◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- スキャンしただけでは紙の保存に代わらず、スキャナ保存の要件を満たした保存をして初めて代えられる
- 法人は注文書を、確定申告書の提出期限の翌日から7年(青色繰越欠損金が生じた年度などは10年)保存する
- 注文書を一般書類として扱えても、解像度200dpi以上・訂正削除の確認・検索は残り、事務手続の書類の備付けが条件になる
- メールやPDFで受け取った注文書は電子取引のデータとして保存し、売上高5,000万円以下の緩和をスキャナ保存に当てはめない
- 要件を満たせないあいだや、契約の内容を含む注文書は、紙の原本を残す
目次

手書きの注文書をスキャンしたら、紙は捨ててよいのか
受け取った手書きの注文書が棚や箱に溜まっていて、スキャンはできても原本を捨ててよいのか分からない。
そのために片付けが止まっている、という状況ではないでしょうか。
判断の分かれ目は、スキャンした画像を電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件どおりに保存しているかどうかです。
法人は注文書を原則7年保存する必要があります1。
要件どおりに保存したデータであれば、紙の保存に代えられます3。
注文書は要件の一部が緩む「一般書類」とされてきましたが、解像度や訂正削除の管理などは残ります。
満たせない要件があるうちは、紙を残すのが安全です。
スキャンだけでは足りない理由
電子帳簿保存法第4条第3項は、受け取った書類の内容を財務省令で定める装置で電磁的記録に記録した場合について定めています。
財務省令の定めに従って保存すれば、その電磁的記録の保存をもって書類の保存に代えられる、という規定です3。
ここでいう電磁的記録は、スキャンした画像データのことです。
この仕組みを「スキャナ保存」と呼びます。
制度の考え方は「スキャンしたら紙はいらない」ではありません。
「決められた要件どおりに保存したデータが、紙の保存の代わりになる」というものです。
この違いは、日々の扱いにそのまま表れます。
たとえば、届いた注文書を複合機でまとめて取り込み、共有フォルダに自動の連番ファイル名で入れていたとします。
そのフォルダは、誰でも上書きや削除ができる状態です。
画面で中身を読めるので、一見すると電子化は済んでいます。
しかし、解像度が要件に届いているのか、後から差し替えられていないことをどう示すのか、特定の注文書をどう探し出すのかを説明できません。
この状態で紙を捨てると、保存期間の途中で手元に残るのは、要件を満たしているか分からないデータだけになります。
紙の保存に代えたと言える根拠がなくなってしまうのです。
もう一つ押さえておきたいのは、法律の条文が「スキャン後は紙を廃棄してよい」と正面から書いているわけではない点です。
紙を捨てられるという判断は、要件を満たした保存で紙の保存に代えられる、という仕組みから導かれるものです。
廃棄の時期についても同じです。
スキャンした直後に捨ててよいのか、読み取りの確認などを経てから捨てるべきかは、国税庁の最新の一問一答などで扱いを確かめてから決めると、後で迷わずに済みます。
要件を満たせないときは紙を残す
ここで判断は二つに分かれます。
要件を満たした保存ができているなら、データの保存で紙の保存に代えられます。
満たせていない、あるいは満たしているか説明できないなら、紙の原本を保存し続けます。
要件を満たさないデータは紙の代わりにならないため、「データもあるから紙の保管は多少雑でもよい」と考える理由にもなりません。
紙を残すと決めても、スキャンが無駄になるわけではありません。
画像を探すための写しとして使えば、取引先から「先月の注文の数量はいくつだったか」と問い合わせを受けたときに、箱を開けずに画面で確かめられます。
保管場所の問題は残りますが、探す手間は減らせます。
そのうえで、要件を一つずつ整えられた時点から、紙の保存に代える運用へ切り替える進め方もあります。
切り替えを考えるときに気を付けたいのは、新しく受け取る注文書と、すでに箱に溜まっている過去の注文書を同じに扱わないことです。
受け取ってから時間がたった書類を後からまとめて取り込む場合の扱いは、新しく受け取る分とは別に確かめる必要があります。
編集部としては、次の分け方をおすすめします。
運用を決めた後に受け取る分から要件どおりに取り込み、過去の分は保存期間が終わるまで紙で保管する方法です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 要件を満たして保存できている
- データの保存で紙の保存に代えられる
- 満たせない、または説明できない
- 紙の原本を保存し続ける
- 画像は探すための写しとして使う
- すでに箱に溜まっている過去の注文書
- 運用を決めた後に受け取る分から要件どおりに取り込む
- 過去の分は保存期間が終わるまで紙で保管する(編集部の提案)
注文書は何年保存が必要か
法人の7年と欠損金の10年
紙を捨てるかどうかを考える前に、その注文書にいつまで保存の義務があるのかを確かめておきます。
国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在の法令等)は、法人が保存する帳簿書類として、帳簿のほかに注文書・契約書・領収書などの書類を挙げています1。
取引先から受け取った手書きの注文書も、この保存の対象です。
期間は「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間」です1。
青色繰越欠損金が生じた事業年度などは、10年間とされています1。
見落としやすいのは、数え始めが注文書を受け取った日ではない点です。
事業年度の初めに受け取った注文書も、終わり近くに受け取った注文書も、その事業年度の申告書の提出期限の翌日から数えます。
そのため、受け取った日から見ると、7年より長く保存することになります。
「受け取ってから7年たったから処分しよう」と1枚ずつ判断すると、期間の途中で処分してしまうおそれがあります。
実務では、注文書を事業年度ごとにまとめておくと、期間の管理が単純になります。
紙なら年度ごとの箱、データなら年度ごとのフォルダに分け、それぞれに「いつまで保存するか」を書いておきます。
欠損金が生じた年度は10年になるので、決算の結果が出た段階で、その年度の箱やフォルダの保存期限を書き換えます。
スキャナ保存に切り替えても、紙の代わりにデータを保存する仕組みである以上、保存期間そのものが短くなるわけではありません。
期間中は、要件を満たした状態のままデータを持ち続けることになります。
個人事業者は別に確認する
ここで紹介した7年・10年は、法人税の取扱いです1。
個人事業者が受け取った注文書の保存期間は、所得税の側の定めによります。
法人の期間をそのまま当てはめると、残すべき書類を早く捨ててしまう可能性があります。
国税庁が個人事業者向けに案内している帳簿書類の保存期間で、自分の場合の年数を確かめておく必要があります。
迷いやすいのは、個人事業から法人に切り替えた事業者や、個人で事業を続けながら別に法人も持っている事業者です。
同じ取引先から同じ形式の注文書を受け取っていても、個人の事業として受けた注文と法人として受けた注文では、適用される税目が違います。
箱やフォルダを個人分と法人分で分け、それぞれの期間を書いておけば、処分のときに取り違えにくくなります。
一方、スキャナ保存は電子帳簿保存法が国税関係書類を対象に定める制度で、法人税だけの仕組みではありません3。
次に説明する要件の考え方は、個人事業者が注文書を電子化する場合にも同じように手掛かりになります。
違うのは、データを何年持ち続けるかという期間の部分です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 事業年度中に注文書を受け取る
- その事業年度の確定申告書の提出期限
- 提出期限の翌日から7年間保存
- 青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年間
スキャナ保存で満たす条件。注文書は「一般書類」で緩和がある
残る要件
スキャナ保存の要件は、電子帳簿保存法施行規則第2条に定められています。
原則となる第6項の要件には、次のようなものが含まれます2。
- 解像度200ドット・パー・インチ(dpi)以上
- 256階調以上のカラーでの読み取り
- タイムスタンプ
- 訂正や削除の事実を確かめられること
- 検索できること
- 表示のための装置を備えること
dpiは1インチあたりの点の数で、数字が大きいほど細かく読み取れます。
これに対し第7項は、国税庁長官が定める書類を「一般書類」として扱い、一部の要件を緩めています2。
国税庁の令和2年版の一問一答では、一般書類の例として見積書や注文書が挙げられていました4。
ただし、この一問一答は令和4年・令和6年の改正より前の版です。
受け取った注文書を一般書類として扱うかどうかは、現行の一問一答や国税庁の告示で注文書が含まれていることを確かめてから決めることになります。
一般書類に当たらない場合は、原則の要件で考えます。
一般書類として扱える場合でも、残る要件があります。
条文の読み替えで緩む対象は、入力の時期、帳簿との関連付け、階調、表示装置です。
解像度200dpi以上、訂正削除の確認、検索は、緩む項目に入っていません2。
さらに、緩和を受ける条件として、スキャナ保存の事務手続を明らかにした書類を備え付けることが求められます2。
「注文書なら何でも緩い」と考えるのは正確ではありません。
「解像度・訂正削除・検索は原則と同じで、手順の書類が一つ増える」と捉えておくほうが、実際の作業に近くなります。
なお、条文は改正が重なっており、閲覧した版がいつの時点のものかで内容が変わり得ます。
とくに、検索の要件が一般書類にいまも求められるのか、タイムスタンプがどう扱われるのかは、運用を固める前に国税庁の最新資料と照らし合わせておきたい点です。
判断がつかないあいだは、検索できる形で保存しておくと安心です。
求められた場合にも、後から作り直さずに済みます。
緩む要件
緩む項目のうち、小規模な体制でいちばん効いてくるのは入力の時期です。
原則の要件には入力の時期についての定めがありますが、一般書類は第7項でその要件にかかわらず保存が認められています2。
受け取ったその日に必ず取り込む形にしなくてよいため、たとえば週に一度まとめてスキャンする、といった進め方を組み立てやすくなります。
その分、いつ・誰が取り込むのかを事務手続の書類に書いておくことが、運用を支える前提になります。
帳簿との関連付けも外れます2。
関連付けとは、帳簿に記録した取引とスキャンした画像を、番号などで結び付けておくことです。
受注の記録と注文書の画像を一件ずつ対応させる作業は要件として求められないため、注文書の画像は注文書として整理すれば足ります。
ただ、実務上は受注台帳と照らし合わせたくなる場面もあります。
台帳の番号をファイル名に入れておくかどうかは、手間と便利さを比べて決めてよいところです。
階調と表示装置は、設備の負担に関わる緩和です。
一般書類はグレースケールでの読み取りが認められ、表示装置も通常のディスプレイやプリンタで足りるとされています2。
手持ちの複合機や事務用のパソコンで対応できる範囲が広がる、ということです。
ただし、赤ペンで書き込まれた数量の訂正や、取引先の印影の色に意味がある注文書では、グレースケールにすると区別がつきにくくなることがあります。
要件として認められるかとは別に、読み取ったあとで内容を判別できるかを基準にして、カラーで取り込む書類を決めておくと安心です。
| 項目 | 原則の要件 | 一般書類での扱い |
|---|---|---|
| 解像度 | 200dpi以上 | 200dpi以上 |
| 階調 | 256階調以上のカラー | グレースケールで可 |
| 入力の時期 | 定めあり | 要件にかかわらず可(事務手続の書類の備付けが条件) |
| 帳簿との関連付け | 定めあり | 要件にかかわらず可(事務手続の書類の備付けが条件) |
| 訂正削除の確認 | 必要 | 必要 |
| 検索 | 必要 | 緩和の項目に含まれない(現行の扱いは国税庁資料で確認) |
| 表示装置 | 所定の装置の備付け | 通常のディスプレイ・プリンタで可 |
| タイムスタンプ | 原則の要件に含まれる | 現行の扱いは国税庁資料で確認 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 緩む項目
- 入力の時期
- 帳簿との関連付け
- 階調(グレースケールで可)
- 表示装置(通常のディスプレイやプリンタで可)
- 残る項目
- 解像度200dpi以上
- 訂正削除の確認
- 検索(現行の扱いは国税庁の最新資料で確認)
- 緩和を受ける条件
- スキャナ保存の事務手続を明らかにした書類を備え付ける
小規模な体制で、どこまで・どう満たすか
スキャン設定と検索の持たせ方
要件が分かっても、人手が一人か二人の事業者にとっては、「では毎日どう作業すればよいのか」が次の疑問になります。
ここからは、要件を日々の作業に置き換えた例を、編集部の提案として示します。
この例のとおりにすれば税務上の適合が保証される、というものではありません。
自社の仕組みで要件を満たせるかを確かめるための出発点として読んでください。
最初に決めるのは、スキャナや複合機の設定です。
解像度は200dpi以上が求められるため2、機器の読み取り設定を200dpi以上に固定し、担当者が毎回選び直さなくて済むようにしておきます。
設定を保存できる機器なら、注文書用の設定として登録しておくと取り違えが起きにくくなります。
ただし、設定値だけで安心はできません。
手書きの細い数字やかすれた文字が拡大して読めるかを、実際の注文書で一度試しておけば、読めない画像が溜まる事態を防ぎやすくなります。
検索は、保存したデータの中から目的の注文書を探し出せるようにするための要件です。
専用のソフトを使わない場合でも、ファイル名やフォルダの付け方で探しやすさを持たせることはできます。
たとえば、事業年度ごとのフォルダの中で「受け取った年月日_取引先名_金額」の形でファイル名を付けておけば、取引先名や金額で絞り込めます。
手書きの注文書は、文字を自動で読み取って検索する仕組みが使いにくい書類です。
人が目で読んで名前を付ける作業が、そのまま検索の手掛かりになります。
ただし、ファイル名の工夫で検索の要件を満たせるのか、どの項目で、どこまでの範囲指定や組み合わせが必要なのかは、現行の国税庁資料で確かめる必要があります。
名前の付け方を決める段階で確かめておけば、取り込み済みのファイルを後から付け直す手間を避けられます。
件数が多い場合は、ファイル名とは別に一覧表を作る方法も考えられます。
日付・取引先・金額・ファイル名を一行ずつ記録し、表計算ソフトの絞り込み機能で探す方法です。
訂正削除の管理と事務手続の書類
訂正削除の確認は、保存した画像を後から差し替えたり消したりしたときに、その事実を確かめられるようにする要件です2。
共有フォルダに誰でも書き込める状態では、画像が差し替えられても誰も気付けません。
小規模な体制での対策としては、二つの方向が考えられます。
保存した後は担当者の権限でも上書きや削除ができないように設定する方法と、変更の履歴が自動で残る保存先を使う方法です。
どちらが要件を満たすかは仕組みによって異なります。
使うソフトやサービスが要件に適合しているかは、提供元の公式情報と国税庁の資料で個別に確かめる必要があります。
一般書類の緩和を受けるには、事務手続を明らかにした書類の備付けが条件になります2。
難しく考える必要はありません。
受け取ってから保存し、紙を廃棄するまでの作業を、別の人が読んでも同じようにできる程度に書き出したもの、と考えると作りやすくなります。
編集部の提案としては、次の項目を一枚にまとめる形です。
- 注文書を受け取る人と、受け取った注文書を置く場所
- スキャンする人と、スキャンする頻度(例:毎週決まった曜日)
- 機器の設定(解像度、カラーかグレースケールか)
- 保存先のフォルダと、ファイル名の付け方
- 読み取りとファイル名を確かめる人
- 紙を廃棄する時期と方法
書類を作ると、作業の中身が担当者の頭の中から外に出ます。
担当者が休んだり替わったりしても、取り込みの頻度やファイル名の付け方がばらつきにくくなります。
税務調査で保存の方法を尋ねられたときにも、この書類を示して説明できます。
一方で、書いた手順と実際の作業が食い違っていると、説明の根拠になりません。
運用を変えたときは、書類も合わせて直すことが欠かせません。
| 満たしたいこと | 小規模な体制での作業の例 | 試しに確かめること |
|---|---|---|
| 解像度200dpi以上 | 読み取り設定を200dpi以上に固定する | 手書きの数字を拡大して読めるか |
| 階調 | 一般書類として扱う場合はグレースケールも選べる | 朱書きや印影を判別できるか |
| 検索 | ファイル名やフォルダに日付・取引先・金額を入れる | 取引先名と金額で目的の1件を探し出せるか |
| 訂正削除の確認 | 保存後は上書き・削除できない権限にするか履歴が残る保存先を使う | 担当者の権限で上書きできてしまわないか |
| 事務手続の書類 | 受け取りから廃棄までの手順を一枚にまとめる | 別の人がその書類だけで同じ作業をできるか |
▼ 図の内容を文字で読む
- スキャン設定
- 読み取り設定を200dpi以上に固定する
- 手書きの数字を拡大して読めるか試す
- 検索
- ファイル名を「受け取った年月日_取引先名_金額」にする
- 取引先名と金額で目的の1件を探し出せるか試す
- 訂正削除の管理
- 保存後は上書きや削除ができない権限にする
- または変更の履歴が残る保存先を使う
- 担当者の権限で上書きできてしまわないか試す
紙を残す/データのまま保存すべきケース
電子データで受け取った注文書
ここまでは、紙で受け取った手書きの注文書を前提にしてきました。
ところが同じ取引先でも、ある月は手書きの注文書を持参し、別の月はメールにPDFを添付して送ってくる、ということがあります。
この場合、メールで届いた注文書はスキャナ保存の対象ではなく、電子取引のデータとして保存する対象になります。
電子取引とは、注文書などの取引の情報を、紙ではなく電子データでやり取りすることです。
電子取引のデータには、スキャナ保存とは別の緩和があります。
財務省の広報誌(令和6年8月号)によれば、税務職員からデータのダウンロードを求められたときに応じられるようにしておけば、範囲を指定した検索や、項目を組み合わせた検索の機能は不要になります5。
また、基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の保存義務者は、検索の要件が不要になる対象とされています5。
この5,000万円の基準は、電子取引のデータについてのものです。
紙の注文書をスキャナ保存するときの検索の要件を緩めるものではありません。
「売上が小さいから、スキャンした注文書にも検索の仕組みはいらない」と読み替えないよう注意が必要です。
受け取ったPDFを印刷して紙の注文書とまとめ、それをスキャンしてスキャナ保存に回せば、作業の流れは一本になって分かりやすく見えます。
しかし、もともとデータで受け取った注文書は、電子取引のデータとして保存する対象です。
印刷した紙やそのスキャン画像を、受け取ったデータの代わりにする扱いを前提にするのは避けたほうがよいでしょう。
実務では、受け取り方で入口を分け、紙は紙の流れ、データはデータの流れで保存するように最初の仕分けを決めておくと、迷いが減ります。
契約書の性質を併せ持つ場合
注文書の中には、品名と数量を伝えるだけのものもあれば、単価・納期・支払条件・取引上の取り決めまで書き込まれ、取引先の署名や押印があるものもあります。
後者のような注文書は、税務上の保存書類であると同時に、取引先と何を約束したかを確かめる材料にもなります。
電子帳簿保存法のスキャナ保存は、税法上の書類の保存をデータで代えるための制度です3。
取引先との間で納期や単価の解釈が食い違ったときに紙の原本をどう扱うか、という問題は、この制度が扱う範囲の外にあります。
契約書の性質を持つ注文書の扱いを、ここで確定することはできません。
そのため編集部としては、こうした注文書は紙の原本も残しておくことを提案します。
すべての注文書を残す必要はありません。
「署名・押印がある」「定型外の条件が手書きで書き加えられている」など、残す基準を決めて分ければ、保管する紙の量は抑えられます。
もう一つ、取引が終わるまでは紙を手元に置いておく、という考え方もあります。
手書きの注文書には、数字の「1」と「7」、「0」と「6」のように、読み手によって解釈が分かれる書き方が混じることがあります。
納品して入金を確かめるまでは原本を残し、取引が終わったものから、要件どおりの画像があることを確かめて廃棄する流れにします。
そうすれば、読み違いが分かったときに原本へ戻れます。
これは税法上の義務ではなく、トラブルの際に確かめ直す手段を残すための、運用上の工夫です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 紙で受け取った手書きの注文書
- スキャナ保存の要件を満たせば、データの保存で紙の保存に代えられる
- 満たせなければ紙のまま保存する
- メールやPDFで受け取った注文書
- 電子取引のデータとして、データのまま保存する
- 基準期間の売上高5,000万円以下の検索の緩和は電子取引の基準で、スキャナ保存には当てはまらない
- 契約の内容を含む注文書
- 署名・押印がある、手書きの条件がある、などの基準で紙の原本も残す(編集部の提案)
- 取引が終わるまでは原本を手元に置く(運用上の工夫)
破棄までの手順と、破棄後の保管
破棄前の確認
ここまでの判断を、実際に紙を捨てるまでの順序に並べると、次の7つの段階になります。
公的な資料で確かめられるのは保存期間と要件の内容で、この順序そのものは編集部の提案です。
- 受け取り方で区分する(紙か、データか)
- 保存期間を確かめる(法人は提出期限の翌日から7年、青色繰越欠損金が生じた年度などは10年)
- スキャンの設定、保存場所、ファイル名の付け方を決める
- 事務手続の書類を作る
- 試験運用で、読み取りと検索を確かめる
- 要件どおりの画像があることを確かめて、紙を廃棄する
- 保存期間中、要件を満たしたままデータを管理する
このうち、省略したくなるのが5番目の試験運用です。
たとえば最初の1か月は、スキャンはしても紙は捨てずに並行して保管します。
その間に、次の点を実際に試します。
- 取引先名と金額で、目的の注文書を探し出せるか
- 拡大して、手書きの数字が読めるか
- 担当者の権限で上書きできてしまわないか
うまくいかない点が見つかっても、紙が残っているので取り込み直せます。
廃棄の直前には、1枚ずつではなく、まとまり単位で確かめます。
捨てようとしている注文書の束について、対応する画像がすべて保存先にあること、件数が合うこと、読めない画像がないことを見てから廃棄します。
紙の注文書には、取引先の名前や取引の内容が書かれています。
ごみとして出すのではなく、シュレッダーや溶解処理など、内容を読めない形で処分します。
廃棄した日と範囲も記録しておきます。
後から「この注文書は紙で残っているはずか、データだけか」と迷ったときに確かめられます。
破棄後の保管と管理
紙を捨てた後は、データが唯一の保存になります。
保存期間は紙と同じく、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年、青色繰越欠損金が生じた年度などは10年です1。
その間は、要件を満たした状態を保ち続ける必要があります。
注意したいのは、スキャンした時点で要件を満たしていても、それで終わりではないことです。
数年後に保存先を移したときに権限設定が外れたり、ファイル名の規則が崩れたりすれば、その後の保存が要件を満たしていると説明しにくくなります。
データが一か所にしかないと、機器の故障や誤操作で失ったときに取り戻せません。
保存先とは別の場所に控えを持っておくことを、運用に組み込んでおくと安心です。
控えも元のデータと同じく、後から書き換えられない形にしておけば、訂正削除の管理と矛盾しません。
保存先を新しいサービスや機器へ移す場合は、移行の作業と一緒に次の点を確かめます。
移した後のデータで検索と表示ができるか、訂正削除の管理が続いているか、という点です。
保存期間が終わったデータの扱いも決めておきます。
この記事で扱った法人税の保存期間が過ぎた後、いつ消すかは、取引先との関係や社内の必要に応じて自社で判断することになります。
事業年度ごとのフォルダに保存期限を書いておけば、期限が来た年度のフォルダを確認して、消すか残すかを決められます。
担当者が替わるときは、事務手続の書類を引き継ぎの資料として使い、保存期限の管理も含めて手順を渡しておくと、作業が途切れにくくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受け取り方で区分し、保存期間を確かめる
- スキャンの設定、保存場所、ファイル名の付け方を決める
- 事務手続の書類を作る
- 試験運用で、読み取りと検索を確かめる
- 要件どおりの画像があることを確かめて、紙を廃棄する
- 保存期間中、要件を満たしたままデータを管理する
注文の受け取り方が紙とメールで混在していると、どの注文書をスキャナ保存に回し、どれをデータのまま保存し、どれを紙で残すかの線引きを、自社だけで決めるのは手間がかかります。
自社の注文の受け取り経路を並べ、保存方法ごとの振り分けの考え方と、税理士などの専門家に確かめておくべき点を整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 紙を捨てられるか | スキャナ保存の要件を満たした保存なら紙の保存に代えられる。満たせないなら紙を残す |
| 保存期間(法人) | 確定申告書の提出期限の翌日から7年。青色繰越欠損金が生じた年度などは10年 |
| 一般書類で緩む項目 | 入力の時期、帳簿との関連付け、階調、表示装置(事務手続の書類の備付けが条件) |
| 一般書類でも残る項目 | 解像度200dpi以上、訂正削除の確認、検索(現行の扱いは国税庁資料で確認) |
| メール・PDFで受け取った注文書 | 電子取引のデータとしてデータのまま保存。売上高5,000万円以下の検索の緩和は電子取引の基準 |
| 紙を残す提案 | 契約の内容を含む注文書、取引が終わっていない注文書 |
事務手続の書類や試験運用で確かめる項目は、実際の受注の流れに合わせて作らないと、書類と作業が食い違いやすくなります。 受け取りから保管・廃棄までの作業を洗い出し、どの工程で誰が何を確かめるかを手順の形にまとめる進め方を相談できます。
よくある質問
個人事業者の注文書は何年保存すればよいですか。
本記事で示した「提出期限の翌日から7年、青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年」は、法人税の取扱いです1。
個人事業者の保存期間は所得税の定めによるため、国税庁の個人事業者向けの案内で年数を確かめてください。
スキャナ保存の要件の考え方は、個人事業者が注文書を電子化する場合にも手掛かりになります。
スマホで撮影した注文書の画像でもスキャナ保存になりますか。
スマートフォンでの撮影がスキャナ保存の装置として認められるか、認められる場合の条件は何かは、現行の国税庁の一問一答で確かめてから運用してください。
どの機器で読み取る場合でも、解像度・訂正削除の確認・検索といった要件を満たせるかを基準に考えておくのが安全です。
スキャン後に紙を捨てる前、どれくらい待てばよいですか。
本記事で扱った条文は、スキャン後の待機期間を直接定めているわけではありません。
編集部としては、運用を始めた直後は期間を区切って紙を並行保管し、検索・読み取り・権限を試してから廃棄に移ることを提案します。
運用が安定した後も、取引が終わるまで原本を残しておけば、手書きの数字を読み違えていたときに確かめ直せます。
廃棄の時期の扱いは、国税庁の最新の一問一答でも確かめておくと安心です。
メールで受け取ったPDFの注文書を印刷してスキャンしてもよいですか。
もともとデータで受け取った注文書は、電子取引のデータとして保存する対象です。
印刷した紙やそのスキャン画像を、受け取ったデータの代わりにする扱いを前提にするのは避け、データのまま保存してください。
なお、基準期間の売上高5,000万円以下で検索の要件が不要になる緩和は、この電子取引のデータについての基準です5。
保存期間が過ぎた注文書の電子データはいつ消せますか。
法人税の保存期間は、確定申告書の提出期限の翌日から7年、青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年です1。
その期間が過ぎた後にいつ消すかは、取引先との関係や社内の必要に応じて自社で判断することになります。
事業年度ごとのフォルダに保存期限を書いておくと、消すか残すかの判断がしやすくなります。
- 1 出典:国税庁「タックスアンサー 帳簿書類等の保存(法人税)」(令和8年)
- 2 出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)「電子帳簿保存法施行規則」(版の日付未確認)
- 3 出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)「電子帳簿保存法」(版の日付未確認)
- 4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和2年)
- 5 出典:財務省「財務省広報誌 ファイナンス 令和6年8月号」(令和6年)
画像の出典元
- Teamwork in a modern office with diverse colleagues working together on documents./Photo by Pavel Danilyuk on Pexels