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受注管理システムの欠品・引当トラブルの原因と見極め方|製品比較で確認すべき引当ロジックと欠品対応

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 誤出荷や二重引当が繰り返し起きる背景には、実在庫だけを見る管理、出荷指示時に引当をかける設計、チャネル間の反映ラグという構造がある
  • 設計由来か運用由来かは、発生件数の月ごとの推移と、担当者や商品への偏りの有無で切り分けられる
  • 複数拠点の引当は、商品ごとに人が順位を決める設計と、送り先やチャネルの条件でパターンを切り替える設計に分かれ、対象としている業務が異なる
  • 欠品時の自動化は、入荷予定や他倉庫への自動引当、最短納期の算出、代替品の提示、顧客への連絡までのどこまでを引き受けるかで差が出る
  • 比較の段階では、引当可能在庫の算出タイミング、在庫の正をどこが持つか、変更時の再引当、ロット単位の優先ルールを自社の詰まりどころと結びつけて確認する

40代後半の日本人女性が倉庫の棚での在庫確認をしている場面

受注管理システムで欠品・引当トラブルが繰り返し起きるのは何が原因か

出荷指示を出す直前になって在庫が足りないと分かる、同じ商品が二件の注文に引き当てられていてどちらを止めるか現場で相談する、欠品の連絡が翌営業日になって謝罪から入る。
こうしたことが月に何度も起きているなら、担当者の注意不足より先に、受注管理システムの引当の設計を疑うところから始めます。
実在庫の数だけを見て引当処理をかけていない、受注確定ではなく出荷指示の時点で引当をかけている、チャネル間の在庫反映にラグがある、といった構造が背景にあると指摘されています1。
まずは引当差異や二重引当の件数を月ごとに見て原因を切り分け、システム側だと分かった段階で、複数拠点での引当優先順位の決め方と、欠品が起きたときにどこまで自動で手配が進むかを軸に製品を見比べていくことになります。

誤出荷、二重引当、欠品連絡の遅れは、現場では別々の事故として記録されがちです。
ただ、一件ずつ経緯をたどっていくと、原因は「注文を受けた瞬間に、その在庫が他の注文に使われないよう押さえられているかどうか」という一点に集まっていきます。
押さえられていない在庫を根拠に納期を答えてしまえば、あとの工程で誰がどれだけ注意しても、どこかで辻褄が合わなくなります。

もっとも素朴な形は、実在庫の数だけを管理していて、引当という処理そのものを持っていない状態です。
表計算や古い基幹システムで在庫表を見ながら受注する運用では、数字を目で確認してから実際に在庫が減算されるまでに時間が空き、その間に別の注文が同じ数字を見てしまいます1。
朝に在庫表を見て一件受け、昼に別の担当が同じ行を見てもう一件受ける。
在庫表の数字自体は間違っていませんが、押さえられていない以上、どちらの注文に対しても確約にはなっていません。

次に多いのが、引当をかけるタイミングが受注確定ではなく出荷指示の時点に置かれている設計です1。
この設計では、受注を確定してから出荷指示を出すまでの間隔が、そのまま在庫を取り合われる可能性のある時間になります。
受注から出荷まで同日で回るEC運用なら影響は小さく済みますが、卸やBtoBのように受注から出荷まで数日空く業務では、その数日のあいだに同じ在庫が別の受注に消費されていきます。
担当者からは「受注登録したときには在庫があった」としか見えないため、原因が設計にあることに気づきにくい類のトラブルです。

複数の販売チャネルを持っている場合は、さらにチャネル間の在庫更新タイミングのずれが加わります。
各チャネルへ在庫数を反映するタイミングが揃わず、連携の反映にラグがあると、在庫がすでに他チャネルで売れているのに残っているように見えて、オーバーセルが起きます1。
この場合、在庫を押さえる仕組み自体は持っていても、押さえた結果が外側のチャネルに届くまでの時間が問題になっているので、対処の方向も変わってきます。

現場で起きていること 引当設計のどこに原因があるか
在庫表を見て受注したのに出荷時に足りない 実在庫の数だけを管理し引当処理をかけていない
受注登録時には在庫があったのに数日後に欠品する 受注確定ではなく出荷指示の時点で引当をかけている
他チャネルで売れた商品が自社サイトで買えてしまう チャネル間の在庫更新タイミングがずれ反映にラグがある

ここに挙げた整理は、在庫管理システムを手がける事業者が自社の技術解説として示したものであり、業界全体を調べた実測の分布ではありません1。
それでも、自社の注文が一件どう流れているかを追いかける手がかりとしては使えます。
受注登録の画面で在庫が減るのか、出荷指示を出したときに減るのか、チャネル側の在庫表示はいつ書き換わるのか。
この三点を自社の画面で確かめるだけで、どの原因に近いかの見当はかなり絞れます。

二重引当の原因を切り分けるために画面で確かめる三つの確認点
受注登録時点・出荷指示時点・チャネル表示の反映という三つの確認点を示した図

自社の課題はシステムの機能不足か、運用・マスタ設定の問題か、どう見極めるか

欠品や誤出荷が起きた直後の社内では、原因が「確認漏れ」に落ち着きやすいものです。
実際、一件ずつ見れば確認漏れは確認漏れなので、その場では反論しにくい。
ただ、同じ種類の漏れが人を変えても月を変えても出てくるなら、それは個人の注意力の問題ではなく、注意力に頼らなければ回らない設計になっているという話になります。

切り分けるには、一件ごとの原因追及ではなく、件数の推移を見る必要があります。
引当差異率、欠品率、二重引当の発生件数を月ごとに計測して、原因が設計側にあるかを診断するという考え方が示されています1。
これは基準値が定まった指標ではなく、あくまで自社の推移を自社で読むための提案です。
他社と比べて高いか低いかではなく、先月と比べてどう動いたかを見るものだと考えてください。

推移を見ると、原因の性格が出てきます。
運用やマスタ設定に原因がある場合、ルールを明文化したり担当者に説明したりした翌月には件数が目に見えて減り、その後また元に戻る、という上下の動きをすることが多くなります。
特定の担当者、特定の時間帯、特定の商品や倉庫に偏るのも、運用側や設定側の特徴です。
たとえば締め時間を過ぎた注文だけで起きているなら、それは締め処理の運用ルールの問題です。

一方、注文件数が増えた月に件数もほぼ比例して増える、担当者が替わっても減らない、新しいチャネルを追加した月から急に増えた、という動き方をするなら、注意や手順で吸収できる範囲を超えています。
注文の流量が増えるほど、押さえられていない在庫を見て受注する機会も増えるからです。
この形が見えたときが、機能面の比較検討に進む合図になります。

もうひとつ、計測そのものができるかという問題があります。
引き当てた数量と実際に出荷できた数量の差を後から追えなければ、差異率は出せません。
システムに引当の履歴が残らない場合は、当面は欠品が起きた注文だけを手元の記録に残し、注文番号、商品、チャネル、受注日と出荷予定日、誰が受けたかを並べるところから始めることになります。
記録が数か月分たまると、偏りがあるかどうかは表を眺めるだけでも見えてきます。

この見極めの段階で押さえておきたいのは、マスタ設定の問題と設計の問題は隣り合っているということです。
特定の倉庫だけで欠品が偏るなら、その倉庫の引当優先順位や在庫の持ち方の設定を先に見直したほうが早い。
逆に、どの倉庫から引き当てるかを商品ごとに決める手段がそもそも用意されていないのであれば、それは設定ではなく機能の話になります。
次の節では、その境目になる複数拠点の引当優先順位を、実際の製品がどう扱っているかで見ていきます。

発生件数の推移から運用起因と機能不足を見分ける観点(模式図)
明文化後の変化・偏りの有無・注文量との関係という三つの観点を示した図

複数拠点の在庫がある場合、引当の優先順位は製品でどう違うか

倉庫や拠点が複数あると、「在庫がある」という言葉がひとつの数字を指さなくなります。
全社では在庫があっても、その注文を引き当てるべき倉庫にはない。
このとき、どこから引き当てるかを決める規則がシステム側にあるかどうかで、欠品と判定されるかどうかも、出荷にかかる日数も変わります。
製品ごとの違いが最初に出るのも、この優先順位の決め方です。

一方の考え方は、商品ごとに人が順位を決めて固定しておくものです。
セルフィーでは、商品マスタの在庫詳細画面で、登録済みの倉庫ごとにどの倉庫から優先して引き当てるかの順位を上げ下げできます3。
主力倉庫を先に置く、預け先の在庫は後回しにする、といった判断を商品単位で残す形になり、あとから設定を見た人にも意図が読み取れます。

もう一方は、注文の条件によって引当先を切り替える考え方です。
ネクストエンジンでは、送り先の都道府県ごとにどの倉庫から引き当てるかのパターンを設定でき、購入したモールやカート、小売りと卸、実店舗とECといった購入チャネル別にもパターンを設定できます4。
さらに、ある倉庫の在庫が0になったときに次に引き当てたい倉庫の優先順位もパターンとして設定できます4。
注文が入るたびに人が倉庫を選ぶのではなく、条件と結果の組み合わせを先に決めておく形です。

この違いは、機能の多い少ないではなく、判断をどこに置くかの違いです。
商品ごとに人が順位を決める設計は、判断の根拠が商品マスタに残り、変更したい商品だけを触ればよい代わりに、送り先やチャネルで最適な倉庫が変わる場合には対応しきれません。
条件別にパターンを組む設計は、地域や販売経路で引当先を自動的に分けられる代わりに、パターンの設計そのものが難しくなり、想定しなかった注文が来たときにどのパターンに当たるのかを後から読み解く手間が生まれます。

比べる点 商品ごとに人が順位を決める設計 条件でパターンを切り替える設計
引当先の決まり方 商品マスタに登録した倉庫の順位に従う 送り先地域や購入チャネルなどの条件で分岐する
設定を変えるとき 対象の商品の順位を上げ下げする パターンの条件と対象倉庫を見直す
在庫が0になったとき 次にどこから引くかは順位の並びで決まる 在庫0時の次候補をパターンとして設定できる
設計の読みやすさ 商品単位で意図が追いやすい 条件が増えるほど当たるパターンの確認が必要になる

なお、この二製品は対象としている業務が違います。
セルフィーは卸やBtoBの販売管理・在庫管理を、ネクストエンジンは複数モールを含むECの一元管理を前提にしており、同じ土俵で優劣を付けられる関係ではありません34。
自社で確かめるべきなのは、送り先やチャネルによって引き当てたい倉庫が変わるのか、それとも商品ごとに固定できるのか、という自社の運用の側です。

引当優先順位を決める二つの設計の違い(模式図)
引当先の決まり方・設定変更時・在庫0時・読みやすさという観点で二つの設計を比べた図

欠品発生時にバックオーダー・代替品・部分出荷をどこまで自動化できるか

欠品時の対応候補と顧客連絡(実装例を基にした整理・必須順序ではありません)
在庫不足時の代替手配、納期算出、代替品提示、顧客連絡を対応区分として示す図

入荷予定・他倉庫在庫への自動引当

優先順位を整えても、どの倉庫にも在庫がない注文は出ます。
そこから先をシステムがどこまで引き受けるかが、欠品連絡の速さと担当者の負荷を分けます。
φ-Conductorでは、在庫不足のときに入荷予定への引当てや、他倉庫在庫の引当て・振替指示を自動で発行して不足分を補う仕組みが用意されています2。

この機能があると、欠品の検知がそのまま顧客への謝罪連絡に直結しなくなります。
担当者が発注書と入荷予定表を開いて、いつ入るかを確かめ、他倉庫に電話して在庫を回してもらえるか相談する。
その一連を人がやっている限り、確認に時間がかかるほど連絡は遅れます。
手配の候補をシステムが先に出しておけば、人が判断するのは出てきた候補で進めてよいかどうかだけになります。

分納・納期延期の自動算出

在庫が一部しかないとき、手元の分だけ先に送るのか、全量そろってから送るのかは、その場の判断になりがちです。
φ-Conductorでは、一部を分納するか全量を納期延期するかを、調達リードタイム、営業日カレンダー、輸送便スケジュールから計算し、最短納期を提示します2。

ここで自動化されているのは意思決定そのものではなく、判断に必要な日付の算出です。
分納したときに残りがいつ届くか、全量を待ったときに何日後になるかを人が暗算すると、休日や便のスケジュールを勘定に入れ損ねて、答えた納期が守れなくなります。
ベテランなら勘で合わせられても、その勘は引き継げません。
最短納期が提示されていれば、残る判断は取引先の事情に合わせてどちらを選ぶかだけになります。

代替品在庫の提示

欠品したとき、似た商品を提案できれば注文自体を落とさずに済むことがあります。
φ-Conductorでは、類似商品や型落ち商品をあらかじめ代替品として登録しておくと、本命の商品が欠品したときに利用可能な代替在庫量を提示します2。
ここで効いているのは提示の機能そのものより、代替関係を事前にデータとして持っている点です。

裏を返すと、この仕組みは代替品の登録がある商品にしか働きません2。
新商品が増えるたび、旧品番が終売になるたびに、どれとどれが置き換えられるかを誰かが登録し続ける必要があります。
導入すれば自動的に代替提案ができるようになるのではなく、営業や商品担当が持っている「これならお客様も納得する」という知識を、登録という形で残す作業が運用側に残ります。
比較の段階では、機能の有無と同時に、その登録を誰がどの頻度で維持できるかを自社側で見ておくほうが実際的です。

発注残を引当てた予約注文

欠品を欠品として扱わずに受ける方法もあります。
セルフィーでは、引当先として現在の在庫だけでなく、発注中でまだ入荷していない商品も指定でき、その場合は得意先から予約注文として受注できます3。
入荷予定の数量に対して先に注文を割り付けておく考え方で、入荷後にどの得意先へ回すかを取り合わずに済みます。

この受け方は、入荷日が読める商材では強く働きますが、入荷そのものが遅れたときの連絡は運用側に残ります。
予約注文として受けた時点で、取引先には納期の約束が伝わっているからです。
φ-Conductorでは、手配の内容が注文条件と異なる場合に顧客への連絡漏れを防ぐようシステムがフォローする仕組みが示されています2。
欠品対応の機能を比べるときは、手配を自動で組み替える部分だけでなく、組み替えた結果を誰にどう伝えるところまで面倒を見るのかを合わせて見ると、導入後に残る仕事の量が見えます。

ここで挙げた欠品時の自動処理は、公開されている製品情報で内容を確認できた実装例です。
φ-Conductorは食品業や電子部品製造業など、属人化しやすい受注から出荷手配までの業務を対象に作られた製品で、ECの一元管理を想定した製品とは前提が異なります2。
分納を何回まで行えるかといった細かい条件までは公開情報では確認できていませんし、ほかの製品に同じ機能がないという意味でもありません。
比較の場では、ここに挙げた項目をそのまま各社への質問に置き換えて、自社の商材で成立するかを聞くのが確実です。

複数チャネル(EC・店舗・卸)を持つ場合、在庫連携方式が引当処理にどう影響するか

ここまでは、自社の受注管理システムの内側で在庫をどう押さえるかという話でした。
販売するチャネルが複数になると、押さえた結果を外側のチャネルへ伝えるという工程が加わります。
そして、二重引当の原因のひとつとして挙げられていたのが、まさにこの伝わり方のずれです。
チャネルごとに在庫更新のタイミングが揃わず、連携の反映にラグがあると、すでに売れている在庫を別のチャネルが売ってしまいます1。

対処の方向はふたつに分かれます。
ひとつは、伝わる速さを上げて共有在庫のまま運用する方向。
もうひとつは、そもそもチャネル間で同じ在庫を取り合わせない方向です。
後者の具体策として、ネクストエンジンでは購入したモールやカート、小売りと卸、実店舗とECといった購入チャネル別に、どの倉庫から引き当てるかのパターンを設定できます4。
在庫を分けてしまえば、反映が多少遅れても取り合いは起きません。

在庫を分ける発想をさらに進めたのが拠点管理です。
目的別に拠点を登録して在庫を振り分けて管理でき、拠点を設定している状態で商品が売れた場合は、該当する拠点の在庫数だけが更新され、他の拠点には影響しません5。
卸向けに確保しておきたい在庫と、ECに出す在庫を分けて持ちたい場合には、この独立性がそのまま欠品の防波堤になります。
代わりに、チャネルごとの在庫が薄くなり、片方で欠品しているのにもう片方には残っている、という状態が起きやすくなります。
どちらを取るかは、チャネル間で在庫を融通する頻度で決まります。

連携の仕組みを比べるときに見落としやすいのが、店舗側に表示される数字が何なのかという点です。
ネクストエンジンでは、1店舗に複数の拠点を紐づけた場合、在庫連携のタイミングで最もフリー在庫数の多い拠点の値が店舗側に連携されます5。
合計値ではないので、複数拠点の在庫を合わせた数量を店舗に見せているつもりでいると、表示される在庫数が想定より少なく、売れるはずの注文を取り逃がすことになります。
逆にいえば、一拠点から出せる数量を超える注文が入らないという意味でもあり、この挙動を知っていれば、在庫の持ち方と店舗表示の関係を自社で設計できます。

ここで挙げたのはネクストエンジンで確認できた実装であり、複数拠点を持つすべての構成に同じ考え方が当てはまるわけではありません。
ほかの製品にチャネル別の引当設定があるかどうかも、今回は確認していません。
比較の場では、チャネルごとに引当元を分けられるか、分けた場合に各チャネルへ連携される在庫数がどう決まるか、連携の間隔はどれくらいかを、同じ質問として各社に投げると、回答の差がそのまま設計思想の差になって返ってきます。

チャネル在庫の二つの管理方針と製品固有の表示例(模式図)
共有在庫のまま速さを上げる方向・チャネルごとに在庫を分ける方向・複数拠点を紐づけたときの表示という三つの観点を示した図

競合の受注管理システムを比較する際、欠品・引当機能以外に確認すべき条件は何か

引当機能以外に比較段階で確認したい四つの設計要件(一事業者が示す提案に基づく模式図)
ATPのリアルタイム算出・基幹とWMSの役割分担・処理速度と自動再引当・優先ルールの柔軟性という四つの観点を示した図

ATPのリアルタイム算出

ここまで見てきた優先順位や欠品対応は、いずれも「いま何個売れるか」という数字が正しく出ていることを前提にしています。
この売れる数量はATP(引当可能在庫)と呼ばれ、現在の在庫に入荷予定を足し、すでに引き当てた分を差し引いて求めるのが基本です。
これをリアルタイムに算出できることが、リアルタイム引当の設計要件のひとつとして挙げられています1。

確認のときに区別しておきたいのは、データを持っていることと、それを常時計算して返す機能があることは別だという点です。
入荷予定も引当済数量もシステムの中にあるのに、引当可能在庫として合成した数字は夜間のバッチでしか作られない、という構成はあり得ます。
受注画面で見えている数字がいつ時点のものなのかを、デモの場で実際に画面を見ながら聞くのが早道です。

基幹とWMSの役割分担

倉庫側にWMS(倉庫管理システム)を入れている場合、在庫の数字は基幹系と倉庫側の両方に存在します。
どちらが引当の正しい値を持つのかという役割分担が、設計要件として挙げられています1。
両方が独立に引当を持つと、片方だけが更新された瞬間に差異が生まれ、その差異を毎日誰かが突き合わせる仕事が生まれます。

受注管理システムを選ぶ側から見ると、この論点は「うちの倉庫システムとどちらが在庫の正を持つ想定ですか」という一文で聞けます。
回答が曖昧なまま導入すると、引当差異率を測ろうとしたときに、そもそもどちらの数字を基準にするかで揉めることになります。

処理速度と自動再引当

引当が数秒以内に処理されることと、受注の変更時に自動で再引当がかかることも、設計要件として挙げられています1。
処理速度は、注文が集中する時間帯に二重引当が起きるかどうかに直結します。
押さえるまでの時間が長いほど、その隙間に別の注文が入る余地が広がるからです。

自動再引当のほうは、数量変更やキャンセル、出荷先変更が日常的に発生する業務ほど効きます。
変更のたびに人が引当を解除して掛け直す運用だと、解除だけして掛け直しを忘れた在庫が宙に浮き、在庫はあるのに引き当てられないという形の欠品が起きます。
自社の受注のうち、どれくらいが後から変更されるかを思い浮かべたうえで、この項目の重さを決めてください。

FIFO/FEFOなど優先ルールの柔軟性

倉庫の優先順位とは別に、同じ倉庫の中でどのロットから引き当てるかというルールがあります。
先に入ったものから出すFIFO、期限が近いものから出すFEFOなどを柔軟に設定できることが、設計要件のひとつに挙げられています1。
賞味期限や使用期限のある商材、ロット管理が必要な商材では、この設定ができないことが、そのまま廃棄や納入先とのトラブルにつながります。

確認する設計要件 自社で確かめたいこと
ATPのリアルタイム算出 受注画面に出ている引当可能在庫がいつ時点の数字か
基幹とWMSの役割分担 在庫と引当の正をどちらが持つ想定か
処理速度 注文が集中する時間帯でも押さえるまでが短く保たれるか
受注変更時の自動再引当 数量変更やキャンセルの後に引当が掛け直されるか
優先ルールの柔軟性 先入先出や期限順などロット単位の引当条件を設定できるか

これら五つの要件は、在庫管理システムを手がける事業者が示した設計上の提案であり、業界で標準として定まったチェックリストではありません1。
そのまま機能表の○×を集める使い方をすると、どの製品も○が並んで差が出ません。
自社の注文がどこで詰まっているか、つまり最初の節で切り分けた原因と結びつけて、詰まっている箇所に対応する要件だけを深く聞くほうが、回答の差が見えます。
たとえば変更やキャンセルが多いなら再引当の挙動を、期限管理のある商材ならロット単位の引当条件を、それぞれ自社の実例を出して確認する形です。

複数拠点の優先順位は、製品によって設計の前提そのものが違います。
次に、それぞれがどんな運用を想定しているかを見ていきます。

自社の欠品が設計由来か運用由来かは、発生件数の推移だけでなく、受注から出荷までの一件の流れを画面と記録の両方で追わないと切り分けづらいところがあります。社内だけで判断すると、確認漏れという結論に落ち着いてしまいがちです。

現在お使いの仕組みで在庫がいつ押さえられ、チャネル側の数字がいつ書き換わっているかを一緒に追うと、直すべきなのが設定なのか、引当の設計そのものなのかが見えてきます。無料相談で要件を整理する

複数拠点の引当優先順位は、どんな運用を前提に設計されているか

製品 引当先を決める単位 条件による切り替え 対象としている業務
セルフィー(株式会社ミノタウロス) 商品ごとに、登録済み倉庫の順位を人が並べ替える3 送り先やチャネルによる切り替えは公開情報では確認できず 卸・BtoB向けの販売管理・在庫管理3
ネクストエンジン(NE株式会社) 倉庫・拠点ごとにパターンとして設定する4 送り先都道府県別、購入チャネル別、在庫0時の次候補を設定できる4 複数モールを含むECの一元管理45

セルフィー(株式会社ミノタウロス)|順位を人の判断として残す

どんな運用で効くか

商品マスタの在庫詳細画面で倉庫の順位を上げ下げする方式は、倉庫の数が数えられる範囲にあって、どこから出すかの判断に人の事情が入る運用と相性がよく働きます3。
特定の得意先向けに確保している倉庫がある、この商品は預け先から出すと送料が合わない、といった事情は、条件式に落としにくい代わりに、商品ごとの順位としてなら残せます。
設定した本人以外が後から見ても、なぜこの順番なのかを商品単位で追えるのが、この方式の実務上の強みです。

裏側の条件として、送り先の地域や販売経路によって最適な倉庫が変わる運用では、商品ごとの固定順位だけでは追いつきません。
同じ商品でも、遠方の得意先には別倉庫から出したいという要求が出てきたとき、順位の並べ替えでは表現できないからです。
自社の注文を思い返して、倉庫を選ぶ理由が商品側にあるのか、注文側にあるのかを見分けると、この方式で足りるかどうかの判断が付きます。

発注残まで含めて順位を考えるかどうか

この製品では、引当先として現在の在庫だけでなく発注中でまだ入荷していない商品も指定でき、その場合は予約注文として受注できます3。
優先順位を考えるときに、倉庫の並びだけでなく入荷予定という時間軸も同じ土俵に乗るということです。
手元の在庫を先に使うのか、入荷予定を当てて手元を別の得意先に残すのかという判断が、引当の設定と地続きになります。

仕入から販売までのリードタイムが読める商材では、この組み合わせが欠品件数をそのまま押し下げる方向に働きます。
一方、入荷日が読みにくい商材では、予約注文として受けた約束が守れないリスクを抱えることになるため、どの商品で発注残を引当対象にするかを絞って運用するほうが無難です。

ネクストエンジン(NE株式会社)|判断を先に条件として組んでおく

どんな運用で効くか

送り先都道府県別と購入チャネル別のパターン、さらに在庫が0になったときの次候補倉庫まで設定できる方式は、注文の量が多く、一件ずつ人が倉庫を選んでいられない運用を前提にしています4。
東日本向けは東の倉庫から、卸のチャネルは卸用の拠点から、といった分け方を先に決めておけば、担当者が見るのは例外だけになります。
複数のモールと自社ECを並行して運用し、注文が時間帯に集中するような事業では、この自動化がないと処理が追いつきません。

代わりに、設定の維持が新しい仕事として発生します。
倉庫を増やす、チャネルを増やす、繁忙期だけ出荷元を変えるといった変更のたびに、影響するパターンを洗い出して直す必要があるからです。
誰がパターンの全体像を把握しているかを決めずに運用を始めると、想定外の倉庫から引き当てられた注文が出たときに、原因の特定に時間がかかります。

在庫を分けて持つ前提と合わせて考える

この製品では拠点ごとに在庫を独立して管理でき、売れたときに更新されるのは該当する拠点の在庫数だけです5。
つまり、条件でパターンを切り替える設計は、在庫を一つの塊として全チャネルで共有するのではなく、用途ごとに分けて持ったうえで、どの塊から引くかを条件で決める考え方の上に成り立っています。
この前提が自社の在庫の持ち方と合うかどうかが、機能の細部よりも先に来る判断です。

在庫を分けると、チャネル間で融通したい場面で手間が増えます。
片方の拠点で欠品しているのに別の拠点には残っている、という状態をどう扱うかを運用として決めておかないと、せっかく分けた在庫が塩漬けになります。
在庫を分けて安全を取るか、共有して回転を優先するかは製品が決めることではなく、自社の商材の回転の速さと、欠品したときの損失の重さで決まります。

要点の整理

軸 基準
原因の切り分け 引当のタイミング、実在庫のみの管理、チャネル反映のラグのどれに当てはまるかを、自社の注文一件の流れで確かめる
設計か運用かの見極め 発生件数を月ごとに記録し、注文量に比例して増えるか、特定の条件に偏るかで判断する
複数拠点の優先順位 倉庫を選ぶ理由が商品側にあるなら商品ごとの順位、注文側にあるなら条件別パターンの設計を軸に比較する
欠品時の自動化 自動で手配を組み替える範囲と、組み替えた結果を顧客へ伝えるところまで含むかを分けて確認する
チャネル連携 在庫を共有して速さを取るか、チャネル別に分けて取り合いを避けるかを、商材の回転と欠品時の損失で決める

引当優先順位や欠品時の自動化は、機能表の項目が揃っていても、自社の商材や倉庫構成に当てはめると動き方が変わります。各社への質問の仕方を決めておかないと、比較の回答が横並びになって差が出ません。 自社の注文のどこで手が止まっているかを整理したうえで、どの設計要件を優先して確認すべきか、質問の形まで落として一緒に組み立てられます。

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よくある質問

予約注文で発注残を引き当てた場合、入荷が遅れたときの顧客連絡はどう扱うべきですか

発注残を引当対象にして予約注文として受ける方式では、受注の時点で得意先に納期の約束が伝わっている点が、通常の在庫引当と決定的に違います3。
そのため、入荷遅延の情報が仕入側から届いた時点で、その入荷予定に紐づいている受注を逆引きできるかが実務上の分かれ目になります。
製品によっては、手配の内容が注文条件と異なる場合に顧客への連絡漏れを防ぐフォローの仕組みを持つものもあります2。
そうした仕組みがない場合は、入荷予定日を更新したときに誰が該当受注を洗い出して連絡するかを運用ルールとして決めておく必要があります。
連絡が遅れて困るのは遅延そのものより、取引先が別の手当てをする時間を失うことなので、遅れが確定していなくても見込みが立った段階で一報を入れる運用にしておくと、事後の調整が軽くなります。

複数モールと自社ECを併用する場合、在庫連携のタイムラグはどこまで許容できますか

何分までなら安全といった基準値は、公開されている資料では確認できていません。
許容できる長さは、同じ商品に注文が入る間隔で決まるためです。
反映のラグが注文の間隔より短ければ問題は表面化せず、長ければオーバーセルが起きます1。
自社で判断するには、売れ筋商品について、同じ商品に注文が連続して入る間隔がどれくらいかを実績から見て、連携の間隔と比べるのが実際的です。
間隔を縮められない、あるいは縮めても追いつかない商品があるなら、チャネル別に引当元を分けて在庫を共有させない構成のほうが確実です4。
在庫を分ければ取り合いは起きませんが、各チャネルの在庫は薄くなるので、売り逃しとオーバーセルのどちらを避けたいかという選択になります。

引当優先順位のパターンを変更した際、既存の確定受注は再引当されますか

変更時に既存受注がどう扱われるかは製品ごとに異なり、今回確認した公開情報の範囲では、パターン変更時の再引当の可否まではどの製品についても確認できていません。
関連する観点として、受注内容が変更されたときに自動で再引当がかかることが設計要件のひとつに挙げられています1。
ただしこれは受注側の変更を想定したもので、設定側を変えたときの挙動とは別の話です。
比較や導入の場では、パターンを変更した時点で未出荷の受注が新しい設定で引き直されるのか、変更前の引当が維持されるのかを、具体的な場面として質問してください。
引き直される仕様なら繁忙期の設定変更が危険になりますし、維持される仕様なら変更後もしばらく古い倉庫から出荷が続くことになるので、どちらであっても運用の組み方が変わります。

運用ルールの見直しだけで二重引当を減らせるのは、どのようなときですか

発生が特定の条件に偏っているときです。
締め時間を過ぎた注文だけ、特定の担当者が受けた注文だけ、特定の商品や倉庫だけ、といった偏りがあるなら、手順や設定の側に原因がある可能性が高く、ルールの明文化やマスタの修正で件数は落ちます。
逆に、注文件数が増えた月に比例して増える、担当者が替わっても減らない、といった動き方をする場合は、在庫を押さえるまでの時間や引当のタイミングという設計側の要因が残っているため、運用の徹底では吸収しきれません1。
どちらかを見分けるには、発生件数を月ごとに記録して推移を見るのが手早い方法です1。
なお、運用で減らせる場合でも、担当者の確認作業に依存した状態は人が替わると元に戻るので、減った状態を維持できるかは別に確認しておくほうがよいでしょう。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:株式会社ripla「在庫管理システム|リアルタイム引当で欠品ゼロ——二重引当を防ぐ設計5要件」(2026年)
  2. 2 出典:株式会社フェアウェイソリューションズ「φ-Conductor Series 製品ページ(受注手配ー在庫不足への対応)」
  3. 3 出典:株式会社ミノタウロス「販売管理・在庫管理のセルフィー 操作ガイド(在庫引当優先順位)」
  4. 4 出典:NE株式会社「ネクストエンジン 倉庫連携ページ」
  5. 5 出典:NE株式会社「ネクストエンジン 拠点管理ページ」

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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