◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- ISDN(INSネット)のディジタル通信モードは2024年1月に全都道府県で終了し、その後の補完策データ通信も2028年12月末で提供が終わるため、この回線に乗った従来型EDIは移行が避けられない。
- 専用線やインターネット経由のEDIであれば回線側の期限はなく、通信コストや取引先ごとの個別対応の手間と見合うかで、自社のペースで判断できる。
- 流通BMSの基本形は卸売・メーカーと小売の間の取引を対象に、発注から支払までの6業務・8種の標準メッセージで構成されるので、準備はこの範囲への当てはめから始める。
- 卸・メーカーの導入企業数の推計は普及の傾向をつかむ目安にとどまり、自社の締め切りは取引先に切り替え時期と接続試験の日程を直接確認して初めて決まる。
- 取引先が示す期日と通信サービスの提供終了という二つの期限のうち、早いほうが自社の実質的な締め切りになる。
目次

従来のEDI・FAXを使う企業がBMS移行を検討することになる場面
取引先から「来期の発注から流通BMSでお願いします」と伝えられた、あるいは受発注の手間を見直そうとして調べ始めた。
どちらの入り口でも詰まるのは、うちは本当に切り替えが要るのか、という一点だと思います。
結論から言えば、要否を決めているのは取引先の都合だけではありません。
従来型EDIの多くが使ってきたINSネット(ISDN)の「ディジタル通信モード」は、2024年1月に全都道府県で終了しました6。
その後を埋めている補完策のデータ通信も、2028年12月末で提供が終わる予定です5。
この回線に受発注が乗っているなら、時期の違いはあっても切り替えは避けられません。
逆に専用線やインターネット経由のEDIであれば、期限に追われる話ではなく、手間と効果を比べて決められる立場にあります。
従来のやり方を変える話は、たいてい自社の都合では始まりません。
流通BMSの検討も同じで、入り口はおおむね二つに分かれます。
一つは取引先から対応を求められた場合、もう一つは自社の受発注が乗っている通信回線そのものに期限が来ている場合です。
どちらの契機に当たるかで、動き出す期限も、最初に確かめる相手も変わります。
取引先からの要請は、小売側の切り替え計画に紐づいて届きます。
「この時期から発注データは流通BMSで送ります」「従来の手順での受け付けはいつまでです」といった通知が、営業窓口や相手のシステム部門から入るのが典型的な形です。
この場合、自社の期限は相手のスケジュールで決まります。
社内でいくら検討しても期日そのものは動かせないので、通知に書かれた時期と、そこから逆算して自社に必要な作業量を突き合わせるところが出発点になります。
もう一つの契機は、取引先の事情とは関係なく進んでいます。
従来型EDIの多くが使ってきたINSネット(ISDN)の「ディジタル通信モード」は、2024年1月に一部の県を皮切りとして都道府県ごとに段階的に終了し、同月中に全都道府県で終了しました6。
終了に合わせて代わりとなるデータ通信サービス(補完策)が用意されましたが、新規の申し込み受付は2024年8月末で終わり、サービスの提供自体も2028年12月末で終了する予定です5。
これはNTT東日本がINSネット64・64ライト・1500の利用者に向けて案内している内容なので、西日本エリアで契約している場合は自社の契約先が出している案内を確認することになります。
この二つは、性質がかなり違います。
取引先の要請は相手ごとに来るものなので、理屈の上では対応しないまま従来の方法を続ける余地が残ります。
回線の終了はこちらの都合と無関係に期限が来るため、ISDNを使っているなら「移行するかどうか」ではなく「いつ、どこへ移すか」という問いに変わります。
同じ検討に見えて、社内で下せる判断の幅が違うわけです。
一方、受発注を紙のFAXと電話だけで回している場合は、影響の受け方が変わります。
ディジタル通信モードの終了はデータ通信に関わるもので、FAXや通話の扱いは契約している回線の種類によって案内が異なります。
この場合に検討のきっかけになるのは、取引先からの要請と、手作業の量そのものです。
届いた受注票を見ながら基幹システムへ入力し、出荷後に納品書を起こし、月末に請求書と照合する——その転記が月に何件あり、誰の時間をどれだけ使っているかが、切り替えの損得を左右します。
自社がどちらの契機にも当てはまらないように見えることもあります。
取引先からは何も言われておらず、回線が何かも社内で把握されていない、という状態です。
その場合はまだ判断の材料が揃っていないだけで、要否の結論が出ているわけではありません。
次に確かめるべきは、流通BMSに変えると具体的に何が変わるのか、そして自社の現在のやり方がその「変わる対象」に入っているのかどうかです。
BMSと従来のEDI・FAXは何がどう違うのか
まず、FAXとの違いはデータの読み手にあります。
FAXで届く発注は人が読んで人が入力する前提の紙なので、基幹システムへ載せるには誰かが打ち直すか、読み取った結果を目で確認する工程が挟まります。
EDIは相手のシステムと自社のシステムが直接データをやり取りする仕組みなので、この打ち直しの工程が設計の時点で外れます。
流通BMSはそのEDIの一種で、電子取引文書であるメッセージと、通信プロトコルやセキュリティの両方を決めた標準仕様です1。
違いが業務に出る場所も具体的です。
FAXで発注を受けている会社では、届いた紙を受注担当が仕分け、品番と数量を入力し、読み取りにくい欄は電話で確認する、という流れが日常的に発生します。
入力を終えた紙は照合のために保管され、数量違いの問い合わせが来れば、その束を探すところから始まります。
データで受け取る仕組みに変えると、この一連の作業のうち「人が読んで写す」部分が消え、残るのは受け取った内容に対する判断——在庫が足りるか、納期を変える必要があるか——のほうへ寄っていきます。
では、すでにEDIを使っている会社にとって、従来型との違いはどこにあるのか。
大きいのは通信の土台です。
流通BMSは通信回線をインターネットに変えたことで、旧来の公衆回線や専用線に比べて通信コストが低減し、旧来のJCA手順に比べてデータの送信時間が大幅に削減されるとされています3。
ここで示されているのは比較の方向であって、何円下がる、何分短くなるという数値ではありません。
自社にとっての効果は、いま払っている回線費用と、日々送受信しているデータ量に当てはめて見積もることになります。
送信時間の差は、経費よりも締め時間に効いてきます。
回線が遅いと、夜間に発注データを受け取り終えるまで倉庫への指示が出せない、データ量の多い日は受信そのものが長引く、といった形で業務の時間割が縛られます。
受信が短時間で終われば、同じ時刻に届いた発注でも後工程へ回せる時間が増えます。
裏返せば、いま受信時間がボトルネックになっていない会社では、この差は体感しにくい部分でもあります。
もう一つの違いは、やり取りする文書そのものの標準化です。
流通BMSの基本形は、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務を対象とし、8種の標準メッセージで構成されています3。
従来の個別EDIでは、同じ「発注」でも取引先ごとに項目や桁数の取り決めが違い、相手が増えるたびに変換の作り込みが必要でした。
標準仕様が共通していれば、作り込みの範囲は取引先ごとの差分に限られます。
取引先が多い会社ほど、この差は日々の保守の手間として表れます。
対象になる取引関係も押さえておくと判断しやすくなります。
流通BMSが現在対応しているのは、卸売またはメーカーと小売の間の取引です2。
メーカーと卸売の間のやり取りや、物流事業者との連絡までをこの標準で置き換えられるわけではありません。
自社の受発注のうち、どの相手との取引がこの範囲に入るのかを先に切り分けておくと、後の見積もりがぶれずに済みます。
仕様そのものにも版があります。
基本形のVer.1.0が公開されたのは2007年、消費税の軽減税率に対応したVer.2.0が公開されたのは2018年です2。
取引先と話をするときに「BMS対応済み」とだけ聞いて終わらせず、どの版を使っているかまで確認しておくと、後から項目の食い違いに気づく事態を避けやすくなります。

自社は従来方式のままでよいか、移行が必要なケースの見分け方
違いが分かると、次は自社の話になります。
判断の材料は大きく二つで、外を見る材料と、内を見る材料です。
外は取引先と業界がどこまで対応しているか、内は自社の受発注がどの回線とどのシステムに乗っているか。
この二つは独立していて、片方だけでは結論が出ません。
取引先・業界の普及状況で判断する
普及の度合いは、業界団体の公表値である程度つかめます。
流通BMSを導入した卸・メーカーは2025年6月時点で21,600社以上と推計され、直近の半年間で700社以上増えています1。
同じ調査結果を伝えた報道では、6月時点で2万1627社、半年間の増加は752社と、より細かい数字が示されています7。
この二つは別々の調査ではなく同じ推計を出所にしているので、独立した裏付けが二件あるというより、数字の粒度の違いとして見るのが正確です。
ここから読み取れるのは、導入企業が今も増え続けているという傾向です。
納入側で対応する会社が増えるほど、小売側も標準に寄せやすくなり、従来方式のままの取引先には個別の対応が残り続けることになります。
ただし、この数字はあくまで納入側である卸・メーカーの推計であって、小売側がどこまで対応しているかは含まれていません。
自社の主要取引先が対応済みかどうかは、この数字からは分からないままです。
つまり普及状況は、「急ぐ理由があるか」の目安にはなっても、「いつまでに」の答えにはなりません。
期限を決めるのは自社の取引先が示す時期であり、統計はその手前で気持ちの整理を助ける材料だと考えておくのが適当です。
自社の回線(ISDN/専用線/インターネット)で判断する
内を見る材料は、自社の受発注がどの回線で動いているかです。
ここが分かれ道になるのは、期限が付いているのがISDN(INSネット)を使う通信だけだからです。
ISDNを前提にした従来型EDIなら、移行は選ぶかどうかではなく時間の問題になります。
専用線やインターネット経由のEDI、いわゆるWeb-EDIを使っている場合は、回線側の終了に追われる話ではなくなります。
自社がどれに当たるかは、社内で確かめられます。
通信費の請求内訳にINSネットの項目が並んでいないか、EDI用の端末やサーバーが電話回線に接続されていないか、導入時に作られた構成図が残っていないか。
受発注を長く同じ仕組みで回している会社ほど、当時の担当者が代わって現状が曖昧になっていることがあるので、請求書のように毎月残る記録から遡るのが確実です。
ここは取引先に聞く必要がなく、自社だけで結論を出せる数少ない項目でもあります。
判断が分かれやすいのは、その中間にいる場合です。
取引先ごとに接続方法が違い、一部はISDNの従来型EDI、一部はウェブの画面から発注を受け取っている、という状態は珍しくありません。
この場合、回線の期限がかかるのはISDNで受けている取引先の分だけですが、社内の運用は両方を抱えたままになります。
期限の対象がどの取引先かを一覧にしておくと、後で優先順位を付けるときにそのまま使えます。
回線がISDNでない場合、移行の判断は業務側の理由に移ります。
取引先ごとに違うフォーマットへの対応がどれだけ残っているか、紙や手入力の工程がどこに残っているか、その保守に誰の時間が使われているか。
期限がない分、効果と手間を並べて自社のペースで決められる立場だと考えてよい部分です。
移行する場合、何を確認し準備すればよいか

移行すると決めたとき、最初に手を付けるのは対象範囲の洗い出しです。
流通BMSの基本形は発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務、8種の標準メッセージで構成されているので3、この6業務に自社のどの作業が対応するのかを一つずつ当てはめていきます。
当てはめてみると、電子化の度合いが業務ごとにばらついている会社が多いはずです。
発注は従来型EDIで受けているが、出荷案内は取引先ごとの様式を作ってメールで送っている。
受領の照合は納品書の控えを見ながら手作業で、請求は自社の販売管理システムから紙で出力している。
こうした状態なら、BMSに載せ替える業務と、当面は現行のまま残す業務が必ず混ざります。
8種のメッセージをすべて同時に使うとも限りません。
どの業務でデータをやり取りするかは取引先との取り決めで決まるので、相手が発注と出荷だけを対象にしているなら、自社側もまずその範囲を整えることになります。
範囲が決まると、触る必要のあるシステムと、関わる部署が見えてきます。
発注と出荷だけなら受注担当と倉庫が中心ですが、請求や支払まで含むなら経理の確認が欠かせなくなり、必要な調整の相手が変わります。
次に確かめておきたいのが、データの中身が双方で一致するかどうかです。
標準仕様に沿って発注や出荷のデータを送っても、どの商品を指し、どの納品先へ届けるのかが互いに同じコードで通じなければ、受け取った側の突合が止まります。
商品コードや取引先コード、店舗コードが自社でどう管理されていて、取引先の指定と食い違っていないか。
仕様の細部よりも先に詰まりやすいのはこの部分で、社内のマスタが取引先ごとの読み替え表に頼っている場合は特に時間がかかります。
一方で、具体的な作業工程や体制、費用がどれくらいになるかは、一律には示せません。
自社の基幹システムがどこまで対応しているか、取引先が何社あって何をいつまでに求めているかによって、必要な作業がまったく変わるためです。
この段階で自社が決められるのは、対象になる業務とメッセージの範囲、そこに関わる部署の当たりを付けるところまでです。
逆に言えば、その範囲が固まっていれば、システム側の見積もりを取るときに前提を揃えて話ができます。
従来のISDN回線を使い続けられる期間と、その先に生じる制約

移行しない場合に何が起きるのかも、判断材料として押さえておきます。
ここで扱うのは取引先との交渉ごとではなく、通信の仕組みそのものに付いている期限です。
ISDNを使う従来型EDIには、すでに過ぎた期限と、これから来る期限があります。
2024年1月:ディジタル通信モードの終了
一つ目の期限はすでに過ぎています。
INSネットのディジタル通信モードは、2024年1月に都道府県ごとへ段階的に終了し、同月中に全都道府県で終了しました6。
従来型EDIのデータ通信はこのモードの上で動いていたため、終了後もISDN回線で受発注を続けているなら、それは終了に合わせて提供が始まった補完策のデータ通信に切り替わっている状態です5。
ここが分かりにくいところで、現場から見ると何も変わっていないように映ります。
端末も操作も同じままデータが届き続けているので、「うちはまだISDNのままで問題なく動いている」という認識になりやすい。
実際には土台が入れ替わっていて、その土台に別の期限が付いている、というのが今の位置です。
社内で「まだ猶予がある」と思われている根拠が、終了済みの仕組みへの安心感だとしたら、そこは確かめ直す価値があります。
2028年12月末:補完策サービスの終了
二つ目の期限がその土台に付いています。
補完策として提供されているデータ通信は、新規の申し込み受付が2024年8月末で終了しており、サービスの提供自体も2028年12月末で終了する予定です5。
新規受付がすでに終わっているということは、これから補完策へ移って時間を稼ぐという選択肢は残っていない、ということでもあります。
使えるのは既存の契約を期限まで続ける形だけです。
提供が終わった後に起きるのは、取引が禁じられるといった話ではなく、もっと単純な事態です。
発注データを運ぶ通信手段そのものがなくなるため、その回線に乗せていた受発注は続けられません。
ここは技術的な制約なので、交渉や例外の余地はありません。
一方で、取引先が「いつまでに移行しなければ取引をどう扱う」と定めるかは別の問題です。
これは各社の方針や契約によって異なり、業界全体で共通のルールが公開されているわけではないので、主要な取引先には個別に確認しておくほかありません。
回線の期限より前に、取引先都合の期限が来ることも十分にあります。
また、期限が近づくほど移行が立て込むことは以前から指摘されてきました。
ISDNからIP網に対応したEDIへの切り替えが取引先ごとに進み始めた2016年の時点でも、移行の完了が期限の直前に集中すると、対応が間に合わない取引先が出るのではないかという懸念が挙げられています4。
これは当時の一企業の状況をもとにした指摘で、そこで想定されていた期限も実際の終了時期とは異なります。
ただ、取引先の数だけ調整と接続試験が必要になり、相手側の要員にも限りがあるという構図は変わっていません。
取引先・業界のBMS対応状況をどう確認すればよいか
では、自社の緊急度をどう測るか。
使える材料は業界全体の傾向と取引先個別の予定の二つで、それぞれ役割が違います。
全体の傾向は、流通BMS協議会が半年ごとにまとめている導入企業数の推計で追えます1。
一度きりの数字として見るより、更新のたびに増加数がどう動いているかを見るほうが使い道があります。
増加のペースが保たれているなら、まだ対応していない取引先も順次動いていると考えられ、自社にも要請が来る可能性は高まっていく、という読み方です。
ただし対象は納入側の推計なので、これだけを見て自社の期日を決めることはできません。
自社の期限を決めるのは個別の取引先です。
ここは推計ではなく、直接聞くしかありません。
窓口は普段の営業担当で構いませんが、実際に答えられるのは相手のシステム部門であることが多いので、確認したい項目を整理して渡すほうが往復が減ります。
口頭の回答だけでなく、時期や手順が書かれた案内をもらっておくと、社内で予算や人を確保するときの根拠になります。
この確認が揃うと、主要な取引先ごとに「いつまでに何ができている必要があるか」が並びます。
複数の取引先の期日が近い時期に重なっているなら、社内の作業を分散させる余地は小さくなります。
逆に、対応を求めているのが一社だけで時期にも余裕があるなら、その一社との接続を先に済ませ、残りは回線の期限までに順次という組み方もできます。
先に接続を経験した取引先での手順が、二社目以降の作業を軽くする面もあります。
自社の回線がISDNかどうかという確認と合わせると、期限は二本立てになります。
取引先から示された期日と、通信サービスの提供終了です。
早いほうが自社の実質的な締め切りで、取引先から要請が来ている状況なら、たいていはそちらが先に来ます。
従来のやり方を変えるかどうかは、本来なら効果と手間を比べて決める話です。
ただ、ISDNを使った従来型EDIに限っては、比べる前に期限のほうが決まっています。
自社の回線がどれに当たるかを確かめ、取引先の予定を聞き、対象になる業務の範囲を書き出す。
この三つが揃った時点で、移行が必要かどうかも、どこから手を付けるかも、自社の言葉で説明できるようになります。
回線の種類と取引先の予定までは社内で確かめられますが、その先の「自社の受発注のどこをデータでつなぎ、どこに手作業が残るか」は、現在の業務の流れを見ないと切り分けられません。
受注から請求までの現在の流れと、取引先から示された条件を持ち込んでいただければ、どの業務が標準の対象範囲に当たり、どこに個別の調整が残りそうかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
取引先に確認しておくと自社の期限が決まる項目
自社の期限や作業量を左右する度合いが大きいものから並べています。
- 流通BMSに対応しているか、対応予定ならその時期
- 使っている仕様の版(基本形のVer.2.0かどうか)
- 対象にする業務とメッセージの範囲(発注だけか、請求・支払まで含むか)
- 接続試験をいつ、どのような手順で行うか
- 従来の手順での受け付けをいつまで続けるか
- 商品コードや納品先の店舗コードの指定に変更があるか
すでに切り替え時期の通知が届いている取引先では、対応の有無ではなく、接続試験の日程と従来手順の受付終了時期が最初の確認事項になります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 移行が避けられないケース | 受発注がISDN(INSネット)を使う従来型EDIに乗っている場合 |
| 自社のペースで決められるケース | 専用線やインターネット経由のEDIで、取引先からの要請もない場合 |
| 最終的な期限 | 補完策データ通信の提供終了(2028年12月末) |
| 実務上の期限 | 取引先が示す切り替え時期と接続試験の日程 |
| 準備の出発点 | 発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務のうち、自社が対象になる範囲 |
| 普及状況の使い方 | 卸・メーカーの導入企業数の推計は傾向の目安、個別の取引先は直接確認 |
移行の要否が決まっても、社内のシステムをどう合わせるかは会社ごとに違い、一般的な説明では埋まらない部分が残ります。 対象にする業務とメッセージの範囲を現在の基幹システムの構成と突き合わせれば、どこに手を入れる必要があり、どこを現行のまま残せるかの見当を付けられます。
よくある質問
ISDN回線を使っていない従来型EDI(専用線・インターネット経由)でも、BMSへの切り替えにメリットはありますか
回線側の期限に追われない分、判断は業務上の理由に移ります。
通信回線をインターネットに変えることで公衆回線や専用線に比べて通信コストが下がり、JCA手順に比べてデータの送信時間が短くなる点は、この場合も共通です3。
加えて、取引先ごとに違うフォーマットへの個別対応を、発注から支払までの6業務・8種の標準メッセージへ寄せられます3。
ただし削減幅の数値は示されていないので、効果は自社の回線費用と現在のデータ量、個別対応にかかっている保守の手間に当てはめて見積もる必要があります。
相手が対応していなければ標準の利点は出ないため、取引先の予定と合わせて判断するのが現実的です。
百貨店との取引がある場合、基本形と異なる対応が必要ですか
ここまで説明してきたのは基本形で、卸売またはメーカーと小売の間の取引を対象に2、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務、8種の標準メッセージで構成されています3。
百貨店をはじめとする業態別の仕様は、対象となる業務やメッセージの構成が基本形と同じとは限りません。
そのため、基本形の範囲だけで準備を進めると、後から不足に気づく可能性があります。
該当する取引がある場合は、取引先に使用する仕様と版を確認し、その業態向けに公開されている仕様書を基本形と並べて範囲を確かめてください。
取引先の一部だけがBMS対応済みの場合、しばらく従来方式と混在させてよいですか
混在の可否について、業界共通の運用ルールが公開されているわけではありません。
実際には、どちらの方法で受け付けるかは取引先ごとの取り決めになり、相手が従来手順の受付をいつまで続けるかで決まります。
自社側で押さえておきたいのは、同じ受注を二つの経路で受けることになるため、どちらで受けた注文かを社内で判別できる状態にしておくことです。
出荷や請求の照合でこの区別が付かないと、二重計上や欠落の確認に時間がかかります。
なお、従来方式の側がISDN回線を使っているなら、混在を続けられる期間の上限は補完策データ通信の提供終了時期、つまり2028年12月末になります5。
ISDNの補完策(2028年末終了)を使っている場合、いつまでに次の移行先を決めればよいですか
最終的な期限は、補完策データ通信の提供が終わる2028年12月末です5。
ただし実務上の締め切りはもっと手前に来ます。
取引先ごとに接続試験と切り替えの日程が必要で、取引先が示す期日のほうが先に来ることが多いためです。
また、補完策の新規申し込み受付はすでに2024年8月末で終了しているので5、これから補完策に入って時間を延ばすという選択肢はありません。
移行の完了が期限の直前に集中すると対応が間に合わない先が出るという懸念は2016年の時点でも指摘されており4、取引先の数が多いほど、自社の都合だけで日程を後ろへ動かしにくくなります。
- 1 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan・流通システム標準普及推進協議会)「第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計」(2025年)
- 2 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)の概要」(2025年)
- 3 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)流通BMS協議会「流通BMS標準仕様(標準メッセージ・対象業務)」(2025年)
- 4 出典:日経クロステック(xTECH)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 5 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(2024年)
- 6 出典:NTT東日本・NTT西日本(共同発表、INTERNET Watch報道)「「INSネット ディジタル通信モード」提供終了日に関する共同発表」(2022年)
- 7 出典:日本食糧新聞・電子版「流通BMS、製配導入が拡大(流通BMS協議会第28回調査結果報道)」(2025年)