◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 支払期日の起点は原則として受領日で、検収の長さ、請求書の遅れ、翌月納入扱いの合意によって期日は延びない。
- 支払期日は受領後60日以内の特定した日で定め、定めがなければ受領日が期日とみなされるため、支払条件の空欄が最初の点検対象になる。
- 手形払は2026年1月1日以降の発注で禁止され、電子記録債権・一括決済の手数料差引きや、現金払への切替時の割引料差引きは避ける。
- Excelかシステムかは、実際の発注データから受領日・期日・支払手段・控除を再現できるかと、受領日の転記がどれだけあるかで判断する。
- 修正は対象の確定、受領日と支払条件の是正、支払手段と控除の見直し、書式・記録・システムへの反映の順に進め、協議は早めに始める。
目次

自社の発注は取適法の対象か:旧下請法からの変更点で入口を判断する
取引先から納品を受け、検収を終え、請求書が届いてから月末で締めて支払う。
その流れのどこから支払期日を数えているのかと聞かれて、すぐに答えられない担当者は少なくありません。
取適法では、支払期日の起点は検収日でも請求書の到着日でもありません。
原則は受領日で、受領後60日以内の特定した日に支払う必要があります2。
手形払は2026年の施行以降の発注から禁止されています3。
電子記録債権の手数料を代金から差し引く払い方も、支払遅延になり得ます2。
Excelかシステムかを選ぶのは後にします。
先に、受領日から期日を算出できるか、支払手段と控除が法令に沿っているかを点検し、足りない管理項目から直すのが近道です。
2026年1月1日施行と主な変更点
取適法(中小受託取引適正化法)は、下請法を改正した法律で、2026年に施行され、現在適用されています1。
公正取引委員会のQ&Aでは、発注する側を委託事業者、仕事を受ける取引先を中小受託事業者と呼んで説明しています。
受発注の運用を見直すときも、自社が委託事業者の立場で発注書を出し、受領し、代金を支払う流れを点検することになります。
改正で加わった点のうち、受発注の運用に直接響くものは大きく三つあります。
一つ目は、どの取引先との取引が対象になるかという入口の判定です。
二つ目は、手形払等の禁止で、支払手段の設定に関わります1。
三つ目は、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止で、単価を決める過程の記録に関わります1。
このほか、面的執行の強化として、事業所管省庁でも指導・助言ができるようになりました1。
従業員基準と特定運送委託の追加
旧下請法の運用で、資本金の区分を見て対象かどうかを判断してきた会社では、取引先マスタに資本金だけが登録されていることがあります。
取適法では適用基準に従業員基準が加わったため、資本金だけを見て対象外と整理した取引先が、従業員数によっては対象に入る場合があります1。
人数や資本金の具体的な区分、取引の種類との組合せは、公正取引委員会のガイドブックやリーフレットに示されています。
取引先マスタを見直すときは、その資料の区分表に自社と取引先の数値を当てはめて判定します。
従業員数は資本金と違い、登記などで一律に確かめられる情報ではありません。
取引先から申告を受ける、確認の書面をやり取りするなど、確認の仕方そのものを決める必要があります。
どう確認し、どこに残すかは、発注時の明示や記録と合わせて後の節で扱います。
もう一つの追加は、特定運送委託です1。
自社が荷主として運送を委託する取引が対象に加わったことで、点検の範囲が購買部門の発注だけでは足りなくなります。
物流の委託は物流部門や拠点が直接手配し、受発注システムとは別の帳票や請求書ベースで支払っている会社もあります。
支払期日の点検を始める前に、運送の委託がどの部署から、どの手段で発注されているかを洗い出しておくと、後から対象漏れに気付く事態を避けやすくなります。
対象外のときの次の整理
区分表に当てはめて対象外と判断した取引には、この記事で扱う受領日起算の支払期日や手形払の禁止は、取適法の規定としてはかかりません。
ただし、判定はその時点の資本金・従業員数・取引内容に基づくものです。
取引先の規模が変わったり、委託する内容が変わったりすれば、判定も変わり得ます。
そこで、対象外とした取引先についても、判定した日、使った数値、確認の方法を取引先マスタに残しておくことを勧めます。
新規取引の開始時、取引内容を変えるとき、定期的な見直しの時期といった、再判定のきっかけを決めておくと運用が続きます。
対象と対象外の取引先が混在する場合、支払条件を二通りに分けて管理すると、マスタの設定や支払処理の分岐が増えます。
取引件数や取引先の入れ替わりが多い会社では、全取引を受領日基準・特定日払いで揃えるほうが、分岐による設定ミスを減らせる場合があります。
どちらが扱いやすいかは、対象外の取引がどれだけあり、支払条件をどこまで個別に設定しているかで変わります。
| 改正で加わった点 | 発注側の実務で関わる場面 |
|---|---|
| 適用基準に従業員基準を追加 | 取引先マスタでの対象・対象外の判定 |
| 対象取引に特定運送委託を追加 | 自社が委託する運送の発注と支払 |
| 手形払等の禁止 | 支払手段の設定と支払条件 |
| 協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止 | 単価改定と協議の経過の記録 |
| 事業所管省庁での指導・助言 | 運用を記録で説明できるかどうか |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先の規模
- 資本金に加えて従業員基準で再判定する
- 従業員数は確認の仕方を決める
- 取引の種類
- 特定運送委託が対象に加わった
- 物流部門の発注と支払手段を洗い出す
- 対象外とした取引
- 判定日・使った数値・確認方法を残す
- 再判定のきっかけを決めておく
支払期日は何を起点に決まるか:検収・締め・請求書受領とのずれ
起点は受領日、期日は特定した日で定める
対象と判定した取引では、支払期日の起点は原則として納品された時点、つまり受領日です2。
委託事業者は、受領後60日以内のどこかに支払期日を定め、その日までに代金を支払います2。
ここでいう期日は、日付として特定できるものでなければなりません。
公正取引委員会のQ&Aでは、「納品後○日以内」という定め方は日が特定できないため認められないとしています2。
一方、「毎月末日納品締切、翌月○日支払」という締め払いの形は認められています2。
締め日と支払日を決める運用そのものは使い続けられるということです。
締め払いで注意したいのは、締め期間の中で受領が早い品ほど、支払までの日数が長くなる点です。
月末締めなら、月の初めに受領した品が最も長く待つことになります。
支払条件が受領後60日以内に収まるかは、締め期間の最初の日に受領した品で数えて確かめます。
翌々月払いのように締めから支払までが長い条件では、締め期間の早い時期に受領した品が60日を超えやすくなります。
もう一つ見落とされやすいのが、支払期日を定めていない取引です。
期日を定めなかった場合、受領日が支払期日とみなされます2。
取引先マスタの支払条件が空欄のまま発注している取引や、発注書に期日の欄がない取引は、受領したその日に払っていなければ遅れている扱いになります。
システム担当者にとっては、支払条件の空欄を洗い出すことが最初の点検になります。
検収が長引くとき
仮の例で考えます。
金属部品の加工を取引先に委託している会社で、ある月の上旬に部品が納品されたとします。
品質部門の検査が混み合い、検収が完了したのは翌月に入ってからでした。
社内の購買システムには、検収完了の日付が「受領日」として登録され、支払予定はそこから計算されています。
この運用では、システム上の支払予定日が、実際の受領日から数えた期日より後ろにずれます。
公正取引委員会のQ&Aは、検査をするかどうかにかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに支払うとしています2。
検収が長引いても、期日は延びません。
例外は、検収の時点で受領とする事前の合意がある場合で、その場合は検収の時点が起算日になります2。
この扱いは合意があることが前提で、社内の都合で検収日を起点にしてよいという意味ではありません。
自社の取引がこの例外に当たるかどうか迷う場合は、合意の書面を確かめたうえで、個別に公正取引委員会などの所管官庁に確認するのが確実です。
システムの面では、受領日と検収日を別の項目として持ち、期日の計算にどちらを使っているかを取引先ごとに説明できる状態にしておくことが要になります。
一つの日付欄に、ある取引先では納品日を、別の取引先では検収日を入れているような運用があると、後から点検しても起点の誤りを見つけられません。
請求書が遅れるとき
先ほどの部品の例で、取引先からの請求書が届いたのは、検収よりさらに後だったとします。
経理の支払処理が「請求書を受け取った月の締めで、翌月に支払う」という設定になっていると、支払予定は請求書の到着日から組み立てられます。
受領日から数えると、60日を超えてしまうことがあります。
公正取引委員会のQ&Aは、請求書の提出の有無にかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに支払うとしています2。
請求書が遅れたことは、期日を延ばす理由になりません。
問題は、請求書が届かないと支払データが作られない処理の構造にあります。
受領日の時点で支払期日を確定させ、期日が近いのに請求書が届いていない取引を一覧で拾える形にしておけば、取引先への確認を期日前に行えます。
請求書の到着を待って処理を始める流れから、受領日を起点に支払予定を先に立てる流れへ、データの入り口を移すことになります。
翌月納入扱いの合意があるとき
月末近くに届いた品を、取引先との合意で翌月分の納入として扱う運用もあります。
会計上の計上月をそろえる目的で行われることが多い処理ですが、公正取引委員会のQ&Aは、翌月納入扱いの合意があっても受領日から60日以内に支払うとしています2。
会計の計上月と、法令上の受領日は別の情報として扱う必要があります。
システム上で受領日の欄を計上月に合わせて書き換えると、期日の点検に使える実際の受領日が失われます。
計上月は別の項目で管理し、受領日は実際に受け取った日のまま残すのが安全です。
なお、物品ではなく役務の委託では、役務を提供し終えた日が起算日になります2。
同じシステムで物品と役務の両方を発注している場合は、受領日の欄が取引の種類ごとに何の日付を意味するのかを定義しておくと、入力する人による解釈のぶれを防げます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 起点になる日
- 受領日(原則)
- 検収時点を受領とする事前合意があれば検収の時点
- 起点にならない日
- 検収が長引いた場合の検収日
- 請求書の到着日
- 翌月納入扱いにした場合の計上月
- 期日の定め方
- 受領後60日以内の特定した日
- 定めがなければ受領日が期日とみなされる
手形・電子記録債権・一括決済:支払手段の変更で起きる落とし穴
手形払の禁止と適用時期
支払期日の起点を受領日にそろえても、支払手段が期日の意味を変えてしまうことがあります。
まず手形です。
手形による支払の禁止は、2026年の施行以降に発注する取引に適用されます3。
区切りになるのは発注日です。
納品日や支払日がいつかではなく、いつ発注したかで判定します。
システムでは、発注日と支払手段を同じ発注データの中で結び付けておくと、施行後に発注した取引に手形が設定されていないかを一覧で確かめられます。
施行前に発注した取引で手形を使っている場合も、期日との関係は残ります。
公正取引委員会のQ&Aは、手形について満期日を支払日として扱うとしています2。
手形を振り出した日ではなく満期日が支払日になるため、満期日が支払期日より後になっていないかを確かめる必要があります。
電子記録債権・一括決済で支払遅延になる形
手形の代わりに検討されることが多いのが、電子記録債権(電子的な記録によって発生・譲渡される金銭債権)と、一括決済方式(金融機関などが間に入って取引先への支払を行う方式)です。
どちらも使えなくなったわけではありませんが、満期と手数料の扱い次第で支払遅延になります。
一つは満期の問題です。
満期日が支払期日より後で、中小受託事業者が期日までに代金を得るには割引を受ける必要がある場合、通常は支払遅延になるとされています2。
期日に債権を渡していても、取引先が現金を受け取れるのが期日より後であれば、期日に払ったことにはなりません。
もう一つは手数料です。
電子記録債権などの手数料を代金から差し引くことは、取引先との合意の有無にかかわらず支払遅延になるとされています2。
「取引先が了承しているから」という理由は通りません。
たとえば、債権を発生させるときに利用料相当額を差し引いた金額で記録している運用があれば、見直しの対象になります。
Q&Aには、事前の合意や手数料の補填といった条件によって扱いが分かれる問い(Q82)もあります。
自社の決済の形がどれに当たるかは、満期日・手数料の負担者・割引の要否を自社の契約で確かめたうえで、Q&Aの該当箇所と照らし合わせて判断します。
現金払への切替で割引料を引くと別の違反になる
手形や長い満期の債権をやめ、現金の振込に切り替える会社もあるでしょう。
このとき、支払を早めることで生じる自社の負担を、取引先への代金から差し引きたくなる場面があります。
公正取引委員会は、現金払へ変更して代金から割引料を減じて支払うことは減額として違反になるとしています3。
Q&Aでも、現金払であっても割引料を差し引くことはできないとしています2。
また、一方的に振込手数料相当額を引き下げて代金額を定めることは、買いたたき等に該当するおそれがあるとされています3。
支払手段の切替をきっかけに価格を見直すこと自体を、ここで一律に否定しているわけではありません。
問題になるのは、割引料を差し引くことと、協議を経ずに一方的に代金を決めることです。
改正点にも、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止が含まれています1。
価格の話をする必要があるなら、取引先と協議し、その経過を残す形で進めることになります。
| 支払手段 | 支払遅延や違反になり得る形 | 点検するデータ |
|---|---|---|
| 手形 | 2026年1月1日以降に発注した取引で使う | 発注日と支払手段 |
| 手形(施行前の発注分) | 満期日が支払期日より後になっている | 満期日と支払期日 |
| 電子記録債権・一括決済 | 満期日が支払期日より後で取引先に割引が必要 | 満期日と支払期日 |
| 電子記録債権・一括決済 | 手数料を代金から差し引く(合意があっても) | 支払時の控除項目 |
| 現金払への切替 | 割引料を差し引く・振込手数料相当額を一方的に引き下げて代金を決める | 控除項目と単価改定の履歴 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 手形
- 2026年1月1日以降の発注では使えない
- 施行前の発注分は満期日が支払日になる
- 電子記録債権・一括決済
- 満期日が期日より後で割引が必要だと支払遅延
- 手数料を代金から差し引くと合意があっても支払遅延
- 現金払への切替
- 割引料を差し引くと減額になる
- 振込手数料相当額を一方的に引き下げると買いたたき等のおそれ
発注時の明示と記録:システムに持たせるべき情報
電子記録債権・一括決済を使うときの追加の明示・記録
ここまでで、期日をどう数えるか、どの支払手段に何が問題になるかが整理できました。
次は、それを発注書と取引の記録にどう残すかです。
取適法には、発注時に取引条件を取引先へ明らかにする明示(4条)と、取引の内容を記録として作成する記録(7条)の定めがあります。
公正取引委員会は、代金の支払に一括決済方式や電子記録債権を使う場合、この4条の明示と7条の記録で新たに明示・記録すべき事項があるとしています3。
具体的な項目は、公正取引委員会の留意事項のページに図で示されています。
自社の発注書や記録の様式を直すときは、そのページの図を見ながら、現在の様式にない項目を一つずつ照らし合わせます。
システムの要件として考えると、支払手段によって発注書に載せる項目が変わるという点が重要です。
発注書のテンプレートが支払手段を問わず一つしかない場合、電子記録債権や一括決済を使う取引だけ項目が足りない状態になり得ます。
支払手段を発注データの項目として持ち、その値に応じて明示と記録の項目を切り替えられるかが、既存の仕組みで足りるかを判断する一つの目安になります。
記号による明示(EDI等)の条件
EDI(企業間で発注などのデータを電子的にやり取りする仕組み)では、支払条件や取引の種類を記号やコードで送ることがよくあります。
公正取引委員会のQ&Aは、記号による明示について、各記号の意味を書面または電磁的方法で事前に明示すれば可能としています2。
実務では、コード表を作って取引先に渡しただけで終わり、その後コードを追加したり意味を変えたりしても、取引先に改めて示していないことがあります。
どの版のコード表を、いつ、どの取引先に示したかを記録しておくと、発注データの記号が何を意味していたかを後から説明できます。
支払条件のコードを変えるときは、コード表の改版と取引先への提示をセットの作業にしておくのが現実的です。
協議・従業員数確認の記録
取引先の従業員数の確認や、代金をめぐる協議の経過については、記録に残る方法で行うことが望ましいとされています2。
電話や対面の打合せだけで単価を改定すると、どのような協議を経て決まった価格なのかを後から説明しにくくなります。
システムに持たせる情報としては、取引先マスタに従業員数の確認日と確認方法を、単価の改定履歴に協議の日付・相手・内容の要旨・合意した内容を結び付ける形が考えられます。
前の節で触れた、支払手段の切替に伴う価格の協議も、この単価改定の履歴に残ることになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先マスタ
- 従業員数の確認日と確認方法
- 発注書と発注データ
- 支払手段を項目として持つ
- 支払手段に応じて明示・記録の項目を切り替える
- コード表
- どの版をいつ、どの取引先に示したかを記録する
- 単価の改定履歴
- 協議の日付・相手・内容の要旨・合意した内容
Excel・メール・システム:期日を守る観点で何を管理できればよいか
管理すべき項目の一覧
ここまでの内容を管理の観点でまとめ直すと、期日を守れるかどうかを決める項目は次の四つに整理できます。
・受領日:検収日や請求書の到着日、計上月とは別に、実際に受け取った日
・特定日の支払期日:受領日から60日以内に収まる、日付として特定できる期日
・支払手段:手形を新規の発注に使っていないか、満期日が期日より後になっていないか
・割引料・手数料の扱い:代金から差し引いていないか
これに加えて、明示・記録と協議の履歴は、期日を守った運用であることを後から説明するための項目です。
前者の四つが欠けると期日そのものを誤り、後者が欠けると正しく運用していても説明できない、という違いがあります。
この整理は公正取引委員会の資料をもとにした編集上のまとめで、特定の製品の機能を前提にしたものではありません。
取引件数・担当者数で見る比較
表に順位を付けていないのは、どの手段が足りるかが、自社の取引件数と、受領から支払までに関わる人の数で決まるからです。
判断が分かれるのは、主に受領日の記録と期日の算出の二つです。
Excelとメールで足りるのは、取引先と件数が限られ、受領から支払までを同じ担当者が見渡せる場合です。
納品を受けた人と支払を組む人が同じなら、受領日を書き留めた表から期日を計算し、請求書の到着を待たずに支払予定を立てることができます。
件数が増え、現場が受領し、購買が発注し、経理が支払うという分担になると、受領日は現場から購買へ、購買から経理へと転記されます。
転記のたびに、検収日や請求書の日付と取り違える機会が生まれます。
この段階では、受領日を入力する場所を一か所に決め、その値を期日の計算まで書き換えずに使える仕組みが必要になり、既存システムの項目追加か、受発注システムの導入かという検討に進みます。
受発注システムで減るのは、主に受領日と発注内容を人が別の表へ写す作業です。
受領の登録を誰が行うのか、取引先にも使ってもらうのかによって、残る確認作業は変わります。
導入すれば期日の誤りがなくなるというより、誤りの入り込む転記の箇所が減ると考えるのが実態に近いでしょう。
既存システムの項目で足りるかの確かめ方
今の会計・購買システムで足りるかどうかは、機能の一覧を眺めるより、実際の発注データで確かめるほうが確実です。
直近の発注から、締め条件の違う取引先、電子記録債権や一括決済で支払った取引、請求書が遅れた取引、検収に時間がかかった取引を数件ずつ選びます。
選んだ取引について、システムのデータだけから、受領日、支払期日、受領日から期日までの日数、支払手段と満期日、控除の有無を再現できるかを見ていきます。
再現できない項目があれば、その項目がシステムに欠けています。
紙の納品書やメールを見なければ受領日が分からない取引があれば、そこが転記に頼っている箇所です。
欠けている項目が受領日や支払手段の欄の追加、支払条件マスタの修正で埋まるなら、既存システムの手直しで対応できる見込みがあります。
受領の情報がそもそも現場から入ってこない、発注と支払が別のシステムにあって結び付かないといった場合は、データの入り口から作り直す検討が必要になります。
| 管理項目 | Excel・メール | 既存の会計・購買システム | 受発注システム |
|---|---|---|---|
| 受領日の記録 | 現場からの連絡を受けて誰かが入力すれば残る | 受領日の欄があり検収日と分かれているかによる | 受領の登録を誰がどの時点で行う設計かによる |
| 特定日での期日算出 | 計算式で出せるが締め条件の変更ごとに式の修正が要る | 支払条件の設定が受領日を起点に計算するかによる | 支払条件の設定方法と起点の扱いによる |
| 支払手段の制限 | 入力の制限はかけられるが徹底は運用次第 | 支払手段を発注単位で持てるかによる | 発注日と支払手段を結び付けて持てるかによる |
| 明示・記録 | 発注書ファイルとメールが別々に残る | 発注書の出力項目を追加できるかによる | 明示項目と記録の出力形式による |
| 協議履歴 | メールやメモが個人の手元に分散しやすい | 単価改定と協議記録を結び付ける欄があるかによる | 取引先とのやり取りが発注と結び付いて残るかによる |
| 取引件数への耐性 | 件数と担当者が増えるほど転記と照合が増える | 既存の処理の流れに乗る範囲で対応できる | 取引先側がどこまで同じ仕組みを使うかにも左右される |
▼ 図の内容を文字で読む
- 種類の違う取引を選ぶ:締め条件の違う取引先、電子記録債権や一括決済、請求書が遅れた取引、検収に時間がかかった取引を数件ずつ選ぶ
- データだけで再現できるか見る:受領日、支払期日、日数、支払手段と満期日、控除の有無を再現できるか確かめる
- 欠けた項目の埋め方を判断する:欄の追加や支払条件マスタの修正で埋まれば手直し、受領の情報が入ってこない場合は入り口から作り直しを検討する
着手の順序と確かめ方:受領日の点検から書式・システム設定まで
着手順と並行できる作業
点検で見つかった修正点は、後の作業の前提になるものから順に手を付けます。
以下は編集部が提案する順序です。
1. 対象の取引先と取引を確定する。
従業員基準での再判定と、運送の委託の洗い出しを含めます。
2. 受領日の定義と支払条件を直す。
支払条件の空欄をなくし、検収日や請求書の到着日を起点にしている設定を受領日起点に改め、期日を特定した日で定めます。
3. 支払手段と控除を見直す。
新規の発注に手形が残っていないか、満期日と手数料の扱いが問題にならないかを確かめ、価格に関わる場合は取引先と協議します。
4. 明示書式・記録・システム設定に反映する。
2と3で決めた内容を、発注書の項目、コード表、取引先マスタ、支払条件の設定に落とし込みます。
1と2は並行して進められます。
受領日を何の日付とするかの定義は、取引先が対象かどうかにかかわらず決められるからです。
3のうち取引先との協議は、相手の都合もあって時間がかかるため、2を進めている間に始めておくと全体の遅れを防げます。
4を最後に置くのは、どの項目が必要かが2と3の結論で決まるためです。
変更後の確かめ方
設定を変えたら、変更前に使った確かめ方をもう一度当てはめます。
前の節で選んだ取引と同じ種類の発注を、変更後のデータから選び直して確かめるのが分かりやすい方法です。
見るべき点は次のとおりです。
・受領日から支払日までが60日以内で、支払日が特定した日になっているか
・支払条件が空欄の取引先や発注が残っていないか
・受領日の欄に、検収日や計上月の日付が入っていないか
・2026年1月1日以降の発注に手形が設定されていないか
・電子記録債権や一括決済の満期日が支払期日より後になっていないか
・支払時の控除に、手数料や割引料が含まれていないか
・単価や支払条件を変えた取引に、協議の記録が結び付いているか
一度確かめて終わりにせず、締めのたびに支払予定の一覧から期日超過や控除の有無を拾える形にしておくと、新しい取引先や担当者の交代で設定が崩れたときに早く気付けます。
指導・助言の対象が広がる点
取適法では面的執行の強化として、事業所管省庁でも指導・助言ができるようになりました1。
自社の業界を所管する省庁からも、取引の実態について確認を受ける場面が考えられます。
そうしたときに問われるのは、受領日がいつで、期日をどう定め、どの手段で払ったかを、データと記録で示せるかどうかです。
着手の優先度を決めるときは、違反になり得る設定を直すことに加えて、正しく運用していることを説明できる記録を整えることも同じ重さで考えておくとよいでしょう。
▼ 図の内容を文字で読む
- 対象の取引先と取引を確定する:従業員基準での再判定と運送の委託の洗い出し。受領日の定義づくりと並行できる
- 受領日の定義と支払条件を直す:支払条件の空欄をなくし、受領日起点で期日を特定した日に定める
- 支払手段と控除を見直す:新規の発注の手形、満期日、手数料を確かめ、価格に関わる協議は早めに始める
- 書式・記録・システム設定に反映する:発注書の項目、コード表、取引先マスタ、支払条件の設定に落とし込む
受領日・検収日・請求書の日付が、現場・購買・経理のどの画面とデータに分かれて記録されているかは、社内の担当者だけでは全体を見渡しにくいところです。
現行の発注から支払までのデータの流れを一緒にたどり、受領日起算の期日をデータから再現できない箇所がどこにあるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 対象の判定 | 資本金に加えて従業員基準で再判定し、運送の委託も含める |
| 期日の起点 | 原則は受領日。検収日・請求書の到着日・計上月では数えない |
| 期日の定め方 | 受領後60日以内の特定した日。定めがなければ受領日が期日 |
| 手形 | 2026年の施行以降の発注では使わない。施行前の分は満期日で判断 |
| 電子記録債権・一括決済 | 満期日が期日より後で割引が必要な形と、手数料の差引きを避ける |
| 現金払への切替 | 割引料を差し引かず、価格は協議して記録に残す |
| システムの見極め | 実際の発注データから受領日・期日・支払手段・控除を再現できるか |
支払条件や支払手段を直した後も、既存システムの項目追加で済むのか、受領情報の入り口から作り直すのかは、取引件数や部署の分担によって判断が分かれます。 点検で見つかった不足項目をもとに、既存の仕組みの手直しで足りる範囲と、受発注の流れを組み直す必要がある範囲を整理できます。
よくある質問
検収に60日以上かかる場合、支払期日はどう考えるのか
検収が終わっていなくても、受領後60日以内に定めた支払期日までに支払う必要があります。
公正取引委員会のQ&Aは、検査の有無にかかわらず受領日から期日を数えるとしています2。
例外は、検収の時点で受領とする事前の合意がある場合で、その場合は検収の時点が起算日になります2。
自社の取引がこれに当たるか迷う場合は、合意の書面を確かめたうえで所管官庁に確認するのが確実です。
請求書が遅れて届いたとき、支払期日は延ばせるのか
延ばせません。
請求書の提出の有無にかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに支払う必要があります2。
請求書の到着を待って支払処理を始める流れのままだと期日を超えやすいため、受領日の時点で期日を確定させ、期日が近いのに請求書が届いていない取引を一覧で拾える形にしておくと、期日前に取引先へ確認できます。
電子記録債権で払う場合、手数料を差し引いてよいのか
差し引くことはできません。
手数料を代金から差し引くことは、取引先との合意の有無にかかわらず支払遅延になるとされています2。
また、満期日が支払期日より後で、取引先が期日までに代金を得るには割引が必要な場合も、通常は支払遅延になります2。
事前の合意や補填の条件で扱いが分かれる問いもQ&Aにあるため、自社の契約の形を照らし合わせて判断してください。
手形払から現金払に切り替えるとき、価格や手数料をどう扱えばよいのか
現金払に切り替えて代金から割引料を差し引くことは、減額として違反になります3。
一方的に振込手数料相当額を引き下げて代金額を定めることも、買いたたき等に該当するおそれがあります3。
価格の見直しが必要な場合は、協議を適切に行わない一方的な代金決定が禁止されていることを踏まえ1、取引先と協議し、その経過を記録に残す形で進めます。
電子記録債権や一括決済を使うときの明示・記録で何が増えるのか
これらを代金の支払に使う場合、発注時の明示(4条)と取引の記録(7条)で新たに明示・記録すべき事項があります3。
具体的な項目は、公正取引委員会の留意事項のページに図で示されているので、自社の発注書や記録の様式と一つずつ照らし合わせてください。
システムでは、支払手段ごとに発注書の項目を切り替えられるかが確認の目安になります。
自社が対象かどうかを確認する場合、公取委資料のどこを見ればよいのか
改正の概要と、従業員基準や特定運送委託が加わったことは、公正取引委員会の取適法関係ページで確認できます1。
資本金や従業員数の具体的な区分は、同委員会のガイドブックやリーフレットの区分表で、自社と取引先の数値を当てはめて判定します。
支払期日の数え方はよくある質問コーナー2、手形の禁止時期や現金払への切替時の注意は留意事項のページ3にまとまっています。
- 1 出典:公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)関係ページ」(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「取適法 よくある質問コーナー」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項」(2026年)
画像の出典元
- Two professionals analyzing financial documents in a modern office setting./Photo by Artem Podrez on Pexels