◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 流通BMSはJCA手順と回線・データ形式・送受信方式が違い、切替は取引先1社ずつ日程を合わせて進める作業になる
- 従来手順を止める期限は、取引先の指定日、自社の回線の終了時期、社内の準備期間のうち最も早いものから置く
- 並行運用・段階移行・一括切替は、二重作業の量、戻しやすさ、取引先の対応状況への依存度、直前の集中リスクの4軸で比べる
- 新旧を同時に流すなら、どちらを正式データにするかを取引先と先に決め、二重取り込みを防ぐ
- 旧方式を止める基準は、複数の締め期間で対象業務の突合差異がすべて説明できる状態に置く
目次

取引先から流通BMSへの移行を求められたら、まず何が変わるのかを押さえる
取引先から「流通BMSに切り替えてほしい」と連絡が来ても、今のJCA手順をいつまで残すか、新旧を並べて動かすべきかはすぐには決まりません。
まず押さえたいのは、流通BMSは回線・データ形式・送受信方式がJCA手順と違い、切替は取引先1社ずつ日程を合わせて進める作業だという点です。
並行運用の要否を定めた公式の指針は確認できませんでした。
そのため、従来手順を止める時期は回線契約と取引先の指定から決めます。
進め方は二重作業の量や戻しやすさなど4つの軸で比べ、旧方式を止める判断は突合の結果で下すのが現実的です。
回線・データ形式・送受信方式の違い
JCA手順は、電話回線を使い、英数字とカナだけのテキストを送る通信手順です。
送信と受信を交互に行う「半二重」で動きます5。
流通BMSはインターネット回線を使い、データをXML(項目名つきでデータを記述する形式)で表し、送信と受信を同時に行えます5。
この説明はEDIベンダーのコラムによるものです。
実装の根拠には、GS1 Japanが公開する標準仕様書を使います。
GS1 Japanは、流通BMSを「メッセージ」と「通信プロトコル・セキュリティ」に関するEDI標準仕様と位置づけています3。
つまり、変わるのは回線だけではありません。
やり取りするデータの中身の決まりと、送り方の決まりの両方が新しくなります。
実務で影響が大きいのは、社内システムとの接続です。
たとえば卸の受注担当が、小売からJCA手順で届く発注データを固定の並びのテキストとして受け取り、受注システムへ取り込んでいるとします。
流通BMSに替わると、届くデータの形式も項目の定義も変わります。
そのため、取り込みのための変換の仕組みを作り直すか、変換を担うサービスを間に置く必要が出ます。
通信ソフトを入れ替えれば済む話ではないため、切替の日程は社内の改修やテストの都合にも左右されます。
GS1 Japanは導入効果として、JCA手順より送信時間が大幅に短くなること、回線がインターネットに変わって通信コストが下がること、取引の双方で日々の売掛・買掛照合ができるようになることを挙げています2。
ただし、効果の数値は示されていません。
移行の利点として社内に説明する際も、自社の取引量や現在の回線費用に当てはめて見積もる必要があります。
6業務のうち自社に影響する業務
流通BMSの基本形は、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務を対象としています2。
2007年に公開された基本形Ver.1.0では、この6業務を8種の標準メッセージで扱っていました2。
標準化の第一段階は、卸・メーカーと小売との取引です3。
ここで自社に当てはめたいのは、6業務のうち、いまJCA手順でやり取りしているのはどれかという点です。
もし現在は発注データだけを電子で受け、請求は別の方法で処理しているなら、流通BMSへの移行は発注の通信を置き換えるだけで終わるとは限りません。
取引先が出荷や受領のメッセージも流通BMSで求めてくると、社内で新たにデータを作る業務が増えます。
業務ごとに、自社が送る側か受ける側か、いまの方式は何かを一覧にしておきましょう。
この一覧が、後で旧方式を止めるときの突合の範囲にもなります。
どの標準を見るかも最初に決めておきます。
百貨店向けのメッセージは基本形とは別の標準で、基本形の請求鑑メッセージはVer2.0で追加されました2。
基本形の最新版はVer2.2.2で、2025年にメッセージ項目一覧などの訂正版が公開されています1。
実際にどの版で接続するかは取引先ごとの取り決めによるため、取引先から届く接続仕様の版と照らし合わせます。
| 比べる点 | JCA手順 | 流通BMS |
|---|---|---|
| 通信回線 | 電話回線 | インターネット回線 |
| データ形式 | 英数字とカナのテキストのみ | XML |
| 送受信方式 | 半二重(送信と受信を交互に行う) | 送信と受信を同時に行える |
ISDN回線の終了時期と取引先の指定:自社の期限はどこで決まるか
INSネットの終了時期
従来手順をいつまで使えるかを考えるとき、まず関わってくるのが回線です。
JCA手順、全銀手順、全銀TCP/IP手順といった旧来の手順を使う企業の多くは、ISDN回線を利用しているとされます4。
NTT東日本の案内によると、INSネットのディジタル通信モードは2024年1月から地域ごとに段階的に終了しています。
INSネットの新規販売も2024年8月末で終了しました6。
INSネット64、INSネット64ライト、INSネット1500のサービス提供は2028年12月末で終了します6。
これは東日本エリアの案内です。
西日本エリアで回線を契約している場合は、契約先の案内を別に確認する必要があります。
ディジタル通信モードの終了後も従来手順で取引を続けている会社では、いまの通信がどの回線や仕組みに乗っているかが契約によって違います。
情シスやEDI担当が「JCA手順で受けている」と把握していても、その下の回線契約まで把握しているとは限りません。
期限を考える前に、自社の通信が何に乗っているかを契約書や請求書で特定しておくことが出発点になります。
自社の期限を置く3つの確認先
回線の終了時期が分かっても、そこから個々の会社の従来手順をいつ止めるかは導けません。
回線の終了日は、その回線を使い続けられる上限を示すだけです。
取引先がそれより早く旧方式の受付をやめると指定すれば、その指定日が実際の期限になります。
逆に取引先側に期限の指定がなくても、自社の回線が先に使えなくなれば、その時点で従来手順は続けられません。
そこで、期限は次の3つを並べて決めます。
3つの日付のうち最も早いものが、その取引先との従来手順を止める実質的な期限です。
そこから社内の準備期間を差し引いた時点が、切替作業を始める期限になります。
1つ目は自社の回線契約です。
どの回線で、どのエリアで契約しているか、契約の更新時期はいつかを押さえます。
2つ目は取引先の指定です。
流通BMSへの切替希望時期に加えて、旧方式の受付をいつまで続けるかを取引先ごとに聞き取ります。
切替の依頼文に「いつから流通BMSで」とは書いてあっても、「いつまでJCA手順を受けるか」は書かれていないことがあるため、後者を別に確かめておくと日程が組みやすくなります。
3つ目は社内の準備期間です。
変換の改修、接続テスト、突合に何週間かかるかは自社の体制で変わるので、これは自分たちで見積もるしかありません。
この3つを取引先ごとに表にすると、期限の近い取引先と余裕のある取引先が分かれて見えてきます。
どの取引先から手を付けるかという順番の話は、最後の節で改めて扱います。
▼ 図の内容を文字で読む
- データの中身の決まり
- データ形式がXMLになる
- 項目の定義が変わる
- 送り方の決まり
- 回線がインターネットになる
- 送信と受信を同時に行える
- 社内システムとの接続
- 取り込みのための変換の仕組みを作り直す
- または変換を担うサービスを間に置く
切替は取引先1社ごとの作業:日程調整の手間と二重送信の注意
1社ごとの日程調整にかかる期間
期限が見えたら、実際の切替作業がどの単位で進むかを押さえます。
2016年の日経クロステックの記事で、ピップグループはEDIの切替を小売店1社ずつ日程を合わせて進めていると説明しています4。
事前の調整から利用開始までは1カ月ほどかかるとのことです4。
これは発注を受ける側の1社が当時語った例であり、どの取引でも1カ月で済むという標準的な期間ではありません。
それでも、この例から読み取れることがあります。
切替は「自社がシステムを入れ替えた日に全取引先が一斉に変わる」ものではないという点です。
取引先ごとに使っている通信手順が違うため、切替の難しさや作業の中身も取引先によって変わります。
ある取引先は接続仕様がすぐに届き、テスト日もすぐ決まる一方で、別の取引先は先方のシステム更新を待つ必要がある、ということが起こりえます。
1社ごとの調整で決めることは、おおむね上の図の順になります。
この中で見落としやすいのは、流通BMSの開始日と旧方式の受付終了日を別々に合意しておくことです。
開始日だけを決めて終了日を決めないと、先方はもう旧方式で送ってこないつもりでも、自社では旧方式の受信設定や監視を残し続けることになります。
反対に先方がしばらく両方で送るつもりでいると、次に述べる二重の問題が起きます。
同じ取引を新旧で二重に流す場合の注意
並行運用という言葉は、同じ取引のデータを新旧両方の方式で流す意味で使われることがあります。
たとえば小売が同じ発注をJCA手順と流通BMSの両方で送り、卸がその両方を受注システムに取り込んだとします。
同じ注文が2件の受注として登録され、出荷指示や請求が重複するおそれがあります。
これは仕組みから考えられる懸念として整理したもので、公的な資料で事例として確認されたものではありません。
ただ、受注の取り込みが自動化されているほど、重複に気づくのは出荷や請求の段階まで遅れがちです。
並行運用を公式に推奨する指針や、逆に禁じる指針は確認できませんでした。
そのため、新旧を同時に流すかどうかは、取引先と合意して決めるものです。
同時に流すなら、どちらを正式なデータとして業務に使うかを先に決めておきます。
たとえば並行期間中は従来手順の受注だけを受注システムに取り込み、流通BMSで届いたデータは突合用に保存するだけにする、という形です。
こうしておけば二重取り込みは防げます。
一方で、比べる作業は担当者に残ります。
同じ取引を二重に流さず、ある日を境に取引先単位で方式を切り替えるやり方もあります。
この場合は重複のおそれが小さくなる代わりに、切替後に不具合が見つかったとき、旧方式へ戻す手順をあらかじめ決めておく必要があります。
どちらが向いているかは、取引先の受信側の運用と自社の体制で変わります。
次の節で、進め方全体を同じ軸で比べます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 2024年1月から:ディジタル通信モードが地域ごとに段階的に終了
- 2024年8月末:INSネットの新規販売が終了
- 2028年12月末:INSネット64・64ライト・1500の提供が終了
並行運用・段階移行・一括切替を同じ軸で比べる
4つの比較軸
ここで比べる3つの進め方を、まず言葉の意味で分けておきます。
並行運用は、同じ取引先の同じ取引を一定期間、新旧両方の方式で流すやり方です。
段階移行は、取引先を何回かに分けて順に切り替え、切替の済んだ取引先から流通BMSだけにするやり方です。
一括切替は、すべての取引先をある日に一斉に切り替えるやり方です。
この3つは排他的ではありません。
段階移行で取引先を順に切り替えながら、各取引先の切替直後だけ短く並行運用を挟む、という組み合わせも取れます。
比べる軸は、二重作業の量、誤りが出たときの戻しやすさ、取引先の対応状況への依存度、切替直前に作業が集中するリスクの4つです。
次の表は、取引先単位で切り替えるという作業の性質から編集部が組み立てた整理です。
実績値や順位を示すものではありません。
表の中で判断が分かれやすいのは、戻しやすさと集中リスクの組み合わせです。
並行運用は旧方式が生きているので、流通BMS側で不具合が出ても業務は止まりにくい一方、担当者は同じ取引を2回確認することになります。
一括切替は二重作業が切替日以降ほぼなくなりますが、その日にすべての取引先の準備がそろっている必要があります。
1社でも遅れれば、その取引先だけ旧方式を残すことになり、結果として段階移行に近い形になります。
集中リスクについては、日経クロステックの記事で、残りの取引先の移行が切替直前に集中すると間に合わない取引先が出るおそれがあり、移行する取引先数を平準化できれば対応できそうだと述べられています4。
これは当時想定されていた回線の期限を前提にした1社の見通しです。
ただ、1社ずつ日程を合わせる作業である以上、期限の近くに切替が重なれば、調整やテストが同じ時期に積み上がるという構造は今も変わりません。
取引先数による向き不向き
取引先の数は、どの進め方が現実的かを大きく左右します。
流通BMSでつなぐ取引先が数社であれば、全社と日程を合わせて一括で切り替えることも、全社分の並行運用を短期間行うことも、作業量としては見通しやすいでしょう。
取引先が多い場合は、1社ずつ調整してテストする作業がそのまま件数分積み上がります。
時期を分ける段階移行の意味が大きくなるのはこのためです。
もう1つ考えたいのが、担当者が同時に何社分の切替を抱えられるかです。
並行運用を取引先ごとに挟む場合、並行期間中の取引先が重なるほど、突合の作業も重なります。
たとえば毎月2社ずつ切り替え、それぞれ1回の締めまで並行運用するなら、常に2〜4社分の突合を並行して見ることになります。
取引先数と担当者の体制を掛け合わせて、1回に切り替える社数を決めると、並行運用を置くかどうかと段階移行の刻み方を同時に決められます。
なお、自社で変換の仕組みを作るか、EDIサービスに任せるかによっても、テストや並行期間の負担は変わります。
サービスを使う場合でも、取引先との日程調整と突合の判断は自社に残ります。
外部に任せられる部分と、自社で決めるしかない部分を分けて見積もることが大切です。
| 比較軸 | 並行運用 | 段階移行 | 一括切替 |
|---|---|---|---|
| 二重作業の量 | 同じ取引を新旧で扱うため多い | 移行期間中は新旧2系統を取引先別に運用する | 切替日以降は少ない |
| 誤りの戻しやすさ | 旧方式が動いているため戻しやすい | 切り替えた取引先ごとに戻す手順が要る | 全取引先を同時に戻す必要があり難しい |
| 取引先の対応状況への依存度 | 取引先が両方で送受信できることが前提 | 対応できた取引先から進められる | 全取引先の準備がそろうことが前提 |
| 切替直前の集中リスク | 並行期間の長さによる | 時期を分散できる | 作業が切替日に集中する |
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社の回線契約
- どの回線で、どのエリアで契約しているか
- 契約の更新時期はいつか
- 取引先の指定
- 流通BMSへの切替希望時期
- 旧方式の受付をいつまで続けるか
- 社内の準備期間
- 変換の改修
- 接続テストと突合に要する期間
接続テストと突合で何を確かめ、旧方式を止める基準をどう置くか
確認項目3点
どの進め方を選んでも、最後に残る問いは「いつ旧方式を止めてよいか」です。
ここでは、止める判断の材料として次の3点を確かめることを提案します。
公式の接続テスト項目書は今回確認できていないため、最終的な項目は取引先と合意し、GS1 Japanの標準仕様書と照らし合わせて決めます。
1点目は、送受信が双方向で成り立つかです。
自社が送ったデータが取引先で受け取れること、取引先が送ったデータを自社で受け取れることを、それぞれ確かめます。
流通BMSは送受信を同時に行える方式なので、受信と送信のどちらかだけを試して終わりにしないことが大切です。
2点目は、対象となる業務ごとに、件数と金額が取引先の記録と一致するかです。
最初の節で作った「6業務のうちどれをやり取りするか」の一覧が、ここで照合の範囲になります。
GS1 Japanは、流通BMSによって取引の双方で日々の売掛・買掛照合ができるようになり、月次の照合作業が効率化されたと説明しています2。
これは導入効果の説明です。
照合を自動で行う機能が標準で備わっているという意味ではありません。
突合をどの仕組みで、誰が行うかは自社で決めます。
それでも、日々のデータで照合できれば、月末を待たずに差異に気づける可能性は高まります。
3点目は、エラーが起きたときの再送や訂正の手順が決まっているかです。
通信が途中で切れた、取引先側で項目の誤りが見つかった、といった場面で、誰がどの手順でデータを送り直すかを決めておかないと、旧方式を止めた後に戻る先がなくなります。
止める基準の置き方
旧方式を止める基準として提案したいのは、複数の締め期間で、突合の差異がすべて説明できる状態になることです。
差異がゼロであることを条件にすると、締めのタイミングのずれのように業務上当然起きる差まで不具合と扱ってしまいます。
そうなると、いつまでも止められません。
大切なのは、差異の一つひとつについて原因が分かり、新方式の側に誤りがないと確認できることです。
複数の締め期間を見る理由は、6業務がそれぞれ違う周期で動くためです。
発注や出荷は日々発生しますが、返品は不定期で、請求や支払は締めの周期で発生します。
切替後の1週間だけ発注データを照合しても、請求や支払のメッセージは一度も流れていないかもしれません。
どの業務のデータが少なくとも一度は流れて照合できたかを確認すると、止める時期の根拠がはっきりします。
基準を満たしたら、旧方式の受付終了日を取引先と改めて合意し、記録に残します。
先方の担当者が替わっても経緯が分かるよう、どの締め期間でどの業務を照合し、どの差異をどう説明したかを一緒に残しておくと、後で問い合わせを受けたときにも説明しやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 送受信の確認
- 自社が送ったデータを取引先が受け取れる
- 取引先が送ったデータを自社で受け取れる
- 業務データの突合
- 対象業務ごとに件数を取引先の記録と照合
- 金額も取引先の記録と照合
- エラー時の手順
- 再送の手順を決めておく
- 訂正の手順を決めておく
取引先で対応状況が違うとき、移行の順番をどう決めるか
順番を決める3つの条件
取引先が多いと、すでに流通BMSに対応している相手、これから対応する相手、まだ予定のない相手が混在します。
2016年の日経クロステックの記事では、ピップグループの取引先のうちIP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどに移行済みだったのは10%強でした4。
当時は旧来手順が多く残っていたことがうかがえますが、これは1社の取引先についての古い数字です。
現在の普及状況を示すものではありません。
より新しい目安として、GS1 Japanの推計では、流通BMSを導入している卸・メーカーは2025年6月時点で21,600社以上で、その前の半年間で700社以上増えています1。
この数字は卸・メーカー側の導入企業数の推計で、発注側の小売の状況を示すものではありません。
調査の対象も定義も違うため、2016年の割合と並べて普及の推移として読むことはできません。
自社の取引先がどの段階にあるかは、取引先ごとに聞き取って把握することになります。
順番は、取引先の指定時期、取引量、現行手順の回線事情の3つで決める方法を提案します。
指定時期が近い取引先は、それだけで優先度が上がります。
回線事情も同じです。
その取引先との通信が終了時期の近い回線に乗っているなら、先方からの指定がなくても早めに動く必要があります。
取引量の扱いは、少し考え方が分かれます。
取引量の多い取引先から移せば、送信時間の短縮や日々の照合といった効果を早く得られます。
その反面、最初の切替で手順に不備があった場合の影響も大きくなります。
そこで、指定時期に余裕がある取引先の中から、取引量が中程度で調整に協力的な相手を最初の1社に選び、手順を固めてから取引量の多い取引先へ進む、という順番も考えられます。
1社目で作った調整の項目や突合の記録の形は、2社目以降でそのまま使えます。
従来手順の残し方と縮小の進め方
段階移行を選ぶと、旧方式は最後の取引先の切替が終わるまで何らかの形で残ります。
残し方は大きく2つです。
最後の1社が切り替わるまで現在の仕組みをそのまま維持するか、旧方式で残る取引先が減った段階で、回線や設定を縮小していくかです。
どちらを選ぶかは、回線契約の更新時期と合わせて考えます。
旧方式で残る取引先が数社になったところで契約更新を迎えるなら、その時点で残る取引先との切替を前倒しで相談し、更新をしないで済む日程を目指すことができます。
逆に、旧方式で残る取引先の切替時期がどうしても更新後になるなら、その間は旧方式の監視や障害対応の体制を維持する必要があります。
旧方式を最後まで残すと、担当者は新旧2つの仕組みを見続けることになります。
そのため、残る取引先が少なくなるほど、1社あたりにかかる手間は割高になっていきます。
東日本エリアのINSネットは2028年12月末に提供を終えるため6、この回線を使う従来手順を残す場合、その時期が上限になります。
取引先の中にどうしても流通BMSへ移れない相手がいるときの扱いは、次のよくある質問でも触れます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 複数の締め期間で突合する
- 差異の原因を説明し新方式に誤りがないと確認する
- 旧方式の受付終了日を取引先と合意する
- 照合した業務と差異の説明を記録に残す
取引先ごとの指定時期と自社の回線契約、社内の改修範囲が絡み合うと、どの取引先から手を付けるか、並行運用を置くかを社内だけで決めにくくなります。
取引先の一覧と現行の通信方式を持ち寄っていただければ、取引先ごとの期限の置き方と、段階移行の刻み方や並行運用を挟むかどうかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 従来手順を止める期限 | 取引先の指定日・自社の回線の終了時期・社内の準備期間のうち最も早いもの |
| 切替の単位 | 取引先1社ずつ、開始日と旧方式の受付終了日を別々に合意する |
| 新旧を同時に流す場合 | どちらを正式データとし、どちらを突合用にするかを先に決める |
| 進め方の選択 | 二重作業の量・戻しやすさ・取引先の対応状況・直前の集中リスクの4軸で比べる |
| 旧方式を止める基準 | 複数の締め期間で、対象業務の突合差異がすべて説明できる |
| 移行の順番 | 指定時期・回線事情・取引量で決め、最初の1社で手順を固める |
▼ 図の内容を文字で読む
- 指定時期に余裕があり取引量が中程度の相手を最初の1社にする
- 1社目で調整の項目と突合の記録の形を固める
- 2社目以降へ同じ項目と記録の形を使う
- 取引量の多い取引先へ進む
旧方式を止める判断は、突合の範囲と差異の説明が固まっていないと先延ばしになり、新旧2つの仕組みを見続ける期間が長引きがちです。 対象業務と締めの周期をもとに、どの業務をどの期間照合すれば止める根拠になるか、突合と記録の進め方を具体的に確かめられます。
よくある質問
JCA手順を使い続けられる期限は、取引先ごとにどう確認すればよいですか
取引先には、流通BMSへの切替希望時期とは別に、旧方式の受付をいつまで続けるかを聞いてください。
あわせて、自社側でその取引先との通信がどの回線に乗っているかを契約から特定します。
NTT東日本エリアのINSネットは2028年12月末に提供を終了するため6、この回線を使っている場合はそれが上限になります。
取引先の指定日、回線の終了時期、社内の準備期間のうち最も早いものが、実質的な期限です。
流通BMSに移行するとき、自社でシステムを作るのとEDIサービスを使うのとではどう違いますか
EDIベンダーのコラムでは、移行にはシステムの大掛かりな入れ替えと専門知識が必要だとして、EDIサービスベンダーへの依頼を勧めています5。
これはベンダーの立場からの見解です。
自社で作る場合は変換の仕組みと通信の両方を自社で用意し、保守もすることになります。
サービスを使う場合はその部分を任せられます。
ただし、どちらの場合も、取引先との日程調整、対象業務の範囲決め、突合と旧方式を止める判断は自社に残ります。
同じ取引を新旧両方で送ると、取引先側でどんな問題が起きえますか
受け手が両方のデータを業務システムに取り込むと、同じ注文が2件として登録され、出荷や請求が重複するおそれがあります。
これは仕組みから考えられる懸念です。
新旧を同時に流すなら、どちらを正式なデータとして使い、もう一方は突合用に保存するだけにするかを、事前に取引先と合意しておきます。
取引先が流通BMSに対応していない場合、どう扱えばよいですか
その取引先とは当面、従来の方式を残すことになります。
その場合は、その取引で使っている回線の終了時期を確認し、それまでに先方の対応予定を聞き取っておくことが欠かせません。
旧来の手順からの移行先としては、流通BMSのほかにWeb-EDIなどIP網に対応した方式に移った例も報じられています4。
どの方式にするかは取引先と相談して決めます。
基本形と百貨店版のメッセージはどう違い、自社はどちらを見ればよいですか
百貨店向けのメッセージは、基本形とは別の標準として定められています2。
小売と卸・メーカーの間で発注・出荷・受領・返品・請求・支払をやり取りする取引であれば、基本形が対象です2。
基本形の最新版はVer2.2.2で、2025年に訂正版が公開されています1。
実際にどの標準・どの版で接続するかは、取引先から届く接続仕様で確かめてください。
- 1 出典:流通システム標準普及推進協議会(GS1 Japan/流通システム開発センター)「流通BMS トップページ(第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計)」(2025年)
- 2 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様(基本形)」(2025年)
- 3 出典:GS1 Japan(流通システム開発センター)「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)」(2018年)
- 4 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 5 出典:TISI株式会社「JCA手順とは?流通BMSへの移行が迫られる流通業界の実情」(2023年)
- 6 出典:NTT東日本「INSネット ディジタル通信モード終了に関する案内」(2026年)
画像の出典元
- Close-up of professionals reviewing documents in an office setting, focused on analytics./Photo by Kampus Production on Pexels