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仕入先との手戻りを減らす方法:発注・納期・検収・請求のズレの切り分けと最初の一手

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 手戻りは発注・納期回答・納品と検収・請求と支払の4つの受け渡しに分け、ずれが見つかった工程と生まれた工程を区別して記録する。
  • 原因の所在が自社の発注情報か、仕入先との認識差か、社内の流れかで、直す相手と最初の一手が変わる。
  • 最初は自社だけで直せる発注書の項目を固め、未定の事項は理由と決定予定期日を書いて決まり次第補充する。
  • 取適法の対象取引では、やり直しを求められる場合が限られ、支払期日は検査の遅れに関係なく受領日から数える。
  • 電子化の実証が示すのは受発注業務時間の削減であり、手戻りの件数は別に数えて導入前後を比べる。

Female textile worker in factory reviewing documents at a desk.
▽ 写真の出典元

仕入先との手戻りは、受け渡しのどこで食い違った結果か

発注したのに、返ってきた納期回答が違う、届いた数量が合わない、請求書が検収した内容と一致しない。
そのたびに仕入先へ問い合わせ、伝票を直し、同じ案件を何度も扱うことになります。
仕入先との手戻りは、発注・納期回答・納品と検収・請求と支払の4つの受け渡しのどこで食い違ったかに分けます。
そのうえで、原因が自社の発注情報、仕入先との認識差、社内の流れのどれにあるかを切り分けると、直す順番が見えてきます。
最初の一手は、自社だけで直せる発注時の明示項目を固めることです。
やり直しの依頼や支払期日は、取適法の対象取引かどうかで取り決めの限度が変わります。

発注・納期回答・検収・請求の4つの受け渡し

仕入先とのやり取りを受け渡しの単位で見ると、情報や物が行き来する場面は大きく4つに分かれます。
1つ目は、自社が仕入先へ注文内容を渡す「発注」です。
2つ目は、仕入先がいつ、いくつ納められるかを返す「納期回答」です。
3つ目は、仕入先が納めた品を自社が受け取って確かめる「納品・検収」です。
4つ目は、仕入先が請求し、自社が照合して支払う「請求・支払」です。
どの場面でも、渡す側が書いたつもりの内容と受け取る側が読み取った内容が一致していれば、手戻りは起きません。
手戻りとは、この4つのどこかで両者の理解がずれ、後の工程でそれが見つかって確認や訂正をやり直すことだと言い換えられます。

たとえば、ある部品を100個、月末納期で発注したとします。
仕入先からは「月末は60個、残りは翌月10日」という納期回答が返り、担当者は分納を了承しました。
ところが月末に届いた請求書は100個分で、検収を済ませた60個と合いません。
担当者は請求書の差し戻しと仕入先への確認に追われますが、ずれが生じたのは請求の場面ではありません。
分納を了承したときに請求をどう分けるかを決めていなかったことが原因で、食い違いは納期回答の受け渡しで生まれていました。

このように、ずれが表に出る工程と、ずれが生まれた工程は一致しないことがあります。
請求書の照合で毎回つまずいているからといって請求書の様式だけを直しても、同じ食い違いは別の形で戻ってきます。
見つかった場所だけでなく、さかのぼってどの受け渡しで理解がずれたかを一件ずつたどることが、切り分けの出発点になります。

工程の区切り方の目安(流通BMSの業務区分)

4つの区切りが自社の取引に合っているか迷うときは、受発注の標準化で使われている業務区分と照らすと考えやすくなります。
消費財流通の企業間取引で使われる流通BMSは、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務を標準化の対象としています2。
流通BMSは主に卸売・メーカーから小売への取引を想定した標準なので、製造業の部材調達や役務の発注にそのまま当てはめるものではありません。
ここでは、受け渡しをどの細かさで区切るかの目安として借ります。

この区分で参考になるのは、出荷と受領、そして返品を別々の業務として扱っている点です。
仕入先が「出した」数量と自社が「受け取った」数量は本来一致するはずですが、記録としては別の人が別の時点で作ります。
二つを分けて記録しておくと、数量が合わないときに、出荷の段階で違っていたのか、受け取りや検収の段階で数え方が違ったのかを分けて考えられます。
返品も同じで、検収で不合格になった品の戻し方が決まっていないと、その後の請求や支払の訂正に波及します。

自社の取引に出荷や返品という場面が無い場合は、近い場面に置き換えて構いません。
役務の発注なら、出荷は作業完了の報告に、受領は成果物や作業結果の確認に当たります。
大切なのは区分の名前ではなく、誰が何を渡し、誰がそれを受け取って確かめるのかが、一つの区切りの中で決まっていることです。

仕入先との4つの受け渡し
発注、納期回答、納品・検収、請求・支払の順に、自社と仕入先の間で情報や物が受け渡される流れ
分納を了承した一事例でずれが生まれた場面と見つかった場面
納期回答で分納を了承し請求の分け方を決めなかったことが、請求書の不一致として後で見つかる経過の一事例

自社の手戻りを、どこで・どれくらい起きているか数える

集計する項目(工程・内容・原因の所在)

区切りが決まったら、自社の手戻りが実際にどこにどれだけあるかを数えます。
ここで紹介する集計表は、公的に定められた標準の手法ではなく、編集部が提案する簡易な形です。
手戻り1件を1行とし、前の節で見た「ずれが見つかった工程」と「ずれが生まれた工程」を分けて書く欄を設けるのが要点です。

ずれの内容には、数量・単価・納期・仕様・納入場所のように、何が食い違ったかを短い語で書きます。
自由記述にすると後で集計しにくくなるため、よく出る語をいくつか決めておき、当てはまらないものだけを「その他」に書くと偏りが見えやすくなります。
原因の所在は、自社の発注情報、仕入先との認識差、社内の承認・確認の流れの三つから選びます。
この三つは次の節で対策を分ける軸になるため、記録の時点で一つに決めておくと後の判断がぶれません。

判断がつかない手戻りは、無理に振り分けず「不明」と書いておきます。
不明が特定の工程に集まっているなら、その受け渡しで何を取り決めたのかが自社の記録からたどれないこと自体が分かります。
原因の所在は、発注書や納期回答の写しと照らしてから決めます。
自社側の記憶だけで「仕入先の間違い」と書くと、実は発注書に書いていなかった項目だったという手戻りを見落とし、自社で直せる部分を取りこぼします。

対応の手間は、やり取りの回数のような数えやすい単位で十分です。
時間を正確に測ろうとすると記録そのものが負担になり、続かなくなります。

記録が無い場合の遡り方

これまで手戻りを記録していなかった場合でも、遡って集める手掛かりは社内に残っています。
訂正して再発行した注文書、件名に「訂正」「再送」「差し替え」を含むメール、差し戻した請求書、検収で不合格とした品の記録、電話の対応メモなどです。
まずはこれらを直近の一定期間分だけ集め、1件ずつ集計表に起こします。

どのくらいの期間を遡るかに、決まった基準はありません。
発注件数が多い取引なら短い期間でも件数がそろいますし、月に数回しか発注しない仕入先なら長めに見る必要があります。
目安にしたいのは件数の多さより、同じ工程・同じ内容の手戻りが繰り返し現れているかどうかです。
同じ仕入先との間で納期の解釈違いが何度も出ているなら、件数が少なくても取り決めを見直す理由になります。

遡って起こした記録では、手戻りの全件は拾えません。
電話だけで済ませた訂正や、担当者の手元で直した数字は記録に残っていないことがあるからです。
この段階の集計は全体の量を測るより偏りの見当をつけるためのものと考え、集計を始めた後は新しい手戻りをその都度記録していきます。

欄 書く内容
発注番号 手戻りが起きた案件を特定する番号
見つかった工程 発注・納期回答・納品と検収・請求と支払のどこで気付いたか
生まれた工程 さかのぼって理解がずれた受け渡し
ずれの内容 数量・単価・納期・仕様・納入場所・その他
原因の所在 自社の発注情報・仕入先との認識差・社内の流れ・不明
対応の手間 確認や訂正のやり取りの回数

原因が自社側・仕入先側・社内の流れのどれかで、対策は変わる

自社の発注情報が原因のとき

集計表の原因の欄がある程度埋まると、手戻りの種類ごとに打つ手が違うことが見えてきます。
原因の所在によって、誰が直せるのか、仕入先の協力が要るのか、試すまでの負担がどれくらいかが変わるからです。

自社の発注情報が原因の手戻りは、発注書に書くべきことが書かれていなかった、あるいは古い情報のまま書かれていたことから生まれます。
図面の版数を書かずに品番だけで発注した、複数ある納入場所のどこへ届けるかを書かなかった、単価を見積書の番号だけで示して金額を書かなかった、といった例です。
仕入先は手元の情報で妥当と思う解釈をして出荷し、請求します。
その結果が自社の意図と違えば、検収や請求の照合で手戻りとして表に出ます。

このタイプは、仕入先の協力を待たずに自社だけで直せます。
発注書の様式で必須の項目を固定し、空欄のまま発行できないようにするだけでも、書き漏れによる問い合わせを減らせる余地があります。
何を必須にするかは、取適法が発注時に明示を求めている事項が参考になるため、次の節で詳しく見ます。

仕入先との認識差が原因のとき

発注書に書いてあるのに手戻りが起きる場合は、書かれた言葉の受け取り方が両者で違っていることが考えられます。
「月末納期」を自社は月末までに届くことと考え、仕入先は月末に出荷することと考えていた、という食い違いはその一例です。
検収でも、外観のきずをどこまで許すか、梱包をどう確認するかが文書にないまま互いの慣習に任されていると、不合格の判断に仕入先が納得せず、やり取りが長引きます。

このタイプは、自社の発注書を書き直すだけでは解消しません。
言葉の定義や判定の基準を、仕入先と話し合って決める必要があります。
自社の都合で決めた基準を一方的に通知しても、仕入先がそれに合わせるための手間や費用が生じれば、新しい食い違いの種になります。
どこまでを仕入先に求められるかには、取適法の対象取引であれば法令上の限度もあり、検収とやり直しを扱う節で整理します。

社内の承認・確認の流れが原因のとき

三つ目は、仕入先とのやり取りではなく、社内の承認や情報の受け渡しが原因になっている場合です。
発注の承認が滞って発注日が遅れ、仕入先に短い納期を頼むことになり、納期回答の調整が何度も発生する。
設計の変更が購買担当に伝わらず、古い仕様のまま発注してしまう。
現場で受け取った品の数量が購買担当に届くのが遅れ、請求書が来たときに照合できない。
どれも集計表の上では仕入先との受け渡しに手戻りが記録されますが、直す相手は社内です。

この場合に仕入先へ様式の変更や確認の追加を頼んでも、手戻りは減りません。
発注から検収まで、社内で誰がどの情報を受け取り、誰が承認するかを書き出して、受け渡しの遅れや抜けがどこにあるかを見ます。
試す順番としては、自社の発注情報の不備から手を付け、続いて仕入先との認識差の取り決めに進み、社内の流れの見直しはその間に並行して進めると、仕入先への依頼を最小限にしたまま変化を確かめられます。

原因の所在 例 誰が直すか 仕入先の協力 最初に試すこと
自社の発注情報 版数や納入場所の書き漏れ 自社の購買担当 原則不要 発注書の必須項目を固定する
仕入先との認識差 月末納期を出荷日と着日で別に解釈 自社と仕入先 必要 納期の定義と検収基準を取り決める
社内の承認・確認の流れ 承認待ちで発注が遅れ短納期の依頼になる 社内の関係部門 原則不要 社内の受け渡しと承認の順序を見直す
原因の所在ごとの手戻りの例と最初に試すこと(模式図)
自社の発注情報、仕入先との認識差、社内の承認・確認の流れの三つについて、手戻りの例と最初に試すことを分けた図

発注時に何を明示し、決まっていない事項はどう扱うか

発注書に入れる項目

自社の発注情報を整えるとき、発注書に何を書けばよいかの手掛かりになるのが、2026年に施行された取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)の明示の考え方です。
運用基準では、委託事業者が製造委託等をした場合、給付の内容、代金の額、支払期日、受領場所などを、直ちに書面または電磁的方法で明示することを求めています3。
ここでいう委託事業者は発注する側、中小受託事業者は受注する側の仕入先に当たります。
この義務がかかるのは法の対象となる取引に限られますが、対象外の取引でも、発注書の項目を考えるときの出発点として使えます。

明示事項を4つの受け渡しと突き合わせると、それぞれの項目が後のどの工程の食い違いを防ぐかが見えてきます。
給付の内容は何をどれだけ納めるかの取り決めで、検収の判断の拠り所になります。
受領場所は納品の場面に、代金の額と支払期日は請求・支払の場面の照合に直結します。
実務では、給付の内容を品番、図面や仕様書の番号と版数、数量のように分けて書き、納期を着日か出荷日かまで書き添えると、前の節で見た書き漏れや解釈の違いを発注の時点で減らせます。
この細分は法令の文言ではなく、編集部の提案です。

明示した内容を検収の基準と対応づけておくことにも意味があります。
発注時に書いた仕様と、検収で何をもって合格とするかが結び付いていれば、納品物が仕様と違ったときに、それが仕入先側の相違なのか、そもそも発注書に書いていなかったことなのかを、取り決めの時点で分けておけます。
これは運用基準とQ&Aの規定を組み合わせた編集部の分析で、取適法の対象取引について言えることです。

未確定事項の補充明示

発注の時点で、仕様や価格がまだ決まっていないこともあります。
顧客の承認待ちで色が確定していない、量産の数量が見えていない、といった場合です。
こうしたときに発注書へ「仕様は別途」とだけ書いて発注すると、いつ、誰が、何を決めるのかが仕入先には分かりません。
仕入先は見込みで準備を進め、決まった内容と違えば、やり直しや納期の再調整が生じます。

取適法のQ&Aは、給付の内容や代金の額が定められない場合について、定められない正当な理由と決定予定期日を当初に明示し、決まった後は直ちに補充の明示をするよう求めています4。
未定の項目を空欄にするのでも仮の値を書くのでもなく、未定であること、その理由、いつ決めるかを書くという考え方です。
たとえば「塗装色:顧客の承認待ちのため未定。決定予定期日:(日付)」のように書いておけば、仕入先はその日までに着手してよい範囲を判断できます。
決定予定期日を過ぎても連絡が無ければ、仕入先から問い合わせる目安にもなります。

補充の明示は、当初の発注書と結び付けて残すことが大切です。
電話で色を伝えただけでは、後の検収で「指定と違う」となったとき、何がいつ指定されたかをたどれません。
当初の発注番号を書いた補充の書面や電子データを送り、集計表の記録とも同じ番号でつなぐと、手戻りが起きたときに原因の所在を判断しやすくなります。

自社が取適法の対象かの確認

ここまでの明示を法的な義務として扱うべきかどうかは、自社の取引が取適法の対象かどうかで決まります。
Q&Aでは、適用の判断は製造委託等をした時点の常時使用する従業員数などによるとされています4。
判断の時点が発注の時点であり、従業員数のように変わりうる数字が基準に含まれるため、以前に確認した結果がいまも当てはまるとは限りません。

確認するのは、取引の内容が製造委託等に当たるか、そして発注時点の自社と仕入先の規模が基準に当てはまるかの二点です。
具体的な基準は、公正取引委員会などの所管機関が公表している最新の資料で確かめてください。
対象外の取引であれば、明示事項は契約上の取り決めとして扱うことになります。
その場合でも、発注書の項目を整えることで自社の手戻りの原因を一つずつ取り除ける点は変わりません。

発注時に決まっていない事項の扱い(取適法の対象取引)
当初の発注で理由と決定予定期日を明示し、内容が決まったら直ちに補充の明示をする流れ

検収・やり直し・支払期日:仕入先に求めてよい範囲

受領と検収の関係

納品・検収の場面では、自社が受け取った時点と、検査を終えた時点を分けて考える必要があります。
取適法の運用基準では、受領とは検査の有無を問わず物品を自社の占有下に置くことで、支払期日は給付を受領した日から60日以内でできる限り短い期間内に定めるとされています3。
検査に時間がかかった場合でも、支払期日は受領日から数えます3。

社内で「検収が済むまで支払処理を始めない」という流れになっていると、ここで問題が起きます。
検査が遅れたり、検収の手戻りで結果が出るまでに日数がかかったりしても、対象取引では支払期日は動きません。
社内の流れの手戻りが、そのまま支払の遅れにつながるおそれがあるということです。
受け取った日を検収完了日とは別に記録し、支払期日の起点として扱う流れにしておく必要があります。

運用基準は、検査を行った場合に検査完了日、検査の結果、不合格品の取扱いを記録することや、取引の記録を作成して保存することも求めています3。
この記録は対象取引での義務であると同時に、手戻りの集計の材料にもなります。
不合格の結果と理由が残っていれば、それが発注書の明示内容との相違なのか、基準の解釈違いなのかを後から照合できます。

やり直しを依頼できる場合

納品後に仕様の食い違いが分かったとき、仕入先にやり直しを頼めるかどうかは、取適法の対象取引では限られています。
運用基準によれば、給付のやり直しを求められるのは、委託事業者がその費用を負担する場合か、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がある場合に限られ、後者の例として明示した内容との相違が挙げられています3。

これを発注書の書き方と結び付けると、意味がはっきりします。
発注書に表面処理の条件を書いていなかったのに、納品後に社内の基準で不合格にした場合、それは明示した内容との相違とは言いにくく、やり直しを頼むなら自社が費用を負担する側に回る可能性があります。
反対に、発注書に版数と仕様書番号を明記していて、納品物が別の版で作られていたのであれば、明示内容との相違として扱える余地があります。
どちらに当たるかは個別の事情で変わるため、迷う場合は所管機関の資料や相談窓口で確かめます。

発注時の明示を整えることは、自社の手戻りを減らすだけでなく、手戻りが起きたときに誰が費用を持つかを前もって分けておくことにもつながります。
明示が曖昧なまま仕入先にやり直しを求め続けると、その負担は仕入先に偏り、取引関係そのものがぎくしゃくしかねません。

一方的な負担にしない取り決め

試作品や初めて扱う仕様の部品のように、やり直しがある程度避けられない取引もあります。
Q&Aでは、当初から協議のうえでやり直しを見込んだ価格を設定している場合、想定した範囲内のやり直しは問題ないが、その範囲を超える場合は協議が必要だとしています4。
やり直しが起こりうることを価格の見込みに織り込み、その範囲を発注の前に仕入先と話し合っておく、という考え方です。

この取り決めで大事なのは、想定の範囲を双方が同じものとして理解していることです。
何回までの修正を見込むのか、どの種類の修正を含むのかが曖昧だと、範囲を超えたかどうかで新たな食い違いが生まれます。
見込んだ範囲を発注書や付随する取り決めに書き、範囲を超えそうになった時点で協議する流れを決めておくと、検収の場面で揉める余地を減らせます。
取適法の対象外の取引では、こうした扱いは契約の定めによりますが、やり直しの範囲と費用を前もって決めておく考え方は同じように使えます。

受領日と支払期日の関係(取適法の対象取引)
受領日を起点に、検査・検収が遅れても起算点は変わらず、支払期日は受領日から60日以内に定めることを示す図

電子化・標準化は手戻りにどこまで効くか、効果をどう確かめるか

公的実証が示す範囲と示さない範囲

電話やFAXで受け取った納期回答や請求の内容を、担当者が自社のシステムや表に打ち直している職場では、受発注の電子化で手戻りが減るのではないかと考えるのは自然です。
中小企業庁の情報サイトでは、中小企業共通EDIの実証の結果が紹介されています。
EDIとは、企業間で受発注などのデータを決まった形式でやり取りする仕組みのことです。
導入前の課題として、電話やFAXによる受発注に伴う手入力の転記と、それに起因するミスや書類紛失のリスクが挙げられ、平成28年度補正の実証プロジェクト12件では、中小企業の受発注業務時間が平均で51.4%削減されたとされています1。

この数字を読むときは、何が減ったのかを取り違えないことが大切です。
51.4%は受発注業務にかかる時間の削減率で、手戻りの件数が減った割合ではありません。
12件の実証の平均であり、自社で同じ効果が出ることを示すものでもありません。
業務時間が減る余地がどれくらいあり得るかの目安として受け止めるのが適切です。

手戻りとの関係で言えば、電子化が効き得るのは手入力の転記に由来するずれです。
FAXで届いた納期回答を打ち直すときの数字の写し間違いや、注文書の紛失による再送は、データをそのまま受け渡せば起きる場面が減ります。
一方で、発注書にそもそも版数が書かれていない、納期の言葉の解釈が違う、社内の承認が遅れる、といった原因は、データの形式を変えても残ります。
集計表で原因を見たとき、転記に由来する手戻りが多いかどうかが、電子化を手戻り対策として優先するかの判断材料になります。

導入前後の比べ方

電子化に限らず、発注書の項目の固定や検収基準の取り決めを始めた後に手戻りが減ったかを確かめるには、最初に作った集計表を同じ区切りで使い続けるのが分かりやすい方法です。
導入前と導入後で同じ長さの期間を取り、工程ごと、原因の所在ごとの件数を並べます。
全体の件数だけを比べると発注量の増減や繁忙期の影響と区別できないため、発注件数あたりの手戻りの件数にして見ると比べやすくなります。

業務時間と手戻りの件数は、別々に記録します。
電子化で入力の時間が減っても、仕様の取り違えによる手戻りが残っていれば、確認と訂正の負担は変わりません。
逆に、手戻りの件数は減ったのに業務時間が変わらない場合は、新しい仕組みの操作や確認に別の手間がかかっている可能性があります。
二つを分けておけば、どちらの効果が出ていて、どちらが出ていないかが分かります。

電子化は自社だけで完結しません。
仕入先にも新しい仕組みへの対応や操作の習得が必要になり、FAXを中心に受注している小規模な仕入先にとっては負担が小さくありません。
電子化を頼む場合は、一方的な負担にならないよう、対応の方法や時期を仕入先と協議して決めます。
FAXのまま続ける仕入先とは、まず発注書の項目と納期回答の返し方をそろえることから始めるのが現実的です。

項目 内容
示すこと 受発注業務時間の削減(中小企業の平均51.4%)
対象 中小企業共通EDIの実証プロジェクト12件・平成28年度補正
示さないこと 手戻りの件数の削減率・自社で同じ効果が出ること
効き得る手戻り 手入力の転記に由来するずれや書類の紛失
残る手戻り 発注情報の不足・言葉の解釈違い・社内の承認の遅れ
電子化で効き得る手戻りと残る手戻り(実証12件の参考値を含む模式図)
実証が示す業務時間の削減率と、電子化で減りうる転記由来の手戻り、データの形式を変えても残る手戻りを分けた図

自社の記録を集計しても、手戻りの原因が発注情報の不足なのか、仕入先との認識差なのか、社内の流れなのか、一人では判断がつかないことがあります。

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要点の整理

軸 基準
手戻りの区切り 発注・納期回答・納品と検収・請求と支払の4つの受け渡し
記録の要点 見つかった工程と生まれた工程を分け、原因の所在を三つから選ぶ
最初の一手 自社だけで直せる発注書の必須項目の固定
未定の事項 理由と決定予定期日を書き、決まり次第補充する
やり直しと支払 取適法の対象取引では依頼できる場合が限られ、支払期日は受領日から数える
電子化の効果 業務時間と手戻り件数を分け、同じ区切りで前後を比べる

電子化を検討する段階では、手戻りのうち転記に由来するものがどれだけあるかや、仕入先側に必要な対応によって、進め方が変わります。 集計表の結果をもとに、電子化で減らせる手戻りと、取り決めで減らす手戻りの切り分けを確かめられます。

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よくある質問

自社が取適法の対象かどうかは、何で確認すればよいですか。

取引の内容が製造委託等に当たるかと、製造委託等をした時点の常時使用する従業員数などで判断します。
判断は発注の時点で行うため、以前の確認結果がいまも当てはまるとは限りません。
具体的な基準は、公正取引委員会などの所管機関が公表している最新の資料で確かめてください。

発注時に仕様が決まっていないとき、発注書はどう書けばよいですか。

空欄や「別途」とせず、定められない正当な理由と決定予定期日を書きます。
決まった後は、当初の発注番号と結び付けて直ちに補充の明示をします。
取適法の対象取引ではこの扱いが求められており、対象外の取引でも、仕入先が着手してよい範囲を判断しやすくなります。

納品後に仕様の食い違いが分かったとき、やり直しを頼んでよいのはどんな場合ですか。

取適法の対象取引では、自社が費用を負担する場合か、明示した内容との相違など仕入先の責めに帰すべき理由がある場合に限られます。
発注書に書いていなかった条件で不合格にした場合は、明示内容との相違とは言いにくくなります。
個別の判断に迷う場合は、所管機関の資料や相談窓口で確かめます。

検収が終わらないと支払えないと考えてよいですか。

取適法の対象取引では、そう考えることはできません。
支払期日は受領日から60日以内でできる限り短く定め、検査が遅れても受領日から数えます。
受領日を検収完了日とは別に記録しておく必要があります。
対象外の取引では契約の定めによります。

手戻りの記録は何件・何か月分あれば原因を判断できますか。

決まった基準はありません。
発注頻度によって必要な期間は変わります。
件数の多さより、同じ工程・同じ内容の手戻りが繰り返し現れているかを見ます。
繰り返しが見えれば、件数が少なくても取り決めを見直す理由になります。

仕入先が小規模でFAX中心の場合、まず何から取り決めればよいですか。

まず発注書の項目、未定事項の書き方、納期回答の返し方、検収の基準をそろえます。
これらは電子化しなくても取り決められます。
電子化は仕入先にも対応の負担が生じるため、方法や時期を協議して決めます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(平成28年度補正の実証)
  2. 2 出典:一般財団法人流通システム開発センター(流通BMS協議会)「流通BMS概要」(2007年)
  3. 3 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2026年)
  4. 4 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)

画像の出典元

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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