◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 仕入先へ賠償を請求できるかは、まず仕入先に帰責事由があるかで決まり、不可抗力など責めに帰することができない事由による場合は請求できない
- 届いた物が契約内容に適合しないときは追完請求が入口になり、それとは別に損害賠償の請求や契約の解除も妨げられない
- 契約書に賠償条項がなくても民法に基づき請求できるが、不適合の範囲・通知の段取り・賠償の範囲を定めておくと事後の争点を事前に絞れる
- 上限や免責の合意は当事者間では原則として働く一方、相手が下請法上の受注側に当たる取引では、責任がないのに減額や返品で負担を移すことはできない
- 製品事故では部品メーカーと完成品メーカーの双方が被害者からの請求の相手になり、当事者間の免責特約は被害者には及ばない。PL法の請求権は知った時から3年、引渡しから10年で消滅する
目次

仕入先の欠陥・納期遅延で損害が出た場合、賠償請求の法的な根拠は何か
納品された原材料に規格外のものが混ざっていた、約束の納期を過ぎて自社の生産や出荷が止まった——こうした場面で最初に決まるのは請求できる金額ではなく、そもそも仕入先に責任を問える事情があるかどうかです。
民法は、引き渡された物が契約の内容に適合しないときの追完請求と、それとは別に損害賠償や契約解除を求められることを定め、債務不履行による損害賠償については仕入先に帰責事由があることを条件としています。
ここに、その仕入先が下請法上の受注側に当たる取引かどうか、製品事故で第三者に被害が及んでいないかという条件が重なり、請求できる範囲と、自社が供給側として負うリスクの輪郭が決まります。
帰責事由の有無が分かれ目になる
仕入先の納品が遅れ、そのあいだ止まっていた工程の損失を請求したい。
そう考えたときに最初に確かめることになるのは、遅れの原因が仕入先の側にあるかどうかです。
民法415条は、債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき、または履行が不能であるときに債権者は損害賠償を請求できるとしたうえで、その不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは請求できないと定めています3。
同じ「納期に間に合わなかった」でも、仕入先の工程管理の失敗で遅れたのか、調達先の産地で起きた災害で原料そのものが手に入らなくなったのかで、扱いは変わります。
前者であれば仕入先の責任として損害賠償の対象になりえますが、後者のように仕入先の側で避けようがなかった事情によるものであれば、自社に現実の損失が出ていても賠償は請求できません。
「損害が出た」ことと「相手に請求できる」ことは別だという点が、交渉の出発点になります。
条文が「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」と書いていることには、実務上の意味があります。
帰責事由の有無は、仕入先が十分に努力したかという印象で決まるのではなく、その契約で仕入先がどこまでを引き受けた約束と読めるかから判断されるということです。
納期を努力目標のように記した発注書だけの取引と、遅延が生じた場合の連絡義務や代替調達の扱いまで定めた基本契約を結んでいる取引とでは、同じ遅れでも評価の材料が違ってきます。
契約不適合責任と債務不履行、二つの請求ルート
遅延ではなく、届いた物そのものに問題がある場合は、別の入口があります。
民法562条は、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求できるとしています1。
ただし、その不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものである場合には追完を請求できません1。
自社の保管方法や指示に原因があるときは、この入口が閉じるということです。
もっとも、直してもらう・代わりを入れてもらうだけでは収まらない場面もあります。
不良の混入に気づくまでに検査や選別にかかった費用、出荷停止で生じた損失は、追完では埋まりません。
民法564条は、追完請求や代金減額の規定が、415条による損害賠償の請求、541条・542条による解除権の行使を妨げないとしています2。
追完を求めたうえで、なお残る損害の賠償を求めることも、取引そのものを解除する方向へ進むことも、選択肢として並んでいます。
二つのルートは、起きたことの性質で使い分けることになります。
届いた物が仕様と違う、数量が足りない、品質が基準を外れているといった「物の状態」の問題なら、まず追完請求を軸に組み立てられます。
一方、納期遅延や、そもそも納品されないといった履行そのものの問題は物の不適合ではないため、415条の債務不履行として帰責事由と損害を主張していくことになります。
契約書の賠償責任条項の有無で請求できる範囲はどう変わるか
条項がなくても民法の規定で請求はできる
長い付き合いの仕入先とは、注文書と納品書のやり取りだけで、損害賠償について何も書かれた紙がない——そうした取引は珍しくありません。
この場合に請求を諦める必要はありません。
民法415条や562条・564条は、当事者が細かく取り決めていない部分を補う形で働く規定であり、契約書に賠償条項がないことは、請求そのものを封じる事情ではありません3。
ただし、請求できることと、請求が通ることは同じではありません。
条項がなければ、仕入先に帰責事由があること、自社に生じた損失がその不履行から生じたものであること、その金額がどこまでかを、そのつど個別に主張していくことになります。
不良の原因が仕入先の工程にあるのか、自社の使い方にあるのかが技術的に割れる案件では、この主張の組み立てに時間と費用がかかります。
条項があると、何が事前に片付いているのか
契約書で先に決めておけるのは、もめたときに争点になる部分です。
どの状態を「契約に適合しない」と呼ぶのか、受入検査で何を確認し、いつまでにどんな方法で通知するのか、遅延が生じた場合にどう扱うのか、賠償はどこまでの損害を対象にするのか。
これらを書いておくと、事故が起きたあとで解釈を争うのではなく、書いてある基準に照らして事実を当てはめる話に変わります。
賠償の範囲は特に、書いてあるかどうかで交渉の景色が変わるところです。
不良品そのものの代金と交換費用までなのか、検査・選別の実費や回収にかかった費用まで含むのか、出荷が止まったことによる逸失利益まで及ぶのか。
仕入先側が「二次的に生じた損害は負わない」という趣旨の条項を置いていれば、まさにその逸失利益の部分が交渉の中心になります。
条項は請求の可否を決めるだけでなく、自社が最初に何を主張すべきかを決める材料でもあります。
なお、条項を置けばどんな内容でもそのとおりに通るわけではありません。
当事者の合意として原則は尊重されますが、契約自由の原則が及ぶ範囲で、という前提は残ります。
個別の条項が実際にどこまで効くかは契約全体の内容や取引の実態によるため、重要な取引ほど、条文を作る段階で専門家の確認を挟む価値があります。
賠償額の上限・免責条項がある場合、どこまで認められるか
契約自由の原則と上限条項の効力
仕入先から提示された取引基本契約に「損害賠償の額は当該個別契約の代金額を上限とする」という一文が入っている。
事業者同士の取引では、こうした上限額の合意や免責の合意も、当事者の取り決めとして原則どおりに働きます。
仕入れる側から見れば、部材の代金は数万円でも止まった工程の損失はその何十倍にもなりうるため、上限が低く設定されているほど、差額は自社が抱えることになります。
供給する側から見れば、この条項は引き受けるリスクの大きさを見積もれるようにするためのものです。
単価の低い部材を納める取引で、完成品全体の回収費用まで負う可能性が残っていると、価格を決めることも保険を検討することもできません。
上限条項は一方が得をする仕掛けというより、どちらが損失を持つかを価格を決める前に確定させる取り決めだと捉えると、交渉での落としどころを考えやすくなります。
そのうえで、上限や免責を置いたからといって、あらゆる場面で責任が切れるとは限りません。
個別条項の有効性は契約内容と取引の実態に照らして判断される余地が残るため、「書いてあるから絶対に安全」「書かれているから請求を諦める」と早く結論を出さないことが実務では大切です。
下請法が適用される取引では負担転嫁が制限される
契約条項では動かせない領域もあります。
公正取引委員会は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に関して、発注する側を委託事業者、受注する側を中小受託事業者と呼び、後者に責任がないのに受領を拒むこと、受領後に返品すること、発注後に代金を減額すること、発注の取消や内容変更・受領後のやり直しをさせて利益を不当に害することを、いずれも法違反になる行為として挙げています4。
ここで効いてくるのが「責任がないのに」という条件です。
契約書に「不具合があった場合は代金を減額できる」と書いてあっても、その取引がこの規制の対象で、かつ受注側に帰責事由がないのであれば、減額という形で負担を移すことはできません。
逆に、明らかに受注側に責任がある不良品について、受領後速やかに返品することは問題ないとされています4。
この「明らかに」と「速やかに」は、日々の運用の話に直結します。
原因がどちらにあるかを示せるだけの受入検査の記録が残っているか、不良に気づいてから返品の連絡までに時間が空いていないか。
条項を整えることと同じくらい、検収の段取りが実際に回っているかどうかが、この場面での立ち位置を決めます。
自社の取引がこの規制の対象に入るかどうかは、取引の内容と当事者の規模の区分によって決まります。
区分の具体的な基準は、公正取引委員会の公表資料で自社の取引に当てはめて確認してください。
該当するかどうかで、減額や返品を前提にした条項をそのまま使えるかが変わるため、契約書を作る前に押さえておきたいところです。

自社が供給側として賠償を求められた場合の責任範囲
受注側として保護される取引かどうかを見る
ここまでは仕入れる側の立場で見てきましたが、同じ枠組みは立場を入れ替えても働きます。
自社が部材を納める側で、発注元から「後工程で不具合が出たので今回は代金を半分にしてほしい」「仕様を変えるので作り直してほしい」と言われる場面です。
この取引が下請法の対象で、かつ自社に責任がないのであれば、受領拒否、返品、代金の減額、やり直しの要求は、いずれも禁止行為として整理されています4。
裏を返せば、境目は「自社に責任があるか」です。
発注元の指示どおりに作ったのか、途中で口頭の仕様変更があったのか、出荷前の検査で何を確認したのか。
これらが後から辿れる形で残っていれば、責任の所在について事実で話ができます。
残っていなければ、力関係の押し引きで決まってしまいやすくなります。
下請法の枠組みは、責任のない負担を一方的に押し付けられることを防ぐものであって、自社に本当に原因がある不良まで免れさせるものではありません。
明らかに受注側に責任がある不良品を受領後速やかに返品することは問題ないとされている点も、同じことを反対側から言っています4。
PL法上の製造業者としての責任は別に生じる
取引先との間で負担のやり取りが整理できても、供給した部品や原材料の欠陥が人身事故につながった場合には、別の責任が姿を現します。
消費者庁は、部品に欠陥がある場合、部品の製造業者だけでなく完成品の製造業者に対しても損害賠償を請求できると説明しています5。
被害を受けた人から見れば、部品メーカーも完成品メーカーも請求の相手になりうるということです。
対象になる損害の範囲には線が引かれています。
製造物責任法で補償の対象となるのは、生命・身体の被害と、欠陥のある製品以外の財産に生じた損害であり、製造物自体の損害にとどまる場合は対象外とされています5。
納めた部品が壊れただけであれば契約上の責任の話ですが、その故障で周囲の設備が損傷したり人が負傷したりすれば、製造物責任法の土俵が加わります。
もう一点、供給側として押さえておきたいのが免責特約の限界です。
直接の取引相手との間で特約により免責を定めることは可能ですが、最終的な被害者に対してはその効力が及びません5。
つまり、契約書に免責を書き込むことで動かせるのは当事者間の内部の負担であって、消費者からの請求そのものを止める効果はありません。
この区別を取り違えると、契約書を整えたことで対外的なリスクまで消えたと誤解してしまいます。
製品事故で第三者に賠償した後、仕入先へ求償できるか
被害者への責任と、事業者間の内部負担は別の層にある
自社が完成品メーカーとして消費者に賠償を行い、その後の原因調査で、原因は仕入れた部品にあったと判明した。
この場合に仕入先へ負担を求められるかは、前の節で見た構図の裏側にあたります。
被害者は部品メーカーと完成品メーカーのどちらにも請求できるとされていますが5、それは外側から見た責任の話で、支払ったあとに事業者同士でどう分けるかは別の層の問題です。
この内部の負担配分をあらかじめ決めておくのが、契約書の製造物責任条項や求償に関する条項です。
条項がなければ、原因が本当に部品にあったのか、部品の欠陥と事故の間に因果関係があるのかを、事後に一から詰めていくことになります。
事故対応で回収や公表に追われている時期に、並行して仕入先と原因論を争うことになるため、実務上の負荷は小さくありません。
そこで効いてくるのが、平時に決めておく段取りです。
事故が起きた際に双方が原因調査に協力すること、製造ロットや検査記録をどれだけの期間保存しておくこと、第三者へ賠償した場合の負担をどう分けること。
これらは法律が自動的に決めてくれる部分ではなく、契約で埋めておく余地のある部分です。
免責事由と、3年・10年という期間の区切り
求償を考えるとき、部品を供給した側に用意されている反論も知っておく必要があります。
消費者庁の説明では、引き渡した時点の科学・技術の知識水準では欠陥を認識することが不可能だった場合や、部品の欠陥が完成品メーカーの設計指示のみに起因する場合には免責されるとされています5。
後者は、完成品側が細かい仕様や設計を指定して作らせている取引では特に意識しておきたい点です。
自社が図面や条件を細かく指定し、そのとおりに作られた部品が原因で事故が起きたのであれば、仕入先への求償が思ったように通らない可能性があります。
誰がどの範囲の設計を決めたのかが辿れる記録は、責任を押し付けるためではなく、どちらが備えるべきリスクかを事前に分けるために意味を持ちます。
期間の区切りもあります。
製造物責任法に基づく損害賠償請求権は、損害および賠償義務者を知った時から3年間行使しないときに時効によって消滅するとされ5、製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したときにも時効によって消滅するとされています5。
これは被害者からの請求権についての期間であり、事業者間の契約に基づく請求の期間制限とは別のものとして整理して考える必要があります。
耐用年数の長い製品を扱っている場合、10年という区切りは記録の保存期間を考えるうえでの手がかりになります。
事故が起きてから製造ロットや部品の供給元を辿れなければ、求償の相手を特定すること自体ができません。
どこまでの記録を、どれだけの期間残すのかは、契約条項と同じ重みで決めておく価値があります。
契約締結時に整えておくべき条項・確認事項
契約不適合の範囲と、賠償条項を先に決める
ここまでの整理を、新しく仕入契約を結ぶとき、あるいは既存の契約を見直すときの視点に移します。
まず手を入れる価値があるのは、何をもって契約に適合しないと判断するかの部分です。
仕様書や規格をどの文書で特定するのか、受入時にどの項目を検査するのか、不適合を見つけたときに誰へどのように連絡するのか。
ここが曖昧なままだと、不良かどうかという入口で議論が止まり、賠償の話にたどり着きません。
次が賠償の範囲と上限です。
対象を製品代金と交換費用に限るのか、検査や選別の実費、回収にかかる費用まで含めるのか、逸失利益をどう扱うのか。
上限を置くかどうかは立場によって望ましい答えが違い、買う側は上限を低くされたくない一方、供給する側は青天井を避けたいという関係になります。
仕入れて加工し、自社製品として売る会社では、この二つの契約がねじれていないかを見ておくと役に立ちます。
販売先との契約では回収費用まで負う約束をしているのに、仕入契約では賠償が部材代金までに絞られている、という組み合わせは実際に起こります。
その差額は、事故が起きたときに自社が引き受ける分です。
条文を一本ずつ読むのではなく、入口と出口の契約を並べて見比べる作業が、ここでは効きます。
下請法の該当性と、製造物責任・求償の取り決め
条項を書く前に確かめておきたいのが、その取引が下請法の枠に入るかどうかです。
対象となる取引では、受注側に責任がないのに減額・返品・受領拒否・やり直しを求めることが禁止行為とされているため4、これらを前提にした条項をそのまま運用することはできません。
該当性は取引の内容と当事者の規模の区分によって決まるので、公正取引委員会の資料に照らして自社の取引を当てはめておくと、条項を作ったあとで使えないと気づく事態を避けられます。
最後が、製造物責任を見据えた取り決めです。
被害者への責任は当事者間の特約では動かせませんが5、賠償した後の負担をどう分けるか、原因調査にどう協力するか、記録をどれだけ残すかは契約で決められる範囲にあります。
設計や仕様をどちらが指定したのかで免責の扱いが変わりうる点5も踏まえると、仕様の決定過程を文書に残す運用は、条項と対になって意味を持ちます。

これらは条文の体裁を整えれば終わる話ではなく、実際に該当するか、いまの運用で記録が残るかによって効き方が変わります。
取引額の大きい仕入先や、人身被害につながりうる製品に関わる仕入先から順に見直していくと、限られた時間でも手当ての効果が出やすくなります。
個別条項の有効性や自社の取引への当てはめについては、契約を交わす前に弁護士等へ確認しておくと安心です。
| 確かめる項目 | 決めていない場合に起きること |
|---|---|
| 何を契約不適合とするか(仕様・検査の基準) | 不具合があったかどうかの評価自体が食い違う |
| 損害賠償の範囲と上限 | 逸失利益や回収費用を含むかどうかで交渉が止まる |
| 相手が下請法上の受注側に当たるか | 減額や返品の条項をそのまま使えない取引で運用してしまう |
| 製造物責任と求償の分担 | 第三者へ賠償した後の負担配分を一から交渉することになる |
条文の建て付けが分かっても、自社の取引がどの枠に入るのか、いまの発注・検収の記録で帰責事由を示せるのかまでは、契約書を読むだけでは判断しにくいためです。
日々の発注から納品・検収までの記録がどう残っているかを持ち寄れば、条項どおりに運用できている部分と、証拠が足りずに交渉で不利になりうる部分を切り分けられます。無料相談で要件を整理する
取引の相手・立場によって適用される法律の整理
自社が買う側か供給する側か、相手が誰かという取引の前提で分けています。
- どの取引でも土台になるのが民法。引き渡された物が契約内容に適合しないときの追完請求と、帰責事由がある債務不履行に対する損害賠償・解除がここに含まれる。
- 相手が下請法上の受注側に当たる取引では、責任がないのに減額・返品・受領拒否・やり直しを求めることが禁じられ、契約条項があっても一方的な負担の転嫁はできない。
- 製品が人の生命・身体や他の財産に被害を与えた場面では製造物責任法が加わり、部品の製造業者と完成品の製造業者の双方が被害者からの請求の相手になりうる。
- 当事者間の特約は、賠償の範囲・上限や事業者間の内部負担を決める役割を持つが、被害者に対する責任までは動かせない。

同じ取引でも、自社が発注側か受注側かが入れ替われば、同じ規制が自社を縛る側にも守る側にも働きます。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 請求できるか | 仕入先に帰責事由があるか。不可抗力など責めに帰することができない事由なら賠償は請求できない |
| 請求の手段 | 物の不適合は追完請求が入口。あわせて損害賠償や契約解除も妨げられない |
| 契約書の役割 | 不適合の範囲・通知の段取り・賠償の範囲と上限を定め、事後の争点を事前に絞る |
| 上限・免責の限界 | 当事者間では原則として働くが、責任のない減額・返品や、被害者への責任までは動かせない |
| 期間の区切り | PL法の請求権は知った時から3年、引渡しから10年で時効消滅 |
仕入契約と販売契約で賠償の範囲がねじれていると、その差額は事故が起きたときに自社が抱えることになり、条文を一本ずつ読むだけでは気づきにくいためです。 入口と出口の取引条件を並べて確認すれば、どの取引先から見直すと抱えるリスクが減るのか、優先順位の付け方を具体的に詰められます。
よくある質問
契約書に損害賠償条項がなければ、仕入先に請求できないのですか
請求できないわけではありません。
民法は、債務者に帰責事由がある債務不履行について損害賠償を請求できるとし3、引き渡された物が契約内容に適合しない場合の追完請求1や、それとは別に損害賠償・解除を求めることも認めています2。
ただし条項がないと、帰責事由の有無や損害の範囲をそのつど個別に主張することになり、交渉は長引きやすくなります。
仕入先が下請法上の受注側に当たるかどうかは、何で判断するのですか
取引の内容と、当事者それぞれの規模の区分によって決まります。
具体的な基準は公正取引委員会の公表資料で、自社の取引に当てはめて確認してください。
該当する取引では、受注側に責任がないのに受領拒否・返品・代金減額・やり直しを求めることが法違反とされているため4、これらを前提にした契約条項をそのまま運用できるかが変わります。
製造物責任法に基づく損害賠償請求権は、いつまで行使できますか
損害および賠償義務者を知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅し5、製造業者等が製造物を引き渡した時から10年を経過したときにも時効によって消滅するとされています5。
これは被害者からの請求権についての期間であり、事業者間の契約に基づく請求とは別に考える必要があります。
自社製品の事故が仕入先の部品に起因する場合、消費者への賠償は誰が負うのですか
部品に欠陥がある場合、部品の製造業者だけでなく完成品の製造業者に対しても損害賠償を請求できるとされています5。
被害者から見れば、どちらも請求の相手になりうるということです。
契約書で免責を定めても、その効力は最終的な被害者には及びません5。
特約で決められるのは、賠償した後に事業者同士でどう負担を分けるかという部分です。
仕入先との交渉がまとまらない場合、示談以外にどのような解決手段がありますか
当事者同士の話し合いで折り合わない場合には、弁護士を代理人とした交渉や、裁判所の民事調停・訴訟といった手続きが選択肢になります。
どの手段が適しているかは、争点が事実関係にあるのか条項の解釈にあるのか、取引を今後も続けたいかによって変わります。
手続きの進め方や費用は事案によって異なるため、早い段階で弁護士へ相談し、手元にある検査記録や連絡の履歴を整理しておくと判断しやすくなります。
- 1 出典:法務省(民法)「民法第562条(買主の追完請求権)」(2020年施行・2017年改正)
- 2 出典:法務省(民法)「民法第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)」(2020年施行・2017年改正)
- 3 出典:法務省(民法)「民法第415条(債務不履行による損害賠償)」(2020年施行・2017年改正)
- 4 出典:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法 委託事業者の禁止行為」(2026年確認時点)
- 5 出典:消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」(2026年確認時点)
画像の出典元
- Two workers handle a package in a spacious warehouse surrounded by shelves stocked with boxes and products./Photo by Tiger Lily on Pexels
- Indoor view of an industrial warehouse filled with steel pipes stored on shelves./Photo by Zakhar Vozhdaienko on Pexels
- A detailed look at the interior of an industrial storage warehouse with metal shelves./Photo by Adrien Olichon on Pexels