◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 注文書の賠償条項を承諾すると、民法の原則に加えて、その文面で決めた範囲の責任を負うことになる
- 承諾前に優先関係・上限・損害の範囲を確かめ、読み取れない書き方はそれ自体を修正依頼の理由にする
- フリーランス法や取適法の禁止行為に賠償条項を直接対象にした項目は見当たらず、修正は契約の合理性で頼む
- 修正は上限、範囲の順に頼み、故意・重過失の例外は譲歩として残しておく
- 保険は契約で引き受けた責任をそのまま補償するとは限らないため、条項を示して補償の範囲を確かめる
目次

注文書の賠償の一文を承諾すると、何を負うことになるのか
取引先から届いた注文書の末尾に「損害が生じた場合は受注者が賠償する」という一文があり、承諾の返信を止めていませんか。
承諾すると、民法の原則に加えて、その一文で決めた範囲の責任を負うことになります。
賠償条項そのものを一律に禁じる法律は見当たらず、守りの中心は承諾前の確認と修正の依頼です。
上限があるか、どこまでの損害を含むか、基本契約とどちらが優先するかを確かめ、修正を頼み、それでも残る負担を保険でどこまで埋められるかを順に見ていきます。
民法の原則と賠償額の予定
たとえば、取引先の通販サイトで商品ページの制作と更新を請け負っている個人事業主が、次の注文書を受け取ったとします。
末尾には「受注者の責めに帰すべき事由により発注者に損害が生じたときは、受注者はその損害を賠償する」と一文だけ書かれています。
特別なことは書いていないように見えますが、承諾したあとに効いてくるのは、むしろ書かれていない部分です。
前提として、賠償条項がなくても、引き受けた仕事を約束どおりに果たさず相手に損害を与えれば、民法上の損害賠償の責任は生じます。
民法416条は、賠償の範囲を、通常生ずべき損害と、特別の事情による損害のうち当事者がその事情を予見すべきであったものとに分けています1。
注文書の賠償条項は、この原則をなぞるだけのこともあれば、範囲を広げることも、狭めることもあります。
広げる方向で読まれやすいのが、「一切の損害」「発生したすべての損害」という書き方です。
民法の区分のどこまでを含むつもりなのかが文面から分からず、トラブルになったとき、発注者は広く、受注者は狭く読もうとします。
商品ページの価格表示を誤ったという同じ出来事でも、修正にかかった作業費だけを指すのか、誤表示の間に売れなかった分の利益まで含むのかで、負担の大きさはまったく変わります。
もう一つ注意したいのが、賠償額をあらかじめ決めておく書き方です。
民法420条は、当事者が債務不履行についての損害賠償の額を予定できることを定め、違約金の定めは賠償額の予定と推定されるとしています1。
「納期に遅れた場合は遅延日数に応じて一定額を支払う」といった定めがあれば、実際の損害を一つずつ証明しなくても、その額を基準に請求されることになります。
合意して決めた額は、後から「実際の損害より大きすぎる」と見直してもらうのは簡単ではありません。
一回あたりの額が小さく見えても、遅延の日数や誤りの件数で積み上がる定め方なら、受け取る報酬を上回ることもあり得ます。
承諾前の段階で、自分の報酬と並べて重さを見ておくのはそのためです。
承諾前に確認する3点:上限・範囲・優先関係
民法の原則のうえに何が上乗せされるかは、注文書の一文だけを読んでも決まらないことがあります。
継続的な取引では、注文書とは別に基本契約書や発注者の取引約款が交わされていて、そこにも賠償の定めが置かれていることがあるからです。
承諾の返信を書く前に、関係する書類をすべて手元に並べるところから始めます。
最初に見るのは、どの書類の定めが優先するかです。
基本契約に「個別契約の定めが優先する」とあれば、注文書の一文が、基本契約で決めていた上限を事実上外してしまうことがあります。
逆に「基本契約が優先する」とあれば、注文書の文言より基本契約の条項が先に問題になります。
優先の定めがどこにもない場合、どちらが効くかは文言や取引の経緯で判断が分かれ、一般論では言い切れません。
その場合は、返信の前に、どちらの定めに従うのかを取引先に尋ね、答えを文面で残しておくのが安全です。
次に、賠償額の上限が書かれているかを見ます。
上限がなければ、損害の大きさがそのまま自分の負担になります。
小規模な受注者にとって、ここが事業の資金繰りや家計を最も直接に左右する部分です。
三つ目は、どこまでの損害を含むかです。
通常の損害に限るのか、逸失利益や、取引先のさらに先の顧客に生じた損害まで含むのかを、文面から読み取れるか確かめます。
読み取れない書き方であること自体が、修正を頼む理由になります。
この三つは、次の節で、受け入れやすい書き方と修正を考えたい書き方に分けて詳しく見ていきます。
| 見る点 | 条項がない場合(民法の原則) | 条項で決めた場合 |
|---|---|---|
| 賠償の範囲 | 通常の損害と予見すべき特別の事情による損害 | 書き方しだいで広がることも狭まることもある |
| 賠償の額 | 実際に生じた損害をもとに決まる | 賠償額の予定や違約金があればその額が基準になる |
| 上限 | 民法に一律の上限はない | 条項で上限を置くことができる |
小規模でも負える条件か:上限・範囲・間接損害の見分け方
賠償額の上限の有無
賠償の一文が自分にとって重いかどうかは、報酬とのつり合いで決まります。
受注金額が小さい仕事でも、賠償が取引先の売上を基準に決まれば、負担は報酬と関係なく膨らみます。
ここで示すのは、どの金額なら妥当かという相場ではなく、自分の報酬と取引の中身に当てはめて判断するための見分け方です。
上限の水準は、報酬額、業務に伴う危険の大きさ、取引先との力関係で変わるため、一律の目安は置けません。
受注者側から提案しやすいのは、上限をその仕事の委託料に連動させる書き方です。
報酬として受け取る額を超えて賠償を負わない、という考え方なので、仕事の大きさと責任の大きさがつり合います。
これは契約実務で見られる考え方の一つであって、法律が定めた基準ではありません。
上限が書かれていても、何を基準にした額かで意味が変わります。
「本注文書の委託料」なのか、「これまでに受け取った委託料の総額」なのか、「直近の一定期間に受け取った委託料」なのか、という違いです。
通販サイトの更新を毎月受けている場合、基準が累計の総額なら、取引が長く続くほど上限も上がっていきます。
上限があることに安心せず、基準になる額を文面で特定しておくと、後になって解釈が割れる余地を減らせます。
上限のない条項は、損害の大きさがそのまま自分の負担になる書き方です。
単発で小さな仕事なら影響は限られると考えがちですが、取引先の売上や顧客に関わる仕事では、作業の規模と損害の規模は比例しません。
商品ページの価格や在庫の表示を扱う仕事は、その分かりやすい例です。
通常損害と間接損害・逸失利益
上限の次に効くのが、どの種類の損害まで含むかです。
民法416条の区分を出発点に整理すると、誤りを直す作業費や、誤りがなければ不要だった出費は、通常の損害として扱われやすい部分だと考えられます1。
一方、誤表示の間に失った販売の利益や、取引先がそのさらに先の顧客へ支払った補償は、契約で含めるかどうかの書き方によって扱いが大きく分かれるところです。
契約書でよく目にする「間接損害」「派生的損害」という言葉は、民法に定義がある言葉ではなく、契約ごとに指す範囲が違います。
そのため「間接損害は賠償しない」と書くだけでは、何が外れたのかを後で争う余地が残ります。
除外したいものを「逸失利益、営業機会の損失、第三者からの請求に基づく損害」のように具体的に並べておくほうが、読み違いの余地は小さくなります。
逸失利益をすべて外すことに、取引先が抵抗する場合もあります。
そのときは、外すか含めるかの二択にせず、上限の内側でなら含める、という組み合わせも考えられます。
範囲を広く残すなら上限で全体の大きさを抑え、上限を置けないなら範囲を絞る、という関係で見ると、どちらを先に頼むべきかが整理しやすくなります。
故意・重過失の例外
上限や範囲の限定を求めると、取引先から「わざと、あるいは著しい不注意で起きた損害まで上限で守るのはおかしい」と返されることがあります。
故意は損害が生じると分かっていて行うこと、重過失はわずかな注意で防げたのにそれを怠った、重大な不注意のことです。
この二つを上限の例外とする書き方は、通常の作業ミスには上限が効くので、受注者にとっても受け入れやすい譲歩です。
注意したいのは、重過失の線引きがあいまいな点です。
確認の手順を一度飛ばしただけで重過失だと主張される余地がないか、作業手順や検収の流れと合わせて考えておきます。
例外が「受注者に過失がある場合」まで広がっていたら、ほとんどの賠償は過失を前提にするため、上限はほぼ働きません。
その書き方は、受け入れる前に修正を頼む対象です。
最後に、同じ条項でも、業務の種類で重さが変わります。
ページのデザインのように納品して検収を受ける仕事なら、検収後いつまで責任を負うかが焦点になります。
毎月の更新代行のように作業が続く仕事なら、誤りが気付かれないまま続いた期間の損害が、どこまで積み上がるかが焦点です。
納品物か役務かに応じて、上限と範囲に加え、責任を負う期間や、誤りに気付いたときの連絡の取り決めも見ておくと、負える条件かどうかを判断しやすくなります。
| 見る点 | 受け入れやすい書き方 | 修正を考えたい書き方 |
|---|---|---|
| 賠償額の上限 | 基準となる委託料を特定した上限がある | 上限がない/基準の額が特定されていない |
| 損害の範囲 | 通常の損害に限る/除外する損害を具体的に列挙している | 「一切の損害」など範囲が読み取れない |
| 故意・重過失の例外 | 上限の例外が故意・重過失に限られている | 過失全般が例外で上限が働かない |
| 業務の種類 | 納品物は責任の期間、役務は継続中の損害の扱いが決まっている | 期間や継続中の損害の扱いが書かれていない |
▼ 図の内容を文字で読む
- 賠償額を決める定めがある:違約金の定めは賠償額の予定と推定される
- 額を基準に請求される:実際の損害を一つずつ証明しなくてよい
- 日数や件数で積み上がる:受け取る報酬を上回ることもあり得る
- 承諾前に報酬と並べて見る:自分の報酬と並べて重さを確かめる
法律は助けてくれるのか:フリーランス法・取適法で使えること、使えないこと
フリーランス法が対象とする人
条件を見分けたら、次に浮かぶのは「発注者の立場が強い取引なら、法律が不利な賠償条項を止めてくれるのでは」という期待です。
結論から言うと、公正取引委員会が示しているフリーランス法の禁止行為には、賠償条項そのものを直接の対象にした項目は見当たりません。
使える場面はありますが、賠償の上限や範囲は、あくまで契約の確認と交渉で決める部分です。
フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が守る対象は、従業員を使用しない個人事業者や、代表者一人で従業員のいない法人などです2。
発注者には、仕事の内容や報酬の額などの取引条件を、書面や電子メールなどで明示する義務があります2。
この義務は賠償条項を書くよう求めるものではありませんが、条件が文面で届くことで、賠償の一文も含め、承諾前に読み比べる材料が手元に残ります。
さらに、1か月以上の業務委託では、発注者に次の行為が禁じられています2。
<ul><li>受領拒否</li><li>報酬の減額</li><li>返品</li><li>買いたたき</li><li>購入・利用の強制</li><li>不当な経済上の利益の提供要請</li><li>不当な給付内容の変更・やり直し</li></ul>
この七つのうち、賠償条項を直接対象にしたものはありません。
ただ、賠償を理由に報酬を差し引かれたり、無償でのやり直しを求められたりする場面では、報酬の減額や、不当な給付内容の変更・やり直しに当たるかどうかが問題になり得ます。
当たるかどうかは個別の事情で決まるので、承諾してよいかを決める材料というより、承諾後にもめたときの相談の入口として押さえておくものです。
注意したいのは、従業員を雇っている小規模事業者は、この法律の対象から外れ得ることです。
事業の規模が小さいことと、フリーランス法の対象であることは別の話です。
パートタイムでも人を雇っている場合は、自分が対象に入るかを先に確かめておく必要があります。
取適法の適用可否の確かめ方
もう一つの候補が、2026年から施行されている取適法です3。
対象になるかは、委託する取引の種類と、発注者・受注者それぞれの資本金や従業員数の基準で決まります3。
受注者が小さいことだけで対象になるわけではなく、相手との規模の組み合わせと仕事の種類がそろって初めて当てはまります。
基準は取引の種類ごとに分かれているため、自分の取引が当てはまるかは、公正取引委員会が公表している基準と照らし合わせるのが確実です3。
当てはまった場合でも、賠償条項の上限や範囲を法律が代わりに決めてくれるわけではない点は、フリーランス法と同じです。
法律が後ろ盾になるのは主に報酬や取引の進め方の部分で、賠償の一文の重さは、前の節で見た上限・範囲・例外で判断することに変わりはありません。
相談先
賠償を理由に報酬を減らされた、条件に納得できないまま承諾を迫られている、といった場面では、公正取引委員会が設けている取適法の相談窓口を使えます3。
相談するときは、注文書、基本契約や約款、条件をめぐるメールなどのやりとり、報酬の額と支払いの記録をそろえておくと、何が起きているかを短く伝えられます。
一方で、行政の窓口は、個別の賠償条項をどう書き直すべきかを代わりに決めてくれる場ではありません。
条項の文言そのものの妥当性や、優先関係の読み方を確かめたい場合は、弁護士など契約に詳しい専門家に注文書と基本契約を見てもらうほうが向いています。
▼ 図の内容を文字で読む
- 本注文書の委託料
- その仕事の報酬に連動する
- 受け取った委託料の総額
- 取引が長く続くほど上限も上がる
- 直近の一定期間の委託料
- 基準になる額を文面で特定する
修正を頼む:依頼の順序、文言の考え方、応じてもらえない場合の判断
修正依頼の順序
法律が賠償条項を直接は止めてくれない以上、修正を頼む根拠は、法律よりも「この条件は仕事の大きさとつり合っているか」という契約の合理性になります。
取引先にとっても、受注者が実際には負えない賠償を書いておくことは、いざというときに回収できない約束を抱えることを意味します。
修正の依頼は、相手を疑う話ではなく、双方が実際に負える形に整える話として持ちかけます。
どこから頼むかは、自分への効き目の大きさと、取引先が受け入れやすいかの両方で決めます。
編集部としては、次の順に譲れる幅を決めておくことを提案します。
<ol><li>上限を報酬に連動させる</li><li>損害の範囲を通常の損害に限る</li><li>故意・重過失は上限の例外として受け入れる</li></ol>
上限を最初に置くのは、損害の種類がどうであれ、自分の負担の最大値を決められるからです。
範囲の限定は、上限と組み合わせることで、上限の内側でも負担が膨らみにくくなります。
故意・重過失の例外は、取引先から求められやすい点なので、最初から差し出すのではなく、上限と範囲を受け入れてもらう代わりに応じる譲歩として残しておきます。
依頼の文面は、理由と代案をそろえて送ると、相手が社内で検討しやすくなります。
次は、編集部が考えた依頼文の例です(提案)。
「ご注文書を拝受しました。
内容について一点ご相談させてください。
損害賠償の条項について、当方の事業規模では負担の上限が定まっていない条件をお受けすることが難しく、本件の委託料の額を上限とする定めを加えていただけないでしょうか。
あわせて、賠償の範囲を通常かつ直接の損害に限り、逸失利益および第三者からの請求に基づく損害を除く形にしていただけますと幸いです。
当方の故意または重大な過失による場合は、上限の対象外とすることに異存はありません。」
条項の文言についても、考え方の例を示します(提案)。
「受注者が本契約に関して発注者に対して負う損害賠償の額は、本注文書に定める委託料の額を上限とする。
ただし、受注者の故意または重大な過失による場合はこの限りでない。」
「受注者は、通常かつ直接の損害に限り賠償の責任を負い、逸失利益、営業機会の損失および第三者からの請求に基づく損害については責任を負わない。」
いずれも一般的な考え方に基づく例で、個別の契約にそのまま当てはまるとは限らないため、必要に応じて弁護士など専門家に確認してから使ってください。
合意できた内容は、注文書の修正版を出してもらうか、覚書やメールで残します。
基本契約との優先関係が決まっていない場合は、この修正がどちらの書類に優先するのかも一緒に書いておくと、第1節で見た読み違いを防げます。
応じてもらえないときの比較
修正を頼んでも、取引先が社内の書式を理由に応じない場合があります。
そのとき、受ける・条件を変えて受ける・断るのどれを選ぶかは、次の三つを並べて考えます。
<ul><li>報酬に対して、条項どおりに賠償した場合の負担がどれだけ大きいか</li><li>その取引先との取引が、自分の売上や今後の仕事にとってどれだけ重要か</li><li>残る負担を保険で埋められるか</li></ul>
負担がそれほど大きくなく、取引の重要度が高く、保険でも一部を埋められるなら、条項はそのままでも受ける判断があり得ます。
反対に、上限がなく、商品の価格や在庫のように損害が大きくなりやすい仕事で、売上に占める割合も小さい取引なら、断る判断も合理的です。
どちらの判断が正しいかは、売上に占める取引先の割合など自社の事情で決まるので、一律の答えはありません。
中間の選択肢として、条項は変えずに仕事の中身を変える方法もあります。
たとえば価格の入力を受注者が行う場合でも、公開前に取引先が最終確認する手順を注文書に書き込んでもらえば、誤りが損害につながる前に止まる機会が一つ増えます。
損害の起きやすい作業を業務範囲から外す、報酬に危険の大きさを反映させる、といった交渉も、賠償条項の文言を変えられないときの手段になります。
こうした手順の取り決めは事故が起きないことを保証するものではありませんが、誰がどの段階で確認したかが記録に残るため、後で責任の所在を整理しやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 通常の損害として扱われやすい
- 誤りを直す作業費
- 誤りがなければ不要だった出費
- 書き方で扱いが分かれる
- 誤表示の間に失った販売の利益
- 取引先が先の顧客へ支払った補償
- 除外したいときの書き方
- 逸失利益、営業機会の損失、第三者からの請求に基づく損害と具体的に並べる
残るリスクに保険で備える:補償の範囲と、補償されないこと
保険会社に確認する質問リスト
上限と範囲を絞れても、上限までの賠償は自分で負うことになります。
その残りを埋める手段として、業務上の賠償に備える保険があります。
ただし、保険は契約で引き受けた責任を、そのまま肩代わりしてくれるものとは限りません。
保険で支払われるかどうかは、約款に書かれた補償の対象と、補償しない場合(免責事由)で決まります。
とくに、契約で法律上の責任より重い責任を引き受けた部分を補償の対象としてどう扱うかは、商品によって違い得るため、約款で確かめる必要があります。
賠償条項を「一切の損害」のまま承諾し、保険があるから大丈夫と考えていると、保険で埋まらない部分が後から見つかることになりかねません。
日常生活の賠償に備える個人賠償責任保険は、業務中の事故を補償しない設計のものがあり、仕事の賠償の備えとしてそのまま当てにはできません。
事業者団体を通じて加入できる賠償責任保険もありますが、補償の範囲、支払いの限度額、自己負担額、加入の条件は商品ごとに違います。
商品を選ぶ前に、自分の注文書の条項を手元に置いて、保険会社や代理店に次のように尋ねると、補償の範囲と契約のずれが見えやすくなります。
回答を受け取ったら、契約の上限で抑えられる部分、保険で埋まる部分、どちらでも埋まらない部分の三つに分けて見ます。
どちらでも埋まらない部分が残るなら、それが修正の交渉で示す「負担の大きさ」の中身になります。
保険で埋まらない理由が条項の書き方にあるなら、その点を取引先への修正依頼に具体的に書き加えることもできます。
| 質問 | 聞く理由 |
|---|---|
| 自分の業務の内容がこの保険の対象業務に含まれるか | 対象業務の外の事故は補償されないため |
| 取引先の逸失利益など経済的な損害も補償されるか | 物の損壊や人身の事故に限る設計かを確かめるため |
| 契約で引き受けた賠償のうち法律上の責任を超える部分はどう扱われるか | 賠償条項の書き方で補償の範囲が変わり得るため |
| 支払いの限度額と自己負担額はいくらか | 契約上の上限と並べて足りない部分を見るため |
| 補償の対象になる事故の時期はいつからいつまでか | 作業から損害の発覚まで時間が空くことがあるため |
| 事故のときの報告や示談の進め方に条件があるか | 賠償を約束する前に必要な手続きを知っておくため |
▼ 図の内容を文字で読む
- 使えること
- 取引条件が書面や電子メールで明示される
- 報酬の減額ややり直しの場面は相談の入口になる
- 使えないこと
- 賠償条項そのものを直接禁じる項目は見当たらない
- 契約で決める部分
- 賠償の上限や範囲は確認と交渉で決める
注文書と基本契約の優先関係や、「間接損害」「一切の損害」の読み方は、文面と取引の経緯で判断が分かれ、一般論だけでは決めきれないためです。
注文書・基本契約・やりとりの記録を並べて相談すると、どの条項が実際に効くのか、どこを修正依頼に入れるべきかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
承諾の返信前に見直すチェックリスト
注文書を読み返しながら確かめていく順に並べた。
- 注文書と基本契約・約款のどちらの定めが優先するか、文面で分かる
- 賠償額の上限があり、基準となる委託料が特定されている
- 含む損害の範囲が読み取れ、除外したい損害が具体的に書かれている
- 上限の例外が、故意・重過失に限られている
- 賠償額の予定や違約金があれば、件数や日数で積み上がった場合を報酬と並べて確かめた
- 納品物なら責任を負う期間、役務なら継続中の損害の扱いが書かれている
- 残る負担を、加入中または検討中の保険でどこまで埋められるか確かめた
答えられない項目が残ったら、その項目を修正依頼の文面に移します。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受ける判断があり得る
- 負担がそれほど大きくない
- 取引の重要度が高い
- 保険でも一部を埋められる
- 断る判断も合理的
- 上限がなく損害が大きくなりやすい仕事
- 売上に占める割合も小さい取引
- 仕事の中身を変える
- 公開前に取引先が最終確認する手順を書き込んでもらう
要点の整理
| 優先関係 | 注文書と基本契約のどちらが効くかを、返信前に文面で確かめる |
|---|---|
| 上限 | 基準となる委託料を特定し、報酬と連動させる |
| 範囲 | 除外したい損害を「間接損害」の一語で済ませず具体的に並べる |
| 例外 | 上限の例外が故意・重過失に限られていれば受け入れやすい |
| 法律 | 賠償条項を直接禁じる規定は見当たらず、対象かどうかは公正取引委員会の資料で確かめる |
| 保険 | 契約上の責任のどこまでが補償されるかを、条項を示して約款で確かめる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 保険会社の回答を受け取る:注文書の条項を示して尋ねた答え
- 三つに分けて見る:契約の上限で抑えられる部分、保険で埋まる部分、どちらでも埋まらない部分
- 埋まらない部分を確かめる:修正の交渉で示す負担の大きさの中身になる
- 修正依頼に書き加える:埋まらない理由が条項の書き方にある場合
修正に応じてもらえないまま返信の期限が近づき、受けるか断るかを一人で決めなければならない場面では、条項の重さを客観的に見積もるのが難しくなるためです。 報酬に対する負担の大きさと保険で埋まらない部分を整理し、受けるならどの条件だけは残すべきかを確かめられます。
よくある質問
注文書にサインや返信をしなかった場合、賠償条項は有効になるのか
返信しなかったことで、賠償条項が無効になるとは限りません。
注文書を受けて作業を始めるなど、承諾したと受け取られる行動をとれば、条項を含めて契約が成立したと扱われる余地があります。
基本契約に「一定期間内に異議を述べなければ承諾したものとみなす」といった定めが置かれていることもあるため、黙っておくのではなく、気になる点は作業を始める前に文面で伝えておくのが安全です。
基本契約があるとき、注文書の賠償条項と矛盾したらどちらが優先するのか
まず、基本契約や注文書の中に優先関係を決めた条項があるかを確かめます。
「個別契約が優先する」とあれば注文書の条項が、「基本契約が優先する」とあれば基本契約の条項が先に問題になります。
優先の定めがない場合は、文言や取引の経緯で判断が分かれ、一般論では言い切れません。
承諾前に取引先へ確認し、答えを文面で残しておくことをおすすめします。
従業員を雇っていると、フリーランス法の保護は受けられないのか
フリーランス法の対象は、従業員を使用しない個人事業者や、代表者一人で従業員のいない法人などです2。
従業員を雇っている場合は、対象から外れ得ます。
その場合でも、取引の種類と双方の資本金や従業員数の基準によっては取適法の対象になることがあるので、公正取引委員会の基準で確かめてください3。
なお、どちらの法律も賠償条項の上限や範囲を代わりに決めてくれるものではありません。
賠償条項の修正を頼んだら取引を切られないか
取引先の反応を事前に保証することはできません。
ただ、上限を報酬に連動させる、範囲を具体的にする、といった依頼は、双方が実際に負える形に整える提案として説明できます。
理由と代案を添え、故意・重過失を例外として受け入れるなど譲れる点も示すと、相手が社内で検討する材料になります。
応じてもらえない場合は、負担の大きさ、取引の重要度、保険で埋められるかの三つで、受けるか断るかを比べます。
個人賠償責任保険や火災保険で、業務上の賠償はまかなえるのか
そのまま当てにするのは避けたほうが安全です。
個人賠償責任保険は日常生活の賠償に備えるもので、業務中の事故を補償しない設計のものがあります。
火災保険は主に自分の建物や家財の損害に備えるものなので、取引先への賠償が特約などで補償されるかは、約款で個別に確かめる必要があります。
業務の賠償に備えるなら、業務用の賠償責任保険について、自分の注文書の条項を示したうえで補償の範囲を尋ねてください。
- 1 出典:e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」
- 2 出典:公正取引委員会「フリーランス法 パンフレット」
- 3 出典:公正取引委員会「取適法の概要」
画像の出典元
- Hands highlighting and taking notes on a document with pen and highlighter./Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels