◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 納期遵守率は、基準日・単位・許容幅と早着・納期変更の扱いを先に決めないと、同じ入荷実績でも数字が変わる。
- 納期変更は申し出た側を記録し、仕入先が申し出た延期は元の回答納期で、発注側が申し出た変更は変更後の納期で判定するか計算から外す。
- 遅れは仕入先起因・発注側起因・判断がつかないものに分け、発注側起因の分は仕入先の評価から外すか別に示す。
- 評価の重みと合否ラインは決まった配点を借りず、項目が悪かったときの損失と自社の点数の分布から決める。
- 取消しや変更を伴う対応では、取適法の対象取引なら完成品の受領と費用負担を守り、単価は協議して経緯を記録する。
目次

「よく遅れる気がする」を数字にする前に決める4つの定義
生産計画が崩れるたびに「あの仕入先はまた遅れた」と感じても、会議で数字を出せなければ、改善要請も発注配分の見直しも決められません。
しかも、基準日を回答納期にするか要求納期にするか、分納や納期変更をどう数えるかで、同じ実績から出る納期遵守率は変わります。
まず数えるルールを一つに決め、遅れのうち自社の発注変更や確定の遅れが原因の分を切り分けます。
そのうえで品質・価格と合わせて仕入先を評価し、取消しや変更を伴う対応では、費用負担や協議の記録といった条件を守ります。
基準日:回答納期か要求納期か
納期遵守率は、あらかじめ決めた基準日に対して、許された幅の中で納品された注文の割合です。
式そのものは単純ですが、分母と分子に何を入れるかを決めないまま集計すると、同じ入荷記録から担当者ごとに違う数字が出ます。
そうなると、仕入先に数字を示しても「数え方が違う」と言われ、話が前に進みません。
そこで最初に、基準日・単位・許容幅と早着・納期変更の扱いという4つの定義を決めます。
一つ目の基準日は、どの日付を「守るべき納期」とみなすかです。
候補は主に二つあります。
要求納期は、発注側が注文書に「この日までに欲しい」と書いた日です。
回答納期は、仕入先が注文を受けて「この日に納められる」と返してきた日です。
要求納期で測ると、自社が必要とした日にどれだけ間に合ったかが分かり、生産計画や顧客への納期回答への影響を見るのに向きます。
回答納期で測ると、仕入先が自分で約束した日を守ったかが分かり、仕入先の実行力を評価する目的に合います。
次の表は、基準日の違いで判定がどう変わるかを示すために編集部が作った仮の注文です。
実在の取引の実績ではありません。
注文Aは要求納期には遅れましたが、仕入先が回答した水曜にはきちんと届いています。
注文Cも、回答どおり木曜に届いているのに、要求納期で見ると遅れです。
四つの注文の入荷日は一つも変わっていないのに、要求納期で数えると遅れが目立ち、回答納期で数えると遵守がほとんどになります。
「あの仕入先はよく遅れる」という社内の実感が、実は要求納期を基準にしたもので、仕入先は約束どおり納めていた、ということもありえます。
どちらが正しいというより、何を問いたいかで選びます。
仕入先に改善を求める根拠にするなら、仕入先自身が約束した回答納期で測るほうが、相手も結果を受け止めやすくなります。
一方で、回答納期が要求納期より遅い状態が繰り返されること自体が自社の困りごとなら、それは遵守率とは別に「要求納期どおりの回答が得られたか」として記録しておくと、二つの問題を混ぜずに済みます。
共通の決まりに頼るより、目的に合わせて自社で一つに決めておくことが、数字を割らないための出発点です。
参考までに、業務システムでもこの比較は設計項目になっています。
SAP S/4HANA Cloud Public Edition の仕入先評価では、購買発注明細の統計納入日付と実績入庫日付を比べて納期の評価を出し、プラントの稼動日カレンダで非稼働日を除外することもできます3。
これは一つの製品の仕様であって業界共通の定義ではありませんが、どの日付同士を比べるかを導入時に決める必要があるという点は、表計算で集計する場合も変わりません。
単位:件数・明細・数量
二つ目の単位は、何を「一つ」と数えるかです。
注文書の枚数で数える、注文書の明細行で数える、納める数量で数える、という三つの考え方があります。
注文書単位では、一枚に複数の品目が載っていると、一品目だけ遅れても注文全体が遅れ扱いになります。
明細単位なら、どの品目が遅れたのかが見えます。
数量単位では、大量に買う品目の遅れが重く出て、少量でも欠けると困る部品の遅れは軽く見えます。
どれを選ぶかは、遅れたときに自社で何が止まるかで考えると決めやすくなります。
たとえば組立品の部品で、一種類でも欠けると工程が進まないなら、品目ごとの遅れが見える明細単位が実感に近くなります。
在庫として持つ消耗品の補充のように、少しずつ届いても使える物なら、数量で見たほうが影響の大きさを表せます。
迷う場合は明細単位で記録しておけば、後から注文書単位や数量単位に集計し直すこともできます。
単位と一緒に決めておきたいのが分納の扱いです。
一つの明細を何回かに分けて納めると、期日までに一部だけ届き、残りが遅れる、という状態が生まれます。
全量がそろわないと使えない物なら、最後の分が届いた日を入荷日として判定するのが実態に合います。
届いた分から使える物なら、期日内に届いた数量だけを遵守とみなす数え方もできます。
どちらにしても、分納だったという事実は別の欄に残しておくと、後で遵守率が下がった理由を説明するときに役立ちます。
許容幅と早着の扱い
三つ目は、どこまでのずれを遵守とみなすかという許容幅です。
入荷した日に受入検査が終わらず記録上は翌日になる、配送の都合で半日ずれる、といった小さなずれは、どの取引にも起こります。
許容幅をまったく設けないと、こうしたずれまで遅れに数えられ、本当に困る遅れが埋もれてしまいます。
逆に幅を広く取りすぎると、生産に響いた遅れまで遵守として扱われます。
自社の工程がどこまでのずれなら吸収できるかを生産担当と確かめ、それを幅の根拠にすると、仕入先にも社内にも説明がしやすくなります。
幅を日数で決めるときは、暦日で数えるか稼働日で数えるかも決めておきます。
週末や長期休暇をはさむと、暦日では大きく遅れて見えても、稼働日ではわずかなずれ、ということが起こるからです。
先ほどのSAPの例で非稼働日を除外できるのも、この差を評価から取り除くための設定と読めます3。
早く着いた分、いわゆる早着の扱いも決めておきます。
早着は遅れではありませんが、置き場が足りなくなる、受入作業が予定外に発生する、在庫を早く抱えることになる、といった負担を生みます。
早着を問題にしない取引なら、許容幅より早い入荷も遵守に含めてかまいません。
早着が困る取引なら、遵守率には入れず、遅れとは別に早着として数えておくと、仕入先に伝えるときに「遅れ」と「早すぎ」を混同せずに話せます。
納期変更があったときの数え方
四つ目は、発注した後で納期が変わったときの扱いです。
変わり方には大きく二つあります。
一つは、発注側が前倒しや延期、数量の追加を頼んだ場合です。
もう一つは、仕入先が「間に合わない」と申し出て、話し合いのうえで納期を延ばした場合です。
たとえば、回答納期の数日前に仕入先から遅れの連絡があり、翌週に延ばすことで合意し、実際に翌週に届いたとします(仮の例です)。
変更後の納期で測れば遵守、元の回答納期で測れば遅れです。
変更後の納期だけで測ると、遅れそうなときに延期を申し出れば遵守になってしまい、評価が実態より甘くなります。
反対に、元の納期だけで測ると、自社の都合で延期を頼んだ分まで仕入先の遅れとして数えてしまいます。
そこで、変更があったら「誰が申し出た変更か」を必ず記録し、申し出た側によって基準日を分ける方法を提案します。
仕入先が申し出た延期は、元の回答納期で判定します。
発注側が申し出た変更は、変更後に合意した納期で判定するか、その注文を遵守率の計算から外します。
この区別が、次に扱う遅れの原因の切り分けにそのままつながります。
ここまでの4つの定義は、決めた内容を一枚の文書にまとめ、決めた日付も書いておきます。
定義が途中で変わると過去の数字と比べられなくなるので、いつから何を変えたのかが後から分かるようにしておくためです。
| 仮の注文 | 要求納期 | 回答納期 | 入荷日 | 要求納期で判定 | 回答納期で判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 注文A | 月曜 | 水曜 | 水曜 | 遅れ | 遵守 |
| 注文B | 月曜 | 月曜 | 木曜 | 遅れ | 遅れ |
| 注文C | 火曜 | 木曜 | 木曜 | 遅れ | 遵守 |
| 注文D | 金曜 | 金曜 | 金曜 | 遵守 | 遵守 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注日:注文書を出した日
- 回答日:仕入先から納期の回答が来た日
- 要求納期:発注側が欲しいと書いた日
- 回答納期:仕入先が納められると返した日
- 許容幅の終わり:ここまでの入荷を遵守とみなす
- 実績入庫日:実際に入荷し記録された日
遅れは仕入先のせいか、自社の発注のせいか
切り分けに使う日付と変更履歴
定義を決めて遵守率を出しても、そこに自社が原因の遅れが混ざっていると、数字は仕入先の実力を表しません。
仕入先から見れば、追加注文や仕様変更で段取りを組み直したのに遅れと数えられた、ということになり、改善要請も受け入れてもらえません。
遅れを仕入先の評価に使う前に、一件ずつ原因がどちらにあるかを分けておく必要があります。
切り分けに使うのは、一つの注文について次の日付と履歴です。
<ul><li>発注日(注文書を出した日)</li><li>要求納期</li><li>回答日(仕入先から納期の回答が来た日)</li><li>回答納期</li><li>変更の依頼日、申し出た側、変更の内容、変更の回数</li><li>実績入庫日(分納なら各回の入荷日と数量)</li></ul>
これらを一行に並べると、遅れの経緯が読めるようになります。
発注日から要求納期までの間隔を見れば、仕入先がふだん必要とする期間に対して無理な注文だったかが分かります。
回答日を見れば、仕入先の回答そのものが遅かったのか、回答は早かったのに自社側で確定や承認を返すのが遅れたのかを区別できます。
変更の履歴を見れば、遅れの直前に自社から数量や内容の変更を頼んでいなかったかが確かめられます。
発注側起因になりやすい場面
記録を並べると、発注側に原因がある遅れにはいくつかの典型が見えてきます。
仕入先がふだん必要とする期間より短い要求納期で注文し、仕入先は遅い回答納期を返したのに、評価は要求納期で行っている場面です。
発注した後で数量を増やしたり、図面や仕様を変えたりして、仕入先が段取りをやり直した場面もそうです。
仕入先から回答が来ているのに社内の確認が滞り、正式な確定が遅れて着手も遅れた、という場面もあります。
公正取引委員会の取適法(中小受託取引適正化法)のQ&Aは、受託者の責めに帰すべき理由がないのに、受領前に発注内容を変えて受託者の利益を不当に害すると違反になり、発注の取消しも給付内容の変更に当たるとしています2。
また、発注した後で数量を増やす場合は、増えた分を新たな発注として改めて明示する必要があると示しています2。
この扱いは、遵守率の数え方を決めるうえでも筋が通ります。
追加した数量は新しい注文として、追加を依頼した日から改めて期間を数えれば、元の注文に対する仕入先の遅れと混ざりません。
なお、取適法が適用されるのは、委託事業者と中小受託事業者が資本金や従業員数の基準を満たす製造委託などの取引です1。
自社のある取引が対象かどうかは、取引ごとに公正取引委員会の資料で確かめる必要があります。
基準に当たらない取引では法の義務は別の問題になりますが、追加分を新たな注文として数え直すという切り分けの考え方そのものは使えます。
一方、同じQ&Aは、納期遅れを受けて合意の上で内容を変えた場合、受託者に実質的な損害が生じていなければ不当な変更には当たらないとしています2。
これは取引上の変更が許されるかどうかの話で、評価の数え方とは別の問いです。
仕入先の遅れを受けて合意で納期を延ばしたこと自体に問題がなくても、評価のうえでは仕入先が申し出た延期として、元の回答納期で遅れと数えてかまいません。
前の節で決めた「申し出た側で基準日を分ける」ルールと矛盾しないのは、このためです。
分類の結果を評価に反映する
一件ずつ見た結果は、仕入先起因、発注側起因、記録が足りず判断がつかないもの、の三つに分けます。
仕入先の遵守率を計算するときは、発注側起因の遅れを分母と分子の両方から外すか、外さずに別の欄で件数を示すかを決めておきます。
外す方法は数字が仕入先の実力に近づき、別欄に示す方法は自社の発注の問題も同じ表で見える、という違いがあります。
判断がつかないものは、仕入先の遅れとして扱わないほうが、結果を示したときに相手の納得を得やすくなります。
そのうえで、どの記録が欠けていたせいで判断できなかったのかをメモしておけば、次の期から記録を足すきっかけになります。
発注側起因の遅れが多い仕入先は、評価を下げる前に、社内の発注の出し方を見直す対象です。
購買の担当者が分類結果を生産や営業の担当者と共有すると、短い要求納期や発注後の数量追加がどの部署の事情から来ているのかを話し合う材料になります。
仕入先に改善を求めるときも、自社起因の分を自分から外して示せば、残った遅れについての話し合いに集中しやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 日付と履歴を一行に並べる:発注日・要求納期・回答日・回答納期・変更履歴・実績入庫日
- 変更の申し出元を確かめる:数量追加や仕様変更、延期を誰が申し出たか
- 起因を分類する:仕入先起因・発注側起因・判断がつかない
- 評価へ反映する:発注側起因は計算から外すか別欄で示す
納期を品質・価格と合わせた評価に組み込む
評価軸の選び方
原因を切り分けた遵守率が出せたら、次はそれを仕入先の評価全体の中に置きます。
納期だけで順位をつけると、納期は守るが不良が多い仕入先や、価格の相談に応じない仕入先が上位に来ることがあります。
取引を続けるか、発注をどう配分するかを決めるには、納期と並べて見る項目が必要です。
並べ方の一例として、SAP S/4HANA Cloud Public Edition の仕入先評価では、時間(納期)のほか、価格、数量、品質(不良率を表すPPMなど)、オペレーショナル、質問表、ユーザ定義の基準といった評価基準を持ち、それらから総合的な点数を出します3。
これは一つの製品の仕様で、日本の購買実務で標準とされる項目の一覧ではありません。
ただ、数値で測れる項目と、質問表のように担当者の評価で付ける項目を組み合わせている点は、自社で項目を選ぶときの参考になります。
自社で選ぶときは、すでに手元にあるデータで測れる項目から始めるのが現実的です。
納期は前の二つの節で決めた遵守率をそのまま使えます。
品質は受入検査の不合格や返品の記録、価格は見積の提示や単価の相談への対応、対応力は納期回答の速さや変更への協力の度合いといった形で、記録の当てがあるものを選びます。
回答の速さは、切り分けのために記録した発注日と回答日から測れるので、新たな集計を増やさずに済みます。
最初から項目を多くしすぎず、少ない項目で回してから足すほうが、集計の負担で評価が止まることを避けられます。
重みと合否ラインの決め方(提案)
項目を選んだら、それぞれにどれだけの重みを与えるかを決めます。
先ほどのSAPの説明ページには、標準の評価基準をどう加重するかの計算式は書かれておらず、ユーザ定義の基準については有効にしたあとで加重と点数の付け方を定義する、と説明されています3。
どこかに決まった配点があってそれに従う、というものではなく、使う側が自社の取引に合わせて決める設計項目だと考えるのが自然です。
重みを決める手がかりとして提案したいのは、その項目が悪かったときに自社が受ける損失の大きさです。
部品が少し遅れるだけで生産ラインが止まる品目なら、納期の重みを大きくします。
不良がそのまま顧客からの苦情につながる品目なら、品質の重みを大きくします。
同じ仕入先でも品目によって事情が違うなら、仕入先ごとではなく品目の種類ごとに重みを変えることもできます。
決めた重みには、なぜそうしたのかを一行書き添えておくと、後で見直すときに議論が振り出しに戻りません。
合否ライン、つまりどの点数を下回ったら対応を考えるかについては、外から借りてきた目標値より、自社の仕入先の点数の分布から決めるほうが無理がありません。
最初の期は線を引かずに全仕入先の点数を並べ、下位の仕入先について、点数の低さが実感と合っているかを確かめます。
そのうえで次の期から線を置けば、なぜその線なのかを説明しやすくなります。
点数化したあとの見直し方
点数を出して並べると、担当者の実感とずれる仕入先が出てくることがあります。
ずれには三つの理由が考えられます。
定義の問題(分納や早着の扱いが実態に合っていない)、重みの問題(損失の大きい項目が軽く扱われている)、記録の問題(切り分けに必要な日付が欠けている)です。
直す順番は、定義と記録を先に、重みを後にするのがよいと考えます。
定義や記録が実態とずれたまま重みを動かしても、ずれた数字の見え方が変わるだけだからです。
定義や重みを変えたら、変えた日と内容を残します。
変更の前と後では点数の意味が違うので、区切りが分からないと、仕入先が改善したのか数え方が変わったのかを見分けられなくなるからです。
▼ 図の内容を文字で読む
- 少ない項目で始める
- 納期の遵守率と、記録の当てがある品質・価格・対応力から選ぶ
- 重みを仮に置く
- 悪かったときの損失の大きさで決め、理由を書き添える
- 点数を並べて実感と照らす
評価が悪かった仕入先への対応と、発注側が守る条件
遅れの傾向別の対応の比べ方
評価の点数が低かった仕入先に何をするかは、点数の低さだけでは決まりません。
同じ点数でも、特定の月や品目で一度大きく遅れたのか、毎月少しずつ遅れているのかで、打つ手が違うからです。
そこで、遅れが偶発か常態か、原因が仕入先か自社か、という二つの軸で状況を見ます。
原因の軸は、前に行った切り分けの結果をそのまま使います。
対応の選択肢は、次の四つに整理できます。
情報共有は、評価の結果と遅れた注文の明細を仕入先に見せることです。
偶発的な遅れや、仕入先が自社の遅れを把握していないと思われる場合に向きます。
改善要請は、遅れの原因と対策を仕入先に書面で求め、確認する時期を決めておくことです。
仕入先起因の遅れが常態になっているときの最初の手になります。
発注配分の見直しは、同じ品目を複数の仕入先から買っている場合に、注文の割合を変えることです。
改善要請をしても推移が変わらないときに検討しますが、配分を減らした仕入先の生産計画にも影響するので、事前に伝えておくほうが関係を壊しにくくなります。
代替先の確保は、新たな仕入先を探して試作や評価を始めることで、一社にしか頼れない品目で遅れが続く場合の備えになります。
立ち上がりまでに時間がかかるので、配分の見直しと並行して進めることもあります。
この並びは、法律や規格が求める順番ではなく、仕入先に改善の余地を残しながら、示した明細を次の段階の根拠として引き継ぐための提案です。
また、発注側起因の遅れが多かった場合は、仕入先への対応より先に、自社の発注の出し方を直すことが対応になります。
発注の取消し・変更・打切りで守る条件
発注配分を減らしたり代替先に切り替えたりすると、すでに出している注文を取り消したり、数量を減らしたりする場面が出てきます。
ここで注意したいのが、取り消す側の費用の扱いです。
公正取引委員会のQ&Aは、ジャスト・イン・タイム方式の取引で、委託者の一方的な都合で発注を変更・取消し・生産打切りとする場合、完成済みの製品はすべて受領し、仕掛品の費用や部品代を含む受託者の費用を全額負担しなければならないとしています2。
同じQ&Aは、発注の取消しも給付内容の変更に当たるとしています2。
この話が当てはまるのは、自社が委託事業者に当たる取適法の対象取引です。
取適法は2026年(令和8年)に施行され、それまでの下請法から変わり、適用の基準には資本金に加えて従業員数の基準が加わりました1。
以前は下請法の対象外だった取引が対象に入っていることもあるので、切り替えの前に取引ごとに確かめておくと安心です。
また、Q&Aが示しているのは、発注を取り消したり変えたりするときの受領と費用負担の扱いで、配分を見直すことや取引をやめることそのものの可否を述べているわけではありません。
実務では、切り替えを決めたら、まだ納まっていない注文を洗い出し、完成済みのもの、作りかけのもの、材料や部品を手配済みのものに分けて、受領と費用の負担を仕入先と話し合います。
仕入先の遅れが取消しのきっかけだったとしても、受託者の責めに帰すべき理由があったと言えるかどうかは、記録がなければ説明が難しくなります。
前に整えた日付と変更履歴、申し出た側の記録は、評価のためだけでなく、この説明の材料にもなります。
単価の協議と記録
評価が低い仕入先に対して、単価の引下げを求めたくなることもあるかもしれません。
しかし、公正取引委員会のQ&Aは、十分な協議をせずに一方的に単価を指定する、いわゆる指値は、買いたたきに該当するおそれがあるとしています2。
取適法では、中小受託事業者から価格協議の求めがあったのに協議に応じない、必要な説明をしないといった一方的な価格決定が禁止されました1。
評価の結果は、単価を決める根拠として相手に押しつけるのではなく、協議の場で示す材料として使います。
どの期間のどの注文で何が起きたかを明細で示せば、話し合いが感覚の言い合いになりにくくなります。
協議や合意の経緯は、書面や電子メールで残しておくことが望ましいとされています2。
いつ、誰と、どの資料を示し、何に合意したかを残しておけば、後で担当者が替わっても経緯をたどれます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 情報共有
- 偶発的な遅れ。評価結果と遅れた注文の明細を示す
- 改善要請
- 仕入先起因の遅れが常態。原因と対策を書面で求め、確認の時期を決める
- 発注配分の見直し
▼ 図の内容を文字で読む
- 未納の注文を洗い出す:完成済み・作りかけ・材料や部品を手配済みに分ける
- 完成済みのものを受領する:一方的な都合による取消しでも受領する
- 仕掛品や部品の費用を負担する:費用の内容を仕入先と確かめる
- 協議と合意を記録する:書面や電子メールで残す
出典:公正取引委員会「取適法よくある質問コーナー」(委託者の一方的都合による発注の変更・取消しの場合)
データを取り、評価を回し続ける運用
記録する項目
定義、切り分け、評価、対応のルールが決まっても、記録が続かなければ次の期の数字は出ません。
記録する項目の中心は、遅れの切り分けのために挙げた日付と変更履歴で、これに分納の各回の入荷と、協議記録がどこにあるかを加えます。
記録で最も起こりやすい問題は、納期を変更したときに元の日付を上書きしてしまうことです。
発注システムでも表計算でも、納期の欄を書き換えるだけでは、元の回答納期も、誰が変更を申し出たかも残りません。
そうなると、仕入先が申し出た延期は元の納期で判定する、という前のルールが使えなくなります。
変更は上書きせず、変更前の日付、変更後の日付、申し出た側、依頼日を別の行や別の欄に追記する形にしておくと、後からでも判定をやり直せます。
誰が入力するかも決めておきます。
変更の記録は、仕入先とやり取りした発注担当者がその場で残すのが漏れにくく、入荷の記録は受入の担当者が入荷した日に残すのが確実です。
月末にまとめて思い出しながら入力すると、申し出た側のような細かい情報が抜けやすくなります。
見直しの頻度と担当
集計と見直しの頻度は、月次を起点に考えることを提案します。
月ごとに区切ると、締めの作業と合わせやすく、遅れが続いているかどうかにも早めに気づけます。
ただし、注文の件数が少ない仕入先では、月ごとだと一件の遅れで数字が大きく動くので、四半期ごとにまとめて見るほうが傾向をつかみやすい場合もあります。
必要な頻度は取引量と確認にかけられる手間で決まるので、仕入先や品目によって変えてもかまいません。
担当の分け方の一例は次のとおりです。
購買の担当者が記録を集計して遵守率と点数を出し、生産や品質の担当者が発注側起因かどうかの判断に加わり、購買の責任者が対応を決めます。
仕入先への共有は、評価の期ごとに結果と明細を示し、改善要請をした仕入先とは確認の時期を決めて話す、という形にすると、評価が社内だけで閉じずに済みます。
履歴で推移を見る
評価は一回の点数で判断せず、期ごとの結果を残して推移で見ます。
SAP S/4HANA Cloud Public Edition では、評価点をその都度計算するほか、定期的なバッチ処理で保存した履歴の評点から算出することもできます3。
製品の仕様ではありますが、期ごとの結果を保存しておき、後から並べられるようにするという考え方は、表計算で管理する場合にもそのまま使えます。
推移が見えると、前の節で使った「偶発か常態か」の判断がしやすくなります。
一つの期だけ点数が落ちたのなら、その期の注文の明細を見れば理由が分かることが多く、続けて落ちているなら常態の遅れとして改善要請を考えます。
改善要請をした仕入先について、要請の前後で遵守率がどう動いたかを見れば、要請が効いたのか、次の段階を検討すべきかを判断する材料になります。
履歴を残すときは、点数だけでなく、その期に使っていた定義と重みも一緒に残しておきます。
定義を変えた期の前後で数字が動いても、仕入先の変化と数え方の変化を取り違えずに済みます。
日々の記録、期ごとの点数、協議の記録がそろっていれば、遅れの話をするたびに一から資料を作り直す手間が減り、仕入先との話し合いを、示した明細の確認から始められるようになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 記録する:発注担当者が変更を、受入の担当者が入荷を、その場で残す
- 集計して点数を出す:購買の担当者が遵守率と点数を出す
- 起因を確かめる:生産や品質の担当者が発注側起因かを判断する
- 対応を決めて共有する:購買の責任者が対応を決め、仕入先に結果と明細を示す
基準日や単位、変更の数え方は、自社の発注データがどの日付や履歴を持っているかで決められる範囲が変わり、社内の議論だけでは定義が一つにまとまりにくいためです。
手元の発注・入荷の記録で、どの基準日と単位なら遵守率を出せるか、切り分けに足りない記録項目は何かを一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 基準日 | 目的で選ぶ。仕入先の実行力を見るなら回答納期、自社計画への影響を見るなら要求納期 |
| 単位 | 遅れたときに自社で止まるものに合わせる。迷えば明細単位で記録する |
| 許容幅・早着 | 暦日か稼働日かを決め、早着は遅れと分けて数える |
| 納期変更 | 申し出た側を記録し、仕入先が申し出た延期は元の回答納期で判定する |
| 遅れの起因 | 仕入先起因・発注側起因・判断がつかないに分け、発注側起因は除外か別欄で示す |
| 評価の重み | 決まった配点はない。項目が悪かったときの損失の大きさで自社が決める |
| 取消し・変更 | 取適法の対象取引では、完成品の受領と費用負担、協議と合意の記録を確認する |
評価を始めた後は、記録の上書きを防ぐ仕組みや、期ごとの点数と定義を残す運用を整えないと、数字が続かず推移も比べられなくなるためです。 記録する担当と入力の場面、見直しの頻度、履歴の残し方を、自社の取引量に当てはめて整理できます。
よくある質問
早く着いた分は遅れと数えるべきですか。
遅れとは数えず、早着として別に数えるのがよいと考えます。
早着を問題にしない取引なら遵守に含めてかまいませんが、置き場や受入作業の負担がある取引では、遵守率に入れずに早着として記録しておくと、仕入先に伝えるときに遅れと混同せずに済みます。
どちらにするかは、許容幅と一緒に決めておきます。
分納は件数でどう数えればよいですか。
明細単位で記録し、全量がそろわないと使えない物は最後の分が届いた日で判定し、届いた分から使える物は期日内に届いた数量だけを遵守とみなす方法があります。
どちらの場合も、分納だったことを別の欄に残しておくと、遵守率が下がった理由を説明しやすくなります。
納期の前倒しを頼んだ場合、元の納期と変更後のどちらで数えますか。
発注側が前倒しを頼み、仕入先が新しい納期に合意した場合は、合意した変更後の納期で判定するか、その注文を遵守率の計算から外します。
仕入先が前倒しに応じられず元の納期で納めたのなら、元の納期で判定し、遅れには数えません。
いずれの場合も、発注側から申し出た変更として依頼日と内容を記録しておきます。
遵守率が低い仕入先との取引をやめるとき、発注側が注意することは何ですか。
まず、自社がその取引で取適法の委託事業者に当たるかを確かめます。
当たる場合、公正取引委員会のQ&Aは、委託者の一方的な都合で発注を変更・取消し・生産打切りとするときは、完成済みの製品を受領し、仕掛品や部品代を含む費用を負担する必要があるとしています2。
まだ納まっていない注文を洗い出し、受領と費用負担について話し合い、その経緯を書面や電子メールで残しておきます2。
取引をやめることそのものの可否は、このQ&Aでは扱われていません。
自社が取適法の対象かどうかは何で判断しますか。
取適法は、委託事業者と中小受託事業者の資本金と従業員数の基準、それに製造委託などの取引の内容で適用が決まります1。
2026年の施行で従業員数の基準が加わったので、以前の下請法での判断のままにせず、取引ごとに公正取引委員会の資料で確かめます。
同じ仕入先でも、取引の内容によって判断が変わることがあります。
評価の結果を仕入先に伝える頻度と方法はどうすればよいですか。
評価を集計する期ごと、たとえば月次や四半期ごとに、点数だけでなく遅れた注文の明細と、発注側起因として外した分を添えて伝えるのがよいと考えます。
改善要請をした仕入先とは、確認する時期を決めて話し合います。
伝えた内容や合意したことは、書面や電子メールで残しておくと、次の期の話し合いの起点になります。
- 1 出典:公正取引委員会「取適法特設サイト(中小受託取引適正化法)」(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「取適法よくある質問コーナー」(2026年)
- 3 出典:SAP「SAP Learning:SAP S/4HANA Cloud Public Edition 仕入先評価の説明」(2026年)
画像の出典元
- A delivery worker in PPE handles cardboard boxes from a van at an industrial site./Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels