◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 手書きの注文書は書式も筆跡もそろわないため、文字認識だけで受注データが完成する前提を置かず、取引先・品番・数量・金額といった項目には人の確認を残す
- 負担が入力に寄っているか保管に寄っているかを工程に分けて見極めると、手を入れる場所が変わる
- スキャンした画像は解像度200dpi以上、カラーで保存する場合は色の各成分ごと256階調以上という条件を満たして保存する
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できる形にしておくと、保存の要件を満たすと同時に、探し物の時間も削れる
- 自動化ツールの導入は、注文量と書式の種類数を数え、導入後も残る確認作業と費用を見込んだうえで判断する
目次

手書き注文書のスキャン電子化で受注側担当者が感じている負担はどこにあるか
届いた注文書をスキャナに通すところまでは数分で終わるのに、そのあとの読み取り結果の突き合わせと打ち直しで時間が溶けていく。
手書きの注文書を電子化するときに詰まるのは、たいていこの工程です。
書式も筆跡もそろわない紙を相手にする以上、文字認識だけで受注データが完成する前提は置かず、取引先・品番・数量・金額といった基幹データに関わる項目には人の確認を残す形で運用を組み立てるのが現実的です。
そのうえで、保存する画像とデータ自体は電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たす形にしておく。
自動化ツールを入れるかどうかは、注文量と書式のばらつきを見てから判断しても遅くありません。
注文書の手入力に手間がかかると感じる担当者は多い
受注業務の担当者に何が負担かを尋ねた調査では、FAX・メール・電話で注文書を受け取る回答者の60%が「注文書の手入力に手間がかかる」と答えています2。
食品業(小売・卸売)の受注業務担当者を対象に2023年3月に実施された調査で、FAX・メール・電話で受注する回答者90人分の集計です2。
業種や企業規模が違えば割合そのものは動きますから、自社の数字として読むのではなく、紙の注文書を受ける現場で何が起きやすいかの目安として見るのが妥当です。
ひとくちに手入力といっても、時間を取られている作業はいくつかに分かれます。
注文書に書かれた品番や数量を受注画面へ打ち込む作業、読みにくい字を拡大したり原本を光にかざしたりして判読する作業、それでも決めきれずに取引先へ電話で確かめる作業、打ち終えたあとにもう一度原本と画面を見比べる作業。
一枚あたりの時間は短くても、届く枚数が増えるほど積み上がっていきます。
ここで見落とされやすいのが、スキャンしただけではこの作業がほとんど減らないという点です。
紙が画像に変わっても、そこに書かれた品番や数量を読み取って受注データの欄に入れる仕事は残ります。
電子化の検討が「スキャナを買う」「複合機の設定を変える」で止まってしまうと、担当者の実感としては何も軽くなっていない、という結果になりがちです。
手入力の負担を動かしたいなら、読み取ったあとに誰が何を見て何を打つのかまで踏み込む必要があります。
注文書の保管・管理を煩雑と感じる担当者も一定数いる
同じ調査では、30%が「注文書の管理(保管義務)が煩雑である」と回答しています2。
手入力を挙げた割合ほどではありませんが、保管そのものを負担と感じている担当者が一定数いることがわかります。
注文書は受け取って処理したら終わり、という書類ではありません。
納品数が違うと言われたとき、請求金額の根拠を聞かれたとき、社内で過去の注文内容を確かめたいとき、そのたびに原本かその控えを探すことになります。
取引先別に綴じていれば日付から探しにくく、日付順に綴じていれば取引先から探しにくい。
紙で持っている限り、この探しにくさは並べ方を変えても向きが入れ替わるだけです。
電子化すれば探す手間は軽くなりますが、自動的にそうなるわけではありません。
スキャンした画像を共有フォルダへ日付だけのファイル名で積み上げていけば、棚から綴りを出す作業がフォルダを開けて一枚ずつ開いて確認する作業に置き換わるだけです。
保管の負担を実際に減らすには、保存したデータをどの手掛かりで探せるようにしておくかを先に決める必要があります。
そしてこの「どの手掛かりで探せるか」は、電子帳簿保存法が求めている要件とも重なってきます。
どの工程で手間が生まれているかを分けて見る
打ち手を決める前に、注文書が届いてから保存されるまでの流れを工程に分けてみます。
受け取り、取引先や日付ごとの仕分け、スキャン、文字の読み取り、内容の確認と修正、受注入力、画像とデータの保存。
会社によって順番や担当者は違いますが、おおむねこの並びに収まります。
先ほどの二つの負担は、この流れの中で別々の場所に立っています。
手入力の手間は読み取りから受注入力までの真ん中あたりに、保管の煩雑さはいちばん最後に集まっています。
前者を軽くするのは読み取りと確認の作り方の問題で、後者を軽くするのは保存の決め方の問題です。
同じ「電子化」という言葉で語られていても、手を入れる場所も、効果が出るまでの道のりも違います。
自社の手間がどちらに寄っているかは、直近一週間の作業を思い返すだけでもおおよそ見当がつきます。
残業の理由が入力の山なら前者、「あの注文書どこだっけ」の探し物なら後者です。
両方に心当たりがあるなら、先に着手しやすいのは保存の側になります。
満たすべき条件が制度として決まっているぶん、何をどこまでやれば終わりなのかがはっきりしているからです。
| 回答内容 | 割合 |
|---|---|
| 注文書の手入力に手間がかかる | 60% |
| 注文書の管理(保管義務)が煩雑である | 30% |
スキャン後のデータ化はどこまで自動化でき、どこに人の確認を残すべきか
書式・筆跡がそろわない注文書では完全自動化を前提にしない
スキャンした画像から文字を読み取ってデータに変換する仕組みは、一般にOCR(画像の中の文字を文字データとして認識する技術)と呼ばれます。
この仕組みが力を発揮するのは、どの欄に何が書かれているかがあらかじめ決まっている帳票です。
読み取る位置を先に定義しておけば、そこに写っている文字を取り出して所定の項目へ入れられます。
手書きの注文書が難しいのは、その前提が崩れやすいからです。
取引先ごとに様式が違えば、品番欄の位置も明細行の数も一枚ごとに変わります。
枠からはみ出した数量、二重線で消して脇に書き直された単価、「※前回と同じ」とだけ書かれた備考、欄外に添えられた単位。
人が読めば意味の取れるこうした書き方が、位置と形で判断する仕組みにとっては例外の山になります。
製品の紹介で読み取り精度の数値を見かけることもありますが、その数字がどんな書式と記入状態を前提にしたものかで意味は変わります。
定型の申込書で出る精度が、取引先がそれぞれの様式に手書きした注文書でも同じように出るとは限りません。
判断の材料にするなら、自社に実際に届いている注文書を何枚か持ち込んで、そのまま読ませてみるのが確実です。
そのとき見るべきは全体の正解率よりも、どの項目でどんな間違い方をするかのほうです。
つまり検討すべきなのは「自動化できるかどうか」ではなく、「どこまで任せて、どこから人が見るか」の線引きです。
この線を引かないまま導入すると、読み取り結果を全件目を通して確かめることになり、入力が確認に置き換わっただけ、という状態になりかねません。
金額・数量・取引先など基幹項目は人の確認工程を残す
線を引く基準として使いやすいのは、その項目を間違えたときに誰がいつ気づくかという見方です。
すぐ誰かが気づいて直せる間違いと、出荷や請求まで進んでから発覚する間違いとでは、確認に手間をかける価値がまるで違います。
取引先名や取引先コードの読み違いは、出荷先も請求先もまとめて別の会社になります。
品番の一文字違いは、似た規格の商品が倉庫から出ていくまで誰も気づかないことがあります。
数量の桁違いは在庫と出荷の両方に響き、金額の誤りは請求と入金の突き合わせで差異として跳ね返ってきます。
いずれも基幹データとして後工程へ流れていく項目なので、読み取り結果をそのまま登録する設計にはしないほうが安全です。
一方で、納期や希望日のように取引先とのやり取りの中で早く表面化する項目や、備考欄の連絡事項のように原本の画像を見れば後から追える項目は、確認の重さを変えられます。
すべてを同じ濃さで見るのをやめて、影響の大きい項目へ確認を寄せるという配分です。
確認を残すといっても、二人で読み合わせる方法だけが手段ではありません。
明細の金額を足した数と注文書の合計欄を突き合わせれば、数量や単価の読み違いは合計の不一致として現れます。
取引先コードを自社のマスタと照合すれば、存在しないコードはその場で弾けます。
読み取りの確からしさが低い箇所を目立たせて表示できる製品もありますが、そうした表示があるかどうかは製品ごとに違うので、試用のときに確かめておく点になります。
人手を増やす方向で確認を厚くすると、注文が増えたときに真っ先に崩れます。
見る項目を絞り、機械的に照合できるところは照合に任せるほうが、繁忙期も同じやり方を続けられます。
確認を軽くしたいなら読み取る前の工程に手を入れる
読み取ったあとの確認をどれだけ減らせるかは、読み取らせる紙の側の条件にかなり左右されます。
同じ仕組みを使っても、欄が広く枠のはっきりした用紙に書かれた注文書と、余白に走り書きが足された注文書とでは、確認に回る量が変わります。
そこで手を入れられるのが、注文書そのものの様式です。
自社で用意した様式を取引先に使ってもらえれば、欄の位置がそろい、読み取る場所を定義しやすくなります。
品番欄に商品コードを書いてもらう、記入例を一枚添える、数量欄の単位をあらかじめ印字しておくといった工夫も、判読の迷いを減らす方向に効きます。
ただし、これは取引先の協力が前提です。
長年その会社の様式で注文してきた相手に、一斉に切り替えてもらうのは現実的ではありません。
枚数の多い取引先から順に相談していけば、届く注文書のうち様式のそろったものの割合は少しずつ上がっていきます。
ばらつきが減った分だけ、自動の読み取りに任せられる範囲も広がります。
受け取り方の整理も同じ方向に働きます。
注文書を受ける窓口を絞り、FAXの受信先やメールの宛先を通常の問い合わせと分けておけば、仕分けの工程で迷う場面が減ります。
読み取り精度とは別の話ですが、工程全体で見れば人が手を動かす時間を削る打ち手です。
| 項目 | 扱いの目安 | そう分ける理由 |
|---|---|---|
| 取引先名・取引先コード | 人が確認する | 出荷先も請求先もまとめて別の会社になる |
| 品番・品名 | 人が確認する | 似た規格の商品が出荷されるまで気づかれにくい |
| 数量・単位 | 人が確認する | 桁違いが在庫と出荷の両方に響く |
| 金額 | 人が確認する | 請求と入金の突き合わせで差異になる |
| 納期・希望日 | 内容により確認する | 取引先とのやり取りで早く表面化しやすい |
| 備考・連絡事項 | 読み取り結果を参考にする | 原本の画像を見れば後から追える |
電子帳簿保存法のスキャナ保存要件(解像度・階調・検索要件)をどう満たすか
読み取り解像度は200dpi以上が必要
紙で受け取った注文書をスキャンして電子データで保存する扱いは、電子帳簿保存法ではスキャナ保存と呼ばれます。
ここには満たすべき条件があり、自社の都合で決めてよい部分と決められない部分が分かれます。
保存の側から先に整えるとよいのは、この決められない部分がはっきりしているからです。
まず読み取りの解像度は、200dpi以上とされています1。
dpiは一インチあたりいくつの点で読み取るかを表す単位で、値が小さいほど細かい文字がつぶれます。
気をつけたいのは、機器の性能よりも設定で引っかかる場合があることです。
ファイルサイズを抑える目的で低い解像度が初期値になっている複合機もあり、その場合は設定を変えるだけで条件を満たせます。
過去に取り込んだ分がどうなっているかも、一度確かめておく価値があります。
保存済みの画像のプロパティを見れば、どの設定で読み取ったかはたいてい分かります。
なお、古い解説には改正前の要件がそのまま残っていることがあるため、数値を確かめるときは現行の一問一答に当たるのが確実です1。
カラー保存する場合は256階調以上が必要
カラー画像として保存する場合は、色の各成分ごとに256階調(RGB各8ビット)以上が求められます1。
階調は色や明るさの段階の細かさを指し、段階が少ないほど薄い鉛筆書きや色の違いが飛びやすくなります。
手書きの注文書では訂正印の朱色や色ペンでの指示が意味を持つこともあるので、実務の面からもカラーで残す判断はしやすいはずです。
白黒やグレースケールでの保存が認められるかどうかは、その書類がどの区分に当たるかで扱いが分かれます。
区分の判定や細目は原典で個別に確認する必要があり、記事の一般論で決めてよい部分ではありません1。
迷う書類があるなら、そこだけ切り出して確認するほうが早く片付きます。
設定が決まったら、複合機やスキャナのプリセットとして登録しておくのが実務的です。
注文書のスキャンを複数人で分担している職場では、誰が取り込んでも同じ条件になっていること自体が保存要件の担保になります。
「あの人が取り込んだ分だけ設定が違った」は、原本を手放したあとでは取り直しがききません。
取引年月日・取引金額・取引先で検索できる形にする
三つめが検索の要件です。
保存したデータは、取引年月日・取引金額・取引先で検索できるように記録することが求められます1。
画像として残っていればよいという話ではなく、あとから条件で引き出せる状態にしておくところまでが保存の条件に含まれています。
実際の作り方は、大きく三通りに分かれます。
ファイル名に三項目を決まった順で入れる方法、表計算ソフトなどで索引の一覧を作って画像と対応付ける方法、受注システムや文書管理の項目として持たせる方法です。
枚数が少なければファイル名の規則を決めるだけでも運用できますし、枚数が多ければ索引を別に持つほうが探しやすくなります。
どれを選ぶかより、決めた方法を全員が同じように守れるかのほうが結果に効きます。
ここで、保管が煩雑だという先ほどの負担に戻ります2。
取引年月日・取引金額・取引先という三つの手掛かりは、制度が求めているものであると同時に、実務で注文書を探すときに使う手掛かりとほぼ重なっています。
「先月のあの得意先からの注文」「この金額の請求の根拠」といった探し方が、そのまま検索条件になるからです。
要件を満たす形に整えることが、そのまま探し物の時間を削ることにつながります。
そしてこの三項目は、自動の読み取りで拾いたい項目とも重なります。
読み取った取引先や金額をそのまま検索の索引に回せれば、保存のために別途入力し直す手間は生まれません。
逆にいえば、読み取り結果を人が確認する工程は、受注入力のためだけでなく、保存した索引の正しさのためにも働いていることになります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 解像度 | 200dpi以上 |
| 階調(カラー画像として保存する場合) | 色の各成分ごと256階調(RGB各8ビット)以上 |
| 検索 | 取引年月日・取引金額・取引先で検索できるよう記録する |
注文量や書式のばらつきに応じて、自動化ツール導入をどう判断するか
コスト負担がデジタル化の最大の壁になりやすい実態
保存の形が整い、人が確認する項目も決まったところで、ようやく道具の話になります。
中小企業を対象にした調査では、デジタルシフトやDXを進めるうえでの課題として「コスト負担」を挙げた企業が31.9%と最も多くなっています3。
東京23区内を中心とする中小企業10,000社へ2024年10月から11月にかけて実施され、1,218社から回答を得た調査です3。
地域や企業規模が違えば数字は動きますが、費用の見通しが立たないことが検討の足を止めやすいという傾向は、稟議を上げた経験があれば実感と重なるところだと思います。
費用が壁になるのは、金額そのものよりも、効果の見積もりが曖昧なまま数字だけが先に出てくるからです。
「入力が楽になります」では稟議は通りません。
一か月に何枚の注文書を、何人で、どの工程に時間をかけて処理していて、そのうちどの部分が機械に置き換わるのか。
この分解ができていれば、見積書の金額を評価する土台ができます。
なお、この記事で具体的な相場の金額を示すことはしません。
手書き注文書の読み取りを含むサービスは、枚数、項目数、書式の種類、既存システムとのデータの受け渡し方で構成が大きく変わり、条件を揃えずに並べた金額はかえって判断を誤らせます。
複数社から見積もりを取るときは、月間枚数、一枚あたりの項目数と明細行数、書式の種類数、データの受け渡し形式を同じ条件で伝えるところから始めると、比べられる見積もりが返ってきます。
注文量・書式のばらつきの大きさで導入要否を判断する
判断が分かれるのは、注文量と書式のばらつきの組み合わせです。
この二つはどちらも結果に効きますが、向きが逆になります。
注文量が多いほど自動化で浮く時間は増え、書式のばらつきが大きいほど設定と確認の手間が増えるからです。
注文量が少なく、書式もばらばらという場合は、道具を入れても設定の手間が先に立ちます。
この組み合わせなら、スキャンと保存の要件を整えたうえで、入力は人が担う形のままでも回ることがあります。
逆に注文量が多く、書式が数種類に収まっているなら、読み取る位置を定義しやすく、浮く時間も大きくなります。
厄介なのは、注文量が多く書式もばらばらという組み合わせです。
ここで全件を一度に自動化しようとすると、例外対応が積み上がって前より手間が増えることがあります。
枚数の多い取引先から順に、様式をそろえる相談と読み取りの設定を並行して進めるほうが、効果を確かめながら範囲を広げられます。
この表で見てほしいのは、入力が軽くなる一方で、確認と書式への対応は残るという点です。
読み取りを入れても人が見る工程がなくなるわけではなく、見る対象が紙から画面に移り、見る項目が絞られるという変化になります。
導入しても残る作業を見込んで費用対効果をみる
見積もりを評価するときに落としやすいのが、導入後も自社に残る作業です。
読み取り結果の確認、うまく読み取れなかった注文書の例外処理、品番や取引先のマスタの整備、新しい取引先が増えたときの書式の設定。
保存が電子帳簿保存法の要件を満たしているかを確かめる責任も、道具を入れたから自動的に片付くというものではありません。
費用の側も、初期費用と月額だけでは足りません。
設定に社内の誰がどれだけ関わるか、現場が新しい画面に慣れるまでにどれだけかかるか、既存の受注システムへデータをどう渡すかの調整。
これらは見積書には載りにくい一方で、実際には人の時間として発生します。
進め方としては、現状の工程を分けるところから始め、保存を整え、人が確認する項目を決め、そのうえで道具の要否を判断する、という順番に無理がありません。
先に道具から入ると、どの工程のどの作業をなくしたかったのかが曖昧なまま、機能の比較だけが進んでいきます。
この順番で進めれば、仮に導入を見送る判断になっても、保存要件を満たした電子化と確認項目の整理という成果は手元に残ります。
注文量が増えて再検討することになったときも、そのときの材料をそのまま使えます。
判断に必要な材料がそろっているかは、次の項目を数えてみると見当がつきます。
| 工程 | 手作業中心の運用 | 自動読み取りを入れた運用 |
|---|---|---|
| 文字の入力 | 全項目を担当者が入力する | 読み取り結果を呼び出す |
| 内容の確認 | 入力しながら原本と照合する | 読み取り結果と原本を照合する |
| 書式の追加 | 新しい取引先でもそのまま入力する | 書式ごとに設定や調整が必要になる |
| 保存・検索 | 検索の索引を手で付ける | 読み取った項目を索引に回せる |
| 費用 | 人手の時間 | 人手の時間に加えて導入・運用の費用 |
どこまで自動の読み取りに任せ、どこから人が確認するかの線引きは、自社に届く注文書の書式のばらつきや、いま使っている受注画面の項目構成によって変わるため、一般論だけでは決めきれない部分が残ります。
実際の注文書の枚数と書式の種類、受注入力に使っている画面を見ながら相談すれば、どの工程の転記を減らせて、どの確認が残るのかを自社の条件で整理できます。無料相談で要件を整理する
自動化ツールの要否を判断する前に数えておくこと
手元の注文書と今の運用だけで数えられるものから並べています。
- 通常月と繁忙月それぞれで、一か月に処理している注文書の枚数
- 取引先ごとの書式の種類数と、自社の様式で届いている割合
- 注文書一枚あたりの入力項目数と、明細行のおおよその数
- 読み取りや入力のあとの確認・修正に関わっている人数と、その作業が発生する頻度
- 取引先への問い合わせが必要になった注文書の枚数と、その理由
繁忙期と通常月で注文量が大きく動く事業では、平均ではなく繁忙期の枚数を基準に見直します。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 手間の所在 | 受け取りから保存までを工程に分け、入力・確認と保管のどちらに寄っているかを見る |
| 自動化の範囲 | 取引先・品番・数量・金額は人の確認を残し、備考などは読み取り結果を参考にする |
| 保存の最低条件 | 解像度は200dpi以上、カラーで保存する場合は色の各成分ごと256階調以上 |
| 検索できる形 | 取引年月日・取引金額・取引先で探せるよう、ファイル名か索引か項目として記録する |
| 導入の判断 | 注文量と書式の種類数を数え、導入後に残る確認作業と費用を並べて見る |
保存の要件を満たす形に整えたあとも、読み取りから受注入力、在庫や出荷への引き渡しまでを通して見ると、どこに二重入力が残っているかは運用ごとに違います。 現在の受注処理の流れと注文書の実物を前提に相談すれば、電子化した先で何を自動化でき、どこに人の確認と費用が残るのかを見積もる材料が得られます。
よくある質問
電子帳簿保存法のスキャナ保存要件(200dpi・256階調)を満たしていない古いスキャナでも運用できますか
要件そのものは機器の新しさで変わるものではないので、200dpi以上、カラーで保存するなら色の各成分ごと256階調以上という条件を満たす必要があります1。
ただし、先に確かめたいのは機器の性能ではなく設定です。
ファイルサイズを抑えるために低い解像度が初期値になっていることがあり、その場合は設定を変えるだけで条件を満たせます。
設定を上げても条件に届かない機器であれば、注文書の取り込みだけを条件を満たす機器に集約するという運用の分け方もできます。
FAXで受け取った注文書もスキャナ保存の要件を満たす必要がありますか
紙で出力されたFAXを保管し、それをスキャンして画像で保存するのであれば、ほかの紙の注文書と同じく解像度や階調、取引年月日・取引金額・取引先で検索できる記録といった要件が関わってきます1。
一方、複合機で受信したものを紙に出力せず、データのまま保存している場合は、紙をスキャンして読み取った書類とは受け取り方が異なります。
この場合にどの規定で保存するかは自社の受け取り方の整理が必要なので、原典の該当箇所を確認するか、顧問税理士に実際の運用を示して確かめるのが確実です。
注文書の手入力の手間は、電子化ツールを導入すれば必ず減りますか
入力そのものは減らせる可能性がありますが、必ず減ると言い切れるものではありません。
書式や筆跡がそろわない注文書では読み取り結果の確認が残りますし、取引先ごとに様式が違えば書式を追加するたびに設定の作業が発生します。
判断するときは「手入力が減るか」ではなく、いまの工程のうちどの作業が機械に置き換わり、どの作業が自社に残るのかを分けて見積もってください。
読み取った取引先や金額を保存の索引にも使えるなら、受注入力と保存の両方で転記が一回分減ります。
注文量が少ない場合も電子帳簿保存法の要件を守る必要がありますか
スキャナ保存の要件は処理する枚数で変わるものではないため、注文量が少なくても満たす必要があります1。
ただし、満たし方は量に応じて簡素にできます。
枚数が少なければ、ファイル名に取引年月日・取引金額・取引先を決まった順で入れる、あるいは表計算ソフトで索引の一覧を作って画像と対応付けるといった方法でも運用できます。
専用の道具を入れるかどうかは、要件を満たすかどうかとは別の、費用対効果の判断です。
- 1 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(2026年)
- 2 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
- 3 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2025年)
画像の出典元
- High angle of opened briefcase for documents with papers accosted in order placed on wooden table/Photo by Anete Lusina on Pexels