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展示会受注システムの効果は受注額でどう試算する?比較の軸と変数の組み立て方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 受注額への効果は、紙の注文書運用と比べて、持ち帰りになっていた商談がどれだけ当日その場で確定に変わるかを起点に測る
  • 試算は受注額を商談した取引先の数・受注比率・平均単価の3要素に分け、システム導入で動く変数がどれかを明示して組み立てる
  • 公開されている段階別の比率(リード獲得率1.85%、有効リード化率42.3%、商談化率33.3%、受注率20.0%)は1社・1展示会の条件つき実績であり、計算の型と桁感を借りる材料にとどめる
  • 投資対効果を見るときは分母に何を含めたかを書き、受注額ベースと粗利ベースを併記する。展示会出展後に新規契約・受注につながったとの回答は26.79%で、出展すれば必ず成果が出るわけではない
  • 効果の判定は、同じ規模・同じ商材の会期を2回以上、同じ指標定義で並べたときに成り立つ。1回目は運用を立ち上げる会期として位置づけておく

20代後半の日本人女性が倉庫事務所での受注対応をしている場面

「受注額への効果」は紙運用の何と比較して測るのか

次の展示会に向けて受注システムの導入を検討し始めたものの、稟議書の「期待効果」の欄で手が止まっている。
紙の注文書でも受注は取れている以上、システムを入れたら受注額がいくら増えるのか、その根拠を示さなければ予算はつきません。
ここで変えられるのは、効果を「増加率」で語るのをやめ、比較の対象と計算の分解を先に決めることです。
効果は紙運用との対比で測り、当日その場で受注を確定できるかどうかが分岐点になります。
試算は「商談した取引先の数×受注比率×平均単価」に分け、各変数の前提を自社の会期データで埋めていく。
相場の一枚岩な数字を借りるのではなく、自社の紙運用時の実績を基準値として押さえることが、説得力のある試算の出発点になります。

紙の注文書運用と何が変わるのか

効果を数字にする前に、何と何を並べるのかを決めておかないと、試算はどこまでいっても水掛け論になります。
「システムを入れた場合」と比べる相手は、多くの場合、今まさに会場でやっている紙の注文書運用です。
ここを曖昧にしたまま「導入すれば受注が伸びる」と書くと、上長から「伸びるという前提の根拠は」と返されて止まります。

紙運用の会場では、来場したバイヤーとブースで商談し、興味を持ってもらえたらカタログと注文書を渡します。
その場で書いてもらえることもありますが、多くは「社内で検討して、後日ファクスかメールで送ります」という形で持ち帰りになる。
展示会が終わってから、営業担当が一社ずつ追いかけ、注文書が戻ってきたものを社内システムへ入力していく流れです。

受注システムを使う運用では、この流れの途中に会場での確定という選択肢が加わります。
タブレットなどの画面で商品を見せながら数量を入力し、その場で注文として登録する。
紙と比べたときに動くのは、注文が成立するタイミングと、成立した注文が社内に届くまでの時間です。

つまり比較すべきは「システムの機能があるかどうか」ではなく、「持ち帰りになっていた商談のうち、どれだけが当日確定に変わるか」という一点に集約されます。
稟議で示す効果も、この変化を出発点に組み立てることになります。

当日確定の有無が分岐点になる理由

持ち帰りになった商談は、その時点では受注額に一円も計上されません。
後日きちんと注文書が戻ってくれば結果は同じに見えますが、会場を出た瞬間に競合他社の提案や社内の優先順位の変化といった、こちらが手を出せない要因が入り込みます。
商談の熱量が最も高いのはブースで話しているその瞬間であり、そこで確定できるかどうかは、後から埋め合わせのきかない差になります。

EC-Rider B2B Ⅱを提供するフライトソリューションズでは、受注額に効果があらわれる経路を、その場での受注確定が持ち帰りを減らすこと、商品情報の提示が追加提案を後押しすること、受注データの早期共有が生産・仕入判断を前倒しすることの3つとして整理しています3
これは提供元自身による効果の整理であり、外部の調査で検証された一般法則ではありません。
ただ、比較の起点をどこに置くかを考えるうえでは、この3つの経路のどれが自社に当てはまるかを見ていく形が実務的です。

たとえば、会場では商品説明が中心で注文は必ず後日、という運用をしているなら、1つ目の経路の余地が大きい。
逆に、常連の取引先が会期前に発注内容を固めてきていて会場は挨拶の場という業種であれば、当日確定の余地はもともと小さく、効果の見込みも変わってきます。
自社がどちらに近いかは、前回の展示会で受け取った注文書のうち、会場で書いてもらったものと後日届いたものの割合を数えれば、おおよそ見当がつきます。

商談から受注確定、社内共有までの流れを紙運用と受注システム運用で並べた図
紙の注文書運用と受注システム運用で変わるのは、注文の成立タイミングと社内到達までの時間

効果が生まれる仕組み:当日の受注確定がなぜ受注額を左右するか

3つの影響経路がそれぞれ動かすもの

比較の起点が決まったところで、先ほど挙げた3つの経路が受注額のどこを動かすのかを、もう少し具体的に見ていきます。
ここを押さえておかないと、次の試算で「どの変数が動くと想定しているのか」を説明できません。

1つ目の、その場での受注確定が持ち帰りを減らすという経路は、受注に至る件数そのものに効きます3
持ち帰りになった案件が全て失注するわけではありませんが、会場で確定した注文と後日返送を待つ注文では、成立するかどうかの確からしさが違う。
試算の言葉に置き換えると、商談した取引先のうち受注に至った比率が動く、ということになります。

2つ目の、商品情報の提示が追加提案を後押しするという経路は、1件あたりの金額に効きます3
紙の注文書だけで商談していると、商談の場に持ち出せる商品は、その場にある現物とカタログに載っている範囲に限られます。
画面で在庫や関連商品、過去の取引履歴を呼び出せる状態なら、「この商品をご検討なら、同じシリーズのこちらも」という提案を商談中に出せる。
ここで金額が増えるとすれば、それは受注件数ではなく平均単価の側の変化です。

3つ目の、受注データの早期共有が生産・仕入判断を前倒しするという経路は、少し性質が違います3
会期中に受注データが社内へ届いていれば、生産や仕入の担当者は会期が終わるのを待たずに手配を始められる。
これは受注額そのものを増やすというより、受け取った注文を欠品や納期遅れで取りこぼさないという方向の効果です。
稟議に書くなら、受注額の増加ではなく、確定した受注を守る効果として分けて説明したほうが、後で「約束と違う」と言われずに済みます。

受注額の増加を保証するものではない点

ここまで読んで、それなら計算すれば効果が出せそうだと思われたかもしれません。
ただ、同じ整理のなかで、これら3つの経路はいずれも受注額に影響し得るものの、増加を保証するものではなく、受注額は商品構成・出展規模・来場バイヤー数によっても変わるとされています3

この但し書きは、実は稟議を通す側にとって不都合なものではありません。
むしろ、受注額が動く要因をシステム以外にも列挙できているということは、試算の前提を書くときに「何を一定と置いたか」を明示できるということです。
来場バイヤー数が前回より2割少ない会期で受注額が横ばいだったなら、それは効果がなかったのではなく、条件が違ったということになる。
前提を書かずに「導入で受注額が増える」とだけ書いた稟議は、条件が変わった瞬間に説明がつかなくなります。

なお、展示会受注システムの導入によって受注額が何パーセント増えたかを直接示す一次データは、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。
ですから、稟議に「導入すれば受注額が○%増える」と書ける外部の裏付けは、現時点では手元にないものとして進めるのが正確です。
代わりに書けるのは、自社の数字を変数に入れた試算と、その前提です。
次にその組み立て方を見ていきます。

受注額の試算モデル:来場者数から受注額までの変数の組み立て方

受注額を取引先数×受注比率×平均単価に分解する

受注額をひとかたまりの数字として扱っている限り、増えたか減ったかしか言えません。
フライトソリューションズの整理では、受注額を、商談した取引先の数、受注に至った比率、1件あたりの平均単価という3つの要素の積として見ると、どこが動いたかを追えるとしています3
これは外部調査による実証ではなく、測り方の考え方の提示ですが、稟議の試算表をつくるときの骨格としては使えます。

この分解が効くのは、前節で見た3つの経路が、それぞれ別の要素に対応しているからです。
当日確定が増えれば受注比率が上がり、追加提案ができれば平均単価が上がる。
商談した取引先の数は、システムよりもブースの立地や来場者数、声かけの体制に左右される部分が大きい。
つまり、システム導入で動くと説明できるのは主に真ん中と右側の2つであり、左側の取引先数まで増える前提で試算すると、後で説明がつかなくなります。

仮に、前回の展示会で40社と商談し、うち10社から注文をもらい、1件あたりの平均が30万円だったとします。
受注額は40社×25%×30万円で300万円です。
ここで、持ち帰りだった商談の一部が当日確定に変わって受注比率が30%になったとすると、40社×30%×30万円で360万円になる。
この60万円の差が何によって生じる想定なのかを一行で説明できることが、稟議の試算表に求められていることです。
なお、この40社・25%・30万円という数字は説明のために置いた仮の値であり、実測値ではありません。
自社の数字に置き換えて計算してください。

来場者数からリード・商談・受注に至る各段階の比率

では、各変数にどれくらいの値を入れればよいのか。
自社の過去データがあればそれが最優先ですが、段階ごとにどの程度の目減りが起きるのかの感覚をつかむには、実測された事例が参考になります。

BtoB企業向けの営業支援を手がける株式会社イムーヴは、2025年に開催されたBtoB展示会へ1小間で出展した自社の実績を公開しています。
来場者約3,800名のうち、獲得したリードは71名で、リード獲得率は1.85%でした1
そこから先の各段階の比率は、有効リード化率42.3%、商談化率33.3%、受注率20.0%となっています1

この数字の並びを見ると、来場者数と受注件数の間には相当な距離があることがわかります。
3,800名の来場者のうち名刺交換などでリードになるのが71名、そのうち連絡が取れて見込みがあると判断できる有効リードが4割強、そこから商談に進むのが3分の1、商談から受注に至るのが5社に1社。
掛け合わせていくと、受注に至るのはごく少数です。

ここで注意したいのは、この段階分けが「後日フォローして受注に至る」流れを前提にしている点です。
展示会受注システムで想定している当日確定の流れとは、商談から受注までの時間軸が違います。
ですから、この20.0%という受注率をそのまま自社の当日確定後の受注比率として置き換えることはできません。
使えるのは、来場者数から受注までを段階ごとに分けて歩留まりを見るという計算の型と、各段階でどの程度絞られるのかという桁感のほうです。

出展費用に対する投資対効果の考え方

稟議では受注額だけでなく、かけた費用に見合うかどうかも問われます。
先のイムーヴの検証では、この出展にかかった費用は55万円で、受注額ベースでは約4.4倍、粗利ベースでは約2倍の投資対効果になったとされています1

受注額ベースと粗利ベースで倍率が倍以上違う点は、試算表をつくるうえで見落としやすいところです。
受注額で4.4倍という数字は見栄えがしますが、そこから原価を引いた粗利で見ると約2倍になる。
稟議を審査する側が知りたいのが「投資に対していくら儲かるか」であれば、粗利ベースの数字を併記しておかないと、後で「受注額は伸びたが利益は」と問われます。

また、この55万円は出展費用であって、受注システムの導入費用ではありません1
自社の試算では、出展費用に加えてシステムの導入・運用にかかる費用を分母に入れることになるため、同じ受注額でも倍率は下がります。
分母に何を入れたかを明記しておくことが、他社の数字と並べられたときに説明できる条件になります。

来場者、リード、商談、受注の各段階と受注額の3要素分解を示した図
来場者から受注までの段階と、受注額を3要素に分けて追う試算の骨格

自社の展示会規模・業種で試算の前提はどう変わるか

単発データを自社にそのまま当てはめない理由

前節で挙げた比率は、具体的で使いやすく見えます。
ただ、この検証は1社・1展示会の単発データであり、業種・出展位置・装飾・運営体制などの条件によって各段階の比率は変動しうると、公開元自身が明記しています1
2025年に開催されたBtoB営業・マーケティング領域の展示会に、初出展として1小間を出した実績という条件つきの数字です。

この前提を稟議の試算に持ち込むと、何が起きるか。
たとえば食品や日用品のように、会場で現物を見て取引先がその場で発注する商習慣の展示会と、ソフトウェアのように会期後に複数回の商談を重ねて契約に至る展示会では、リードから受注までの経路の長さがまるで違います。
後者の比率を前者に当てはめれば、受注までの期間も、各段階の歩留まりも合いません。

出展位置や小間数も効きます。
1小間と大型ブースでは、そもそも足を止める来場者の数が違い、対応できる商談数も変わる。
リード獲得率1.85%という数字は、来場者約3,800名に対して1小間で獲得できた件数の割合であって1、小間数を増やせば比例して増えるという性質のものではありません。

ですから、自社の試算表に入れる比率は、他社の実測値ではなく自社の紙運用時の実績を第一候補にする。
他社の数字は、自社の値が桁として極端にずれていないかを確かめる物差しとして使う。
この順番を逆にすると、前提の説明ができない試算表ができあがります。

出展回数と成果の実感の関係

もう一つ、単発の会期だけを見ていると見落とすことがあります。
リンクストラテジーが、過去3年以内にBtoB展示会へ出展した担当者392人を対象に実施した調査では2、出展後に「新規契約・受注につながった」と回答した割合は26.79%でした2

4社に1社程度という数字をどう読むかですが、これは展示会に出れば必ず受注につながるわけではないことを示しています。
同時に、この調査では出展回数を重ねている企業ほど展示会の成果を実感している傾向が示されています2
出展回数別の内訳の数値は公開されていないため、何回目から何パーセント上がるといった形では使えませんが、傾向としては押さえておく価値があります。

この傾向が示唆するのは、初回の出展データを基準に据えると、効果を低く見積もりすぎる可能性があるということです。
ブースの構成、声のかけ方、商談後のフォローの型は、回を重ねるなかで整っていく。
受注システムの操作も同じで、初回はスタッフが画面に不慣れで、結局紙に書いて後から入力するという運用になることも起こり得ます。

ただし、この調査とイムーヴの検証は、調査の対象も方法も異なります。
392人へのアンケートで得られた26.79%という回答割合と、1社の実績である受注率20.0%は、測っているものが別のものです。
片方の数字でもう片方を精緻化したり、両者を掛け合わせたりはできません。
試算に使うときは、前者は自社の期待値が過大でないかを確かめる材料、後者は計算の型を借りる材料として、役割を分けて扱うのが安全です。

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試算通りの効果が出ない・前提が崩れるのはどのような場合か

同条件で会期を2回以上並べて初めて比較が成り立つ

試算表ができたら、次に決めておくべきは、いつ答え合わせをするかです。
ここを決めずに導入すると、1回目の会期の結果だけを見て「効果がなかった」と判断されかねません。

フライトソリューションズの整理では、効果を確認できるまでの目安は会期の周期に従い、同じ規模・同じ商材の会期を2回以上重ね、指標を同じ条件で並べたときに比較が成り立つとしています3
これは提供元による測定上の留意点であり、複数社で実測された成果ではありませんが、前節までに見た条件依存の大きさを踏まえると、理屈としては通ります。

同じ条件で並べる、というのは具体的には、会期の規模、扱う商材、出展小間数、来場者層がおおむね揃っている会期同士を比べるということです。
春の大型展示会と秋の地域商談会を並べて「受注額が減ったから効果がない」と結論づけるのは、比較になっていません。
年に複数回出展している企業なら、同じ展示会の前年同期と比べるのが最も条件を揃えやすい形です。

そして、揃えるべきは会期の条件だけでなく、記録する指標の定義も同じであることです。
商談した取引先の数を、名刺交換した全社と数えるのか、商品説明まで進んだ社数と数えるのか。
ここが会期ごとにぶれると、受注比率の分母が変わり、数字の上下が運用の違いなのか成果の違いなのかわからなくなります。

初回は数字が準備の質に引きずられる

1回目の会期は、比較の材料としては扱いにくいものになります。
同じ整理のなかで、1回目は運用の習熟が進む途中であり、数字は準備の質に引きずられるとされています3

会場で起きることを想像すると、理由はわかりやすいと思います。
商品マスタの登録が間に合わず、一部の商品が画面から呼び出せない。
ブースに立つスタッフが操作に慣れておらず、来場者を待たせるのを避けて結局紙の注文書を渡す。
通信環境が不安定で入力が止まる。
こうしたことが起きれば、当日確定の件数は伸びず、受注比率も想定を下回ります。

このとき下がった数字は、システムを入れても効果がないことの証拠ではなく、準備が間に合わなかったことの記録です。
とはいえ、稟議を通した側としては、1回目の結果が悪いと立場が苦しくなる。
ですから、稟議の段階で「1回目は運用を立ち上げる会期と位置づけ、効果の判定は2回目以降の同条件比較で行う」と明記しておくほうが、後の説明がしやすくなります。

記録しておきたいのは、受注額そのものよりも、なぜその数字になったのかを説明できる材料のほうです。
会場で入力できなかった商談が何件あり、その理由は何だったのか。
これが残っていれば、2回目の会期で何を直せばよいかがわかり、数字の変化も説明できます。

自社に過去データがない場合の進め方

ここまでの説明は、紙運用時の実績が手元にあることを前提にしてきました。
ただ、実際には、会場で受け取った注文書の枚数は残っていても、商談した社数や持ち帰りになった件数は数えていない、という状態のほうが多いはずです。

過去データがない場合、稟議の試算は推定値で組むほかありませんが、そのときに大事なのは、どこが実績でどこが仮置きかを分けて書くことです。
受注額の合計は経理の数字として実績があるはずですし、注文書の枚数から受注件数も出る。
その2つがあれば平均単価は割り算で出ます。
わからないのは商談した取引先の数と、そこから導かれる受注比率です。
ここだけを仮置きの幅として示し、「この数字は次回の会期で実測する」と書いておく。

そのうえで、次回の会期を記録のための会期として使う方法があります。
ブースで商品説明まで進んだ社数を数える、注文書を渡したが持ち帰りになった件数を控える、といった程度でも、2回目以降の比較の基準値になります。
これは実測された導入効果ではなく、データがないところから比較を成り立たせるための進め方の提案ですが、1回の会期を費やせば次からは自社の数字で試算できるようになります。

記録を始めるタイミングは、システムを導入する前が望ましい。
導入後にしか数字がなければ、比較する相手がいないからです。
稟議の前段として、まず現状を測る会期をひとつ置く。
遠回りに見えますが、前節までに見たとおり、他社の単発データを自社の前提にできない以上、自社の基準値をつくることが試算の精度を決めます。

受注額への効果は、紙運用で持ち帰りになっていた商談がどれだけ当日確定に変わるかを起点に、取引先数・受注比率・平均単価の3要素へ分けて試算します。
他社の比率は計算の型と桁感を借りる材料にとどめ、自社の紙運用時の数字を基準値に据える。
そして、同条件の会期を2回以上並べたところで初めて、試算が当たっていたかを判断できます。

受注額への効果を試算する型は自社でも組めますが、自社の商材構成と会期の条件で、どの変数が動く見込みなのかを見極めるところは、会場での受注運用を実際に見てきた立場の意見があると判断が早くなります。

現在の紙運用でどこまでの数字が取れているか、次の会期で何を記録すれば比較が成り立つかを、扱う商材と出展規模に合わせて整理したうえでお伝えできます。無料相談で要件を整理する

試算に使う数字を、どの役割で使い分けるか

自社の試算表に入れる数値として使えるか、参照の物差しとして使うにとどめるかという用途の違いで並べています。

  • 自社の紙運用時の実績(商談社数・受注件数・平均単価)=試算の基準値。他の何より優先して使う
  • 公開されている1社の段階別比率(リード獲得率1.85%、有効リード化率42.3%、商談化率33.3%、受注率20.0%)=計算の型と歩留まりの桁感を借りる材料。自社の値としては置かない1
  • 出展費用に対する投資対効果(55万円に対し受注額ベース約4.4倍・粗利ベース約2倍)=分母に何を含めたかを確認する材料。自社では導入費用も分母に加わる1
  • 担当者392人への調査で得られた「新規契約・受注につながった」26.79%=自社の期待値が過大になっていないかを確かめる材料2
  • 受注額を取引先数×受注比率×平均単価に分ける考え方=どの変数が動いたかを追うための骨格3

自社の過去データが揃っていない段階では上から2番目以降の材料に頼ることになりますが、1回の会期を記録に使えば、以降は最上段の自社数値へ切り替えられます。

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要点の整理

基準
比較の対象 紙の注文書運用と、会場で受注を確定できる運用。持ち帰りになっていた商談がどれだけ当日確定に変わるかを起点に置く
試算の骨格 受注額=商談した取引先の数×受注比率×平均単価。どの変数が動く想定かを一行で説明できる形にする
変数の出どころ 自社の紙運用時の実績を第一候補にする。他社の公開値は計算の型と桁感を借りる物差しにとどめる
費用の分母 出展費用だけでなくシステムの導入・運用費用も含めたか。受注額ベースと粗利ベースを併記する
判定の時期 同じ規模・同じ商材の会期を2回以上。1回目は運用を立ち上げる会期と位置づける
記録する指標の定義 商談社数の数え方を会期間で揃える。定義がぶれると比率の上下が解釈できなくなる

稟議に載せる試算表は、数字そのものよりも前提の書き方で通るかどうかが分かれます。他社の単発データを使わずに自社の条件で組み立てる部分は、外から見た確認があると抜けを減らせます。 想定している会期の規模と商材をもとに、当日確定の余地がどの程度あるか、記録すべき指標をどう定義するか、判定までにどれだけの会期を見込むかを一緒に確かめられます。

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よくある質問

展示会受注システムの費用対効果は、導入後どのくらいの期間で判断すればよいか

暦の月数ではなく、会期の周期で考えることになります。
同じ規模・同じ商材の会期を2回以上重ね、指標を同じ条件で並べたときに比較が成り立つという整理があり3、1回目は運用の習熟が進む途中で数字が準備の質に引きずられるためです3
年1回の展示会に出展しているなら判定までに2年、年2回なら1年が目安になります。
稟議の段階で判定時期を明記しておくと、1回目の結果だけで打ち切られる事態を避けられます。

紙運用時の実績データが手元にない場合、試算はどう進めればよいか

実績として確実にあるのは、展示会経由の受注額の合計と、注文書の枚数から数えられる受注件数です。
この2つから平均単価は計算できます。
不足するのは商談した取引先の数と受注比率なので、そこだけを仮置きの幅として示し、次回の会期で実測すると稟議に書く形が現実的です。
次回の会期では、商品説明まで進んだ社数と、注文書を渡したが持ち帰りになった件数を控えておけば、2回目以降の基準値になります。
記録を始めるのはシステム導入前の会期が望ましく、導入後だけのデータでは比較する相手がいません。

出展する展示会の規模や業種が毎回異なる場合、試算モデルはどう使えばよいか

受注額を取引先数×受注比率×平均単価に分ける骨格は、規模が変わっても使えます3
変わるのは各変数の値のほうです。
小間数が違えば商談できる取引先の数が変わり、来場者層が違えば受注比率も平均単価も動きます。
ですから、規模の異なる会期同士で受注額の総額を比べるのではなく、変数ごとに比べる。
たとえば1小間あたりの商談社数や、商談1件あたりの受注比率のように、規模で割った指標にすると条件差を吸収できます。
公開されている段階別比率も、1小間出展という条件つきの実績であり、条件が違えば変動しうるとされています1

商談化率や受注率が想定より低かった場合、どこを見直せばよいか

まず、指標の定義が会期間で同じだったかを確認します。
商談した取引先の数を名刺交換した全社と数えた会期と、商品説明まで進んだ社数と数えた会期では、分母が違うため比率は当然ずれます。
定義が揃っているなら、次に見るのは会場での運用です。
商品マスタの登録が間に合っていたか、スタッフが操作に慣れていたか、通信環境が安定していたか。
これらが崩れると、当日確定できたはずの商談が紙での持ち帰りに戻ります。
そのうえで、受注額は商品構成・出展規模・来場バイヤー数によっても変わるとされており3、来場者数自体が前回より少なかった会期であれば、比率ではなく母数の問題です。

他社が公開している受注率をそのまま自社の試算に入れてよいか

入れないほうが安全です。
公開されている段階別の比率は1社・1展示会の単発データであり、業種・出展位置・装飾・運営体制などの条件によって変動しうると公開元自身が明記しています1
また、その受注率20.0%は後日フォローを経て受注に至る流れを前提にした数字であり1、会場での当日確定を想定する試算とは時間軸が異なります。
他社の数字は、自社の値が桁として極端にずれていないかを確かめる物差しとして使い、試算表に入れる値は自社の実績から取るという順番を保ってください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. 1 出典:株式会社イムーヴ(シン・セールス総合研究所)「BtoB展示会「1小間出展」におけるリード獲得から受注に至る各段階の比率の検証——投資対効果の試算」(2025年)
  2. 2 出典:リンクストラテジー株式会社「BtoB展示会、出展回数を重ねている企業ほど成果を実感!出展経験の蓄積が成果の捉え方に影響【リンクストラテジー調査】(マナミナ掲載)」(2025年)
  3. 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「展示会受注システムの効果|受注額への影響と測り方」(2026年)

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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