◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- JCA手順の基となったJ手順は電話回線・DDX回線で2,400bps、H手順はISDN回線・専用回線で64kbpsというように、従来の手順は使う回線とセットで定められている
- NTT東日本の案内では、INSネット(ディジタル通信モード)は2024年1月から地域ごとに段階的に終了し、経過措置の「データ通信補完策」も2028年12月31日に提供を終える
- 案内にはJCA手順という手順名が書かれていないため、自社が対象かどうかは回線契約の種別とEDI提供元への確認で切り分ける
- 卸・メーカーの導入企業数は2025年6月1日時点で21,600社以上の推計だが、これは供給側の数字であり発注側の導入率ではない
- 対応の可否は版まで含めて確認し、取引先との個別調整は期限直前に集中させず、間に合わない相手のデータ受け渡し方法を先に決めておく
目次

従来のEDI(JCA手順)と流通BMSは何が違うのか
取引先から「流通BMSに切り替えてほしい」と連絡が来た、あるいは長年動いてきたJCA手順のEDIがいつまで使えるのかが気になり始めた。
まず押さえたいのは、これが将来の検討課題ではなく、すでに動き出している期限への対応だという点です。
NTT東日本の案内では、INSネット(ディジタル通信モード)は2024年から地域ごとに段階的にサービスを終了しており、切替後の経過措置である「データ通信補完策」も2028年に提供を終えます6。
発注側がいま動かせるのは、自社の回線とシステムがどの状態にあるかを確かめ、取引先ごとの調整に必要な時間を先に確保することです。
J手順・H手順の通信方式と限界
JCA手順という呼び名で長く使われてきた通信手順は、1982年7月に通商産業省(現・経済産業省)が流通業界全般の標準通信手順「J手順」として制定したものです4。
適用回線は電話回線とDDX回線で、通信速度は2,400bps、9,600bpsは使えないと定められていました4。
その後、1992年3月には「H手順」が国内標準と命名され、ISDN回線と専用回線を使って64kbpsに対応し、漢字の伝送に加えて同報機能・電子メール機能・可変長データ転送機能が新たに加わりました4。
ここで発注側にとって重要なのは、速度の数字そのものよりも、どちらの手順も「どの回線を使うか」とセットで定められている点です。
受発注データを流す仕組みが電話回線やISDN回線を前提にしている以上、その回線の提供が終われば、手順を変えずに運用を続けるという選択肢は残りません。
何年も止まらずに動いてきたEDIほど、システムそのものの老朽化ではなく回線側の事情で期限が決まる、という構図になります。
流通BMSが標準化する6つの業務
流通BMSは、メッセージ(電子取引文書)と通信プロトコル/セキュリティに関するEDIの標準仕様で、製造・卸・小売という製配販三層の間のビジネスプロセスをつなぐことを目的としています3。
ここが従来の手順との一番大きな違いです。
J手順・H手順が標準化していたのは通信をどう制御するかという部分でしたが、流通BMSでは、やり取りする文書そのものと、通信の仕組みの両方が標準仕様の対象に入っています34。
具体的には、発注、出荷、受領、返品、請求、支払の6業務・8種の標準メッセージが、2007年4月に「基本形Ver.1.0」として公開されました1。
ただしこの6業務・8種という範囲は、スーパー業界とグロサリー業界の基本的な取引形態であるターンアラウンド型取引を対象として整理されたものです1。
自社の業種や取引形態によって、どの業務までが標準の枠に収まるかは変わり得るため、範囲の広がり方は後ほど版の話と合わせて確認します。
発注担当から見ると、いま電話回線越しに送っている発注データは、この6業務のうちの入口にあたります。
移行の話が「発注の送り方を変える」だけに見えて、実際には受領や請求、支払のデータの扱いまで話が及ぶのは、標準が最初から一連の取引文書をまとめて対象にしているからです。
社内の検討で情報システム部門だけに話を預けると論点が抜けやすいのは、この範囲の広さが理由になります。
| 項目 | J手順 | H手順 | 流通BMS 基本形 |
|---|---|---|---|
| 制定・公開時期 | 1982年7月 | 1992年3月 | 2007年4月(Ver.1.0) |
| 適用回線 | 電話回線・DDX回線 | ISDN回線・専用回線 | ― |
| 通信速度 | 2,400bps(9,600bps不可) | 64kbps | ― |
| 標準化の対象 | 通信制御手順 | 通信制御手順 | メッセージと通信プロトコル/セキュリティ |
| 対象業務の定め | ― | ― | 発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務/8種のメッセージ |
なぜ今、発注側は流通BMSへの移行を急ぐ必要があるのか
INSネット(ISDN)終了の経緯とスケジュール
前の節で見たとおり、従来の手順は回線の種類と結び付いています。
その回線に何が起きているかというと、NTT東日本はINSネット(ディジタル通信モード)について、2024年1月から地域ごとに段階的にサービスを終了したと案内しています6。
「これから終わる予定」ではなく、すでに終了が進んでいる段階にあるという点が、今回の検討の出発点になります。
では、自社のEDIがその対象に当たるのかどうか。
同じ案内の中では、INSネットの用途例としてPOS、EDI、G4FAX、銀行ATMなどが挙げられています6。
一方で、JCA手順や全銀手順といった手順の名前までは書かれていません6。
つまり、公開されている案内だけで「うちのEDIは対象だ/対象ではない」と断定することはできず、ここは自社側で切り分ける必要があります。
切り分けの材料は二つです。
一つは回線契約の内容で、EDI装置がつながっている回線がINSネット(ディジタル通信モード)なのか、アナログの電話回線なのか、契約書や請求明細で種別を確認します。
もう一つはEDIシステムの提供元への確認で、いま動いている装置やソフトがどの通信手順を使い、回線終了後にどうなるのかを聞きます。
この二つが揃うと、「うちは期限の内側にいるのか」がはっきりし、社内で説明できる形になります。
経過措置『データ通信補完策』は2028年で終了
もう一つ押さえておきたいのが、切替後の経過措置です。
NTT東日本は、切替後のINSネット上のデータ通信(補完策)について、2028年にサービス提供を終了すると案内しています6。
つまり期限は一つではなく、地域ごとの終了という先に動いている期限と、経過措置が終わるという後ろの期限が重なっている状態です。
経過措置があると聞くと、その日まで手を打たなくてよいように感じられます。
けれども補完策はあくまで切替後に残された暫定的な通信手段で、終了日が決まっているものです6。
残りの期間は「まだ使える期間」ではなく、システムの改修と取引先との個別調整を終わらせるための持ち時間だと読むほうが実態に合います。
調整に時間がかかる理由は後の節で具体的に見ますが、先に結論だけ言えば、この持ち時間の大半は自社の作業ではなく相手のある作業に消えます。
なお、ここで挙げた時点はいずれもNTT東日本が公表している内容です6。
西日本エリアに拠点や取引先がある場合の状況は本記事では確認していないため、該当する場合は契約している事業者の案内で別途確かめてください。
流通BMSは今どれくらい普及しているのか
卸・メーカー側の導入企業数の推移
期限が動いていることが分かると、次に気になるのは「周りはどこまで進んでいるのか」です。
流通システム標準普及推進協議会の推計では、流通BMSを導入した卸・メーカーの企業数は2025年時点で21,600社以上とされ、この半年間で700社以上増えています2。
数字の伸び幅を見ると、いまも毎月のように新しく対応する企業が出ている段階だと分かります。
この数字を自社に当てはめるときに注意したいのは、集計されているのが卸・メーカー、つまり供給側だという点です2。
小売や発注側がどれだけ流通BMSに対応しているかを示すものではありません。
ですから「二万社以上が導入済みだから業界のほとんどが終わっている」とも、「うちの業界はまだ早い」とも、この数字だけでは判断できません。
むしろ発注側にとって実務的な読み方は、取引先の側で対応済みの企業が積み上がっているという事実のほうです。
すでに流通BMSで他の小売と接続している卸やメーカーにとって、自社だけが従来手順のままであれば、その相手は二つの仕組みを並行して維持することになります。
取引先から切り替えの打診が来るのは、相手側の運用をそろえたいという事情が背景にあると考えられます。
自社が判断すべきなのは業界全体の平均ではなく、日々やり取りしている取引先のうち、何社がどの方式を求めているかという構成です。
| 項目 | 数字 | 読むときの条件 |
|---|---|---|
| 導入企業数 | 21,600社以上 | 2025年6月1日時点の推計値(下限) |
| 直近半年間の増加 | 700社以上 | 同じ推計での半年間の増加分 |
| 集計の対象 | 卸・メーカー | 小売など発注側の導入率を示す数字ではない |
移行にあたって発注側は何を準備すればよいか
現行システムの対応可否と仕様バージョンの確認
移行の準備は、費用を見積もるより先に「どの仕様に合わせるのか」を決めるところから始まります。
流通BMSの基本形は、2007年4月のVer.1.0のあと、2008年3月のVer.1.1でスーパー業界とアパレル業界向けの要素が加わり、2009年4月のVer.1.2でドラッグストア業界とホームセンター業界が対象に入り、2009年10月のVer.1.3で生鮮メッセージが統合され、2018年11月のVer.2.0へと改定されてきました1。
Ver2.0は消費税軽減税率(区分記載請求書等保存方式)に対応した版です3。
2025年時点の最新版は基本形Ver2.2.2で、これは同年に公開されたVer2.2.1の資料に誤記載があったため訂正されたものです2。
版の履歴をここまで並べたのは、バージョンが単なる細かい改訂ではなく、対象業種と扱える内容の広がりそのものだからです1。
自社の業種が当初のスーパー・グロサリー中心の範囲に入っていなかった場合でも、改定を経て対象が広がっている可能性があります。
逆に、現行システムが古い版にしか対応していないと、取引先が求める版と食い違うことも起こり得ます。
確認すべきなのは「流通BMSに対応しているか」という一言ではなく、どの版のどのメッセージに対応しているか、という粒度です。
もう一つ、取引先に百貨店が含まれる場合は前提が変わります。
百貨店業界向けには、取引に必要な標準メッセージ26種が2010年10月に公開され、2014年10月のVer2.1で1種増えて27種になっています1。
基本形とは別の枠組みで整理されているため、基本形への対応だけで百貨店との取引まで賄えると考えると、後で追加の検討が発生します。
費用については、移行にいくらかかるかという相場を本記事では示しません。
公開された一次資料から確認できる金額がないためです。
ただ、見積もりが大きく振れる変数ははっきりしています。
対応する版と業種別の仕様、切り替える取引先の数、現行システムのどこまでを作り替えるか、テストと並行稼働にどれだけ人手を割くか。
この変数を自社で先に押さえてから見積もりを取ると、提示された金額の内訳を比べられるようになります。
社内体制・スケジュールの検討
準備の体制で見落とされやすいのが、関係する部門の広さです。
流通BMSが対象とするのは発注だけでなく、出荷、受領、返品、請求、支払までを含みます1。
受領データの扱いが変われば検収の運用に関わり、請求・支払のメッセージを使うなら経理の締め処理にも関係します。
情報システム部門と購買部門だけで進めてしまうと、切り替え直前に経理側の確認が入って日程が後ろにずれる、という事態が起こり得ます。
スケジュールの引き方も、期限から逆算する形にしておくと社内の議論が具体的になります。
経過措置の終了が2028年12月31日である以上6、そこから接続テストの期間、取引先との調整期間、システム改修の期間、予算を通すための社内手続きの期間を順に前へ置いていくと、いつまでに何を決めなければならないかが見えます。
特に予算は年度単位で動くことが多いため、技術的な検討より先に、どの年度の予算で実施するのかという判断が必要になる場合があります。
移行の進め方―取引先との調整でつまずかないために
取引先ごとの個別調整には時間がかかる
自社のシステムの目処が立っても、そこで終わりではありません。
EDIは相手があってはじめて成立する仕組みなので、切り替えは取引先ごとの個別の作業になります。
過去のISDN移行を控えた時期の報道では、残りの取引先の移行が切替期限の直前に集中すると、対応が間に合わない取引先が生じるという懸念が語られていました5。
これは2016年時点、2020年度後半の切替を想定していた一企業の実務経験にもとづく話であり、どの企業でも同じ期間がかかると保証するものではありません5。
それでも、相手のある作業が同時期に集中するとさばききれないという構図自体は、今回も変わりません。
同じ時期の記事では、その企業の取引先のうちIP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行済みだったのは10%強とされていました5。
これは流通BMS単体の導入率ではなくIP網対応全体の割合であり、2016年12月時点の一社の状況です5。
数字を今の普及率の代わりに使うことはできませんが、早くから準備に着手していた企業でも、動き始めの時点では取引先の大半が未対応だったという規模感は読み取れます。
裏を返せば、残りの大多数との調整をどう配分するかが、移行の実質的な作業量になるということです。
切替直前の集中を避けるスケジューリング
では、どう配分するか。
最初にやることは、取引先の棚卸しです。
どの相手が、いまどの手順と回線で接続しているのか、すでに流通BMSで他社とつながっているのか、百貨店版など別の仕様が関わるのかを一覧にします。
この一覧がないまま個別の調整を始めると、何社残っているのかが分からず、進捗を管理できません。
順番を決めるときの基準は、取引量と業務への影響の大きさです。
日々の発注量が多い相手ほど、切り替えの失敗が欠品や検収の遅れに直結します。
こうした相手は早い段階で着手し、テストと並行稼働にゆとりを持たせる。
逆に取引量の少ない相手は後ろに回せますが、社数が多いと最後にまとめて残り、まさに直前の集中を招きます5。
数の多い層こそ、調整の手順をあらかじめ定型化しておくと負担が下がります。
そして、どれだけ前倒ししても、期限までに対応が整わない取引先は残ると考えておいたほうが現実的です。
その場合に何をするかを先に決めておくのが最後の準備になります。
相手と別のデータの受け渡し方法を取り決めるのか、当面は紙やその他の手段に戻すのか、どの部署が受け皿になるのか。
ここを空白のまま期限を迎えると、切替当日に発注そのものが止まりかねません。
調整の早期着手は、全社を期限内に収めるためというより、最後に残る例外へ手を打つ時間を作るためのものだと考えると、優先順位を付けやすくなります。
移行後、発注業務はどう変わるのか
6業務が標準メッセージでやり取りされる
切り替えが済んだあと、日々の業務はどう見えるか。
大きな変化は、発注、出荷、受領、返品、請求、支払の6業務が、8種の標準メッセージという共通の形でやり取りされる点です1。
これまで発注データを送ることが中心だった接続が、取引の一連の文書を同じ枠組みで扱う接続に変わります。
発注担当の視点で言えば、送った発注に対して出荷のデータが返り、受領の内容も同じ仕組みの上で扱われる、という流れになります。
返品や請求、支払まで同じ標準の範囲に入っているため、業務ごとに別々の受け渡し方法を抱える状態から離れられる可能性があります1。
ただし、この6業務・8種という範囲はスーパー業界とグロサリー業界のターンアラウンド型取引を対象に整理されたものです1。
自社の取引形態がこれと異なる場合、どの業務まで標準の枠で回せるかは仕様と取引先の運用によって変わります。
もう一点、標準仕様が定めているのはメッセージと通信の共通の土台であって、画面の操作性や社内の承認フローまでを決めているわけではありません3。
実際の使い勝手は、導入するシステムの実装や取引先ごとの運用ルールに左右されます。
移行後の姿を社内に説明するときは、標準で共通化される部分と、個別に決めなければならない部分を分けて示すと、期待値のずれが起こりにくくなります。
通信の土台が回線種別から切り離される
もう一つの変化は、通信の扱いです。
J手順は電話回線・DDX回線、H手順はISDN回線・専用回線というように、従来の手順は適用回線が仕様の一部として定められていました4。
これに対して流通BMSは、メッセージだけでなく通信プロトコルとセキュリティも標準仕様の対象に含んでいます3。
特定の回線サービスの提供終了がそのままEDIの停止に直結する、という前の節で見た構図からは離れることになります。
実務上は、どの通信方式で接続するかが、採用する版の仕様と接続先の指定によって決まります。
ですから移行の打ち合わせでは、メッセージの取り決めと同じくらい、通信方式とセキュリティの条件をどう合わせるかが具体的な議題になります。
この部分は自社だけで決められないため、取引先やシステムの提供元と早い段階で確認しておく項目です。
最後に、移行によって何がなくなり、何が残るのかを整理しておきます。
なくなるのは、回線の提供終了という外的な期限に合わせて業務を止めるかどうかを判断しなければならない状態です。
残るのは、取引先ごとの運用ルールのすり合わせと、標準の枠に収まらない例外取引の扱いです。
移行は、この後者に向き合う時間を確保するための土台づくりでもあります。
ここまでで、移行が必要かどうかではなく、どの期限に何を間に合わせるかという問いに変わっていることを見てきました。
残された期間をどう読むかを、時点ごとに整理しておきます。
自社の回線契約とEDIの通信手順、そして取引先ごとの接続状況は、公開情報を読むだけでは組み合わせが確定せず、社内の担当者だけで棚卸しを始めると抜けが生じやすい部分です。
現在の受発注の流れと取引先の構成をお聞かせいただければ、どこから確認を始めると期限から逆算した計画が立てられるか、整理の順番をご一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
ISDN終了のスケジュールと猶予期間の整理
NTT東日本が公表した提供終了の時点順に並べ、各段階で発注側に何が残るかを対応させた
- 2024年1月:INSネット(ディジタル通信モード)の提供終了が地域ごとに段階的に始まった。自社の回線がこの対象に含まれるかは契約している回線の種別で分かれる
- 切替後の期間:経過措置「データ通信補完策」でデータ通信を続けられるが、これは終了日が決まっている暫定的な手段である
- 2028年12月31日:「データ通信補完策」のサービス提供が終了する。この日以降、同じ枠組みでの継続を前提に計画を立てることはできない
- 猶予期間の読み方:残り期間はそのまま使える期間ではなく、システム改修・接続テスト・取引先ごとの調整・社内の予算手続きを収めるための持ち時間にあたる
- 確認の起点:案内には用途例としてEDIが挙がる一方、JCA手順という手順名は書かれていないため、対象かどうかは自社の回線契約とEDIの提供元への確認で切り分ける
西日本エリアに拠点や取引先がある場合、本記事では終了スケジュールを確認していないため、契約している事業者の案内に読み替えて確認する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 移行の性格 | 将来の検討課題ではなく、すでに始まっている期限への対応として扱う |
| 期限の読み方 | 地域ごとの段階的終了と、2028年の経過措置終了という二つの時点を分けて把握する |
| 対象かどうかの判定 | 公開情報だけで断定せず、回線契約の種別とEDI提供元への確認で切り分ける |
| 仕様の確認粒度 | 流通BMS対応の可否ではなく、どの版のどのメッセージに対応しているかまで確認する |
| 取引先調整 | 取引量の多い相手から着手し、期限に間に合わない相手の受け渡し方法を先に決めておく |
| 社内体制 | 発注・受領に加え、請求・支払を扱う部門を検討の初期から入れる |
対応する版の選び方と、期限までに間に合わない取引先をどう扱うかは、標準仕様の読み合わせだけでは決まらず、自社の業務と体制に当てはめて判断する必要があります。 取引先の一覧と現行システムの状況をもとに、どの範囲を切り替え、どこに手作業が残るのかという移行後の姿を具体的に見通せます。
よくある質問
流通BMS基本形の最新版はどのバージョンですか
2025年時点の最新版は基本形Ver2.2.2です2。
同年に公開されたVer2.2.1の資料に誤記載があったため、訂正版として公開されたものです2。
ただし自社が対応すべき版は必ずしも最新版とは限らず、取引先が接続に指定する版と合わせる必要があります。
基本形はVer.1.0(2007年4月)以降、対象業種や機能を広げながら改定されてきているため1、現行システムがどの版のどのメッセージに対応しているかまで確認してください。
INSネットの経過措置(データ通信補完策)はいつまで使えますか
NTT東日本の案内では、切替後のINSネット上のデータ通信(補完策)は2028年12月31日にサービス提供を終了するとされています6。
これに先立って、INSネット(ディジタル通信モード)自体は2024年1月から地域ごとに段階的にサービスを終了しています6。
つまり自社の地域で先に切替が進む時点と、補完策が終わる時点の二つを見ておく必要があります。
なお西日本エリアの状況は本記事では確認していないため、該当する場合は契約している事業者の案内でご確認ください。
百貨店との取引がある場合、流通BMSの対応版は違うのですか
百貨店業界向けには、基本形とは別に百貨店版が整備されています。
取引に必要な標準メッセージ26種が2010年10月に公開され、2014年10月のVer2.1で1種追加されて27種になりました1。
基本形が対象とする6業務・8種のメッセージ1とは範囲が異なるため、基本形への対応だけで百貨店との取引まで賄えるとは限りません。
取引先に百貨店が含まれる場合は、棚卸しの段階で別枠として分けておくと、後からの手戻りを避けられます。
取引先の一部が流通BMSに未対応の場合、発注側はどうすればよいですか
全取引先を同じ日に一斉に切り替えられる前提で計画を立てないことが出発点になります。
過去のISDN移行を控えた時期には、残りの取引先の移行が切替期限の直前に集中すると対応が間に合わない相手が出る、という懸念が語られていました5。
実務としては、取引量の多い相手から先に個別調整を進め、未対応のまま残りそうな相手については、期限までにデータの受け渡し方法をどうするかを事前に取り決めておきます。
受け皿となる部署と、切替後に残る手作業の量まで決めておくと、期限当日に発注が止まる事態を避けやすくなります。
流通BMSはスーパー・グロサリー業界以外でも同じ仕様で使えますか
基本形が公開された時点の6業務・8種という範囲は、スーパー業界とグロサリー業界の基本的な取引形態であるターンアラウンド型取引を対象に整理されたものです1。
その後、Ver.1.1(2008年3月)でスーパー業界とアパレル業界向けの要素が加わり、Ver.1.2(2009年4月)でドラッグストア業界とホームセンター業界が対象に入るなど、対象業種を広げながら改定されてきました1。
百貨店については前述のとおり別の仕様が用意されています1。
自社の業種と取引形態がどの範囲に当たるかは、取引先が指定する版と合わせて確認するのが確実です。
- 1 出典:一般財団法人流通システム開発センター(流通BMS協議会)「流通BMS標準仕様」(2025年閲覧時点、各版の公開は2007〜2018年)
- 2 出典:流通システム標準普及推進協議会(一般財団法人流通システム開発センター)「第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計」(2025年)
- 3 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「流通BMS(EDI・標準化活動)」(2025年閲覧時点)
- 4 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「通信制御手順」(2025年閲覧時点)
- 5 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 6 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「INSネット(ディジタル通信モード)サービス終了のご案内」(2024年)
画像の出典元
- pc, plug, connection, peripheral, network, hardware, edp, connection cable, computer, computer accessories, data cable, technology, macro, detail shot, network cable/meineresterampe on Pixabay