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流通BMSへの移行は並行運用が要るのか:発注側が取引先ごとに決める切替と従来手順の止め方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 流通BMSの公開資料に並行運用を前提とする定めはなく、切替は取引先1社ずつの調整になるため、並行の要否も取引先ごとに決める
  • 並行するなら振り分け単位を一つに決め、変更・取消は元の注文と同じ経路で出し、両方の経路の件数を突き合わせる
  • テストは協定シートとマッピングシートで前提をそろえてから、接続確認、メッセージの送受信、業務の流れの確認へ進める
  • 従来手順は、新しい経路が受領まで滞りなく回り、元に戻す手段が不要と取引先と合意できてから止める
  • INSネットの提供終了予定(2028年12月31日)は、従来手順がその回線で動いている場合に限った期限で、JCA手順そのものの停止日ではない

Two businessmen discussing documents during a meeting in a modern office.
▽ 写真の出典元

取引先から流通BMSを求められたとき、発注の何が変わり何が変わらないのか

取引先から「流通BMSで発注してほしい」と頼まれても、毎日の発注は止められません。
従来の手順を残して並行するのか、ある日を境に切り替えるのかで迷うのは自然なことです。
公開されている標準仕様や導入様式に、並行運用を前提とする定めはありません。
切替はもともと取引先1社ずつの日程調整になるため、全社で一つの方式を選ぶより、取引先ごとに並行の要否と期間を決めるほうが実情に合います。
並行するなら注文の振り分けと件数の照合を先に決め、従来手順は新しい経路が滞りなく回ったことを取引先と確かめてから止めます。

流通BMSが扱う6業務と8種のメッセージ

流通BMSは、小売と卸・メーカーなどの企業間でやりとりする取引データの形と、通信の方法をそろえた業界の標準です。
流通BMS協議会は、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務について8種の標準メッセージを定め、2007年4月に「基本形Ver.1.0」として公開しました1。
その後、2018年にVer2.0が公開され、基本形はこの枠組みを土台に改訂されてきました1。

発注側の担当者にとって押さえておきたいのは、標準の範囲が「注文を送る」ところで終わっていないことです。
注文を出した後、取引先が出荷し、自社が受け取り、返品があれば戻し、請求を受けて支払うまでの流れに、それぞれ対応するメッセージがあります。
取引先から流通BMSでの対応を求められたとき、相手が想定しているのが発注データだけなのか、受領や請求まで含むのかで、自社が準備する範囲は大きく変わります。
最初の打ち合わせで、どの業務のデータから始めるかを確かめておくと、後の日程や体制の話がかみ合いやすくなります。

もう一つの前提は、どの業界向けの仕様かという点です。
基本形はスーパーやグロサリーの取引形態を想定したもので、百貨店向けには別のメッセージ群が公開されています1。
メッセージの細かな中身は業界ごとに異なるため、同じ「流通BMS」という言葉でも、取引先が想定している仕様と自社の想定が一致しているとは限りません。

通信がインターネットになることの意味

従来手順の代表として名前が挙がるJCA手順は、小売本部と問屋などの取引先の間で伝票データを交換するために使われてきた通信手順です5。
流通BMSでは通信回線がインターネットに変わり、JCA手順に比べて送信時間が大幅に削減されたと報告されています1。
電話回線を前提にした通信から、インターネットを前提にした通信へ移るという点が、いちばん目に見える違いです。

ただ、発注の現場で効いてくるのは送信の速さよりも、取引先ごとの違いが減ることです。
標準のメッセージで送るため、流通BMSでは取引先ごとのシステム開発が不要になるとされています5。
同じ資料は、その一方で移行には大掛かりなシステムの入れ替えが必要だとも述べています5。
取引先ごとに少しずつ発生していた個別対応の手間が、標準に合わせる作業として自社の発注システム側にまとめて発生する、と考えると負担の所在がつかみやすくなります。

従来の手順がFAXや電話、メールの場合は、変わるものの性質が少し違います。
これまでは担当者が注文書を作り、取引先がそれを読み取って自社のシステムへ入力していたはずです。
流通BMSに移ると注文がデータとして直接届くため、変わるのは回線よりも、注文を誰がどの形で作り、取引先がどう受け取るかという手順そのものになります。
自社独自のEDIを使っている場合は、すでにデータで送っているぶん、自社の項目を標準の項目へどう対応させるかが中心の作業になります。

発注側が見直す対象

変わらないものから整理すると、何をいつどれだけ発注するかという判断と、取引先との間の取引条件そのものは、流通BMSに移っても変わりません。
標準が定めているのは取引のデータをどの形でやりとりするかであり、発注の判断や条件を決めるものではないからです。
発注担当者が毎日行っている作業の中身は残り、その結果を外へ出す形と経路が変わる、と捉えると範囲を見誤りにくくなります。

変わるのは、発注データの作り方と送り方、そして注文の後に受け取ったり送ったりするデータの扱いです。
受領については、流通BMS協議会が、受領データを税法上の証憑とすることで伝票を使わない取引が可能になっていると報告しています1。
ただし自社の取引でそのまま当てはめられるかは、税務上の取扱いを別に確かめる必要があります。
紙の伝票で受領を記録してきた会社では、発注の切替が受領の記録方法の見直しにもつながるため、経理など関係する部署と早めに共有しておくと後で慌てずに済みます。

見落としやすいのが、注文の変更と取消です。
新しい注文を送る流れはテストで確かめやすい一方、出した後の数量変更や取消をどの形で伝えるかは、取引先との取り決めに委ねられる部分が残ります。
従来の手順と新しい経路が同時に動く期間には、この変更と取消の扱いがもっとも混乱しやすいところになります。
並行運用を考えるうえでは、新規の注文だけでなく、注文を出してから締めるまでの流れ全体を想定しておく必要があります。

流通BMS基本形が対象とする6業務の流れ
発注から出荷、受領、返品、請求、支払へと続く6業務を左から右へ並べた図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 発注
  2. 出荷
  3. 受領
  4. 返品
  5. 請求
  6. 支払

出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様 基本形(概要)」。基本形Ver.1.0(2007年4月公開)、スーパー・グロサリー業界の取引形態を想定

一括切替と並行運用は、取引先ごとにどう決めるか

切替は取引先1社ずつの調整になる

では、従来手順を残して並行するべきか、一度に切り替えるべきか。
流通BMS協議会が公開している標準仕様や導入様式のページには、並行運用を前提とする定めは示されていません12。
並行するかどうかは標準が決めていることではなく、発注側と取引先が決めることです。

公開されている資料から読み取れるのは、切替が取引先単位で進むという実情です。
2016年の報道では、受注側である卸・メーカー側の担当者が、EDIの切替は小売1社ずつとスケジュールを合わせて進める必要があり、事前調整から利用開始まで月単位の時間がかかると述べています4。
注文を受ける側の発言で時点も古いため、発注側の所要期間の目安として使うことはできません。
それでも、切替が全社一斉の一日ではなく、取引先ごとの日程の積み重ねになるという構図は、発注側から見ても変わりません。

取引先の側から見ると、自社は複数ある発注元のうちの1社です。
受注側の事例として、ヤクルト本社は少数の取引先との流通BMSから始め、既存のEDI全体を流通BMSに対応させたうえで取引先の移行を進めたと紹介されています6。
取引先がどの段階にいるかは、その取引先がほかの発注元とどう移行を進めているかにも左右されます。
発注側が自社の都合だけで全社の切替日を決めても、取引先それぞれの日程と合うとは限らないのはこのためです。

小売が多数の取引先を短期間で切り替えた例

発注側の事例としては、小売の東急ストアが2012年に、VAN会社1社を経由していた取引先をまとめて短期間で流通BMSへ切り替えた例が、サービス提供元の導入事例として紹介されています7。
VANとは、企業間のデータ交換を中継する通信サービスのことです。
このとき同社は全取引先向けの説明会を開き、生鮮のように取引に特性のある取引先には個別に対応したとされています7。

この例から読み取れるのは、一見すると一括の切替でも、中身は二つに分かれていたということです。
多くの取引先に共通する説明は説明会でまとめて行い、事情が違う取引先は別に扱っていました。
全社一括か取引先別かの二択ではなく、まとめて進められる取引先と個別の扱いが必要な取引先を分けることが、多数の取引先を抱える発注側の進め方として成り立っていたと考えられます。

一方で、この事例のページには、並行運用をしたかどうか、どのようにテストしたか、従来の手順をいつ止めたかは書かれていません7。
また提供元による紹介であり、取引先の数や構成が違う会社に同じ期間を当てはめることはできません。
参考になるのは期間の短さよりも、取引先を共通の扱いと個別の扱いに分けて進めたという考え方のほうです。

並行の要否を決める比較軸

ここからは編集部としての提案です。
切替が取引先単位で進む以上、一括か並行かも取引先ごとに選ぶのが自然です。
選ぶときは、現行方式の維持、切戻しの容易さ、取引先の準備状況、確認作業量の4つの軸で、同じ条件のもとに比べると判断が整理しやすくなります。
費用や工数の具体的な大きさは取引先や自社の仕組みによって大きく変わるため、ここでは負担の種類だけを並べます。

判断が分かれやすいのは、取引先の準備状況と切戻しの軸です。
取引先がすでにほかの発注元と流通BMSでやりとりしていて、接続の確認も順調に進んだなら、従来の手順を残しておく理由は小さくなります。
反対に、取引先にとって流通BMSが初めてだったり、生鮮のように発注の内容が日々大きく動く取引だったりする場合は、新しい経路で問題が出たときに戻れる手段を残しておく意味が大きくなります。

並行は安全側の選択に見えますが、手間が消えるわけではありません。
両方の経路が動いている間は、どの注文をどちらで出したかを誰かが把握し続け、双方の記録を照らし合わせる作業が続きます。
並行を選ぶなら、次に述べる注文の扱いと、従来手順を止める基準を最初から決めておくことが前提になります。
止める基準のない並行は、二つの手順を抱えたままの状態を長引かせるだけになりがちです。

比べる点 新経路へ一度に切り替える 従来手順を残して並行する
現行方式の維持 切替後は従来の手順や回線を持たずに済む 並行期間中は従来の手順・回線・担当作業が残る
切戻しの容易さ 問題が出たときの戻り先を別に考えておく必要がある 従来手順が動いているため一時的に戻しやすい
取引先の準備状況 切替日までに取引先の接続と確認が終わっていることが前提 取引先の準備が途中でも発注を止めずに進められる
確認作業量 切替日前の確認に作業が集まる 期間中は両方の経路の注文を照らし合わせる作業が続く
取引先ごとに一括か並行かを決める流れ(編集部の提案)
取引先ごとに仕様と準備状況、切戻しの必要を確かめ、一括で切り替えるか並行するかを選ぶ流れを上から下へ示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取引先が想定する仕様と、始める業務を確かめる
  2. 取引先の準備状況を確かめる
  3. 新経路で問題が出たときに戻る手段が要るかを話し合う
  4. 一括で切り替えるか、期間と止める基準を決めて並行するかを選ぶ

並行運用中の二重発注・漏れを防ぐ注文の扱いを決める

経路の振り分け単位を決める

並行期間に起きる問題は、大きく二つです。
たとえば、ある取引先との並行期間中に、担当者が新しい経路で送った注文を念のためFAXでも送ったとします。
取引先が同じ注文を2回受け取ったことに気づかなければ、2回分が出荷されるおそれがあります。
反対に、新しい経路で送ったつもりの注文が実は送信されておらず、FAXも送っていなかった場合、その注文はどちらにも載りません。

どちらも、注文ごとに担当者がその場でどちらの経路を使うかを判断していることから生まれます。
そこで提案したいのが、取引先ごとに「この注文はこの経路」と決める振り分けの単位を一つだけ決めておくことです。
単位の候補としては、商品群、発注日、店舗が考えられます。
加工食品は新しい経路で日配は従来の手順、ある日以降の発注はすべて新しい経路、特定の店舗の発注から新しい経路、といった決め方です。

単位を一つに絞るのは、組み合わせると判断が複雑になるからです。
商品群と店舗の両方で分けると、ある店舗のある商品がどちらに当たるかを担当者が毎回確かめることになり、振り分けを決めた意味が薄れます。
発注日で区切る方法は境目がはっきりしている反面、その日から取引先との注文がすべて新しい経路に移ります。
商品群や店舗で区切る方法は一部から試せる反面、期間中に両方の経路が同時に使われるため、後で述べる照合が欠かせません。

変更・取消の出し先を揃える

振り分けを決めても、注文の変更や取消で経路が混ざると同じ問題が起きます。
新しい経路で送った注文の数量変更をFAXで伝えると、取引先では元の注文はデータで、変更は紙で、別々の窓口に届きます。
受け取った側はどちらを正とすればよいか判断できず、問い合わせの往復が生まれるか、変更が反映されないまま出荷されるおそれがあります。

そこで、変更・取消は元の注文と同じ経路で出す、というルールを振り分けとあわせて決めておくことを提案します。
迷いやすいのは、振り分けの境目をまたぐ注文です。
たとえば発注日で区切った場合、境目より前に従来の手順で出した注文に、境目の後で変更が出ることがあります。
この場合も元の経路に合わせて従来の手順で出すと決めておけば、担当者がその場で迷う必要はなくなります。

このルールには、従来手順の窓口を、そこで出した最後の注文の変更や取消が出なくなるまで閉じられないという帰結があります。
従来手順を止める時期を考えるときに、この点が効いてきます。
協定シートは、導入する企業同士が導入の前提となる事項を記入する様式として公開されています2。
振り分けや変更・取消のルールも、その前提をそろえる打ち合わせで取引先と決めて文書に残しておくと、担当者が替わっても判断が引き継がれます。

件数の突合

ルールを決めても、人が運用する以上、送り忘れや二重送信を完全になくすことはできません。
そこで、取引先ごとに、発注側が送った注文の件数と、取引先が受け取った注文の件数を、決めた間隔で突き合わせることを提案します。
並行期間中は、新しい経路と従来の手順の両方について数えます。
どちらか片方だけを数えると、経路をまたいだ二重発注や漏れが見えなくなるからです。

突合で減るのは、担当者が一件ずつ「この注文はどちらで出したか」を思い出して確かめる作業です。
件数が合っていればその間隔の注文はおおむね通っていると判断でき、合わなければその範囲に絞って原因を探せます。
一方で、差が出たときに原因を追う作業は残ります。
件数が合っていても注文の中身の誤りまでは件数だけでは分からない点も、取引先と共有しておく必要があります。

突合の間隔は、その取引先への発注の頻度に合わせて取引先と決めます。
毎日発注する取引先と週に一度の取引先とでは、差が出たときに気づくまでの時間が違うためです。
突合の結果は、後で従来手順を止めてよいかを判断するときの記録にもなります。
差が出なかった期間や、差が出たときにどう解消したかが残っていれば、止める判断を取引先と同じ材料で話し合えます。

振り分け単位を一つ決めて注文の経路を分ける例(仮の例)
取引先ごとに決めた振り分け単位に沿って、注文を流通BMSの経路と従来の手順に分け、両方の件数を照合する流れの図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取引先ごとの振り分け単位(例: 商品群)
  2. 対象の商品群の注文は流通BMSの経路で送る
  3. それ以外の注文は従来の手順で送る
  4. 両方の経路の件数を取引先と照合する

テストから本番切替までを、取引先とどの順で進めるか

協定シートとマッピングシートで前提を揃える

テストに入る前に、取引先と前提をそろえておきます。
流通BMS協議会は、概要編・業界編・システム編からなる導入ガイドラインとあわせて、協定シートとマッピングシートを公開しています2。
協定シートは導入する企業の間で導入の前提となる事項を記入する様式、マッピングシートは既存のEDIのデータ項目と流通BMS基本形の項目の対応を記入する様式で、マッピングシートは2025年に再修正版が公開されています2。

前提を先に文書にしておく理由は、テストで不具合が出たときの切り分けにあります。
データが取引先のシステムに取り込めなかったとき、原因が通信なのか、項目の対応なのか、そもそもの取り決めの食い違いなのかを判断するには、合意した内容が手元に残っていなければなりません。
口頭で決めた前提は、担当者の記憶の違いがそのまま不具合の原因になりがちです。

従来の手順がFAXやメールの場合、既存のEDIの項目というものはありません。
マッピングシートは既存のEDIからの移行を想定した様式ですが、自社の発注システムや発注表で管理している項目を流通BMSのどの項目に当てはめるかを整理するという考え方は、同じように使えます。
この対応づけが曖昧なまま進むと、テストの段階で項目の意味の確認に時間を取られることになります。

接続確認から業務確認へ

前提がそろったら、通信の接続確認、メッセージの送受信、業務システム間の確認を経て本番へ進む流れを提案します。
この順序は、確かめる対象を一段ずつ広げるという考え方に基づく編集部の整理です。
実際の段取りは、取引先や利用する通信サービスとの協議で決まります。

順に進める意味は、問題が起きた場所を一つに絞れることです。
接続ができても、データの項目が取引先の想定とずれていれば、取引先のシステムには取り込めません。
取り込めても、商品や数量の対応が違えば、届いた注文と出荷される内容が食い違います。
通信だけ、データだけ、業務の流れ全体、と段階を分けて確かめておけば、本番で問題が出たときにどの段階を疑えばよいかが分かります。

業務システム間の確認では、新しい注文を送るだけでなく、変更・取消、受領まで一通り流しておくことを勧めます。
流通BMSは発注から支払までの業務を対象にしているため1、新規の注文が通っただけでは、その後の受領や変更のデータが問題なく扱えるかまでは分からないからです。
並行運用を予定している取引先では、振り分けのルールどおりに注文が分かれるか、突合の件数が合うかもこの段階で試しておくと、本番での戸惑いが減ります。

複数の取引先の日程の重ね方

取引先が多い場合、1社ずつ前提の確認から本番までを終えてから次の取引先に移ると、全体の期間が長くなります。
受注側の発言とはいえ、1社あたりの調整に月単位の時間がかかるとすれば4、取引先を一列に並べる進め方は現実的ではありません。
複数の取引先の段取りを、時期をずらしながら重ねて進めることになります。

ただし、すべての取引先を同じ時期に重ねると、確認作業が発注側の担当者に集中します。
前提の打ち合わせ、テストの立ち会い、突合の確認が同じ週に重なれば、どれかが後回しになり、そこで見落としが生まれます。
東急ストアの例のように、共通の説明はまとめて行い、事情の違う取引先は別に扱うという分け方は7、この負担を平らにする方法の一つです。

どの取引先から始めるかについては、すでにほかの発注元と流通BMSでやりとりしている取引先など、準備が進んでいるところから始める方法を提案します。
最初の数社で、打ち合わせの議題、テストの確認項目、振り分けと突合の決め方を一通り固めておけば、その後の取引先とはその型を土台に話を進められます。
準備に時間がかかりそうな取引先ほど、型ができてから個別の事情に時間を割けるようになります。

テストから本番までの進め方(編集部の提案)
前提の文書化、接続確認、メッセージの送受信、業務の流れの確認の4段階を順に示した図前提の文書化、接続確認、メッセージの送受信、業務の流れの確認の4段階を順に示した図前提をそろえる協定シートとマッピングシートで取引先と前提と項目の対応を合意する接続を確かめる通信がつながるかだけを確かめるメッセージを送受信するデータが取引先のシステムに取り込めるかを確かめる業務の流れを確かめる変更・取消・受領まで流し、振り分けと件数の照合も試す

▼ 図の内容を文字で読む
  • 前提をそろえる
    • 協定シートとマッピングシートで取引先と前提と項目の対応を合意する
  • 接続を確かめる
    • 通信がつながるかだけを確かめる
  • メッセージを送受信する
    • データが取引先のシステムに取り込めるかを確かめる
  • 業務の流れを確かめる
    • 変更・取消・受領まで流し、振り分けと件数の照合も試す

従来手順を止める判断と、取引先の準備が揃わない場合

INSネット終了予定と回線の関係

従来手順を止める時期に、外部の期限が関わる場合があります。
NTT東日本は、ISDNサービス「INSネット」の関連サービスと、切替後のINSネット上のデータ通信を補う補完策について、2028年に提供を終了する予定としています3。
ディジタル通信モードは2024年に入って段階的に終了しており、新規の申込は2024年に受付を終えています3。

この期限が発注業務に関わるのは、従来の手順がINSネットの回線で動いている場合に限られます。
JCA手順の通信をこの回線で行っているなら、2028年12月31日は手順を移す外部の期限として扱う必要があります。
一方で、これは回線サービスの終了予定であり、JCA手順そのものの使用停止日ではありません。
メールのように電話回線を使わない従来手順には、この期限は当てはまりません。
また、ここで示した日程はNTT東日本の案内に基づくもので、自社や取引先が使っている回線の契約先と内容は、それぞれの契約で確かめることになります。

2016年の報道では、取引先の移行が終了間際に集中すると間に合わない取引先が出る、という懸念が述べられていました4。
当時の終了予定に基づく発言ですが、切替が取引先1社ずつの調整で進む以上、期限の直前に取引先が集中すれば調整が追いつかないという構図は今も変わりません。
回線に依存する取引先がいる場合は、その取引先を早い時期の段取りに入れておくと、期限の近くで日程が詰まるのを避けやすくなります。

止める基準

従来手順を止める時期は、日数で一律に決めるより、取引先ごとに二つのことを確かめて決める方法を提案します。
一つは、一定期間、新しい経路で送った注文が受領まで滞りなく通り、件数の突合で差が出ていないことです。
もう一つは、新しい経路で問題が出たときに元に戻す手段がもう必要ないと、取引先と合意できていることです。

一つ目で受領まで含めるのは、注文が届くことと、その注文が最後まで処理されることが別だからです。
新規の注文だけでなく、変更や取消が出た期間、受領のデータがやりとりされた期間を含めて確かめておくと、止めた後に想定外の扱いが出てくる余地が小さくなります。
変更・取消を元の経路で出すルールを決めている場合は、従来の手順で出した最後の注文について、変更や取消がもう出ないことも条件になります。

止めると決めたら、取引先に止める時期を伝えるとともに、その後に誤って従来の経路で届いたものをどう扱うかも決めておきます。
社内では、発注担当者が従来の手順を使えない状態にしておくことが、二重発注を防ぐうえで効いてきます。
たとえば従来の発注書の様式や送信先の登録を、その取引先については使わない扱いに改めておけば、慣れた手順で思わず送ってしまうことを避けやすくなります。

準備が揃わない取引先の扱い

取引先の中には、自社が予定した時期までに流通BMSの準備が整わないところも出てきます。
その取引先を無理に切り替えるより、従来の手順のまま残す例外として扱うほうが、発注を止めずに済みます。
例外にするときは、取引先の名前、残す従来手順の種類、準備が整わない理由、次に状況を確かめる時期を一覧にして、例外が見える状態にしておくことを提案します。

例外の取引先については、その従来手順がINSネットの回線に依存しているかを確かめます。
依存しているなら、2028年12月31日の提供終了予定が取引先にとっても期限になるため3、その日程を共有したうえで準備の見通しを話し合う必要があります。
メールで発注している取引先であれば、この回線の期限は当てはまりません。
FAXの場合は、使っている回線がINSネットかどうかによって扱いが変わります。
いずれにしても例外が残る間、自社は二つの手順を持ち続けることになり、振り分けと突合のルールもその取引先との間では続きます。

取引先の準備が遅れる理由が、その取引先がほかの発注元との移行を先に進めていることにある場合もあります。
事情を聞いてみると、取引先側の予定に合わせて自社の切替時期をずらすだけで解決することもあります。
例外を減らすことそのものより、例外がどの取引先でいつまで続く見込みかを把握しておくことのほうが、並行の手間を管理するうえでは大切です。

INSネット関連サービスの終了予定(NTT東日本)
2024年1月のディジタル通信モードの段階的な終了開始、2024年8月の新規申込終了、2028年12月31日の提供終了予定を時間順に並べた図2024年1月のディジタル通信モードの段階的な終了開始、2024年8月の新規申込終了、2028年12月31日の提供終了予定を時間順に並べた図2024年1月 ディジタル通信モードの段階的な終了が始まる2024年8月 新規申込の受付が終わる2028年12月31日 INSネット関連サービスと補完策の提供終了予定

▼ 図の内容を文字で読む
  • 2024年1月 ディジタル通信モードの段階的な終了が始まる
  • 2024年8月 新規申込の受付が終わる
  • 2028年12月31日 INSネット関連サービスと補完策の提供終了予定

出典:NTT東日本「INSネット終了に関するコラム」(2026年2月時点のページ。NTT東日本が提供するサービスの案内で、JCA手順の停止日ではない)

従来手順を止めるか、例外として残すかの判断(編集部の提案)
新経路の状況と取引先との合意、回線への依存の有無から、従来手順を止めるか例外として残すかを判断する流れの図1新経路で受領まで滞りなく通り、件数に差がないか2戻す手段が不要と取引先と合意できたか3合意できれば従来手順を止め、誤って届いた注文の扱いを決める4準備が整わない取引先は例外として一覧にし、INSネットへの依存の有無を確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 新経路で受領まで滞りなく通り、件数に差がないか
  2. 戻す手段が不要と取引先と合意できたか
  3. 合意できれば従来手順を止め、誤って届いた注文の扱いを決める
  4. 準備が整わない取引先は例外として一覧にし、INSネットへの依存の有無を確かめる

取引先ごとに現行の手順や回線、準備の進み具合が違い、自社だけでは一括で切り替える取引先と並行する取引先の線引きを決めにくいためです。

取引先の一覧と現行の発注手順を持ち寄っていただければ、並行を置く取引先と置かない取引先の分け方や、INSネットに依存する取引先の有無を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
一括か並行か 取引先ごとに、準備状況と切戻しの必要性で決める
並行中の注文 振り分け単位を一つにし、変更・取消は元の経路で出す
照合 送った件数と取引先が受け取った件数を、両方の経路について決めた間隔で突き合わせる
テストの順序 前提の文書化、接続確認、送受信、業務の流れの確認へと段階を分ける
従来手順の停止 新経路が受領まで滞りなく回り、戻す手段が不要と取引先と合意してから
2028年 従来手順がINSネットの回線で動く場合に限った外部の期限

振り分けの単位や変更・取消の扱い、止める基準は取引先との合意事項で、社内で原案を固めてから話すほうが調整を進めやすいためです。 振り分け単位、変更・取消の出し先、件数の突合の方法の原案を一緒に点検し、取引先へ示す前に抜けや矛盾がないかを確かめられます。

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よくある質問

従来手順がメールやFAXの場合も、INSネットの終了予定(2028年12月31日)までに移行が必要ですか。

2028年12月31日は、NTT東日本がINSネットの関連サービスと補完策の提供を終える予定日で、従来手順がこの回線で動いている場合の期限です3。
メールのように電話回線を使わない手順には当てはまりません。
FAXは、使っている回線がINSネットかどうかで扱いが変わるため、回線の契約内容を確かめる必要があります。
期限が当てはまらない場合でも、二つの手順を持ち続ける負担は残ります。

並行運用の期間はどのくらいが目安ですか。

並行の期間について、公開された標準の目安はありません。
日数で決めるより、新しい経路で受領まで滞りなく通り件数に差が出ていないこと、元に戻す手段が不要と取引先と合意できたことを確かめた時点を区切りにする方法が考えられます。
受注側の担当者が事前調整から利用開始まで月単位と述べた例はありますが4、これは並行期間ではなく切替の準備にかかる時間の話です。

取引先が流通BMSの準備をしていない場合、発注側はどう扱えばよいですか。

無理に切り替えず、従来手順のまま残す例外として扱う方法があります。
例外の取引先、残す手順、理由、次に確かめる時期を一覧にしておくと、並行の手間がどこに残っているかが見えます。
その取引先の従来手順がINSネットに依存している場合は、提供終了予定を共有して準備の見通しを話し合います3。

協定シートとマッピングシートは、発注側と受注側のどちらが記入するのですか。

協定シートは、導入する企業同士が導入の前提となる事項を記入する様式として公開されています2。
マッピングシートは既存のEDIの項目と流通BMS基本形の項目の対応を記入する様式で2、公開ページの説明からは、どちらが記入するかまでは読み取れません。
自社の項目を把握している側が自社分を整理して取引先と照らし合わせる形になるため、分担を最初の打ち合わせで決めておくと進めやすくなります。

並行運用中に注文の変更や取消が出たときは、どちらの経路で出しますか。

元の注文を出した経路と同じ経路で出すルールを、並行を始める前に取引先と決めておく方法をお勧めします。
経路が混ざると、取引先では元の注文と変更が別々の窓口に届き、どちらを正とするか判断できなくなるためです。
振り分けの境目をまたぐ注文も元の経路に合わせると決めておけば、担当者がその場で迷わずに済みます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様 基本形(概要)」(2007年)
  2. 2 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「導入ガイドライン・協定シート・マッピングシート」(2025年)
  3. 3 出典:NTT東日本「INSネット終了に関するコラム」(2026年)
  4. 4 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
  5. 5 出典:TISI株式会社(TISインテックグループ)「JCA手順とは?流通BMSへの移行が迫られる流通業界の実情」(公開年不明)
  6. 6 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS導入事例 株式会社ヤクルト本社」(2018年)
  7. 7 出典:SCSK「導入事例:株式会社東急ストア 第1回」(2012年)

画像の出典元

  1. Two businessmen discussing documents during a meeting in a modern office./Photo by Pavel Danilyuk on Pexels

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◆この記事について

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※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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