◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 多頻度小口配送は在庫圧縮やEC化を背景に広がり、1回あたりの出荷ロットは年々小さくなっています。
- 積載率の低下や荷待ち・荷役時間の増加など、多頻度小口には物流現場での課題が伴います。
- 2026年4月以降、物流効率化法により発注側にも対応が求められる領域になりました。
目次
多頻度小口とは?1件当たり0.83トンまで進んだ小口化の実態
多頻度小口とは、1回あたりの出荷ロットを小さくし、その分だけ配送の回数を増やす取引・物流の形態を指します。1件当たりの貨物量は1990年度の2.43トンから2021年度は0.83トンまで縮小しました*2。
大ロット・低頻度配送と対をなす、出荷の細分化
従来の物流は、1回の出荷量を大きくして配送回数を抑える大ロット・低頻度配送が基本でした。多頻度小口はこれと対をなし、在庫を圧縮しながら欠品を避けるために出荷単位を細かく分け、配送回数を増やす形態です。
取引先ごとの発注が細かく分かれるほど、1件あたりの貨物量は小さくなります。この傾向は特定の業界に限らず、製造業・卸・小売の各段階で共通して進んでいます。
1件当たり貨物量、30年で2.43トンから0.83トンへ
国土交通省の資料によれば、1件当たり平均貨物量は1990年度の2.43トンから2021年度は0.83トンまで減少しています*2。同期間に物流件数は13,656千件から25,080千件へ増加し、貨物総量は33,251千トンから20,722千トンへ縮小しました*2。
件数が増え総量が減っているということは、1件あたりの荷物がそれだけ小さくなっているということです。この傾向は、次章で扱う積載率の低下と直結します。
0.1トン未満の貨物が82.2%を占める2021年調査
全国貨物純流動調査(物流センサス)では、0.1トン未満の貨物が占める割合が2010年調査の75.1%から2021年調査は82.2%へ上昇しました*1。平均流動ロットも2010年調査0.95トンから2021年調査0.83トンへ縮小しています*1。
貨物総量・物流件数は3日間の輸送実績にもとづく調査値として公表されています*2。小口の貨物が輸送全体の大半を占める状況が、直近の調査でも続いていることがわかります。
在庫圧縮・欠品回避・EC化が生んだ小口化の合理性
小口化が進む背景には、荷主側の合理的な判断があります。在庫を抱えるコストを抑えたい、欠品を避けたい、ECの普及で小ロットの注文が増えたという事情が重なり、発注は小分けになりやすくなりました。
小口化そのものを否定すべき動きではありません。ただし、小口化が進むほど物流の現場には次章で扱う課題が積み重なります。
積載率低下・輸送力不足・荷待ち増——多頻度小口が生む5つの課題
① 積載率は施策なしで38%、政府目標は2030年度44%
内閣官房の試算では、施策を講じない場合の積載率は38%にとどまるとされています*5。施策を講じた場合は2024年度に40%、2030年度には44%まで引き上げる目標が示されています*5。
この38%・40%・44%はいずれも試算値・目標値であり、実績として達成された数値ではありません*5。多頻度小口が広がるほど1台あたりの積み残しが増え、目標達成の難度が上がります。
② 荷待ち・荷役等時間の増加——1運行あたり計約3時間
国土交通省の合同会議資料では、1運行あたりの荷待ち・荷役等作業時間が計約3時間にのぼると推計されています*3。内閣官房の輸送力試算では、荷待ち・荷役時間は施策を講じない場合で年間750時間と置かれ、施策を講じた場合の削減量は2024年度で年間75時間、2030年度で年間125時間と見込まれています*5。
配送回数が増えるほど、荷待ちと荷役の発生回数も比例して増えます。多頻度小口は、ドライバーの拘束時間を押し上げる一因になっています。
③ 輸送力不足——施策なしなら2030年度に必要輸送力の▲34
内閣官房の輸送力試算では、必要輸送力を100としたとき、施策を講じない場合の不足は2024年度に▲14、2030年度には▲34まで拡大するとされています*5。この数値は必要輸送力に対する不足分の試算であり、確定した予測ではありません*5。
小口化によって配送回数が増えても、運べる総量そのものが増えるわけではありません。輸送力の不足は、多頻度小口が広がるほど顕在化しやすい課題です。
④ 物流コストの上昇と環境負荷
配送回数が増えれば、燃料費や人件費、稼働させる車両の台数が増え、物流コストは上昇しやすくなります。積載率が低い車両が走行するほど、輸送量あたりのCO2排出も増えます。
荷主にとっては物流委託費の上昇として、社会全体にとっては環境負荷の増加として現れる課題です。
⑤ 地域による偏り——小売業向け配送は過疎地域で輸送効率の低下がより深刻
国土交通省の参考資料集では、小売業向けの配送で平均流動ロットが年々減少しており、なかでも過疎地域では輸送効率の低下がより深刻だと整理されています*2。人口が少ない地域ほど、1件あたりの配送効率を確保しにくいことがうかがえます。
都市部と過疎地域では、多頻度小口が生む課題の深刻度が異なります。全国一律の対策では、地域差を見落とすおそれがあります。
2026年4月以降、物流効率化法で発注側の責任が問われる
正式名称は「物資の流通の効率化に関する法律」(物流効率化法。改正前は流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)です。2025年度はすべての対象事業者へ努力義務を課し、2026年度には一定規模以上の特定事業者に規制的措置を適用します*4。
2025年度は努力義務、2026年度は特定事業者への規制的措置
2025年度は、対象となる事業者全体に物流効率化の取り組みについて努力義務が課され、指導・助言や調査・公表の対象になります*4。2026年度からは、一定規模以上の特定事業者に中長期計画の作成・物流統括管理者の選任・定期の報告が義務付けられます*4。取り組みが不十分な場合は、勧告・命令の対象になります*4。
努力義務の4項目——積載効率・荷待ち・荷役・実効性確保
国土交通省の合同会議資料では、荷主・物流事業者が取り組むべき事項が整理されています*3。積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮、取り組みの実効性の確保の4項目です*3。
この4項目は物流事業者だけの課題ではなく、発送量や納品条件を決める荷主側の判断が直接影響する項目です。
自社は特定事業者か——9万トン・150台・70万トンの基準
特定事業者に該当するかどうかは、業態ごとに定められた指定基準値で判定します*4。
| 事業者区分 | 指定基準値 |
|---|---|
| 特定荷主・特定連鎖化事業者 | 取扱貨物重量 年度9万トン以上 |
| 特定貨物自動車運送事業者等 | 保有車両台数 150台以上 |
| 特定倉庫業者 | 貨物保管量 年度70万トン以上 |
出典:国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト*4
荷主・連鎖化事業者は取扱貨物重量が年度9万トン以上、貨物自動車運送事業者等は保有車両150台以上で指定対象です*4。倉庫業者は貨物保管量が年度70万トン以上で、それぞれ特定事業者に指定されます*4。自社の取扱貨物量や保有車両数を確認し、基準への該当有無を早めに把握することが大切です。
特定事業者の義務——中長期計画・定期報告・CLO選任
特定事業者に指定されると、中長期的な計画の作成、毎年度の取り組み状況の報告、物流統括管理者(CLO。Chief Logistics Officer。物流の効率化を経営レベルで統括する責任者)の選任が義務付けられます*4。
取り組みが不十分と判断されれば、勧告、さらには命令の対象になります*4。特定事業者に該当しない事業者も、努力義務への対応が求められる立場に変わりはありません。
荷主判断基準から逆算する、多頻度小口の課題への対策
国土交通省の合同会議資料では、荷主が講ずべき措置の判断基準に盛り込む取組例が、検討の視点として示されています*3。ここでは、その取組例を発注業務の具体的なアクションに置き換えて整理します。
荷主判断基準から見る対策の優先順5点/順位根拠:着手順序(発注データの整備が前提になる順)
- 適切なリードタイムを確保します。積合せ輸送を可能にする前提条件であり*3、発注締め時間の余裕を作る出発点になります。
- 発送量・納入量を平準化します。繁閑差をならし、納品日を集約することが取組例として挙げられています*3。
- 社内の物流・調達・販売部門を連携させます。部門間の連携促進も取組例に挙げられています*3。
- トラック予約受付システムや標準仕様パレットで荷待ち・荷役を短縮します*3。
- 物流情報標準ガイドラインに沿って、伝票・データ項目を標準化します*3。
積合せの前提となる、適切なリードタイムの確保
リードタイムが短いままでは、複数の取引先の荷物をまとめて積み合わせる余地が生まれません。国土交通省の合同会議資料は、複数荷主の貨物の積合せに取り組めるよう適切なリードタイムを確保することを、積載率向上の取組例として挙げています*3。
繁閑差の平準化と納品日の集約で発送量を適正化
発送量・納入量の適正化として、繁閑差の平準化と納品日の集約が取組例に挙げられています*3。発注が特定の曜日・時間帯に集中すると、その山に合わせて車両を用意する必要が生じ、積載率は下がりやすくなります。
物流・調達・販売部門を連携させる社内体制
合同会議資料は、社内の物流・調達・販売部門の連携促進も取組例として挙げています*3。発注条件を決める部門と実際に配送を担う部門の情報が分かれていると、リードタイムや納品日の見直しが進みません。
トラック予約受付システムと標準仕様パレットによる荷役短縮
荷待ち・荷役側の取組例として、出荷・納品の日時分散、トラック予約受付システムの導入、標準仕様パレットの使用、バーコードによる検品の効率化が挙げられています*3。これらは物流拠点側の対策ですが、発注側が納品時間を分散させる判断と組み合わせて初めて効果を発揮します。
物流情報標準ガイドラインに沿ったデータの標準化
合同会議資料は、物流情報標準ガイドラインへの準拠など物流データの標準化にも触れています*3。伝票や商品コードの書式が取引先ごとに異なると、発注データを一元管理できず、平準化や集約の判断自体が難しくなります。
受発注業務の見直しが、対策の起点になる理由
ここまでの取組例は、いずれも発注データが整理されていることを前提にしています。発注の窓口が分散したままでは、平準化も連携も着手できません。
発注が電話・FAX・メールに分散すると、納品日集約も適正化もできない
発注経路が電話・FAX・メールに分かれている場合、発送量や納品日をまとめて把握すること自体が難しくなります。取引先ごとに異なる書式・単位でのやり取りは、担当者の手作業による転記を増やし、平準化の判断材料であるデータをそろえる負担を大きくします。
この状態のまま発送量の適正化を試みても、実態を反映した判断はできません。前章で挙げた取組例は、いずれも発注データを横断して把握できることを前提にしています。
発注締め時間の統一とまとめ発注の誘導が生む効果
受発注システムやBtoB ECを使うと、発注締め時間を取引先横断で統一し、まとめ発注を促す設定が可能になります。納品日の指定や発注データの標準化も、システム上でルール化できます。
発注ルールを電話・FAXでの都度対応に任せている場合、統一自体に人手を要します。リードタイムの短い個別発注を電話やFAXのまま受け続けると、積み合わせの前提が崩れ、配送効率の低下という形で自社に跳ね返ります。
導入の進め方と、取引先への説明の順序
受発注業務を内製で見直す場合、複数部門にまたがる調整が欠かせません。発注ルールの棚卸し、取引先ごとの締め時間・単位の突き合わせ、既存システムとの連携要否の確認などが必要になります。取引先への説明も、影響が大きい先から段階的に進める必要があります。
自社だけで一連の調整を担う場合と、BtoBの商習慣に対応した受発注システムを活用する場合とでは、検討にかかる期間や社内の負担が変わります。
まとめ:小口化は止まらない。整えるべきは発注データ
本稿では、多頻度小口が生む課題と、2026年4月以降の物流効率化法への対応を整理しました。要点は3つに集約されます。第一に、1件当たり貨物量は0.83トンまで縮小し、小口化は今後も続く前提で考える必要があります*1。第二に、積載率低下・荷待ち増加・輸送力不足という課題は、物流効率化法により発注側の努力義務として位置づけられました*4。第三に、荷主の判断基準に向けて示された取組例*3を実行するには、発注データを横断して把握できることが前提になり、受発注業務の見直しがその起点になります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
多頻度小口配送のメリットは何ですか
多頻度小口配送の主なメリットは、在庫を圧縮しながら欠品を避けられる点です。必要な分だけをこまめに発注できるため、保管コストや廃棄リスクを抑えやすくなります。一方で配送回数が増えるため、積載率の低下という課題も生じます。
2026年4月から何が変わりますか
2026年度からは、一定規模以上の特定事業者に中長期計画の作成・物流統括管理者の選任・定期の報告が義務付けられます*4。取り組みが不十分な場合は勧告・命令の対象になります*4。
特定事業者に指定される基準は何トンですか
荷主・連鎖化事業者は取扱貨物重量が年度9万トン以上、倉庫業者は貨物保管量が年度70万トン以上で特定事業者に指定されます*4。貨物自動車運送事業者等は保有車両150台以上が基準です*4。
積載率の政府目標はどれくらいですか
内閣官房の試算では、施策を講じない場合の積載率は38%にとどまり、施策を講じた場合は2030年度に44%を目指すとされています*5。いずれも実績値ではなく試算・目標値です*5。
リードタイムを延ばすと欠品が増えませんか
リードタイムの延長は積み合わせ輸送を可能にしますが、発注から納品までの時間が延びるため、需要予測や在庫計画の見直しとあわせて検討する必要があります。合同会議資料は、リードタイムの確保と発送量・納入量の適正化を並べて取組例に挙げています*3。
- *1 出典:国土交通省「第11回全国貨物純流動調査(物流センサス)の調査結果について」(令和5年7月7日) https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000697.html
- *2 出典:国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ 参考資料集」別添2(令和7年11月) https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001968253.pdf
- *3 出典:国土交通省「改正物流効率化法に基づく基本方針、判断基準、指定基準等について」交通政策審議会交通体系分科会物流部会・産業構造審議会商務流通情報分科会流通小委員会・食料・農業・農村政策審議会食料産業部会物流小委員会合同会議資料(令和6年11月27日。判断基準等の検討段階の資料であり、取組例は同資料に「示してはどうか」として掲げられたもの) https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001760825.pdf
- *4 出典:国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「5分でわかる物流効率化法の改正のポイント」(2026年8月確認) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/5minutes/
- *5 出典:内閣官房(我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議)「2030年度に向けた政府の中長期計画(ポイント)」(令和6年2月16日) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/pdf/20240216.pdf
画像の出典元
- 物流のイメージ/Photo by Craftsman Concrete Floors on Unsplash
- 発注のイメージ/Photo by Dcps Chloé on Unsplash
- 受発注のイメージ/Photo by Giorgio Tomassetti on Unsplash
- よくある質問のイメージ/Photo by Stephen Harlan on Unsplash