物の受け取りと代金のやり取りは別の書類に分ける
- 代金の受け取りを書くと書類の性質が変わる可能性がある
数量違い・破損・未検査のまま受け取るとき、受領の記録にどう書くか
受領時に直ちに分かることを事実として書く
受領は検査をしたかどうかと関係なく成立するので、中身を確かめていない段階でも受領の記録は出せます3。
気をつけたいのは、その記録に何も書かないと、後から「受け取ったときは問題なかった」と読まれる余地が残ることです。
そこで、受け取ったその場で分かったことは、評価ではなく事実として書き添える形を提案します。
先ほどの部品の例で、伝票には10箱とあるのに実際は9箱だった、そのうち1箱の角がつぶれていた、という場合を考えます(仮の例です)。
受領印の横か受領書の備考に「9箱受領(伝票10箱)、うち1箱外装破損、内容未確認」と書けば、受け取った数、状態、検査前であることが一度に残ります。
「破損品あり」だけでは、どの箱がどの程度だったのかが後で分かりません。
数と箇所を書き、可能なら外装の写真も撮っておくと、相手に状況を説明するときの材料になります。
留保を書く理由は、取適法の返品の決まりにもあります。
公正取引委員会のよくある質問では、受入検査で不良とされたものの返品は受領後速やかに行う場合に限られ、直ちに発見できた不適合を理由とする返品は原則として認められないとされています2。
受け取る側から見ると、その場で見て分かる不具合は、受入検査の段階で不良と判断し、受領後すぐに返品の連絡をとることが前提になります。
見過ごしたまま時間が経ってから返品を求めるのは難しくなる、ということです。
直ちには分からない不適合は検査期間内に別で通知する
外装を見ただけでは分からない不具合もあります。
部品の寸法がわずかにずれている、組み込んで動かすと不具合が出る、といったものは、受領の時点では書きようがありません。
こうした内容は、受領の記録に無理に書き込まず、検査を終えた段階で検査結果の通知として出します。
取適法の運用基準では、委託内容と異なることなどを直ちに発見できない給付であっても、返品は受領後6か月までとされています3。
また、受領後にやり直しをさせることが認められるのは、給付の内容が明示した委託内容と異なる場合などに限られます3。
どちらも、発注時に示した内容とどこが違うのかを説明できることが前提です。
検査結果の通知には、発注書や仕様書のどの項目と食い違ったのかを書いておくと、相手とのやり取りがかみ合いやすくなります。

受領の記録と検査結果の通知を分けておけば、「サインしたのだから問題なしと認めたはずだ」という食い違いは起きにくくなります。
受領の記録には検査前であることが書かれ、検査結果は別の日付で別の書面に残るからです。
ただし、取適法の対象外の取引や、契約不適合をめぐる民法上の扱いについては、通知の期限などを契約書と民法の条文で確かめる必要があります。
| 観点 | 受領時に直ちに分かる不適合 | 直ちには分からない不適合 |
|---|---|---|
| 例(仮の例) | 箱数の不足・外装の破損 | 寸法のずれ・組み込み後の不具合 |
| 記録する場所 | 受領の記録の備考に事実として書く | 受領の記録とは別に検査結果の通知で伝える |
| 返品の扱い | 受入検査で不良とし受領後速やかに返品する場合に限られる | 受領後6か月まで(一般消費者向けに6か月超の保証期間があれば最長1年) |
受領日・検収日は、支払期日と返品・やり直しの期限にどう効くか
支払期日は受領日から60日以内
検査に時間がかかるなら、検収日を起点に支払えばよいと考えがちです。
しかし取適法では、支払期日は物品等を受領した日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内に定める必要があり、これは検査をするかどうかにかかわらず適用されます1。
役務提供委託の場合は、受託側が役務を提供した日が起点です1。
情報成果物についても、公正取引委員会は、検査するかどうかにかかわらず受領後60日以内の支払期日までに代金を支払う必要があるとしています2。
例外として挙げられているのは、一定の水準を満たすことを確認した時点で受領とすることを事前に合意している場合などです2。
この例外は事前の合意が前提なので、検査が長引いたあとで受領日を後ろにずらす根拠にはなりません。
部品の例でいえば、納期どおりに届いて倉庫に入れた日が受領日です。
検査に3週間かかり、検収書がその後に出ても、支払期日を数え始める日は変わりません(仮の例です)。
検収日を基準に支払予定を組んでいると、検査にかかった日数の分だけ60日の枠を食いつぶし、場合によっては超えてしまいます。
支払の段取りは、受領日を基準に組む必要があります。
返品6か月・やり直し1年の上限
受領日は、支払期日だけでなく、返品とやり直しを求められる期限の起点でもあります。
返品は、直ちに発見できない不適合であっても受領後6か月までで、一般消費者向けに6か月を超える保証期間を定めている場合は最長1年とされています3。
やり直しは、直ちに発見できない給付について受領後1年を経過すると不当なやり直しになります3。
保証期間が1年を超え、それに応じた期間を当事者間で定めている場合は例外です3。
公正取引委員会のよくある質問では、最終顧客への保証期間が1年以内であれば、受領後1年までは費用を負担せずにやり直しを求められると説明されています2。
ここで数え始めるのも、検収日ではなく受領日です。
検収に時間がかかれば、その分だけ、合格後に不具合を見つけて返品ややり直しを求められる残りの期間が短くなります。
受領日と検収日が離れるほど、この差は大きくなります。
受け取る側にとって受領日を正確に残しておくことは、支払期日を守るためだけのものではありません。
自社が不具合に対応できる期間がいつまでなのかを把握するためにも必要です。
取適法の対象外の取引で確認すること
ここまでの60日、6か月、1年は、取適法の対象となる取引での決まりです。
対象かどうかは、委託の内容や取引する事業者どうしの関係によって決まるため、公正取引委員会の資料で確かめてください。
対象外の取引では、支払期日や返品・やり直しの期限は、契約書と、その取引に関わるほかの法令で決まります。
対象外の取引で契約書を読むときに見るのは、主に三か所です。
一つ目は支払条件で、支払期日が受領日、検収日、請求書の受け取り日のどれから数えられているかです。
二つ目は検査の条項で、検査の期間と、期間内に結果を通知しなかった場合の扱いです。
三つ目は、不適合があった場合の通知の期間と、返品ややり直しの条件です。
契約に「検収日から起算」と書かれていれば、対象外の取引では検収日が支払の起点になることもあります。
その場合は、検収日をいつにしたかが支払期日を左右するので、受領と検収の日付を分けて記録しておく意味はむしろ大きくなります。
契約不適合の通知期限については、契約書の定めと民法の条文をあわせて確かめておく必要があります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受領日(物を受け取り管理下に置いた日)
- 支払期日は受領日から60日以内
- 返品は受領後6か月まで(一般消費者向けに6か月超の保証期間があれば最長1年)
- やり直しは受領後1年まで(保証期間が1年超で、それに応じた期間を定めていれば例外)
出典:公正取引委員会・中小企業庁「委託事業者の義務(取適法)」、公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(役務提供委託は役務を提供した日が起点)
受け取る担当者が当日・検査期間・保管で残すもの
当日
当日に残すのは、受領日と、受け取った時点の状態です。
運送伝票や納品書に受領印を押すときは、その場で数えた数と外装の状態、検査前であることを書き添えます。
データで納品された成果物なら、受け取った旨と日付、検査はこれからであることをメールで返します。
受け取った物を誰が、どこに置いたかも書いておくと、検査担当者へ引き継ぐときに探し回らずに済みます。
納期前に確認のために預かる場合は、受領ではなく確認のための預かりであることを、預かる前に相手と合意し、メールなどに残します。
検査期間
検査期間に残すのは、検査完了日と結果です。
合格なら合格とした日と範囲を書きます。
不合格なら品名、数量、発注書や仕様書のどの項目と異なっていたかを書き、受領の記録とは別に相手へ通知します。
受入検査で不良とした物を返品する場合は受領後速やかに行う必要があるため、検査の予定を立てるときは、返品の連絡までを一続きの作業として組んでおくことを提案します。
検査が長引きそうなときは、支払期日が受領日から動かないことを経理の担当者と共有しておきます。
検査部門は検収日を、支払部門は受領日を見ている、というように基準の日付がずれていると、検収待ちのまま支払期日が近づいてしまいます。
受領の記録を検査部門と支払部門の両方が見られる場所に置いておけば、この共有は検査の完了を待たずに済ませられます。
保管と支払期日の管理
取適法の対象取引では、受領日、検査完了日と結果などを記載した書類または電磁的記録を2年間保存する義務があります1。
会社の文書管理規程や契約で、より長い保存期間が定められていれば、そちらに合わせます。
保管の単位は、注文ごとにまとめると探しやすくなります。
発注書、受領の記録、検査結果の通知、相手とのやり取りを一つの注文の下に並べておけば、受領日から数えた支払期日、返品の上限、やり直しの上限を同じ場所で確かめられます。
支払予定表や管理台帳に受領日の欄を設け、そこから支払期日を数える形にしておくと、検収日を誤って起点にする転記の取り違えを減らせます。
ここまでの手順は、取適法の記録事項と期限から組み立てた一つの運用案です。
扱う品目や検査の体制によって、当日の点検をどこまで行えるかは変わります。
自社の検査にかかる日数と支払の締め日を並べてみると、受領日からの60日にどれだけ余裕があるかが見えてきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 当日
- 受領日・その場で数えた数・外装の状態を書く
- 検査前である旨を書き添える
- 受領日を支払部門へ共有する
- 検査期間
- 検査完了日と結果を残す
- 不合格は品名・数量・仕様書のどの項目と異なるかを相手へ通知する
- 受入検査で不良とした物は受領後速やかに返品の連絡をする
- 保管
- 注文ごとに発注書・受領の記録・検査結果の通知をまとめる
- 受領日・検査完了日と結果などを2年間保存する
- 受領日から支払期日・返品とやり直しの上限を管理する
受領と検収を分けて記録する考え方は分かっても、自社の伝票やメールのどこに受領日が残り、支払予定がどの日付から組まれているかは、書類を一枚ずつ見るだけでは把握しにくいものです。
現在の受け取りから支払までの記録の流れを一緒に洗い出し、受領日と検収日が混ざっている箇所や、支払期日の起点が揃っていない箇所を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 受領 | 検査をするかどうかを問わず、物を受け取り自社の管理下に置いた事実 |
| 検収 | 検査して合格と判断した結果。受領とは別の日付・書面で残す |
| 受領時の書き方 | その場で数えた数・外装の状態・検査前である旨を事実として書く |
| 支払期日 | 取適法の対象取引では受領日から60日以内。検収日では動かない |
| 返品の上限 | 直ちに発見できない不適合でも受領後6か月(6か月超の保証期間があれば最長1年) |
| やり直しの上限 | 受領後1年(保証期間が1年超で、それに応じた期間を定めていれば例外) |
| 記録の保存 | 受領日・検査完了日と結果などを2年間 |
| 対象外の取引 | 契約書の支払条件・検査条項・通知期間で起算日と期限を確かめる |

検査部門と支払部門で基準にする日付が違うと、検収待ちのまま支払期日が近づくといったずれは、担当者の注意だけでは防ぎにくくなります。 注文ごとに受領日・検査結果・支払期日を並べて管理する形にできるか、自社の運用に照らして確かめられます。
よくある質問
受領印を押したあとに数量不足が分かったら、何をすればよいですか。
受領印は受け取った事実の記録で、数量が注文どおりだと認めたものではありません3。
気付いた時点で、数えた数と伝票・発注書の数の差を相手に伝え、検査結果の通知として日付とともに記録します。
数量不足は見れば分かる種類の不適合なので、連絡が遅れるほど事実の確認が難しくなります。
受領のときに「数量未確認」と書き添えておくと、受領印が数量の承認と読まれることを防げます。
確認メールの「受け取りました」だけで受領日になりますか。
受領日は、物を受け取って自社の管理下に置いた日で、メールを送ったかどうかで決まるものではありません3。
物品の場合、原則は納品された時点が受領日です2。
メールはその事実を示す記録の一つなので、受け取った日付と検査前であることを書いておくと、後から受領日を確かめる材料になります。
納期前に成果物を確認のために預かるだけで、支払期日の起算は始まりますか。
情報成果物では、受領前に一時的に確認するための預かりは、そのことについて合意があれば受領にはなりません2。
ただし、検査を終えてから受領することを認める趣旨ではないとされています2。
物品で納期前に届いた場合は、納期前に検査を終えれば検査終了時点を受領日としてもよいものの、検査中に納期が来たら納期が受領日です2。
預かる前に、確認のための預かりであることを相手と合意し、記録しておくことが前提になります。
取適法の対象外の取引でも、受領日から60日以内に払う必要がありますか。
受領日から60日以内という決まりは、取適法の対象となる取引でのものです1。
対象外の取引では、支払期日は契約書の支払条件と、その取引に関わるほかの法令で決まります。
契約書で、支払期日が受領日・検収日・請求書の受け取り日のどれから数えられているかを確かめてください。
取引が取適法の対象かどうかは、公正取引委員会の資料で確認できます。
受領書に収入印紙は要りますか。
課税文書に当たるかどうかは、名称ではなく、記載された文言などの実質的な意味で判断されます4。
第17号文書は売上代金に係る金銭または有価証券の受取書で、代金の受け取りを示す書類はこれに当たりうるとされています5。
物品を受け取った事実だけを書いた受領書の扱いは、この資料だけでは確定できないため、迷う書式は税務署の相談窓口や税理士に確認してください。
- 1 出典:公正取引委員会・中小企業庁「委託事業者の義務(取適法)」(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)よくある質問コーナー」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2026年確認時点)
- 4 出典:国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」(現行制度)
- 5 出典:国税庁「No.7141 課税文書の区分(第5号~第20号文書)」(現行制度)