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手書き注文書の電子化は何から決める?受注側の要件と保存ルールの整理

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 紙で受け取った注文書をデータ化する義務はなく、スキャナ保存は任意の制度です。ただし注文書は、法人なら原則7年保存する書類です。
  • 要件は、紙のまま保管する、スキャンして紙を減らす、読み取って受注データにする、の目的ごとに分けて決めます。スキャンするだけでは転記は減りません。
  • FAXや写真で届く注文書は、取引先ごとの受信方式を洗い出し、国税庁の一問一答【電子取引関係】で扱いを確認します。
  • データで受け取った注文書の検索要件は、日付・金額・取引先での検索です。基準期間の売上高が5,000万円以下なら、ダウンロードの求めに応じられることを条件に不要になります。
  • 金額・数量・品番には人の確認を置き、取引先への記入ルールの依頼と、少数の取引先での1か月の試行で効果を確かめます。

40代前半の日本人女性が複合機での出力をしている場面

手書き注文書を毎回打ち直している現場で、スキャンは何を変えるのか

取引先からFAXや紙で届く手書きの注文書を、毎回読みながら打ち直していると、スキャンして電子化すれば楽になるのか、画像で残せば足りるのかが気になります。
確認できた範囲では、紙で受け取った注文書をデータ化して保存する義務はありません。
スキャナ保存も、希望する事業者が使う任意の制度です1。
ただし注文書そのものは、法人なら原則7年保存する書類です2。
そのため要件は、紙のまま保管する、スキャンして紙を減らす、読み取って受注データにする、という目的ごとに分けて決めます。
転記の手間と読み違いを減らすには、人の確認を置く場所と、取引先への記入ルールの依頼を先に決めるのが近道です。

画像で残すだけでは転記は減らない

取引先からFAXで届いた手書きの注文書を見ながら、品番と数量を受注システムや表計算ソフトに打ち込みます。
読みにくい数字があれば取引先に電話で確かめ、入力が終わった紙はファイルに綴じます。
こうした流れのどこに時間がかかっているかによって、スキャンして電子化する意味は変わります。

スキャンして画像にすると、主に「紙を探す」「紙を置く」場面が変わります。
過去の注文書を取引先名や日付で探しやすくなり、複数の担当者が同じ注文書を同時に見られるようになります。
一方で、画像を見ながら人が打ち込む作業そのものは残ります。
紙を見て打つか、画面の画像を見て打つかの違いでしかないため、転記の手間も手書き文字の読み違いも、スキャンだけでは減りにくいのです。

転記を減らすには、画像の中の文字を読み取ってデータにし、そのデータを受注入力へ渡す仕組みが要ります。
画像から文字を拾ってテキストに変換する技術を、OCR(光学文字認識)と呼びます。
ただし手書きの注文書では、読み取った結果がそのまま正しいとは限りません。
読み取り結果を誰かが画像と見比べて直す工程が加わります。
そのため、「打つ作業」が「確かめて直す作業」に置き換わると考えたほうが実態に近くなります。

この違いを工程で並べると、スキャンが関わるのは受信から画像化まででです。
転記が減るかどうかは、読み取り、人の確認、受注入力への接続の部分で決まります。

目的は3つ:紙のまま保管する・スキャンして紙を減らす・受注データにする

電子化の要件が決めにくいのは、保存のルールを守る話、紙の置き場所を減らす話、転記を減らす話が同時に出てくるからです。
この3つは、関わる人も決めるべきことも違います。
目的ごとに分けると、次のように整理できます。

1つ目の「紙のまま保管する」は、いまの運用を変えない選択です。
受け取った注文書は保存が必要な書類ですが、紙のまま綴じて保管していれば、保存の面ではそれで足ります。
この場合にスキャンするとしても、画像は社内で探しやすくするための写しという位置づけです。

2つ目の「スキャンして紙を減らす」は、保管場所や紙を探す手間を減らすことが目的です。
紙の原本を手放すところまで進むなら、保存のルールとの関係を確かめる必要が出てきます。

3つ目の「読み取って受注データにする」は、転記と読み違いを減らすことが目的です。
ここで決めるのは、どの項目を読み取り、誰が確認し、どの画面へデータを渡すかという業務の設計です。
保存の要件を満たしても転記は減りません。
受注データ化がうまくいっても、保存のルールを満たしたことにはなりません。
この2つは別々に決める必要があります。

転記の手間に悩んで検討を始めた場合でも、保存の扱いを先に確かめておくと、あとで紙をどうするかで迷わずに済みます。
次は、注文書の保存について、法律上どこまでが必須でどこからが任意なのかを見ていきます。

目的 主に変わること 決めること
紙のまま保管する 運用は変わらない(画像は社内の写し) 綴じ方と保管場所、保存期間の管理
スキャンして紙を減らす 保管場所と紙を探す手間 紙の原本の扱いと保存ルールとの関係
読み取って受注データにする 転記の手間と読み違い 読み取る項目、確認する人、受注入力への渡し方
手書き注文書が受注データになるまでの工程
受信、画像化、文字の読み取り、人の確認と修正、受注入力への接続の順に進む工程。スキャンが担うのは画像化まで1受信紙・FAX・写真2画像化スキャン3文字の読み取りOCR4人の確認と修正5受注入力への接続

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 受信(紙・FAX・写真)
  2. 画像化(スキャン)
  3. 文字の読み取り(OCR)
  4. 人の確認と修正
  5. 受注入力への接続
電子化の目的ごとに決めること(比較)
紙のまま保管する、スキャンして紙を減らす、読み取って受注データにするの3つの目的と、それぞれで決めること紙のまま保管する、スキャンして紙を減らす、読み取って受注データにするの3つの目的と、それぞれで決めること紙のまま保管する綴じ方と保管場所保存期間の管理スキャンして紙を減らす紙の原本の扱い保存のルールとの関係読み取って受注データにする読み取る項目確認する人受注入力への渡し方

▼ 図の内容を文字で読む
  • 紙のまま保管する
    • 綴じ方と保管場所
    • 保存期間の管理
  • スキャンして紙を減らす
    • 紙の原本の扱い
    • 保存のルールとの関係
  • 読み取って受注データにする
    • 読み取る項目
    • 確認する人
    • 受注入力への渡し方

紙で届いた注文書は、法的にどこまで保存すればよいのか

受け取った注文書は7年保存の対象書類

受注側で受け取った注文書は、法人税の帳簿書類の保存の対象です。
国税庁の説明では、保存が必要な「書類」として、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、契約書、領収書などと並んで注文書が挙げられています2。
手書きかどうか、取引先の様式か自社の様式かは、保存の対象かどうかには関係しません。

保存期間は、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年です2。
青色申告書を提出した事業年度で欠損金が生じた場合などは10年となり、平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年とされています2。
この説明は、令和8年4月1日現在の法令に基づく、法人の帳簿書類についてのものです。
個人事業者の場合は別に確認してください。

実務で問題になるのは、「いつまでの注文書を」「どこに」残しておくかです。
受注の月や取引先ごとに綴じていると、決算期ごとの保存期限と綴じた単位がずれ、処分してよい時期が分かりにくくなります。
紙で保管する場合もスキャンして保管する場合も、事業年度ごとに区切っておくと保存期間を管理しやすくなります。

スキャナ保存は任意で、紙はデータ化しなくてよい

では、紙で受け取った注文書をスキャンしてデータで保存する義務はあるのでしょうか。
財務省の解説では、電子帳簿等保存制度のうち保存の義務が課されているのは電子取引データの保存だけであり、帳簿の電子保存とスキャナ保存は希望する事業者が利用できる制度だと整理されています1。
あわせて、紙でやり取りした書類をデータ化して保存する必要はないとも説明されています1。
この解説は、令和5年度税制改正を受けて令和6年1月から始まった制度についてのものです。

2つの資料を合わせると、紙で届いた注文書について次のことが言えます。
注文書は保存しなければなりませんが、紙で受け取ったものを電子化する義務はありません。
したがって、スキャンするかどうか、どこまで電子化するかは、保管場所を減らしたい、過去の注文を探しやすくしたい、転記を減らしたいといった事業上の理由で決めることになります。

注意が必要なのは、紙の原本の扱いです。
スキャンした画像を写しとして持ちつつ紙も保管しているなら、保存の役割を果たしているのは紙です。
一方、スキャンした後に紙を捨てて画像だけを残したい場合は、任意の制度であるスキャナ保存の要件を満たしているかが問われます。
スキャナ保存の要件は、国税庁の一問一答【スキャナ保存関係】などで示されています。
要件を確かめないまま紙を処分すると、保存の義務を果たしていることを説明しにくくなります。
紙を手放すかどうかは、要件を確認し、必要に応じて税理士に相談してから決めてください。

転記を減らしたいという動機で始めた場合は、紙をいったん残したまま、読み取りと受注入力の改善から手を付けることもできます。
保存の判断と業務改善の判断を切り離せるので、紙の扱いを決めきれなくても、転記の手間への取り組みは止まりません。

法人が受け取った注文書の保存期間(令和8年4月1日現在の法人の帳簿書類)
確定申告書の提出期限の翌日を起点に、原則7年、欠損金が生じた事業年度などは10年保存する確定申告書の提出期限の翌日を起点に、原則7年、欠損金が生じた事業年度などは10年保存する起点:確定申告書の提出期限の翌日原則:7年青色申告書で欠損金が生じた事業年度など:10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)

▼ 図の内容を文字で読む
  • 起点:確定申告書の提出期限の翌日
  • 原則:7年
  • 青色申告書で欠損金が生じた事業年度など:10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)

FAXや写真で届く注文書は「電子取引データ」になるのか

受信の方式を自社で確認する

前の節で確かめたのは、紙でやり取りした注文書にはデータで保存する義務がない、ということでした1。
ところが受注側の現場には、郵送や手渡しの紙だけでなく、FAXや、取引先がスマートフォンで撮った写真といった形でも注文書が届きます。
同じ手書きの注文書でも、自社に届いた時点で紙なのかデータなのかは、受け取り方によって変わります。

たとえばFAXには、FAX機から紙に印字されて出てくる受け取り方と、複合機やインターネットFAXのサービスで画像ファイルとして受け取る受け取り方があります。
写真で届く注文書も、メールの添付やメッセージアプリで受け取っていれば、自社に届いた時点ではデータです。
保存の義務が課されているのは電子取引データの保存なので1、データで届く注文書については、それが電子取引データに当たるかどうかで保存の扱いが変わります。

ここで避けたいのは、受信の方式ごとの扱いを推測で決めてしまうことです。
まずは自社の受け取り方を洗い出し、それぞれを国税庁が示している質疑と照らし合わせます。
洗い出すときは、取引先ごとに「何で届くか」「届いたものを誰がどこで見ているか」「印刷しているか、画面で見ているか」を書き出すと、受信の実態が見えてきます。

同じ取引先でも、普段はFAX、急ぎのときは写真というように、複数の経路で注文書が届くことがあります。
経路ごとに保存の扱いが分かれると、注文書の保管場所が紙とデータに散らばり、後から探すときに困ります。
受信方式の洗い出しは、保存のためだけでなく、受注の窓口をどこに集めるかを決める材料にもなります。

確認先は国税庁の一問一答【電子取引関係】

受信方式ごとの扱いは、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」で確認します。
電子取引に当たるかどうかの考え方が質疑の形でまとめられているので、自社の受け取り方に近い問いを探して読みます。
洗い出しから保存方法の決定までは、次の順に進めると手戻りが少なくなります。

照合しても自社の受け取り方が当てはまるか判断しにくい場合は、受信の画面や運用の流れを示して、税理士や税務署に相談するのが確実です。
電子取引データに当たる注文書があると分かったら、次は、そのデータを検索できる状態でどう保存するかが問題になります。

受信方式ごとに注文書の保存の扱いを確かめる手順
受信方式の書き出し、紙かデータかの区分、一問一答【電子取引関係】との照合、税理士や税務署への相談、保存場所と担当の決定の順1取引先ごとの受信方式を書き出す紙・FAX・写真など2届いた時点で紙かデータかを分ける3データで届くものを一問一答【電子取引関係】と照合する4判断に迷うものは税理士や税務署に相談する5経路ごとの保存場所と担当を決める

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取引先ごとの受信方式を書き出す(紙・FAX・写真など)
  2. 届いた時点で紙かデータかを分ける
  3. データで届くものを一問一答【電子取引関係】と照合する
  4. 判断に迷うものは税理士や税務署に相談する
  5. 経路ごとの保存場所と担当を決める

データで受け取った注文書の検索要件と、5,000万円以下の免除

日付・金額・取引先で検索できる状態

財務省の解説では、注文書を電子取引データとして保存する場合の検索の要件として、次の3つが挙げられています1。

  • 日付、金額、取引先で検索できること
  • 日付と金額は、範囲を指定して検索できること
  • 日付、金額、取引先を組み合わせて検索できること

受注側の業務に置き換えると、「ある期間に特定の取引先から届いた注文書」や「一定の金額以上の注文書」を、保存先からすぐに取り出せる状態にしておくということです。
受注の問い合わせや請求の照合で過去の注文書を探す場面でも、同じ状態が役に立ちます。

なお、この要件は電子取引データの保存についてのものです。
紙で受け取った注文書をスキャナ保存する場合の要件はこれとは別に定められているため、紙をスキャンして原本を手放す場合は、スキャナ保存の要件として別に確かめます。

基準期間の売上高5,000万円以下の免除条件

検索の仕組みを整えることが負担になる事業者のために、免除の条件も設けられています。
基準期間の売上高が5,000万円以下の保存義務者は、税務職員からデータのダウンロードを求められたときに応じられることを条件に、検索の要件が不要になります1。

判定で取り違えやすいのは、どの年度の売上高を見るかです。
基準期間とは2課税年度前のことで1、いま注文書を受け取っている年度の売上高ではありません。
今年度の売上高が5,000万円を超えそうでも、2課税年度前が5,000万円以下なら免除の対象になります。
反対に、今年度は下回っていても2課税年度前に超えていれば対象外です。
自社の基準期間がどの年度に当たるか分からない場合は、税理士や税務署に確認してから判断します。

免除されるのは検索の要件であって、データの保存そのものではありません。
ダウンロードの求めに応じられるよう、注文書のデータを消さず、取り出せる場所にまとめておく必要があります。
担当者のパソコンやメールボックスに散らばったままでは、求めに応じてすぐに出すことが難しくなります。

ファイル名と保存先の決め方

検索の要件を満たす場合も、ダウンロードの求めに応じられるようにする場合も、決めておくべきなのはファイル名と保存先です。
以下は制度の説明ではなく、受注側の運用として考えられる決め方の例です。

ファイル名に、検索の要件にある日付・金額・取引先の3項目を、同じ順番と書き方で入れておく方法があります。
たとえば「受信日_取引先名_金額」という並びに決め、日付は8桁の数字、取引先名は略称を使わず正式名称、金額は税込か税抜かのどちらかに統一する、といった具合です。
書き方が人によって違うと、同じ取引先の注文書が検索で見つからなくなります。

ただし、ファイル名を揃えただけで範囲指定や組み合わせ検索まで満たせるかどうかは、保存先の検索機能によります。
共有フォルダに置くなら、日付や金額の範囲を指定して探せるか、取引先と日付を組み合わせて絞り込めるかを、実際に試してから運用を始めます。
保存先を事業年度ごとのフォルダに分けておくと、保存期間の管理とも合わせやすくなります。

受注データ化を進める場合は、もう一つ気を付けることがあります。
OCRで読み取った金額や取引先名をそのままファイル名や検索用の項目に使うと、読み違いがそのまま検索の手掛かりの誤りになります。
保存のための項目にも受注入力のための項目にも、確認を経た値を使うように流れを組めば、保存と受注の両方で同じ誤りを抱えずに済みます。
この確認をどこに置くかが、次の話です。

検索要件の免除の判定(基準期間の売上高で比較)
判定に使う基準期間は2課税年度前。5,000万円以下はダウンロードに応じられる状態で保存、5,000万円超は検索できる状態で保存判定に使う基準期間は2課税年度前。5,000万円以下はダウンロードに応じられる状態で保存、5,000万円超は検索できる状態で保存判定に見る年度基準期間(2課税年度前)の売上高注文書を受け取っている当年度ではない5,000万円以下ダウンロードの求めに応じられる状態で保存検索の要件は不要5,000万円超日付・金額・取引先で検索できる範囲指定と組み合わせ検索ができる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 判定に見る年度
    • 基準期間(2課税年度前)の売上高
    • 注文書を受け取っている当年度ではない
  • 5,000万円以下
    • ダウンロードの求めに応じられる状態で保存
    • 検索の要件は不要
  • 5,000万円超
    • 日付・金額・取引先で検索できる
    • 範囲指定と組み合わせ検索ができる

読み違いを防ぐ:人の確認・記入ルール依頼・様式統一と、始め方の選び方

金額・数量・品番に人の確認を置く

保存の義務と任意の範囲が分かると、残るのは業務としてどう始めるかです。
手書きの注文書の読み違いは、そのまま誤出荷や請求の誤りにつながります。
とくに金額・数量・品番は、1文字違うだけで別の商品や別の数量の受注になり、取引先とのやり取りをやり直すことになります。

そのため、読み取りの仕組みを入れるかどうかにかかわらず、金額・数量・品番には人の確認を置く場所を先に決めておきます。
置き方としては、受注を入力する人が画像と入力結果を並べて見比べる方法、入力した人とは別の人が出荷前に見直す方法、金額や数量が普段と大きく違う注文だけを別の人が見る方法などがあります。
すべての注文を2人で見れば確実ですが、件数が多いと確認待ちで出荷が遅れます。
どの方法を選ぶかは、誤りが起きたときの影響の大きさと、確認に使える時間との兼ね合いで決まります。

OCRを使う場合も、確認の役割はなくなりません。
読み取り結果が正しいかを、項目ごとに画像と見比べる工程が必要です。
手書きの「1」と「7」のように形の近い数字や、取引先独自の品番の書き方は、読み取りでも人の目でも迷いやすいところです。
迷いやすい項目を決めておき、そこだけは必ず画像と照合する、という絞り込み方もあります。

取引先に記入ルールや様式統一を頼む

確認を厚くするほど、受注側の手間は増えます。
読み違いを元から減らすには、注文書を書く取引先の側に協力を頼む方法があります。
頼み方には段階があり、取引先に求める変更の小さい順に並べると次のようになります。

  • 記入ルールの依頼:数字ははっきり書く、品番は自社の商品一覧と同じ表記にする、訂正は二重線を引いて書き直す、など
  • 様式の統一:品番・数量・単価・納期・届け先の欄が決まった自社指定の注文書を渡し、それに記入してもらう
  • 手書き以外への切り替え:表計算ソフトの注文書やメールなど、手で書かずに送れる方法を案内する

記入ルールの依頼は、取引先がいまの書き方を少し変えるだけで済む頼み方です。
様式を統一すると、どの欄に何が書かれているかが決まるため、確認する人が見る場所も、読み取りの仕組みが読む位置も一定になります。
手書き以外への切り替えは読み違いそのものを減らせますが、取引先の慣れた方法を変えてもらうことになります。
また、注文書がデータで届くようになれば、その注文書は前の節で見た電子取引データの保存の扱いを確認する対象になります。

頼むときは、読み違いが起きた注文や確認の電話が必要になった場面を具体的に示すと、取引先にとっても手間が減る話だと伝えやすくなります。
すべての取引先に一度に頼む必要はありません。
注文の多い取引先や読み違いが起きやすい取引先から始めれば、効果を確かめながら広げられます。

件数・様式・受注システム別の始め方と、1か月の試行

どこから始めるかは、次の3つの条件で考えると整理しやすくなります。

  • 件数:届く注文書が多いか少ないか
  • 様式:取引先ごとにばらばらか、ある程度揃っているか
  • 受注システム:読み取ったデータを取り込める受注システムがあるか、表計算ソフトや紙の台帳で管理しているか

件数が少なく様式もばらばらな場合は、画像で保管して探しやすくしたうえで、記入ルールの依頼から始める方法が考えられます。
読み取りの仕組みを入れても様式ごとに設定や確認が必要になり、転記が減る分より準備の手間のほうが大きくなるおそれがあるためです。

件数が多く様式がある程度揃っている場合は、読み取りと人の確認を組み合わせる方法を試す価値があります。
受注システムがあるなら、確認済みのデータを取り込めるかどうかで、転記がどこまで減るかが変わります。
取り込めない場合は、読み取った結果を結局手で打ち直すことになり、確認の手間だけが増えることもあります。

件数が多く様式もばらばらな場合は、読み取りを始める前に取引先へ様式の統一を頼むほうが、確認の手間を抑えやすいことがあります。
ただし、どの組み合わせの場合もこれは考え方の整理にすぎず、効果は自社の注文書で実際に試してみないと分かりません。

試すときは、少数の取引先に絞って1か月分の注文書で進めると、判断の材料がそろいます。
記録するのは、読み違いが起きた件数、それがどの項目で起きたか、1件あたりの確認にかかった時間の3つです。
試行前の運用でも同じ項目を記録しておけば、変えた後と比べられます。
読み違いがどの項目で起きているかが分かれば、取引先に記入ルールを頼むべき項目や、人の確認を厚くすべき項目が見えてきます。

保存のルールと転記の改善は別々に決められるので、紙の扱いを決めきれないうちから試行を始めることもできます。
反対に、試行で読み取りがうまくいったとしても、紙の原本を手放すかどうかは、スキャナ保存の要件を確かめてから改めて判断します。

少数の取引先で1か月試行する流れ
準備、試行、比較、判断の4段階で、読み違いの件数と項目、確認時間を記録して比べ、次の進め方を決める1準備:取引先を絞り、いまの読み違いと確認時間を記録2試行:1か月分の注文書で選んだ方法を運用3比較:読み違いの件数と項目、確認時間を試行前と比べる4判断:広げる取引先、確認を厚くする項目、頼む内容を決める

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 準備:取引先を絞り、いまの読み違いと確認時間を記録
  2. 試行:1か月分の注文書で選んだ方法を運用
  3. 比較:読み違いの件数と項目、確認時間を試行前と比べる
  4. 判断:広げる取引先、確認を厚くする項目、頼む内容を決める

受信方式の洗い出しや人の確認を置く場所は、注文書の届き方と受注入力の流れを並べてみないと決めにくく、社内だけでは見落としが出やすいためです。

現在の注文書の届き方と受注処理の流れをもとに、どの工程で転記と読み違いが起きているか、どこから手を付けるかを整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
目的 紙のまま保管する/スキャンして紙を減らす/読み取って受注データにする、のどれかで要件を分ける
保存期間 法人は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年、欠損金が生じた事業年度などは10年
紙の電子化 義務はなく、スキャナ保存は任意。紙を手放すならスキャナ保存の要件を確認する
受信方式 紙・FAX・写真ごとに紙かデータかを把握し、一問一答【電子取引関係】で照合する
検索 データ受信分は日付・金額・取引先で検索。基準期間の売上高5,000万円以下ならダウンロード対応を条件に不要
読み違い対策 金額・数量・品番に人の確認を置き、取引先に記入ルールや様式統一を頼む
始め方 件数・様式・受注システムで考え、少数の取引先で1か月試行して記録を比べる

保存のルールと転記の改善は別々に決められますが、試行の設計や取引先への依頼の進め方は、自社の件数や様式によって変わるためです。 件数・様式・受注システムの状況をうかがいながら、試行で記録する項目と、取引先に頼む内容の優先順位を一緒に確かめられます。

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よくある質問

紙の手書き注文書をスキャンしたら、原本は捨ててよいか。

紙で受け取った注文書は、法人なら確定申告書の提出期限の翌日から原則7年保存する書類です2。
スキャンしただけで紙を捨ててよいとは言えません。
紙の原本を手放したい場合は、任意の制度であるスキャナ保存の要件を満たしているかが問われます1。
要件は国税庁の一問一答【スキャナ保存関係】で確認し、判断に迷う場合は税理士に相談してから原本の扱いを決めてください。
紙を残したまま画像を社内の写しとして使う運用であれば、原本の扱いを急いで決める必要はありません。

FAXで届く注文書は、紙とデータのどちらで保存するのか。

受け取り方によって、自社に届いた時点で紙なのかデータなのかが変わります。
まず取引先ごとに、FAX機から紙に印字して受け取っているのか、複合機やインターネットFAXで画像ファイルとして受け取っているのかを把握します。
データで受け取っている場合に、それが電子取引データに当たるかどうかは、国税庁の一問一答【電子取引関係】で自社の方式に近い問いを確認し、迷う場合は税理士や税務署に相談します。
保存の義務が課されているのは電子取引データの保存なので1、この確認の結果によって保存の仕方が決まります。

基準期間の売上高が5,000万円を超える場合、検索要件はどうなるか。

データで受け取った注文書が電子取引データに当たる場合、基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円を超えると、検索要件の免除は受けられません1。
日付・金額・取引先で検索でき、日付と金額の範囲指定や、これらを組み合わせた検索ができる状態で保存します1。
判定に使うのは当年度ではなく基準期間の売上高なので、年度を取り違えないよう注意してください。

取引先に手書きをやめてもらう依頼は、受注側からどう切り出すか。

いきなり手書きをやめてもらうよう頼むより、取引先に求める変更の小さい依頼から始める方法があります。
具体的には、数字の書き方や品番の表記をそろえる記入ルールの依頼、自社指定の注文書の様式を渡す依頼、表計算ソフトやメールでの注文の案内、という順です。
読み違いが起きた注文や確認の電話が必要になった場面を示すと、取引先にとっても手間が減る話だと伝えやすくなります。
なお、注文書がデータで届くようになれば、電子取引データとしての保存の扱いを確認する必要が出てきます。

OCRの読み取り結果は、誰がどの項目を確認するのが現実的か。

少なくとも、誤りが受注ミスに直結する金額・数量・品番は、人が画像と見比べて確認する項目として決めておきます。
受注を入力する人が画像と読み取り結果を並べて確認する方法、別の人が出荷前に見直す方法、金額や数量が普段と大きく違う注文だけを別の人が見る方法などがあり、誤りの影響の大きさと確認に使える時間との兼ね合いで選びます。
どの項目で読み違いが起きやすいかは注文書によって違うため、少数の取引先で1か月ほど試行し、読み違いの件数と項目、確認にかかった時間を記録してから決めると判断しやすくなります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:財務省「広報誌「ファイナンス」令和6年8月号 特集 電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(2024年)
  2. 2 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(令和8年4月1日現在法令等)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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