◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 従業員10名前後の規模では、まず注文を電子で受け取り伝票として記録する機能を入れ、在庫は受注分を差し引く引き当てまでで足りる。
- 在庫機能が要るかは、複数取引先への出荷・受注後に判明する欠品・棚卸のずれのうち二つ以上が当てはまるかで見分ける。
- 受発注業務の時間は実証事業で半分前後の削減が確認されているが、在庫連携の効果を示す公表データは見当たらず、自社の欠品件数で測るしかない。
- 補助金の対象条件は会計・受発注・決済のいずれか1種類以上の機能であり、受発注を主とした構成にしておけば在庫を後から足しても考え方は変わらない。
- 業者を比べる前に、受注件数・品目数・保管場所数・欠品件数の四つを数えておくと、同じ土俵で機能一覧を並べられる。
目次

小規模でも在庫の機能は要るか
従業員10名前後で、扱う品目が数十から数百、受発注が一日あたり数件から数十件という規模なら、最初に入れるべきは「注文を電子で受け取り、そのまま伝票として記録する」機能です。在庫は、受注した分を在庫から差し引く引き当てまでで足りる場合が多く、ロット管理や複数倉庫の振替まで最初から求める必要はありません。ただし、正直に書いておくと、在庫機能の要否を企業規模別に示した公的な統計は見当たりませんでした。公表されている数字で確かめられるのは、電子受発注そのものがどの程度広がっているか、受発注業務の時間がどれだけ減ったか、そして導入費用を抑える制度の条件の三つです。この三つを土台に、自社の件数と品目数から要否を決める順序を示します。
電子受発注はすでに半数近くが入れている
まず、自社が遅れているのかどうかを数字で確かめます。2021年度の調査では、受注側の48.5%、発注側の40.9%が電子受発注システムを導入していました1。中小企業庁は2023年時点で電子受発注の普及率50%を目標として掲げています2。つまり、取引先からWeb受発注への切り替えを求められるのは特殊な事情ではなく、半数前後まで進んだ流れの中での話だと分かります。
この数字は「受発注システム」の導入率であって、「在庫管理機能まで備えたシステム」の導入率ではありません。規模別に在庫機能の保有率を示した統計は確認できませんでした。したがって在庫機能の要否は、他社の導入率ではなく、自社の業務の形から決めることになります。
要否を分けるのは件数ではなく在庫の動き方
在庫機能が要るかどうかは、次の三つで見分けがつきます。第一に、同じ品目を複数の取引先へ出しているか。第二に、欠品が受注を受けた後になって分かることがあるか。第三に、紙台帳やExcelの数と実棚の数がずれ、月末に数え直しが発生しているか。
三つのうち二つ以上が当てはまるなら、受注時に在庫を引き当てる機能が要ります。当てはまらない、つまり受注のたびに仕入れる、あるいは在庫を常に潤沢に持っている業態なら、在庫機能は後から足す判断で構いません。受発注システムと在庫機能を同時に入れると、初期の設定作業も社内の慣れも二重にかかるためです。
自社に当てはめるために先に数えるもの
見積もりを取る前に、一か月の受注件数、取り扱う品目数、在庫を置いている場所の数、そして直近半年で起きた欠品と過剰在庫の件数を書き出しておきます。業者ごとに機能も値段もばらつくのは、想定している件数と品目数の幅が違うためで、この四つの数を先に決めておくと、同じ土俵で比べられるようになります。
数えた結果をもとに、次は在庫連携を含む電子化で業務時間がどう変わるかを、実証されたデータで確かめます。
導入すると業務時間はどう変わるか
実証事業では受発注業務時間が半分前後に減った
中小企業共通EDIの実証事業では、参加した中小企業の受発注業務時間が51.4%削減されました4。2016年度の実証事業でも、受発注企業の双方で業務時間が約50%減ったと報告されています3。2017年度に全銀EDIシステムと連携した実証では、削減の程度は60%程度に達しました3。受発注デジタル化のモデル事業では、中小企業の業務時間削減率は平均53.3%でした2。
いずれも半分前後という水準で一致しています。FAXや電話で受けた注文を自社の台帳へ転記する作業が無くなることが、削減の中心だと考えてよい数字です。
この数字が指しているのは受発注の時間である
注意しておきたいのは、これらが「受発注業務」の時間だという点です。在庫の記帳や棚卸に要している時間が同じ割合で減ると示した公表データは見当たりませんでした。在庫連携による欠品率の改善を数値で確かめた一次資料も、今回は確認できていません。
ですから、在庫機能への投資は「時間が何割減る」という見込みではなく、「受注時に在庫を確かめる手間と、欠品が起きたときの連絡のやり直しが減る」という業務の形の変化で判断するのが素直です。自社で直近半年の欠品件数を数えておくのは、そのための材料になります。
効果の見当がついたら、次は費用そのものを抑える制度を確かめます。
費用を抑える手立てはあるか
補助金の対象になるソフトウェアの条件
デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(インボイス対応類型)では、対象となるソフトウェアは会計・受発注・決済のいずれか1種類以上の機能を備えていることが条件とされています5。受発注システムは、この受発注の機能に当たります。在庫機能はこの条件そのものには含まれていないため、在庫だけを目的に選ぶと枠から外れる可能性があります。受発注を主として、在庫は同じシステムの機能として付帯させる組み立てが自然です。
小規模事業者の補助率
補助額50万円以下の区分では、小規模事業者のソフトウェア補助率の上限は4/5、つまり80%以内とされています5。同じインボイス枠でも電子取引類型では、中小企業・小規模事業者等の補助率上限は2/3以内です6。自社が発注側として取引先に使ってもらう形なのか、自社が受注側として導入するのかで、当たる類型が変わります。
申請の前に決めておくこと
補助率が高くても、要らない機能まで含めて契約すれば自己負担額は増えます。先に機能の優先順位を決め、その範囲で候補を絞ってから、対象となる枠を確かめる順序が費用を抑えます。制度の要件や区分は年度ごとに改められるため、申請前に最新の公募要領で条件を確かめてください。
ここまでで、在庫機能の要否を分ける見分け方、受発注デジタル化で確かめられている業務時間の削減幅、そして費用を抑える制度の条件が揃いました。あとは、どの機能から順に入れるかを決めるだけです。
在庫機能の要否は公表された統計では決まらず、自社の受注件数・品目数・欠品の起き方という個別の事情で分かれます。数え方そのものに迷う段階で外の目を入れると、要らない機能まで抱え込む契約を避けられます。
一か月の受注件数と品目数、直近半年の欠品件数を持ち込めば、在庫の引き当てが今すぐ要るのか、受発注を先に通してから足せばよいのかを、その場で切り分けられます。無料相談で要件を整理する
小規模の受発注システムで、先に押さえる機能の順
取引先との受け渡しに直接かかわる処理を先に、社内だけで完結する処理を後に置いた並びです。
- 取引先からの注文を電子で受け取り、そのまま伝票として記録する機能
- 取引先ごとの伝票の形式や品番の違いを変換して取り込む機能
- 受注した分を在庫から差し引く引き当ての機能
- 在庫が決めた数を下回ったときに知らせる機能
- 記録した伝票を請求や会計へ引き渡す機能
欠品が受注のたびに起きている場合は、在庫の引き当てを二番目まで繰り上げ、伝票形式の変換を後ろへ回します。

自社の型ごとに、どこまで機能を選ぶか
| 型 | 当てはまる状況 | 在庫機能の目安 |
|---|---|---|
| 取引先対応型 | 取引先からWeb受発注への切り替えを求められた | 引き当ては後回しでよい |
| 欠品是正型 | 受注後に欠品が判明する、棚卸で数がずれる | 引き当てを最初から入れる |
| 重複型 | 上の二つが同時に起きている | 受発注を先に入れ、在庫を段階的に足す |
取引先の求めに合わせて入れる場合
合わせるべきは相手の伝票の形
きっかけが取引先からの要請である場合、最初に確かめるのは取引先が使っている形式に自社のシステムが合わせられるかどうかです。ここが合わないと、せっかく電子で受け取っても結局は手で打ち直すことになり、実証事業で確認された半分前後の時間削減4は自社では起きません。
この型では、在庫の引き当ては急ぎません。まず受発注を通し、運用が落ち着いてから在庫を足す判断で間に合います。
| 確かめる項目 | 判断の目安 |
|---|---|
| 取引先の伝票形式への対応 | そのまま取り込めるか、変換の設定ができるか |
| 品番の読み替え | 取引先の品番と自社の品番を対応づけられるか |
| 受注データの出力 | 会計や請求へ引き渡せる形で出せるか |

欠品や過剰在庫を減らしたい場合
受注の瞬間に在庫が見えるかどうか
欠品が受注の後で判明しているなら、受注入力の画面でその時点の在庫数が見え、受注と同時に引き当てられることが要件になります。ここを満たさないシステムを選ぶと、システムを入れても欠品の連絡のやり直しは残ります。
なお、在庫連携で欠品率がどれだけ改善したかを示す公表データは確認できていません。効果は自社で欠品件数を記録し、導入の前後で比べて確かめるのが確実です。
| 確かめる項目 | 判断の目安 |
|---|---|
| 受注時の在庫表示 | 入力画面で引当可能数が見えるか |
| 引き当ての単位 | 品目単位か、ロットや保管場所まで分けるか |
| 下限数の通知 | 決めた数を下回ったときに知らせが出るか |
取引先の要請と在庫の悩みが重なっている場合
同時に入れず、順に入れる
両方が重なっている場合でも、受発注と在庫を同時に立ち上げるのは避けます。設定作業と社内の慣れが二重にかかり、どちらも中途半端になりやすいためです。受発注を先に通し、伝票が電子で流れるようになってから在庫の引き当てを有効にします。
補助金を使う場合は、対象ソフトウェアが会計・受発注・決済のいずれか1種類以上の機能を備えることが条件です5。受発注を主とした構成にしておけば、段階的に在庫を足しても枠の考え方は変わりません。
| 確かめる項目 | 判断の目安 |
|---|---|
| 機能の追加 | 契約後に在庫機能を足せるか |
| 費用の変わり方 | 機能を足したときの追加費用の決まり方 |
| 移行の作業 | 在庫の初期データをどう取り込むか |

要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 在庫機能の要否 | 複数取引先への出荷・受注後の欠品・棚卸のずれのうち二つ以上が当てはまるか |
| 先に入れる機能 | 取引先との受け渡しにかかわる処理を優先し、社内で完結する処理は後に回す |
| 効果の見込み方 | 受発注業務の時間は半分前後の削減が実証されている。在庫の効果は自社の欠品件数で測る |
| 費用の抑え方 | 受発注の機能を主とした構成にし、当たる類型と補助率を申請前に確かめる |
| 比べ方 | 受注件数・品目数・保管場所数・欠品件数を先に数え、同じ欄で機能一覧を並べる |
補助金の類型と補助率は自社が受注側か発注側かで変わり、対象となるソフトウェアの条件も年度ごとに改められます。候補を絞った後で枠に合わないと分かると、選び直しに時間がかかります。 絞り込んだ候補の機能一覧を見せれば、受発注の機能として条件を満たすか、どの類型と補助率に当たるか、申請までに何を用意するかを確かめられます。
よくある質問
在庫機能が無い受発注システムを選んで、後から困りませんか。
受注のたびに仕入れる業態や、在庫を常に潤沢に持っている場合は困りません。困るのは、同じ品目を複数の取引先へ出していて、受注後に欠品が判明する場合です。契約前に、後から在庫機能を追加できるかを確かめておけば、やり直しは避けられます。
導入すると、どのくらい業務時間が減りますか。
受発注業務については、実証事業で51.4%の削減4、別の実証では受発注双方で約50%の削減3、モデル事業では平均53.3%の削減2が報告されています。全銀EDIシステムと連携した実証では60%程度でした3。いずれも受発注業務の時間であり、在庫管理の時間が同じ割合で減ると示したものではありません。
うちの規模で導入するのは早いでしょうか。
2021年度の時点で受注側の48.5%、発注側の40.9%が電子受発注システムを導入しており1、中小企業庁は普及率50%を目標に掲げています2。規模よりも、取引先から求められているか、転記の手間が実際に発生しているかで判断するほうが実態に合います。
補助金はどの機能まで対象になりますか。
インボイス対応類型では、会計・受発注・決済のいずれか1種類以上の機能を備えたソフトウェアが対象とされています5。補助率は、補助額50万円以下の区分で小規模事業者は4/5(80%)以内5、電子取引類型では中小企業・小規模事業者等で2/3以内6です。要件は年度ごとに改められるため、申請前に公募要領で確かめてください。
- 1 出典:中小企業庁「令和3年度取引条件改善状況調査 結果概要」(2022年) 経路
- 2 出典:中小企業庁経営支援部技術・経営革新課「受発注のデジタル化に関する推進方策 報告書」(2022年) 経路
- 3 出典:中小企業庁「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業ほかの実証結果)」(2018年) 経路
- 4 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「中小企業共通EDI(次世代企業間データ連携調査事業)解説」(2018年) 経路
- 5 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年) 経路
- 6 出典:中小企業庁・独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)」(2026年) 経路
画像の出典元
- 40代前半の日本人男性が倉庫の棚での在庫確認をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 30代前半の日本人女性が発注画面の操作場面/画像:生成AI(自社)
- 50代前半の日本人女性が発注画面の操作場面/画像:生成AI(自社)
- 40代前半の日本人男性が発注画面の操作をしている場面/画像:生成AI(自社)