◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 5階層までの組織階層で卸価格を切り替えられれば、本社・支店・特約店の条件を一件ずつ作り直す手間がなくなります2
- 10000件の取引先を抱えても、掛け率を得意先ランクへ持たせておけば、更新は一行で済みます3
- 20万円の初期費用で始まる標準的なプランの範囲でも、ランクと階層の運用は組めます4
- 30000SKUの商品を扱う規模でも、掛け率をランクへ寄せておけば、価格の登録は商品数に比例して増えません3
目次

BtoB-EC拡大と卸価格管理の複雑化
卸価格とは、取引先ごとの取引条件に応じて設定する仕入れ価格のことです。基本的な考え方は卸価格の用語解説で解説しています。卸価格は、得意先ランクで掛け率を決め、組織の階層で上位の条件を引き継ぐ二段構えにすると、取引先ごとの個別設定が減ります。例外は商品と取引先の組み合わせへ指値で置き、階層の付け替えは所属の登録を変えるだけで済ませます。
市場規模とEC化率の推移
企業間の取引は、電話と紙の注文書から、画面上の受発注へ移りつつあります。移ったのは注文の受け口だけではなく、価格をどこに置くかという問題も一緒についてきました。取引先ごとの卸価格を「営業担当の頭の中」に置いたままでは、画面に出す値が決まりません。
企業間の取引が「どこまで画面へ移ったのか」は、市場の数字にも表れています。
43.1%は、国の市場調査が示した企業間取引の電子化の割合で、2024年の値です1。同じ調査は市場規模を514兆4069億円としており、取引の相当な部分がすでに画面を通っています1。取引の半分近くが画面へ移れば、価格表のほうも「担当者に聞けば分かる」では追いつきません。
取引先ごとの価格差がもたらす管理負荷
夕方の営業所で、担当者が卸価格の一覧表を印刷します。手に取った紙はまだ温かく、そこへ赤ペンで特約店ごとの掛け率を書き足していきます。「本社と同じ条件にしてほしい」という電話が一本入るたびに、書き足す行が増えます。翌朝には別の担当者が別の一覧表を印刷し、どちらが最新かが曖昧になります。
取引先の数が増えると、この「書き足し」は人手の限界に触れます。
3000社という2020年時点の販売加盟店数を抱える規模では、一件ずつ掛け率を確かめる手順が成り立ちません5。3800品種を扱う法人向け販売サイトでは、価格の組み合わせが加盟店の数だけ枝分かれします。2018年の時点で、これだけの品種を一つのサイトで売っていました5。一覧表の「版」が分かれた瞬間、どれが正しい卸価格なのかが分からなくなります。
その一覧表を刷り直して「行を書き足す」時間は、そのまま担当者の人件費として毎月の費用に積み上がります。
得意先ランクと組織階層による卸価格の切り替え
ランク別の掛け率設定
卸価格を取引先ごとに一件ずつ持つか、得意先ランクごとにまとめて持つか。設定の手間は、この分かれ道でほぼ決まります。取引先ごとに持てば、条件が変わるたびに、その取引先の行を開いて直す作業が発生します。ランクごとに持てば、「Aランクの掛け率」という一行を直すだけで、属する取引先へ一度に反映します。
扱える上限の数を見ると、「一件ずつ」という方式の無理がはっきりします。
10000件の取引先を一つのサイトで扱える仕組みでは、その一件ずつに価格を登録する運用は現実味を失います3。2026年時点で公表された有料プランの上限で、担当者が一日に見直せる行数とは桁が違います。ランクの数を増やすことより、「どの取引先がどのランクか」を決めることのほうが、作業としては早く終わります。
組織階層に応じた卸価格の切り替え
得意先ランクだけでは、本社と支店で条件が食い違う場面を捌けません。本社との契約で決めた掛け率を、支社や支店、その先の特約店がそのまま引き継ぐ形にすれば、下位の登録を作り直さずに済みます。引き継ぎの向きを「上から下へ」と決めておけば、新しい支店が増えても、所属先を指定するだけで価格が決まります。組織の形が変わった時に直すのは価格ではなく、所属の登録だけになり、残る例外は指値で上書きします。
5階層までの入れ子であれば、本社・支社・支店・特約店といった並びを、そのまま価格の引き継ぎに使えます2。これは2026年時点である受発注サービスが対応できる上限として示された数で、業界で標準とされる段数ではありません。自社の組織図を開いて、「価格の条件が変わる段」がいくつあるかを数えてみてください。
その段数を数えないまま一件ずつの設定を続けた先で、階層を「作り直す」時に向き合うのが、1500万円からという大規模な作り込みの初期費用です4。
掛け率設定と個別指値の使い分け
グループ単位の掛け率
掛け率はグループへ、指値は一件へ。使い分けの原則は、この一言にほぼ収まります。同じ条件で買う取引先をグループにまとめ、そこへ掛け率を一つ与えれば、更新は一行で済みます。グループは「地域」ではなく「取引条件」で切るほうが、後から崩れにくくなります。取引条件が同じなら、北の代理店と南の代理店が同じグループに入っていても差し支えありません。
グループを作る時は、値そのものではなく、値が決まる理由を書き残してください。「年間の取引量が一定以上」「専売の契約がある」といった条件が残っていれば、担当者が代わっても判断が揺れません。条件を書かずに掛け率だけを残すと、数年後に「なぜこの取引先だけ安いのか」を誰も説明できなくなります。
商品・取引先別の個別指値
例外は多くの場合に生じます。特定の商品だけ別の価格を約束した、あるいは一社だけ長期の契約で据え置いた、といった事情です。「この商品だけは据え置きで」という口約束で置かれた例外は、置いた本人だけが覚えていることがあります。こうした例外をランクへ吸収させようとすると、その取引先のためだけのランクが増えていきます。
その例外の置き場である指値も、増やすほど全体が見えにくくなります。
50件までの取引先を登録できる無料の枠を使えば、指値を何件まで抱えられるかを実際に確かめられます3。2026年時点の条件で、主要な取引先だけを入れて動かすには足りる数です。指値の一覧を印刷して「一枚に収まるか」を目安にすると、例外の量が見えてきます。
料金プランと卸価格階層の対応範囲
標準プランでの掛け率運用
階層と掛け率の運用を始めるのに、必ずしも作り込みは要りません。用意されている得意先ランクとグループの機能で足りるなら、標準的なプランの範囲で運用できます。分かれ目は、扱う商品数と取引先数が上限に収まるか、そして基幹システムとの連携が要るかどうかで、「すでにある機能で足りるか」を先に確かめます。
「いくらから始まるのか」は、最初に押さえておきたいところです。
20万円が、標準的なプランの初期費用として示されている金額です4。2026年時点の条件で、月々の利用料とは別に一度だけかかります。30000SKUまでの商品を扱えるため、品種の多い卸売でも「まず標準の範囲で組めるか」を試す値打ちがあります3。
大規模カスタマイズでの階層拡張
階層の考え方そのものが標準と違う場合は、作り込みの話になります。たとえば階層ごとに締め日が変わる、あるいは同じ取引先が二つの階層に属する、といった事情です。こうした要件は運用の取り決めで吸収できることも多く、先に「本当に仕組みを変える必要があるのか」を確かめる値打ちがあります。
1500万円からという初期費用の下限は、大規模な作り込みを選んだ場合の入口です4。標準的なプランの初期費用とは大きく開きがあり、決裁の通し方も変わります。階層を増やすためだけにこの金額を払うのか、ランクと指値の組み合わせで凌ぐのか、先に「どちらが安く済むか」を机上で並べて比べてください。
ここから先は、代理店網の広さと契約しているプランごとに、「階層をどう組むか」と費用の見方を詳しく見ていきます。

階層の段数と取引先の数が標準的なプランの範囲に収まるかどうかは、自社の組織図と取引先一覧を並べて初めて判断できる事柄です。
扱う商品数と取引先数、そして価格の条件が変わる段の数を伝えれば、作り込みへ進まずに運用の取り決めで吸収できる範囲がどこまでかを洗い出せます。無料相談で要件を整理する
階層設定の前に決めておく取り決め
- 得意先ランクへ掛け率を持たせ、組織階層で上位の条件を引き継ぐ二段構えにする
- 例外は商品と取引先の組み合わせへ指値として置き、得意先ランクへ混ぜない
- 階層が変わった時に直すのは価格ではなく、取引先の所属の登録だけにする
- グループを切った条件を文章で書き残し、掛け率の数字だけを残さない
- 仕組みを作り替えるか、運用の取り決めで吸収するかを、費用の桁で先に分ける
この並びに優劣の順序はありません。
同じ取り決めでも、販売網の広さと契約しているプランによって、実際の組み方は変わります。

条件別に見る卸価格の階層の組み方
| 読み手の条件 | 卸価格の決め方 | 階層が変わった時に直す場所 |
|---|---|---|
| 全国に販売網を広げるメーカー | 本社の掛け率を支店と特約店が引き継ぐ | 取引先の所属の登録 |
| 標準プランで卸売を営む事業者 | 得意先ランクの掛け率に少数の指値を重ねる | ランクの割り当て |
全国代理店網の階層価格
加盟店が全国へ広がると、価格の条件は取引の量だけでは決まりません。地域ごとの販売会社が間に入り、その下に小売店が連なる形になります。同じ商品でも「どこから買ったか」で仕入れ値が変わり、通る経路の数だけ価格が要ります。
3000社の加盟店を抱える規模では、階層の段数を数えるより先に、商品が通る経路の種類を数えるほうが実務に効きます5。販売会社を経由する経路と直接卸す経路の両方で同じ商品が動くなら、価格は経路ごとに要ります。3800品種を扱うなら、「経路を絞る」ことがそのまま設定の量を絞ることにつながると見られます5。
まず本社・地域販売会社・特約店・小売店という並びを紙へ書き出し、そのうえで掛け率を置く段を決めてください。下の表のように、段ごとに「更新のきっかけ」まで書いておくと、組織が変わった時に誰が何を直すかが決まります。経路ごとの例外は、得意先ランクへ戻さず指値として残します。
難易度は高く、価格そのものを決めるより、取引先の「所属の洗い直し」に工数がかかります。
| 階層 | 価格の決め方 | 更新のきっかけ |
|---|---|---|
| 本社 | 基準となる掛け率を置く | 契約条件の見直し |
| 地域販売会社 | 本社の掛け率を引き継ぎ、地域の条件を上書きする | 販売会社の新設と統合 |
| 特約店 | 上位の掛け率をそのまま引き継ぐ | 所属の変更 |
| 小売店 | 特約店の条件を引き継ぎ、例外は指値で置く | 個別契約の締結 |
販売会社と特約店が幾重にも重なる代理店網では、商品が通る経路が自社の組織図だけでは見通せず、同じ規模で階層価格を運用している事例と突き合わせる必要があります。
加盟店の数と経路の種類を持ち込めば、階層の引き継ぎだけで足りるのか、経路ごとの指値が要るのかを見極められます。無料相談で自社の条件を持ち込む
標準プラン運用の卸価格
取引先の数が限られる卸売では、階層は浅いまま収まります。本社と支店を分けて持つ必要がなく、得意先ランクだけで大半が片づく場面もあります。ここで作り込みの見積もりから入ると、「使わない階層」に費用を払うことになります。
判断の手がかりは、階層の段数ではなく、例外として置いた指値の件数です。50件までの取引先を登録できる無料の枠は、その例外の量を測るのにちょうどよい大きさです3。主要な取引先を入れてみて、指値が「数えられる範囲」に収まるなら、標準的なプランの運用で足ります。
まず取引先を「同じ条件で買う集まり」へ分け、その集まりへ掛け率を一つずつ置いてください。残った例外だけを指値として登録すれば、更新の手間は集まりの数に収まります。難易度は低く、工数の大半は取引先をどの集まりへ入れるかを決める話し合いに費やされます。
| 決めること | 標準プランでの置き方 | 見直すきっかけ |
|---|---|---|
| 掛け率 | 得意先ランクごとに一つ置く | 契約条件の改定 |
| 例外の価格 | 商品と取引先の組み合わせへ指値で置く | 個別の約束が増えた時 |
| 階層 | 本社と支店を分ける必要が出た時だけ足す | 組織の再編 |

取引先の数が限られる卸売では、作り込みの見積もりを取る前に、いまの得意先ランクと指値の組み合わせで何件まで捌けるかを確かめるほうが先になります。
手元の取引先一覧と例外の件数を見せれば、無料の枠で試す順序と、有料のプランへ移す時期の目安を持ち帰れます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 決める場面 | 選ぶ基準 |
|---|---|
| 掛け率をどこへ持たせるか | 取引条件が同じ取引先を一つの集まりにまとめられるかどうか |
| 階層をいくつ持つか | 自社の組織図で価格の条件が変わる段の数 |
| 例外をどう扱うか | 指値の一覧が印刷して一枚に収まる件数かどうか |
| 標準的なプランで足りるか | 商品数と取引先数が上限に収まり、基幹システムとの連携が不要かどうか |
| 作り込みへ進むか | 運用の取り決めで吸収できない要件が残っているかどうか |
卸価格の階層は一度決めると組織の変更のたびに影響が及び、迷ったまま設定を始めると後戻りの手間が大きくなります。 得意先ランクの分け方と階層の段数を自社の組織図へ当てはめた形で示してもらえば、いまの運用に合うかどうかをその場で判断できます。
よくある質問
得意先ランクは何段階まで作るのが妥当ですか
段階の数に決まった正解はありません。まず、掛け率が実際に異なる取引先を集まりへ分け、その数を数えてください。ランクを増やすほど「どのランクへ入れるか」の判断が増えます。例外は指値へ逃がし、ランクは口頭で説明できる数に抑えるほうが、担当者が代わっても運用が続きます。
本社と支店で掛け率が違う場合はどう設定しますか
本社の契約で決めた掛け率を基準に置き、支店ではその値を引き継いだうえで、差がある部分だけを上書きします。支店ごとに一から価格を組み直すと、本社の条件が変わるたびに全支店を直すことになります。「上から下へ引き継ぐ」という向きを先に決めておくと、支店が増えても作業は所属の指定だけで済みます。
取引先が増えるたびに卸価格を作り直す必要はありますか
得意先ランクと組織階層で価格を持っていれば、新しい取引先に必要なのは「どのランクの、どの階層に属するか」を指定する作業だけです。価格そのものを新しく作るのは、既存のどの条件にも当てはまらない取引先が出た時に限られます。その場合も、まず新しいランクを作るのか、指値で凌ぐのかを先に決めてください。
企業間取引の電子化はどこまで進んでいますか
冒頭で触れた43.1%という電子化の割合は、国の市場調査が示した企業間取引の値です1。受注の入り口が画面へ移るほど、価格は担当者の手元ではなく画面の側に置く必要が出ます。自社の受注のうち、電話と紙で入る割合が何割あるかを、直近一年分で数えてみてください。
標準的なプランと作り込みのどちらを選べばよいですか
扱う商品数と取引先数が用意された上限に収まり、基幹システムとの連携が要らないなら、標準的なプランで組めます。階層の考え方そのものが標準と噛み合わない場合だけ、作り込みが視野に入ります。初期費用の開きは大きいため、運用の取り決めで吸収できる要件がどれだけ残るかを先に洗い出してください。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える(EC-Riderお役立ちコラム)」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider Primo サービス紹介ページ・料金プラン条件」(2026年) 経路
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider(BtoB EC受発注システム)料金プラン・費用ページ」(2026年) 経路
- 5 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社)」(2026年) 経路
画像の出典元
- A multi-ethnic group working together at a desk with laptops/Photo by Thirdman on Pexels
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- A diverse group discussing ideas in a modern office setting,/Photo by Edmond Dantès on Pexels
- Two colleagues in a professional meeting discussing business/Photo by MART PRODUCTION on Pexels