◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 得意先にかける費用は売上ではなく粗利と比べ、直接費と工数を差し引いた貢献額を金額と比率の両方で見る
- 交際費等の特例や損金算入の可否は税の区分であり、費用対効果の判断では支出の全額を経済的なコストとして扱う
- 貢献額が低い得意先は、変えられる費用と決まっている費用を分け、合意が要らない調整から検討する
- 協賛金・人員派遣・代金の減額が絡む条件変更では、算出根拠と使途、協議の経緯を記録し、規制の適用は専門家に確認する
- 記録が揃わない段階では対象を絞って推計で始め、推計の数字は取引の見直しのような大きな結論に使わない
目次

得意先ごとに「利益が残らない」を確かめる最初の一覧表の作り方
得意先ごとの売上表を見ると、大口の得意先ほど頼もしく見えます。
それなのに期末に残る利益はあまり増えておらず、予算の見直しで「この得意先への接待や値引きは続ける価値があるのか」と聞かれても、売上高しか示せない。
こうした場面で変えられるのは、比べる相手と費用の拾い方です。
値引き・割戻し・販売奨励金・接待に加え、営業や納品、代金回収にかかる工数まで得意先ごとに拾います。
それを売上ではなく粗利から差し引き、残った金額で、続けるか、条件を変えるか、対応を軽くするかを決めます。
直接把握できる費用
最初に作る一覧表は、得意先を行に、費用を列に並べた単純なもので足ります。
列に入れる費用は二つに分けると拾いやすくなります。
一つは、その得意先のために発生したと帳簿や請求書から特定できる費用で、ここでは直接費と呼びます。
もう一つは、営業担当者の訪問や納品の手配のように、複数の得意先に共通してかかっている社内の工数です。
この分け方は会計基準で決まった区分ではありません。
得意先別の数字を早く作るための整理として提案するものです。
直接費に入るのは、値引き、売上割戻し、販売奨励金、得意先向けの販促物や景品、接待・贈答の支出などです。
値引きや割戻しは請求書や売上伝票、精算書に得意先名が残っているため、期間を決めれば集計できます。
接待や贈答も、経費精算のときに相手先を書く運用になっていれば、得意先ごとに分けられます。
自社が負担している運賃や、特定の得意先だけに使う専用の資材なども、請求書で区別できるならここに入れます。
期間は一年など一定にそろえ、売上と同じ期間の費用を拾います。
月ごとに集めると、割戻しのように期末にまとめて精算される費用が特定の月に偏り、得意先どうしの比較がゆがみやすくなるからです。
工数として配る費用
営業・納品・回収の工数は請求書のように金額で残らないため、後から得意先へ配ります。
たとえば営業部門の一年間の人件費と、担当者が得意先を訪問した回数の合計が分かれば、一回あたりの費用を出せます。
そこに得意先ごとの訪問回数を掛ければ、その得意先に割り当てる営業工数になります。
納品なら出荷件数や納品回数、回収なら請求書の発行件数や入金確認・督促の回数が、配るときの手掛かりになります。
どの基準で配るかに唯一の正解はありません。
訪問回数・出荷件数・請求件数で配る方法は、手元に残りやすい記録を使うための編集上の提案です。
大切なのは、得意先によって手間のかかり方が違う部分を、その違いが表れる単位で配ることです。
売上高の比率で一律に配ると、少量を頻繁に注文する得意先の手間が大口の得意先に付け替えられ、一覧表で見たかった偏りが消えてしまいます。
与信の調査のように、取引を始めるときや限度額を見直すときにだけ発生する作業もあります。
件数が少ない作業は、最初の一覧表では無理に配らず、備考欄に「与信調査あり」などと残しておく程度で足ります。
一覧表で見える偏り
直接費と配った工数を並べると、売上の順位と費用の順位が一致しないことが見えてきます。
売上が大きい得意先ほど値引きや割戻しの率が高く、売上の割に手元に残る分が少ないことがあります。
反対に、売上は中くらいでも訪問や納品の回数が多く、工数の列だけが目立つ得意先もあります。
ただし、この段階で分かるのは「どの得意先のどの列が大きいか」までです。
費用が大きいことは、その得意先との取引が損になっているという意味ではありません。
粗利が十分に大きければ、費用の多さを吸収できているからです。
また、同じ費用の列に並べたものでも、税務上の扱いはそれぞれ異なります。
拾った費目を帳簿上の区分に照らすと、どれを売上から引き、どれを粗利から引くかが決まり、比較の計算で同じ費用を二度引く誤りも防げます。
| 区分 | 費目 | 主な記録 | 得意先への分け方 |
|---|---|---|---|
| 直接費 | 値引き・売上割戻し・販売奨励金 | 請求書・売上伝票・精算書 | 記載された得意先名で集計 |
| 直接費 | 接待・贈答 | 経費精算の記録 | 精算時の相手先で集計 |
| 直接費 | 販促物・景品・専用資材・自社負担の運賃 | 請求書 | 得意先が特定できるものを集計 |
| 工数 | 営業 | 日報・訪問予定表 | 訪問回数で配る |
| 工数 | 納品 | 出荷記録 | 出荷件数・納品回数で配る |
| 工数 | 回収 | 請求書の発行記録・入金確認と督促の記録 | 請求件数・督促回数で配る |
費用の区分:値引き・割戻し・販売奨励金と接待交際費は帳簿上どう違うか
値引き・割戻し・販売奨励金
値引き、返品、売上割戻し、販売奨励金、売上割引は、消費税では「売上げに係る対価の返還等」に当たり、一度計上した売上に対する税額を調整する対象になります4。
つまり、これらは得意先へ別に支払う経費というより、売った対価の一部を返したり差し引いたりしたものとして扱われます。
この調整には記録の保存や適格返還請求書の交付の定めがあり、免税事業者だった期間の売上に係るものなどは調整できない場合があります4。
法人税でも、得意先に対して売上高や売掛金の回収高に比例して、または売上高の一定額ごとに金銭で支払う売上割戻しは、交際費等に当たらない扱いが通達に示されています3。
販売奨励金などの交付にも別の定めがあります3。
ただし、同じ「割戻し」という名前でも、支出の態様によって当てはまる定めは変わり得ます。
個別の支出がどの定めに当たるかは、所轄の税務署や税理士に確認するのが確実です。
一覧表の上では、これらを売上から直接引く費目としてまとめておくと、粗利を出すときに迷いません。
帳簿上、売上高から控除して計上しているか、販売費として計上しているかは自社の処理方法によります。
勘定科目と照らし、すでに売上から引かれているものを一覧表で再び引かないようにします。
接待交際費等の範囲と特例
交際費等は、得意先や仕入先など事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などのための支出を指し、従業員の慰安のための費用などは範囲から除かれます1。
得意先との会食、手土産、中元や歳暮といった支出は、一覧表の接待・贈答の列に入る典型です。
得意先に配る景品や販促物は、広告宣伝費になるのか交際費等になるのかで迷いやすいところです。
国税庁の説明では、不特定多数の一般消費者を対象にした懸賞・試用・見本などが広告宣伝費の扱いになり、医師・美容師・建築業者・農家など事業者向けの景品等はこれに当たらないとされています2。
事業者である得意先に向けた景品は、広告宣伝費として扱えるとは限らないということです。
飲食には特例があります。
飲食等の支出額を参加者の数で割った金額が1人あたり10,000円以下の飲食費は、日付・参加者・人数・金額・店名などを記した書類の保存を条件に、交際費等から除くことができます1。
自社の役員・従業員だけの飲食は、この扱いの対象になりません1。
資本金1億円以下の中小法人は、交際費等の額のうち接待飲食費の50%に相当する金額を超える部分と、800万円にその事業年度の月数を掛けて12で割った定額控除限度額を超える部分の、いずれか少ない方が損金不算入になります1。
資本金100億円超の法人は、交際費等の全額が損金不算入です1。
これらは2026年時点で国税庁のページに記載されている内容です。
交際費等の特例には適用期間の定めがあるため、申告では対象となる事業年度の取扱いを確かめる必要があります。
税の区分と経済的なコストを分けて見る
ここまでの区分は、法人税でどこまで損金に入れられるか、消費税額をどう調整するかを決めるためのものです。
得意先にかけた費用が成果に見合うかどうかは、この区分では決まりません。
1人あたり10,000円以下に収まった会食も、損金に算入できた接待費も、会社の手元からお金が出ていった事実は同じだからです。
そこで一覧表では、税務上の扱いとは別に、支出した金額の全額を経済的なコストとして記録します。
特例の範囲に収まるように会食の人数や単価を調整していると、「税務上は問題のない費用」が「効果のある費用」に見えてしまいがちです。
税の区分は備考欄に「交際費等」「対価の返還等」と書き添える程度にとどめ、比較の計算には持ち込まないほうが判断を誤りにくくなります。
区分を分けておくと、計算の上でも利点があります。
値引きや割戻しのように売上から引く費目と、接待や工数のように粗利から引く費目を区別しておけば、粗利を出す段階と費用を差し引く段階が分かれ、同じ費用を二度引くことを防げます。
| 費目 | 税務上の扱い | 一覧表での扱い |
|---|---|---|
| 値引き・割戻し・販売奨励金 | 消費税では売上げに係る対価の返還等。売上高等に比例して金銭で支払う売上割戻しは交際費等に当たらない扱い | 売上から引く費目 |
| 接待・贈答 | 交際費等。1人あたり10,000円以下の飲食費は書類保存を条件に除外できる | 全額を直接費に入れる |
| 事業者向けの景品・販促物 | 一般消費者向けの懸賞・見本などとは異なり広告宣伝費の扱いに当たらない | 全額を直接費に入れる |
得意先別の費用対効果は粗利と継続性で比べる:指標の選び方と限界
売上ではなく粗利で見る
得意先別の費用を何と比べるかで、結論は大きく変わります。
売上と比べると、売上の大きい得意先ほど費用の比率が小さく見えますが、売上には仕入原価や製造原価が含まれています。
原価率が高い商品を中心に買う得意先は、売上が大きくても、そこから費用を払う余力は小さいことがあります。
そのため、比べる相手は、売上から値引き・割戻しなどを差し引き、さらに原価を引いた粗利に置くのが筋が通ります。
得意先ごとに買っている商品の構成が違えば、粗利率も得意先ごとに違ってきます。
商品別の原価が分かるなら得意先ごとの売上明細に原価を当てて粗利を出し、分からない場合は商品分類ごとの粗利率を当てる近似から始めても構いません。
粗利の範囲、つまりどの値引きや割戻しを控除済みとして扱うかは、自社の会計処理に合わせます。
売上から引く費目として分けたものが帳簿上すでに売上から控除されているなら、粗利の計算で改めて引く必要はありません。
貢献額の見方
粗利から、接待・贈答・販促などの直接費と、配った営業・納品・回収の工数を差し引いた残りを、ここでは得意先別の貢献額と呼びます。
その得意先との取引が、会社全体の固定費や利益にどれだけ寄与しているかを見るための数字です。
この見方は得意先を同じ物差しで比べるための編集上の提案で、会計基準や業界で決まった算式ではありません。
貢献額は、金額と比率の両方で見ると読み違いが減ります。
金額が大きくても粗利に対する費用の割合が高い得意先は、値引き率や納品条件が少し動くだけで貢献額が大きく減ります。
反対に、金額は小さくても費用の割合が低い得意先は、取引が広がればその分だけ貢献額が積み上がっていきます。
両方を並べることで、「大口だから安心」「小口だから後回し」という売上の印象から離れて比べられます。
活動基準原価計算(ABC)や顧客生涯価値といった名前の手法も、得意先別の収益性を測る考え方として知られています。
ただ、これらは手法ごとに定義や前提があり、この記事では具体的な算式は扱いません。
まずは粗利から費用を引いた貢献額で全体の偏りをつかみ、精度を上げる必要が出てきた段階で専門の手法を検討する順で十分です。
数値にしにくい継続性の扱い
貢献額が低いからといって、すぐにその得意先との取引を見直してよいとは限りません。
取引年数が長く発注が安定している、新しい商品の取り扱いを検討してもらっている、取引の窓口が相手の別部門にも広がりそうだといった事情は、一年分の貢献額には表れないからです。
こうした継続性は数値にしにくいので、貢献額の計算に無理に足し込まず、別の欄に書いて残します。
たとえば「取引年数」「直近の発注頻度の安定」「拡大の見込みとその根拠」の三つを短く記入する程度です。
拡大の見込みは、担当者の期待ではなく、相手から示された計画や引き合いの有無など、後から確かめられる事実で書きます。
継続性の欄は、貢献額が低い得意先について判断を保留する理由として使います。
保留にした場合も、次に見直す時期を決めておけば、「付き合いが長いから」という理由だけで費用が続く状態を避けられます。
費用対効果が低かったときの判断:維持・条件交渉・対応水準の変更・取引見直しの選び分け
変えられる費用と決まっている費用
貢献額が低い得意先について最初に確かめるのは、どの費用が契約や取引条件で決まっていて、どの費用が自社の裁量で変えられるかです。
値引き率、割戻しの条件、納品の頻度や場所は、得意先との合意で決まっていることが多く、自社だけでは変えられません。
一方、接待や贈答の頻度、営業の訪問回数、合意の範囲を超えて自社が自主的に続けている細かな納品対応などは、自社の判断で調整できます。
一覧表の列ごとに「決まっている」「変えられる」の印を付けると、貢献額の低さが主にどちらから来ているかが分かります。
変えられる費用が大きいなら、得意先との交渉に入る前に社内で手を打てます。
決まっている費用が大きいなら、条件の再協議が必要になり、相手に負担の変更を求める場面での留意点も関わってきます。
選択肢の選び分け
選択肢は、維持、条件交渉、対応水準の変更、取引の見直しの四つに整理できます。
維持は取引条件をそのままにし、自社の裁量で変えられる費用だけを見直すことも含みます。
条件交渉は値引き率や割戻しなど価格に関わる条件の再協議、対応水準の変更は最小ロット、納品回数、訪問頻度などサービスの水準を変えることを指します。
どれを選ぶかは、貢献額を押し下げている列で決まります。
値引きや割戻しの列が大きい得意先では、訪問を減らしても改善は限られ、条件交渉が中心になります。
工数の列が大きい得意先では、価格を動かさなくても、納品回数をまとめる、最小ロットを設けるといった対応水準の変更で貢献額が変わる余地があります。
検討の順序としては、合意が要らない調整から始め、条件交渉や対応水準の変更へ進み、取引の見直しは最後に置くのが無理のない流れです。
取引の見直しは得意先との関係そのものに影響し、元に戻しにくい判断だからです。
継続性の欄に書いた事情や、工数が推計のままかどうかも、この段階で必ず並べて見ます。
協賛金・人員派遣・減額に関する留意点
取引条件を変えるときには、取引上の力関係に関わる規制を知っておく必要があります。
公正取引委員会の考え方では、取引上の地位が優越しているかどうかは、取引依存度、市場での地位、取引先を変更できる可能性などを総合的に考慮して判断するとされています5。
自社が販売側だから常に規制の外にいる、あるいは常に守られる側だとは決まらず、得意先との関係ごとに見ることになります。
得意先から協賛金や人員の派遣を求められている場合、これらは一覧表の直接費や工数に入る費用です。
同じ考え方では、協賛金等は負担額・算出根拠・使途が取引相手との間で明確でなく、負担する側が得る直接の利益に照らして合理的な範囲を超える場合に問題となり、直接の利益の範囲内で自由な意思により提供される場合は問題とされないとしています5。
従業員等の派遣も、派遣の条件が明確でなく、直接の利益に照らして合理的な範囲を超える場合に問題となり、あらかじめ合意したうえで通常必要な費用が負担される場合は問題とされないと示されています5。
代金に関わる見直しでは、取適法も関係し得ます。
下請法の改正法は令和8年1月1日に施行されて中小受託取引適正化法(取適法)となり、代金の減額の禁止や、協議に応じない一方的な代金決定の禁止などが定められています6。
適用は資本金の額、従業員数、委託の内容で判定され、製造委託などの発注者と受託者の関係が対象で、すべての販売取引が対象になるわけではありません6。
得意先が自社に製造などを委託している関係であれば、得意先からの値引き要請が代金の減額に当たるかが問題になり得ますが、適用の有無は取引ごとに見る必要があります。
二つの資料を合わせて読むと、負担を求める側でも求められる側でも、負担の算出根拠と使途を明確にし、協議した経緯を記録に残しておくことが、後から説明できる条件変更の土台になりやすいと考えられます。
これは資料から読み取れる編集上の整理で、個別の取引が規制に当たるかどうかの結論までは言えません。
判断に迷う場合は、公正取引委員会や弁護士などの専門家に、取引の内容と経緯を伝えて相談するのが確実です。
| 選択肢 | 主に変えるもの | 得意先との合意 | 先に確かめる数値 |
|---|---|---|---|
| 維持 | 接待・贈答・訪問回数など自社の裁量で変えられる費用 | 不要 | 裁量で変えられる費用の額と貢献額 |
| 条件交渉 | 値引き率・割戻しの条件 | 必要 | 値引き・割戻しが粗利に占める割合 |
| 対応水準の変更 | 最小ロット・納品回数・訪問頻度 | 必要 | 納品・営業の工数と回数 |
| 取引の見直し | 取引そのもの | 通知や協議が伴う | 貢献額と継続性の欄の記録 |
数値が揃わないときの簡易な進め方:上位・下位の得意先から始める
対象を絞る
得意先別の費用や工数が記録されていないと、一覧表を全得意先分そろえるだけで時間がかかり、見直しそのものが始まらないことがあります。
その場合は、全得意先を一度に集計せず、対象を絞って始める進め方を提案します。
最初に選ぶのは、売上の上位数社と、粗利が薄い、あるいは対応に手間がかかると現場が感じている得意先です。
上位の得意先は会社全体の利益への影響が大きく、値引きや割戻しの条件が少し違うだけで貢献額が大きく変わります。
手間がかかると感じる得意先は、工数の列が大きくなっている見込みがあり、一覧表で確かめる価値があります。
中位の得意先は、上位と下位の結果を見てから必要に応じて広げれば足ります。
絞った得意先で列の立て方や配り方を試しておくと、後から対象を広げるときも同じ形式で集計でき、得意先どうしを比べられる状態を保てます。
推計の置き方
工数の記録がない場合は、手元に残っている別の記録から推計します。
営業日報や訪問予定表があれば訪問回数を、出荷記録があれば出荷件数を、請求書の発行記録や入金の消し込み記録があれば請求件数や督促の回数を数えられます。
日報がない場合でも、担当者に「この得意先には月に何回くらい訪問しているか」を聞き、回数の目安を置くことはできます。
推計した値は、一覧表の上で実績と区別できるようにしておきます。
セルの色を変える、列名に「推計」と付けるなど、方法は何でも構いません。
「担当者への聞き取り」「出荷記録の件数から算出」といった根拠も一言添えておくと、後で数字を見直すときにどこを直せばよいかが分かります。
推計は精度が低く、記録が整うと得意先の並び順が入れ替わることもあります。
そのため、取引の見直しのように影響の大きい結論の根拠にはしません。
数値が粗い段階で出す結論は、自社の裁量で変えられる費用の調整か、条件交渉や対応水準の変更の打診までにとどめ、取引の見直しは記録が整ってから検討します。
見直しの説明材料を残す
一覧表は社内の判断に使うだけでなく、得意先に条件の変更を相談するときの説明材料にもなります。
たとえば納品回数をまとめてほしいと伝える場合、現在の納品回数と、一回あたりの対応にかかっている費用を示せれば、なぜ変更をお願いするのかを具体的に説明できます。
説明に使うなら、費用の算出根拠と、変更によって得意先の側で何が変わるかを併せて整理しておきます。
協賛金などの負担では算出根拠と使途の明確さが問われることを見ましたが、条件変更の相談でも、根拠を示せる形で数字を残しておけば、経緯を説明しやすくなります。
協議した日付、相手の回答、合意した内容を記録しておけば、後で条件をめぐって認識が食い違ったときにも経緯をたどれます。
一覧表は一度作って終わりではありません。
条件を変えた後に同じ列・同じ配り方で集計し直してはじめて、変更の前後で貢献額がどう動いたかを比べられます。
半年や一年ごとに見直す時期を決めておけば、継続性を理由に保留した得意先の判断も、その都度新しい数字で更新できます。
得意先別の一覧表は、どの記録から何を拾えるかが会社ごとに違い、最初の列の立て方や工数の配り方で手間も結果も変わるため。
自社の請求・出荷・経費精算の記録のうち、どの費目を実績で拾え、どれを推計で置くことになるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 拾う費用 | 値引き・割戻し・販売奨励金・接待贈答などの直接費と、営業・納品・回収の工数 |
| 比べる相手 | 売上ではなく粗利。粗利から直接費と工数を引いた貢献額を、金額と比率で見る |
| 税の区分 | 損金算入や消費税の調整のための区分。費用対効果の計算では支出の全額を見る |
| 継続性 | 貢献額とは別の欄に、確かめられる事実で記録し、判断保留の理由に使う |
| 判断の順 | 合意が要らない調整から始め、取引の見直しは記録が整ってから検討する |
| 条件変更 | 算出根拠・使途・協議の経緯を残し、規制の適用は個別に専門家へ確認する |
条件の変更や取引の見直しは得意先との関係に影響し、税の扱いや規制の適用も取引ごとに異なるため、社内の数字だけで結論を急がないほうがよいため。 一覧表の数字をもとに、どの得意先から見直し、どの段階で税理士や弁護士などの専門家に確認を回すかを整理できます。
よくある質問
得意先ごとの営業工数や納品工数は、記録がなくてもどう見積もればよいですか。
営業日報や訪問予定表から訪問回数を、出荷記録から出荷件数を、請求書の発行記録から請求件数を数え、部門の一年間の人件費を同じ期間の回数の合計で割った一回あたりの費用を掛ける方法があります。
日報もない場合は、担当者への聞き取りで月あたりの回数の目安を置きます。
いずれも推計であることと根拠を一覧表に明記し、取引の見直しのような影響の大きい結論には使わないようにします。
接待交際費の特例(1人あたり10,000円以下)に当たる飲食費も、費用対効果の計算に入れるべきですか。
入れます。
この特例は、日付・参加者・人数・金額・店名などを記した書類の保存を条件に、法人税で交際費等から除くことができる扱いです1。
税の計算上の区分であり、会社からお金が出ていった事実は変わりません。
費用対効果を見るときは、特例の対象かどうかにかかわらず支出の全額を経済的なコストとして扱います。
値引きや割戻しは、費用として扱うのですか、売上のマイナスとして扱うのですか。
消費税では、値引き・返品・割戻し・販売奨励金・売上割引は「売上げに係る対価の返還等」に当たり、税額調整の対象です4。
法人税では、売上高や売掛金の回収高に比例して金銭で支払う売上割戻しは交際費等に当たらない扱いが通達に示されています3。
得意先別の一覧表では売上から引く費目として扱うと、粗利を出すときに迷いません。
帳簿上の計上方法は自社の処理に合わせ、二重に引かないように勘定科目と照らします。
個別の支出の扱いは税務署や税理士に確認するのが確実です。
得意先から協賛金や人員派遣を求められたとき、どの条件なら断ったり協議したりできますか。
公正取引委員会の考え方では、協賛金等は負担額・算出根拠・使途が明確でなく、負担する側が得る直接の利益に照らして合理的な範囲を超える場合に問題となるとされています5。
従業員等の派遣も、条件が明確でなく合理的な範囲を超える場合に問題となるとされています5。
求められた側としては、算出根拠や使途、派遣の条件の説明を求め、協議の経緯を記録しておくことが交渉の材料になります。
ただし、優越的な地位にあるかは取引依存度などを総合して判断されるため5、個別の結論は公正取引委員会や弁護士などの専門家に相談してください。
費用対効果が低い得意先でも、続けたほうがよいのはどんな場合ですか。
取引年数が長く発注が安定している、相手から示された計画や引き合いなど拡大の見込みに確かめられる根拠がある、といった継続性の事情がある場合は、判断を保留する理由になります。
また、自社の裁量で変えられる費用の調整や、条件交渉・対応水準の変更で貢献額が改善する余地があるなら、取引の見直しより先にそちらを試します。
保留にするときは次に見直す時期を決めておくと、理由のないまま費用が続くことを避けられます。
取適法は、自社が販売側の取引にも関係しますか。
取適法の対象は製造委託などの発注者と受託者の関係で、すべての販売取引が対象になるわけではありません6。
得意先が自社に製造などを委託し、自社が納めている関係であれば、自社は受託者として関係し得ます。
適用の有無は資本金の額、従業員数、委託の内容で判定されるため6、取引ごとに確かめる必要があります。
- 1 出典:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(2026年)
- 2 出典:国税庁「No.5260 広告宣伝費と交際費等の区分」(2026年)
- 3 出典:国税庁「租税特別措置法通達 第61条の4 交際費等の損金不算入」(2026年)
- 4 出典:国税庁「No.6359 値引き、返品、割戻しなどを行った場合の税額の調整(売上げに係る対価の返還等)」(2026年)
- 5 出典:公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(2026年)
- 6 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(2026年)
画像の出典元
- Close-up of hands working on documents and a laptop in an office setting, illustrating teamwork and productivity./Photo by Kampus Production on Pexels