まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

指値発注のリスクとは?不成立・後出し変更・取適法上の扱いと備え方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 指値発注の崩れは、不成立・後出しの単価変更・納期や数量への波及の三つに分かれ、どれも承諾の記録が曖昧なところから始まる。
  • 規格品・標準品の仕入は原則として取適法の委託に当たらず、仕様を指定して作らせる取引は委託に当たりうる。
  • 2026年1月施行の取適法では、委託で十分協議しない指値が買いたたきに当たるおそれがあり、必要な説明をせず一方的に代金を決めることは違反とされる。
  • 取適法の外の売買でも、協議しない据え置きは優越的地位の濫用の相談対象になりえ、市況・継続性・仕入先数が重なる品目ほどリスクが大きい。
  • 単価の有効期間、見直しの契機と返答期限、承諾・協議・決定の記録を取り決めると、請求時の照合と条件のずれの確認がしやすくなる。

30代後半の日本人男性が荷受けと検品をしている場面

指値発注で崩れる場面と、最初に見分ける「売買か委託か」

仕入先に単価を指定して発注したのに「その値段では受けられない」と返ってくる。
いったん受けたはずの単価が、次の請求書では上がっている。
単価は守られたものの、数量や納期だけが後からずれる。
指値発注のこうした崩れの多くは、相手がどの条件で承諾したのかが記録に残らないまま単価が動くところで起きます。
最初に、その取引が規格品を買う売買なのか、仕様を指定して作らせる委託なのかを見分けてください。
2026年1月施行の取適法は、委託で十分に協議しない指値や一方的な代金決定を問題にします。
規格品の仕入は原則として対象外です。
どちらの場合も、単価の有効期間、見直しの条件、承諾の記録を取り決めておけば備えられます。

断られる・後から変わる・納期や数量が崩れる場面

ここでは仮の例として、機械部品を扱う卸売業者の購買担当者が、出荷用の段ボール箱を仕入先に単価を指定して発注している場面を考えます。
担当者は見積書の単価よりも低い単価を自社で決め、その単価を書いた注文書を送っています。
この「買い手が仕入価格を指定して発注すること」が、企業間取引でいう指値発注です。

崩れ方は大きく三つに分かれます。
一つ目は、新しい単価で注文書を送ったところ、仕入先から断りの連絡が来る、あるいは返事がないまま納期が近づく場面です。
二つ目は、注文の時点では指定単価で受けてもらえたのに、請求書には別の単価が書かれていて、問い合わせると「原材料が上がったので今回から改定した」と言われる場面です。
三つ目は、単価は指定どおりなのに、注文した数量の一部だけが先に届き、残りは次回に回される、あるいは納期そのものが延びる場面です。

三つは別々の問題に見えますが、どれも指定した単価が「仕入先が受けた条件」として固まっていないところから始まっています。
一つ目は承諾がないまま発注側が先へ進んだ状態、二つ目は承諾した範囲が曖昧な状態、三つ目は単価を受けた仕入先がほかの条件で負担を吸収している状態です。
どこで崩れたかによって取るべき手当ては変わるので、仕組みは次の節で順にたどります。
その前に、問題の読み方そのものを変える見分けが一つあります。

売買の仕入か、仕様を指定した委託か

指値発注が法令上どう扱われるかは、取引の種類で大きく分かれます。
関わるのは取適法(中小受託取引適正化法)で、従来の下請法を改正した法律です。
この法律が対象にするのは、一定の規模の事業者どうしの「委託」の取引です。

公正取引委員会のQ&Aは、規格品や標準品を購入することは原則として委託に当たらず、製造委託にも該当しないとしています1。
一方で、刻印やラベルの貼付など仕様を指定して作業をさせる場合は委託に当たるとしています1。
先ほどの段ボール箱でいえば、カタログにある汎用サイズの無地の箱を選んで買うのは売買の仕入です。
同じ仕入先から同じ「段ボール箱」を買っていても、自社ロゴの印刷や特注の寸法を指定して作らせるなら、委託の側へ寄ります。

見分けるときの手がかりは、品目の名前ではなく、発注のたびに何を渡しているかです。
図面や版下、印刷データ、寸法の指示を渡しているなら、仕様を指定している可能性が高いと考えられます。
注文書の品番がカタログの型番だけで足りるなら、売買の仕入と読むのが自然です。
規格品に少しだけ加工を頼んでいるなど判断に迷う取引は、個別の内容で結論が変わるため、公正取引委員会などの相談窓口で確かめるのが確実です。

観点 規格品・標準品の仕入(売買) 仕様を指定した製造などの委託
仮例の段ボール箱 カタログの汎用サイズ・無地の箱を選んで買う 自社ロゴの印刷や特注寸法を指定して作らせる
取適法の扱い 原則として委託に当たらず対象外 規模の基準に当たれば対象
指値で問われやすい点 不成立や後出し変更など取引上の崩れ 取引上の崩れに加え、買いたたきや一方的な代金決定のおそれ
価格の協議を求められたとき 取適法上の扱いは異なるが、据え置きは優越的地位の濫用の相談対象になりうる 必要な説明をせず一方的に代金を決めると違反
発注のたびに渡しているものから見る、売買の仕入と委託の見分け方(模式図)
注文書の品番だけで足りれば売買の仕入、図面や印刷データを渡していれば委託に寄り、迷う場合は相談窓口で確かめることを三つに分けて示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 売買の仕入と読む場合
    • 注文書の品番がカタログの型番だけで足りる
    • 汎用サイズの無地の箱を選んで買う
  • 委託の側へ寄る場合
    • 図面や版下、印刷データ、寸法の指示を渡している
    • 自社ロゴの印刷や特注の寸法を指定して作らせる
  • 判断に迷う場合
    • 規格品に少しだけ加工を頼んでいる
    • 公正取引委員会などの相談窓口で確かめる

指値発注はどの時点で契約になり、どこで崩れるのか

申込みと承諾の記録

指値発注は、買い手が単価を示して「この条件で買いたい」と申し込む行為です。
仕入先がその条件を受けたときに、はじめて双方の条件がそろいます。
法的にどの時点で契約が成立したと言えるかは、取引の形や基本契約の定めによって変わりうるため、ここでは結論を断定しません。
実務で困るのは成立の理屈よりも、「受けた」という事実がどこにも残っていないことです。

段ボール箱の仮例で流れを追ってみます。
仕入先から見積書が届き、購買担当者はそれより低い単価を指定した注文書をメールで送ります。
数日後、仕入先の営業担当者から電話があり「なんとかやってみます」と言われます。
箱は納品され、月末に請求書が届きます。
この流れで、指定単価への承諾が残っているのは電話の一言だけです。
その言葉が「今回の注文だけ」の意味だったのか、「今後もこの単価で」の意味だったのかは、話した二人にしか分かりません。
どちらかが異動すれば、それも分からなくなります。

承諾を残す手段は、注文請書、受注確認のメール、受発注システム上の承諾の操作など、取引先と無理なく続けられるものでかまいません。
大切なのは形式より中身で、どの単価を、どの数量と納期で、いつまでの注文に適用するのかが読み取れることです。
見積書の単価と指定単価が違う場合は、どちらで承諾したのかが分かるように書いておくと、後の照合で迷いません。

不成立・後出し変更・納期数量への波及

承諾の記録が曖昧なとき、崩れは取引の流れの別々の段階で表に出ます。
不成立は発注の直後に起きます。
返事を待つ期限を決めていないと、買い手は受けてもらえた前提で出荷や生産の予定を組み、納期の直前になって断られていたことに気づきます。

後出しの単価変更は、請求の段階で見つかります。
承諾した範囲が書かれていなければ、仕入先は「前回は特別だった」と考え、買い手は「今後もその単価のはず」と考えます。
どちらも嘘をついていないまま、請求書と注文書の金額が食い違います。
検収の担当者が注文書と請求書を照らし合わせるときに、根拠となる承諾の記録がないので、購買担当者に聞いて回ることになります。

いちばん気づきにくいのが納期と数量への波及です。
指定単価を受けた仕入先が、その負担を分納や後回しで吸収することがあります。
単価は守られているので、購買の側から見ると問題は起きていないように見えます。
実際には、ほかの得意先の注文が優先され、自社の分が後ろへずれているかもしれません。
承諾の記録に数量と納期まで含めておけば、単価だけ守られて条件がずれたときに、それを崩れとして扱えます。

caption: 承諾の記録の曖昧さが、取引の別々の段階で三つの崩れにつながる

alt: 承諾の記録が曖昧なことを起点に、不成立、後出しの単価変更、納期・数量への波及の三つが、それぞれ発注直後・請求時・納品時に表れる関係を示す図

承諾の記録の曖昧さが、取引の三つの段階で崩れとして表れる関係(模式図)
承諾の記録が曖昧なことを原因に、発注直後の不成立、請求時の後出しの単価変更、納品時の納期・数量への波及が起きることを段階ごとに示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 不成立(発注直後)
    • 返事を待つ期限を決めていない
    • 受けてもらえた前提で予定を組み、納期の直前に断りが分かる
  • 後出しの単価変更(請求時)
    • 承諾した範囲が書かれていない
    • 今回だけか今後もかが分からず、請求書と注文書の金額が食い違う
  • 納期・数量への波及(納品時)
    • 指定単価の負担を分納や後回しで吸収する
    • 単価は守られているので気づきにくい

仕入(売買)の指値は取適法の対象か、委託なら何が変わるか

2026年1月施行の改正点

取適法は2026年1月から施行されています2。
公正取引委員会は、下請法からの主な改正点として、適用基準への従業員基準の追加、対象取引への特定運送委託の追加、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止、手形払いなどの禁止を挙げています2。
このうち指値に直接かかわるのは、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止です。
価格の協議を求められたのに応じず、買い手が単価を決めて通知するだけの進め方は、委託の取引ではこの禁止に触れうるようになりました。

従業員基準の追加は、自社と取引先が対象になるかどうかの見方を変えます。
以前は資本金の大きさで対象から外れていた取引でも、従業員数によって対象に入る場合があります。
埼玉県の解説によれば、従業員数の基準は製造委託などで300人、役務提供委託などで100人とされています3。
資本金の区分を含めた具体的な判定は、公正取引委員会のページで簡易診断の仕組みが案内されているので、そこで確かめるのが確実です2。

規格品の仕入が原則対象外となる理由

取適法が見ているのは、買い手が自社の仕様で作らせたり作業させたりする関係です。
規格品や標準品は、仕入先がすでに自社の商品として売っているものを買う関係なので、原則として委託に当たりません1。
カタログから汎用の段ボール箱を選んで指値で買う場面は、この原則に沿えば取適法の対象外です。

ただし「原則として」という言葉には意味があります。
規格品にロゴの印刷やラベル貼りといった仕様の指定が加われば、委託に当たりうることは前の節で見たとおりです1。
購買の現場では、同じ仕入先に規格品と仕様指定品を一緒に発注していることも珍しくありません。
発注している品目を規格品と仕様指定品に分けて把握しておくと、どの注文に取適法の考え方を当てはめるべきかがはっきりします。

もう一つ押さえておきたいのは、取適法の対象外であることが、どんな指値でも問題にならないという意味ではない点です。
売買の仕入に残る論点は、後の節で市況や取引の続き方と合わせて扱います。

委託取引で指値が買いたたき・一方的な代金決定になる条件

十分協議しない単価指定

取適法の対象となる委託取引で、指値がどこから問題になるのか。
公正取引委員会のQ&Aは、中小受託事業者と十分に協議することなく一方的に単価を指定する、いわゆる指値によって、通常支払われる対価より低い単価で代金の額を定めることは、買いたたきに該当するおそれがあるとしています1。
買いたたきとは、通常支払われる対価に比べて著しく低い代金を不当に定めることを指します。

この説明には二つの要素があります。
一つは協議を十分にしたかどうか、もう一つは決めた単価が通常支払われる対価より低いかどうかです。
買い手が単価を提示すること自体が禁じられているわけではありません。
問題になりうるのは、協議の過程を経ずに一方的に決め、その水準が通常の対価を下回る場合です。
「通常支払われる対価」がいくらかは、同種の取引の相場や品目の事情によるため、個別に判断されます。

同じQ&Aは、すべての発注について一律に一定の比率で引き下げた単価を設定することも、同様に該当するおそれがあるとしています1。
ロゴ印刷の段ボール箱の仮例で、コスト削減の方針として全仕入先に同じ割合の値下げを通知するやり方は、この形に近くなります。
仕入先ごとの原価や数量の違いを見ずに比率だけを当てはめているからです。

必要な説明をしない価格決定

2026年の改正で加わった禁止は、仕入先の側から価格について求めがあった場面で効いてきます。
Q&Aは、中小受託事業者が求めた事項について必要な説明や情報提供をせず、一方的に代金の額を決定することは、協議に応じない一方的な代金決定として本法違反となるとしています1。
買いたたきの説明が「おそれ」という言い方だったのに対し、こちらは違反と明示されている点に注意が必要です。

さらにQ&Aは、委託事業者が妥当と判断したコスト上昇分を反映した場合でも、仕入先の申入額を下回る額を一方的に決めるときは該当するおそれがあるとしています1。
仕入先から値上げの申入れがあり、買い手が自社の基準で一部だけ認めた単価を通知して終える、という進め方がこれに当たりえます。
上げ幅を一部にとどめること自体ではなく、なぜその額なのかを説明せず、仕入先の求めに応えないまま決めてしまうことが問われています。

実務に引き直すと、値上げの申入れを受けたときに買い手がすることは三つです。
申入れの内容と根拠を受け取ること、自社が検討した内容と判断の理由を仕入先に伝えること、そのやり取りを記録に残すことです。
記録は、後で仕入先と認識が食い違ったときに、どの説明をしたかを示す手がかりにもなります。
ここでの説明は取適法の対象となる委託取引についてのものですが、次の節で見るように、売買の仕入でも協議に応じる姿勢には意味があります。

委託取引で指値や代金決定が問題になる進め方と、その扱いの違い(模式図)
十分協議しない指値、一律の比率での引下げ、必要な説明をしない価格決定の三つの進め方について、買いたたきのおそれか違反かを分けて示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 十分協議しない単価指定
    • 一方的に指定した単価が通常支払われる対価より低い
    • 買いたたきに該当するおそれ
  • 一律の比率で引き下げた単価
    • すべての発注に同じ比率の値下げを当てはめる
    • 買いたたきに該当するおそれ
  • 必要な説明をしない価格決定
    • 仕入先が求めた事項の説明や情報提供をせず一方的に決める
    • 協議に応じない一方的な代金決定として違反

売買の仕入や市況が動く取引で、リスクの大きさはどう変わるか

取適法の外で残る論点

規格品の仕入は取適法の対象外が原則ですが、価格の据え置きがまったく論点にならないわけではありません。
公正取引委員会は、優越的地位の濫用と取適法の考え方について相談窓口を設け、価格転嫁の円滑化に関する特別調査や、内閣官房と連名の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を掲げています4。
優越的地位の濫用は、取引上の立場が強い事業者がその立場を利用して相手に不利益を与える行為を問題にする、独占禁止法の考え方です。

取引上の立場が強い買い手が、仕入先のコスト上昇を協議せずに価格を据え置くことは、こうした取組の中で相談の対象になりえます。
どのような場合に濫用に当たるかは、当事者の関係や取引の実情によって個別に判断されるもので、ここでは違反に当たるとまでは言えません。
それでも、売買の仕入だから協議の求めに応じなくてよい、と割り切るのは避けたほうがよいでしょう。
法令の論点とは別に、取引上のリスクも残ります。
説明のない据え置きが続けば、仕入先は条件の良いほかの得意先を優先するようになり、その影響は前の節で見た不成立や納期の遅れとして返ってきます。

市況・継続性・仕入先数の3条件で見る

同じ指値発注でも、リスクの大きさは取引の性質で変わります。
ここでは、市況の動き、取引の続き方、仕入先の数という三つの条件で整理します。
実測にもとづく比較ではなく、どこに備えを厚くするかを考えるための編集部の整理です。

表の三つの条件は、重なったときに影響が大きくなります。
原材料の価格が動きやすい品目を、ほかに代わりのない一社から継続して仕入れている場合、指定単価と原価の差が開いたときに仕入先は値上げを求めるしかなく、買い手が応じなければ断るか、納期や数量で調整するかのどちらかになります。
反対に、価格が安定した規格品を複数の仕入先から単発で買っている場合は、一度断られても別の仕入先へ発注すれば済み、指値の崩れが業務に与える影響は小さくなります。

オフィスで段ボール箱の中身とタブレットを見比べる日本人の会社員

自社の品目に当てはめるときは、すべてを同じ手当てで管理しなくてかまいません。
三つの条件のうち二つ以上が重なる品目から、次の節で見る取り決めを先に整えると、手間をかけるところが絞れます。

条件 指値のリスクが大きくなる場面 備えの重点
市況の動きが大きい品目 指定単価と仕入先の原価の差が短い間に開き、後出し変更や不成立が起きやすい 有効期間を区切り、見直しの契機を決めておく
継続して発注する取引 一度の指値が次回以降の基準になり、関係の悪化が長く残る 協議と説明の記録を取引ごとに積み上げる
仕入先が少ない品目 断られると代わりがなく、納期や数量に直接響く 代替の仕入先の候補を平時に確かめておく

単価の有効期間・見直し条件・承諾の記録をどう取り決めるか

有効期間と見直しの契機

指定単価に有効期間を付けると、「今回だけ」か「今後も」かという食い違いの多くが起きなくなります。
決めておくのは、その単価をいつまでの注文に適用するかです。
期間が終わったら、改めて単価を話し合う前提が双方に共有されます。

期間の途中でも見直しを話し合う契機を決めておくと、市況が動いたときに慌てずに済みます。
たとえば、仕入先が原材料費や労務費の上昇を理由に申し出たとき、発注の数量が当初の想定から大きく変わったとき、仕様を変更したときなどです。
契機ごとに、誰が申し出を受け、いつまでに返答するかも決めておきます。
返答の期限があれば、申し出が放置されて協議に応じなかったことになるのを防げます。

どの期間や契機がふさわしいかは、品目の市況や取引の頻度によって違います。
これは法令で決められた手順ではなく、自社の基本契約や取引条件に合わせて決める実務上の工夫です。
すでに基本契約で価格改定の条項を定めている場合は、その条項と矛盾しないように運用を合わせます。

協議・説明・承諾の記録

残しておきたい記録は三つあります。
承諾の記録は、仕入先が誰の名前で、どの単価・数量・納期・有効期間を受けたかを示すものです。
協議の記録は、仕入先からの申入れの内容と根拠、それに対して自社が伝えた説明と判断の理由です。
決定の記録は、最終的に決めた単価と、その単価に至った理由です。

この記録で減るのは、請求の段階で起きる確認の手間です。
請求書の単価を承諾の記録と照らし合わせれば、食い違いが仕入先の誤りなのか、期間が終わって改定されたものなのかがすぐに分かります。
購買担当者に経緯を聞いて回る必要がなくなり、担当者が替わっても判断の根拠が引き継がれます。
委託の取引では、仕入先の求めに必要な説明をせず一方的に代金を決めることが違反とされているため1、どんな説明をしたかを示す記録は、その点でも意味を持ちます。

もちろん、記録を残せば崩れがなくなるわけではありません。
仕入先が断る自由は残りますし、市況の急な変化は記録では止められません。
記録が変えるのは、崩れが起きたときに、どこで条件がずれたのかを双方が同じ資料で確かめられるようになることです。

caption: 指定単価を記録で回す一巡(有効期間の満了や見直しの申出で協議へ戻る)

alt: 単価の提示と協議、承諾の記録、発注と納品、請求との照合、有効期間の満了や見直しの申出が順に並び、最後から最初の協議へ戻る循環の図

代替の仕入先

仕入先が少ない品目では、指値が断られたときの影響がそのまま納期に響きます。
平時のうちに、同じ規格の品目を扱える別の仕入先の候補を確かめておけば、不成立が起きても出荷を止めずに済みます。

ただし、代替の候補は不成立に備える手段であって、指値を受けさせるための材料として仕入先に突きつけるものではありません。
委託の取引では、十分な協議を経ずに単価を指定すること自体が問題になりうることは前の節で見たとおりです1。
代わりの仕入先がいることと、いまの仕入先と協議を尽くすことは、両方そろえて意味を持ちます。

指定単価を記録で回す一巡と、有効期間の満了や見直しの申出で協議へ戻る流れ(模式図)
単価の提示と協議、承諾の記録、発注と納品、請求との照合、有効期間の満了や見直しの申出が順に並び、最後から最初の協議へ戻る循環の図1単価の提示と協議2承諾の記録3発注と納品4請求と承諾の記録の照合5有効期間の満了・見直しの申出

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 単価の提示と協議
    • 申入れの内容と根拠を受け取る
    • 自社の判断と理由を説明する
  2. 承諾の記録
    • 単価・数量・納期・有効期間
  3. 発注と納品
    • 数量・納期が承諾どおりか
  4. 請求と承諾の記録の照合
    • 単価の食い違いの有無
  5. 有効期間の満了・見直しの申出
    • 原材料費や労務費の上昇
    • 数量や仕様の変更

売り手側として指値を受けるときの判断

受ける前に確認すること

ここまでは単価を指定する買い手の立場で見てきましたが、得意先から指値を受ける売り手の立場にいる人もいるはずです。
指値を受けるかどうかを考えるときは、指定された単価と自社の原価との差に加えて、その単価が適用される期間、見直しの条件、求められている数量と納期を確かめておくと判断しやすくなります。
単価は受けられても、数量や納期まで受けると採算が崩れることがあるからです。

受けられない単価を示されたとき、すぐに受けるか断るかの二択にする必要はありません。
原価の内訳や受けられる単価を根拠と一緒に示し、協議を申し出る道があります。
取引が仕様を指定された委託で、自社が取適法の中小受託事業者に当たる場合、買い手が求めた事項について必要な説明をせずに一方的に代金を決めることは違反とされています1。
協議を申し出たときは、申入れの額と根拠、相手から受けた説明を記録に残しておくと、後で認識が食い違ったときに役立ちます。
どの条件なら受けるかの基準は、ここで示したのは一つの考え方であり、自社の原価や得意先との関係に合わせて決めるものです。

相談窓口

60代前半の日本人男性が自席での作業場面

自社の取引が委託に当たるのか、自社が取適法の対象となる事業者に当たるのかは、取引の内容と規模の基準によって決まり、自分だけでは判断しにくいことがあります。
公正取引委員会は、優越的地位の濫用や取適法の考え方について相談窓口を設けています4。
指値の進め方に疑問があるときや、協議を申し出ても説明がないまま単価が決められたときは、取引の経緯と記録を持って相談すると、どの考え方が当てはまるかを確かめられます。

指値の崩れは、見積から発注、承諾、納品、請求までのどこで条件の記録が途切れているかによって手当てが変わり、自社の流れの中で位置を見つけるのは意外に難しいものです。

いまの受発注の流れを伺い、指定単価への承諾や有効期間をどの段階で、どの形で残せば請求との照合につながるかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
取引の種類 規格品を選んで買う売買か、仕様を指定して作らせる委託か
取適法の扱い 2026年1月施行。委託では十分協議しない指値や説明のない一方的な代金決定が問題になる
売買の仕入 取適法は原則対象外。据え置きは優越的地位の濫用の相談対象になりうる
リスクの大きさ 市況の動き、取引の継続性、仕入先の数が重なるほど大きい
備え 単価の有効期間、見直しの契機と返答期限、承諾・協議・決定の記録

有効期間や見直しの契機、協議の記録は、決めるだけでなく日々の発注と請求の作業の中で続けられる形にしないと、担当者の手元で途切れてしまいます。 発注品目と取引先の状況を伺い、市況・継続性・仕入先数の条件が重なる品目から、承諾と協議の記録をどう受発注の作業へ組み込むかを確かめられます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

規格品を指値で仕入れる場合、取適法は関係ないのですか。

規格品や標準品の購入は、原則として委託に当たらないとされています1。
そのため取適法の対象外となるのが原則です。
ただし、ロゴの印刷やラベル貼りなど仕様の指定が加わると委託に当たりうるため、注文ごとに何を指定しているかで確かめてください1。
また、取適法の外でも、取引上の立場が強い買い手の価格据え置きは、優越的地位の濫用の観点で相談の対象になりえます4。

取引先が価格の協議を求めてきたら、断ってもよいのですか。

取適法の対象となる委託取引では、求められた事項について必要な説明や情報提供をせず一方的に代金を決めることは違反とされています1。
自社の判断で一部だけ反映した額でも、申入額を下回る額を一方的に決めると該当するおそれがあります1。
売買の仕入でも、協議に応じず据え置くことは相談の対象になりうるため4、申入れの根拠を受け取り、自社の判断と理由を伝えて記録に残す進め方が安全です。

指値の注文書だけで契約は成立するのですか。注文請書は必要ですか。

どの時点で契約が成立するかは、取引の形や基本契約の定めによって変わりうるため、一律には言えません。
実務上の問題は、仕入先が指定単価を受けたという事実が記録に残らないことです。
注文請書に限らず、受注確認のメールや受発注システム上の承諾など、単価・数量・納期・有効期間が読み取れる形で承諾を残しておくと、後出しの変更や請求時の食い違いを照合できます。

市況が変わったとき、指定単価を途中で見直すにはどう取り決めておけばよいですか。

指定単価に有効期間を付け、期間の途中でも見直しを話し合う契機を決めておく方法があります。
契機の例は、仕入先から原材料費や労務費の上昇の申し出があったとき、数量や仕様が変わったときなどです。
あわせて、申し出を誰が受け、いつまでに返答するかも決めておくと、申し出が放置されるのを防げます。
既存の基本契約に価格改定の条項がある場合は、それと矛盾しないように運用を合わせてください。

売り手として、受けられない指値を断ると不利益を受けますか。

断ったことで何が起きるかは取引先との関係や取引の内容によるため、一般的には言えません。
受けるか断るかの二択にせず、原価の根拠と受けられる単価を示して協議を申し出る道があります。
委託取引で自社が取適法の対象となる場合、買い手は求められた事項に必要な説明をしなければなりません1。
説明のないまま単価が決められたり、不利な扱いを受けたと感じたりしたときは、公正取引委員会の相談窓口で確かめられます4。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
  2. 2 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法関係(取適法)」(2026年)
  3. 3 出典:埼玉県「中小受託取引適正化法(取適法)・受託中小企業振興法について」(2026年)
  4. 4 出典:公正取引委員会「取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」(2026年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top