◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- Web-EDIの画面が増えるのは発注側が各社で自前のサイトを用意しているためで、受注側は入口の先の流れを一本にまとめる工夫が中心になる
- 取引先を「出力あり/APIあり/画面のみ」に分けると、CSVの自動取得、API連携、画面操作の自動化、集約型サービスのどれを当てられるかが決まる
- 自社で集約する要は、商品コード・単価・納品先・注文番号を自社の受注データへそろえる対応表と受け口で、標準仕様の13項目は洗い出しの目安にとどまる
- 代行・集約型サービスは、委託範囲、ID管理と取引先規約、障害時の責任と連絡経路、費用の構成、画面変更への追従を同じ項目で書面にして比べる
- 取引先数と件数の目安は一社の見解として読み、出力のある取引先から自社で集約し、画面のみの取引先を外部で補う併用から始められる
目次

Web-EDIの毎朝の巡回で、確認・転記・引き渡しのどこに手間と誤りが出るか
得意先が増えるたびに、ログインするWeb-EDIの画面とIDが一つずつ増えていきます。
そのぶん毎朝の巡回と、受注入力への転記に時間がかかるようになります。
急いでいる朝ほど、ある取引先の注文をダウンロードし忘れたり、別のファイルを取り込んだりしやすくなります。
手間を減らす鍵は、取引先ごとに「データ出力がある/APIがある/画面しかない」を仕分けることです。
出力のある取引先は自社で取り込む仕組みに寄せ、画面しかない取引先は画面操作の自動化や集約型サービスで補います。
代行や自動化に任せる前には、ID管理・取引先の規約・障害時の責任を書面で確かめておきます。
Web-EDIの画面が取引先の数だけ増える理由
Web-EDIは、インターネットを使い、Webブラウザーの操作で受発注のやり取りを実現するEDIです4。
EDIは企業間で注文などのデータを電子的にやり取りする仕組みの総称です。
Web-EDIはそのうち、ブラウザーで相手のサイトを開けば注文を確認できる形を指します。
受注側から見ると、得意先が用意したサイトにログインすれば注文が見られるので、始めるときの負担は軽く済みます。
ただ、そのサイトは発注側の企業がそれぞれ自前で用意しています。
共通の窓口がないため、取引先が増えるとURL・ID・操作手順が社数に比例して増え、注文の締め時刻も取引先ごとに異なります。
その結果、受注側は複数のサイトを毎日巡回することになる、と業務システムの開発会社である一創は解説しています1。
つまり画面が増えるのは、受注側の運用の工夫が足りないからではありません。
発注側の都合で作られた仕組みの数だけ、入口が増えていく構造になっているのです。
得意先に「画面を統一してほしい」と頼んでも、相手のシステムを変える話になるため、すぐには通りにくいでしょう。
受注側が手を付けやすいのは、入口は複数のままにして、その先の流れを一本にまとめる工夫です。
朝の作業を工程に分けると見える、ミスの出やすい場所
毎朝の作業を細かく見ると、取引先1社ごとに次の流れを繰り返しています。
- 取引先のWeb-EDIにログインする
- 新しい注文が来ているかを確認する
- 注文データをダウンロードする、または画面から読み取る
- 自社の受注システムや表計算ファイルへ取り込む・入力する
- 出荷指示や請求の担当へ引き渡す
インターコムも製品発表の背景として、複数の取引先とWeb-EDIで受注業務を行う企業は、ログインやファイルのアップロード・ダウンロードといった人手の作業を取引先ごとに繰り返す必要がある、と述べています2。
誤りが入りやすいのは、データを取得する段と、自社へ取り込む段です。
Web-EDI受注の自動化を紹介した記事では、導入前の課題として、受注データのダウンロード忘れや別ファイルの誤登録が挙げられています3。
たとえば巡回の途中で電話や問い合わせが入ると、どの取引先まで見終えたかが曖昧になり、1社分を飛ばしたまま次の作業へ進んでしまうことがあります。
ダウンロードフォルダーに似た名前のファイルが並んでいれば、前日分や別の取引先の分を取り込む余地も生まれます。
画面から読み取って手で入力する取引先では、ここに転記ミスが加わります。
商品コード、数量、納品日のどれかを写し間違えると、その誤りは受注データとして正しい顔をして出荷や請求の担当へ渡っていきます。
取り込んだ時点では気づかれにくく、誤出荷や請求の食い違いとして後から表に出るのが厄介なところです。
どの工程で困っているかによって、打つ手は変わります。
ログインと確認の巡回そのものが重いなら、取得を自動化する手段が効きます。
転記の手間と写し間違いが重いなら、取り込みの受け口を整えることが中心になります。
取りこぼしや二重の取り込みが心配なら、取引先ごとの取得状況を記録して突き合わせる手順が要ります。
次の節で集約の方法を比べるときも、自社が減らしたいのがこのうちどれかを先に決めておくと、手段を選びやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- Web-EDIにログイン
- 取引先ごとにURL・ID・操作手順が別
- 新しい注文を確認
- どの取引先まで見終えたかが曖昧になる
- 注文データを取得
- ダウンロード忘れ
- 受注システムへ取り込み・入力
- 別ファイルの誤登録
- 画面から写すときの転記ミス
- 出荷・請求の担当へ引き渡し
- 誤りは正しい受注データの顔をして渡る
Web-EDIを集約する方法は4つ。どれが使えるかは取引先側の提供条件で決まる
データ出力(CSV等)とAPI連携を使う方法
一創は集約の選択肢として、CSVを自動でダウンロードし、変換して基幹システムへ取り込む方法を挙げています。
この方法は、発注側のWeb-EDIがファイル出力の機能を持っていることが前提です1。
CSVはカンマで区切った表形式のデータで、多くの受注システムや表計算ソフトで読み込めます。
前の節の工程でいえば、取得と取り込みの両方を人の手から外せる可能性がある方法です。
ただし、取引先ごとに列の並びや項目の名前、商品コードの体系は違います。
ダウンロードを自動にしても、そのファイルを自社の受注データの形へそろえる変換がなければ、取り込みの段で結局手直しが残ります。
この変換の考え方は、次の節で受け口として扱います。
もう一つは、API連携へ切り替える方法です。
APIは、システム同士が決まった手順でデータを受け渡すための窓口です。
発注側がAPIを提供していれば、画面を開かずに注文データを受け取る形への切り替えを交渉できます1。
交渉の相手は取引先であり、提供するかどうか、いつ提供するかは取引先の判断になります。
いますぐ使えなくても、予定があるかを聞いておくと、後で手段を選び直すときの材料になります。
画面操作を自動化する方法と、その前提
ファイル出力もAPIもない取引先では、人がブラウザーで行っている操作そのものを自動化する方法があります。
こうした自動化はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれ、ログイン、画面の移動、データの取得といった定型の操作をソフトウェアに代行させます。
製品の例として、インターコムの「Biware EDI Station Auto Webオプション」は、発注企業のWebアプリケーション画面の操作をRPAで自動化します。
同社は、画面のHTML構造を解析して入力欄やボタンなどの部品を認識するため、画面レイアウトが変わっても動作すると説明しています2。
画面の見た目の位置ではなく、ページの作りから部品を探す仕組みだということです。
ただ、これは提供元の説明であり、どの取引先のサイトでも動くことを保証するものではありません。
もう一つの前提は、取引先が自動的なログインや操作を認めているかどうかです。
この点は取引先ごとの規約や取り決めによって異なり、一般論では可否を決められません。
画面操作の自動化を検討する取引先については、規約を読み、はっきりしない部分は取引先の窓口に書面で問い合わせて回答を残しておくのが手堅い進め方です。
複数のWeb-EDIをまとめて受ける集約型サービス
一創は、複数のWeb-EDIをまとめて受信する集約型のEDIサービスを契約する方法も挙げています1。
自社で取得の仕組みを組む代わりに、その部分を外部のサービスに任せる形です。
取引先の画面がばらばらでも、自社側はサービスから届くデータを見ればよくなる、という考え方になります。
ここで気をつけたいのは、サービスごとに対応している取引先と、引き受ける作業の範囲が違うことです。
注文データを取得して渡すところまでなのか、自社の受注入力まで含むのかで、自社に残る作業は大きく変わります。
この記事でいう「代行」は、こうしたサービスや外部の担当者が、受注側に代わって巡回・取得・入力のいずれかを行う形をまとめて指しています。
契約前に何を比べればよいかは、後の節で5つの条件に分けて扱います。
取引先を『出力あり/APIあり/画面のみ』に分けて手段を当てる
4つの方法を並べると、どれを使えるかは自社の希望よりも、取引先側が何を提供しているかで先に決まることが分かります。
一創も、取引先ごとに提供機能が異なるため、集約は複数の方法を組み合わせた設計になると述べています1。
たとえば、いま巡回している得意先の一覧に「ファイル出力の有無」「APIの有無・予定」「画面のみ」の列を足して、1社ずつ印を付けてみます。
出力のある取引先は自社での取得と取り込みの候補になり、画面しかない取引先は自動化か集約型サービスの候補になります。
全社を同じ方法でまとめようとするより、取引先の区分ごとに手段を当てた方が、手を付けられるところから始められます。
一創はさらに、取引先が独自のWeb-EDIだけで、標準規格やAPIの予定もない場合には、外部の規格を追うより社内の受け口を単一の受注データ形式にまとめる方が効果的だという見解を示しています1。
入口の手段が取引先ごとに違っても、自社に入ってくるデータの形を一つにそろえておけば、その後の出荷や請求の流れは一本で済む、という考え方です。
この受け口をどう作るかが、次の節の話になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- ファイル出力あり
- CSVを自動でダウンロードし、変換して取り込む
- APIあり・予定あり
- API連携への切り替えを取引先と交渉する
- 画面のみ
- 画面操作の自動化(取引先の規約の確認が前提)
- 複数のWeb-EDIをまとめて受ける集約型サービスの契約
自社で集約するときに整える受注データの受け口
取り込み前に対応づける項目(コード・単価・納品先・注文番号)
CSVを自動で取得できても、そのファイルがそのまま自社の受注システムに入るとは限りません。
同じ商品でも取引先の商品コードと自社の商品コードが違う、単価が取引先ごとに決まっている、納品先が店舗や倉庫ごとに分かれている、といった違いがあるからです。
人が転記していたときは、担当者が頭の中でこの読み替えをしていました。
自社で集約するなら、その読み替えを取引先ごとの対応表として書き出しておく必要があります。
対応表で決めておきたいのは、主に次の項目です。
- 商品コード:取引先のコードを自社のどのコードに当てるか
- 単価:取引先の注文の単価と、自社に登録した取引先別の単価のどちらを正とするか
- 納品先:取引先の店舗・倉庫の表記を、自社の出荷先マスターのどれに当てるか
- 注文番号・発注日:取引先の注文を後から特定するための鍵
- 数量・単位と納品日:ケースとバラなど単位の違い、日付の書き方の違い
対応表があると、変換を手作業でするか自動でするかにかかわらず、同じ規則でデータを作れるようになります。
担当者が替わっても、どの列をどこへ写すかの判断が一人の記憶に残らずに済みます。
そして対応表にないコードが届いたときに「表にないから止める」という判断ができるので、黙って誤った商品で受注が登録されることを防ぐ手掛かりにもなります。
標準仕様の最低13項目を、洗い出しの目安にする
受け口に持たせる項目を一から考えるのが難しければ、公的な標準仕様を点検表として使う方法があります。
中小企業共通EDIの標準仕様書は、業務アプリケーションに対応を求める最低限必要な13項目(注文書番号、注文書発行日など)を定めています5。
ただし、これは中小企業共通EDIという仕様の話であり、得意先それぞれのWeb-EDIがこの項目に沿っているわけではありません。
13項目が取引先の画面にすべて表示されるとは限らず、自社の受注に必要な項目がこれで足りるとも限りません。
使い方としては、自社の対応表を作ったあとに見比べて、抜けている項目がないかを確かめる目安にとどめるのが適切です。
特に注文書番号にあたる項目は、受け口に必ず持たせておきたいところです。
取引先の画面にある注文と、自社に取り込んだ受注が一対一で対応しているかを確かめる鍵になるからです。
同じ番号が二度入っていれば二重の取り込みを、取引先側にあるのに自社にない番号があれば取りこぼしを疑えます。
自動化できる範囲と、人が確認する範囲
どこまで自動化できるかは、前の節で付けた取引先の区分によって変わります。
ファイル出力のある取引先なら、取得、変換、取り込みまでを自動化の対象として考えられます。
APIのある取引先なら、画面を開かずにデータを受け取れるため、取得の段から人の手を外せます。
画面しかない取引先では、画面操作の自動化で取得まではできても、取り出したデータを受け口の形へそろえる変換は別に用意しなければなりません。
一方、どの区分でも人の確認が残りやすい場面があります。
対応表にない新しい商品コードが届いたとき、注文の単価が自社の登録と違うとき、取引先から注文の訂正や取消が届いたときです。
こうした例外は、自動化の仕組みがあっても判断そのものは人に戻ってきます。
自動化で減るのは毎日の巡回と転記であり、例外の判断までなくなるわけではありません。
そこで、例外だけを人が見る形にしておくと、確認の負担を絞れます。
たとえば、取り込みのたびに取引先ごとの注文件数を記録し、取引先の画面上の件数と合っているか、注文番号に重複がないか、対応表にないコードがないかの3点を一覧で見る、といった手順です。
転記していたときのように全件を目で追うのではなく、合わないところだけを追えばよくなります。

代行・集約型サービスに任せる前に、契約で確かめる5つの条件
委託範囲:取得のみか、受注入力までか
代行や集約型サービスは、引き受ける範囲がサービスごとに違います。
そのため、どこが優れているかを比べる前に、見積もりと契約書で同じ項目を並べられるようにしておくことが大切です。
最初に確かめたいのは、どの工程までを任せるのかです。
注文データを取得して自社に渡すところまでなら、受注システムへの取り込みと例外の確認は自社に残ります。
受注入力まで含むなら、自社に残るのは入力結果の確認と、出荷・請求への引き渡しになります。
前の節で整理した対応表を誰が持ち、誰が保守するのかも、委託範囲を決めるときに一緒に決めておく必要があります。
新しい商品コードが届いたときに代行側が止めるのか、自社に問い合わせるのか、そのまま登録するのかで、誤りの入り方が変わるからです。
ID・パスワードの預け方と取引先規約の確認
代行に取引先のWeb-EDIを操作してもらうには、そのサイトのIDとパスワードを預けるか、代行側に別のIDを発行してもらう必要があります。
ここで判断を分けるのは、取引先が第三者によるログインや自動操作を認めているかどうかです。
この扱いは取引先ごとの規約や取り決めによるため、代行事業者の「問題ありません」という説明だけで決めず、取引先にも書面で確かめます。
あわせて、預けたIDをどこに保管するのか、誰が使えるのか、自社の担当者が替わったときや代行を解約したときにパスワードの変更を誰が行うのかを、契約で決めておきます。
取引先が代行用に別のIDを発行してくれるなら、自社の担当者のIDと分けて管理でき、解約時にそのIDだけを止められます。
発行してもらえるかどうかも、取引先への問い合わせで確かめる事項の一つです。
誤取込・障害時の責任と連絡経路
代行に任せても、取引先から見た受注の責任は受注側にあります。
取引先にとっては、注文を受けたのは自社であり、代行事業者ではないからです。
だからこそ、代行側で取得漏れや誤った取り込みが起きたときに、どこまでを代行側が直し、費用や損害をどう扱うのかを契約で決めておく必要があります。
もう一つ重要なのは連絡経路です。
代行側の仕組みが止まった朝に、誰がそれに気づき、誰に、どの手段で知らせるのかが決まっていなければ、締め時刻を過ぎてから取りこぼしが分かることになりかねません。
停止している間、自社の担当者が手で巡回に戻るのか、代行側が手作業で対応するのかも、平時のうちに決めておきたい事項です。
費用の構成を同じ項目で見積もる
費用は、総額だけを並べても比べられません。
初期費用、月額、注文件数や取引先数に応じた従量の費用、取引先を追加するときの費用、画面変更への対応の費用といった構成に分けて、同じ項目で見積もりを取ると、自社の取引先数や件数が増えたときにどう変わるかが見えてきます。
自社で画面操作を自動化する場合の費用の一例として、インターコムの「Biware EDI Station Auto Webオプション」の参考価格は82万円(税別)でした2。
これは2018年の発売時に示された特定のオプション製品の価格で、別途、本体製品のEDI Station 2が必要です。
相場を示す数字ではなく、自社で組む場合には製品の本体とオプション、設定や保守の手間が別々に積み上がるという、費用の構成を考える材料として見るのが適切です。
画面変更への追従
画面操作の自動化は、取引先のサイトの作りに依存しています。
取引先が画面を改修すれば、自動化が止まったり、別の項目を読み取ったりするおそれがあります。
インターコムはHTML構造を解析するため画面レイアウトの変更でも動作すると説明していますが2、これは提供元の説明であり、すべての改修に耐えることの保証ではありません。
代行や集約型サービスに任せる場合は、取引先の画面が変わったときに誰が気づき、どれくらいの期間で直すのか、その対応が月額に含まれるのか別料金なのかを確かめます。
自社で組む場合は、その役割を誰が担うのかを先に決めておかないと、止まった仕組みを直せる人がいないまま、手作業の巡回に戻ることになります。
| 観点 | 自社で集約する | 代行・集約型サービスに任せる |
|---|---|---|
| 取引先側の前提 | ファイル出力やAPIがあると組みやすい。画面のみは自動化製品が要る | そのサービスが対応している取引先かを確認する |
| 自社の作業 | 取得の設定・変換・対応表の保守 | 委託範囲の外に残る取り込みと例外の確認 |
| 任せる範囲 | 自社内で完結する | 取得のみか受注入力までかを契約で決める |
| ID管理 | 自社で保管し、担当者交代時に変更する | 預け方・保管・解約時の変更と取引先の承諾を確認する |
| 障害時の責任 | 自社で検知し復旧する | 責任分担と連絡経路を契約に明記する |
| 費用の構成 | 製品の本体・オプション・設定・保守 | 初期・月額・従量・取引先追加・画面変更対応を同じ項目で見積もる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 任せる範囲
- 委託範囲は取得のみか、受注入力までか
- 対応表を誰が持ち、誰が保守するか
- 預けて守ること
- ID・パスワードの預け方と保管
- 取引先の規約を書面で確認
- 解約時のパスワード変更
- 問題が起きたとき
- 誤取込・障害時に直す範囲と費用の扱い
- 停止時の連絡経路と手作業での代替
- 費用と保守
- 費用の構成を同じ項目で見積もる
- 画面変更への追従と料金
取引先数と注文件数で選ぶ:自社集約・代行・併用の始め方
数の目安は一社の見解として読む
では、どの規模から集約や自動化に手を付けるべきでしょうか。
一創は目安として、取引先3社以内・月100件未満・担当2人以上なら画面での運用を維持してよく、取引先5社以上・月300件超、または転記ミスによる誤出荷が月1件以上なら自動化に投資すべきだとしています1。
これは一社の見解であり、調査に基づく業界の標準値ではありません。
それでも、自社の状況を照らす物差しとしては役に立ちます。
この目安で目を留めたいのは、取引先数と件数だけでなく、担当者の人数と誤出荷が条件に入っている点です。
取引先が少なく件数も少なくても、巡回できる人が1人しかいなければ、その人が休んだ朝に巡回が止まります。
また、取引先数や件数が少なくても、転記ミスによる誤出荷が続いているなら、それだけで仕組みを見直す理由になる、と読めます。
二つの目安の間に入る場合、つまり取引先数や件数がどちらの条件にも当てはまらない場合については、この目安は線を引いていません。
そうしたときは、前の節までに整理した取引先の区分を見て、ファイル出力やAPIのある取引先がどれだけあるかで判断すると考えやすくなります。
出力のある取引先が多ければ自社で組みやすく、画面しかない取引先が多ければ外部に任せる候補が増えるからです。
出力条件のある取引先から自社集約し、残りを補う進め方
全取引先を一度に切り替える必要はありません。
取引先ごとに使える手段が違う以上、手を付けやすいところから順に移していく方が、途中で止まったときの影響も小さく済みます。
進め方の一案は次のとおりです。
- 巡回している取引先の一覧に、ファイル出力・APIの有無と、画面操作の自動化を取引先が認めているかの確認状況を書き込む
- 自社の受注データの受け口と、取引先ごとの対応表を作る
- ファイル出力のある取引先から、取得・変換・取り込みを受け口へ寄せる
- 画面しかない取引先は、画面操作の自動化か代行・集約型サービスで補うかを、5つの条件で比べて決める
- 取引先がAPIの提供を始めたときなどに、区分と手段を見直す
この順にする理由は、受け口が先にあると、後から手段を足しても出荷や請求の流れを変えずに済むからです。
代行に任せる取引先が出てきても、代行側から受け取るデータを同じ受け口の形で受け取れば、自社集約の分と代行の分が社内で混ざらずに一本の流れになります。
逆に受け口を作らずに代行を先に入れると、代行から届く形に合わせて社内の流れを組むことになり、別の取引先を自社で集約するときにもう一度組み直す手間が出やすくなります。
併用で始める場合も、毎日の突き合わせは残しておきます。
取引先ごとに、取引先の画面上の注文件数と自社に取り込んだ件数が合っているかを一覧で確かめる習慣があれば、自社の仕組みでも代行でも、取りこぼしに締め時刻の前に気づける可能性が高まります。
巡回と転記の手間を外部や仕組みに移しても、取り込んだ結果を確かめる役目は自社に残る、という線を引いておくことが、任せる範囲を広げていくときの土台になります。
| 目安 | 取引先数(社) | 月間受注件数(件) |
|---|---|---|
| 画面運用を維持してよい目安の上限 | 3 | 100 |
| 自動化への投資を検討する目安の下限 | 5 | 300 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先の一覧に区分を書き込む
- 受け口と対応表を作る
- 出力のある取引先から受け口へ寄せる
- 画面のみの取引先は5つの条件で比べる
- API提供の開始時に見直す
取引先ごとの提供条件と、自社の受注システムが受け取れる形を並べてみないと、どこまで自社で組めて、どこを外部に任せるかの線は引きにくいものです。
相談では、いま巡回している取引先を「出力あり/APIあり/画面のみ」に仕分け、受け口にそろえる項目と、外部に任せる候補の範囲を整理できます。無料相談で要件を整理する
取引先1社ごとに確かめる、集約手段を決めるための事項
取引先1社について、使える集約手段と外部に任せる際の取り決めを決めるために確かめる事項
- Web-EDIからCSV等のファイルで注文データを出力できるか
- APIを提供しているか、提供の予定があるか
- 標準仕様での接続を用意しているか
- 画面操作の自動化や、第三者によるログインを規約・取り決めで認めているか
- 代行用に別のIDを発行してもらえるか
- 注文の締め時刻と、画面改修の予定を知らせてもらえるか
ファイル出力もAPIもない取引先は、画面操作の自動化か集約型サービスの候補になり、その場合は規約とIDの扱いの確認が先に要ります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 取引先の区分 | 出力あり→自社で取得・変換・取り込み/APIあり→連携への切り替えを交渉/画面のみ→画面操作の自動化か集約型サービス |
| 受け口 | 取引先ごとの対応表で、商品コード・単価・納品先・注文番号・発注日を自社の受注データへそろえる |
| 任せる前の確認 | 委託範囲・ID管理と取引先規約・障害時の責任と連絡経路・費用の構成・画面変更への追従を書面で |
| 規模の目安 | 一創の見解:3社以内・月100件未満・担当2人以上は画面運用を維持/5社以上・月300件超、または誤出荷月1件以上は自動化を検討 |
| 日々の突き合わせ | 取引先ごとの画面上の注文件数と取り込み件数、注文番号の重複、対応表にないコード |

代行や自動化の見積もりは、委託範囲や障害時の取り決めが同じ項目で並んでいないと比べられません。 相談では、見積もりを同じ項目で比べるための確認表と、取引先へ書面で問い合わせる事項を整理できます。
よくある質問
取引先のWeb-EDIにRPAでログインしても規約違反にならないか、どう確認すればよいですか。
可否は取引先ごとの規約や取り決めによって異なるため、一般論では決められません。
まず取引先のWeb-EDIの利用規約や利用条件で、自動的な操作や第三者によるログインの扱いを確かめます。
記載がない、または読み方がはっきりしない場合は、取引先の窓口に書面で問い合わせ、回答を残しておきます。
代行事業者や製品提供元の説明は、取引先の承諾の代わりにはなりません。
取引先が1〜2社でも集約や自動化を考えた方がよいのはどんなときですか。
一創は、取引先3社以内・月100件未満・担当2人以上なら画面運用を維持してよく、転記ミスによる誤出荷が月1件以上なら自動化に投資すべきとしています1。
一社の見解ですが、これに照らすと、取引先が少なくても巡回できる担当者が1人しかいない場合や、転記ミスによる誤出荷が続いている場合は、見直しを考える理由になります。
大きな投資をしなくても、取引先ごとの対応表と毎日の件数の突き合わせから始める方法もあります。
代行に預けるID・パスワードは、どう管理すればよいですか。
まず、取引先が第三者によるログインを認めているかを確かめます。
認められる場合も、可能なら代行用に別のIDを発行してもらうと、自社の担当者のIDと分けて管理でき、解約時にそのIDだけを止められます。
契約では、保管の方法、使える人の範囲、担当者交代や解約のときに誰がパスワードを変更するかを決めておきます。
取引先が流通BMSなど標準仕様での接続を提供しているかは、どう確かめればよいですか。
流通BMSのBMSはBusiness Message Standardsの略で、流通ビジネスメッセージ標準のことです4。
取引先がこうした標準仕様での接続を用意しているかは、Web-EDIの案内資料を見るか、取引先の窓口に直接問い合わせて確かめます。
用意がある場合も、自社の受注システムがその仕様のデータを受け取れるかを別に確かめる必要があります。
画面が変わって自動化が止まったとき、誰が復旧するかをどう決めておけばよいですか。
自社で組む場合は保守の担当者を、代行や集約型サービスに任せる場合は事業者側の対応範囲を、導入前に決めておきます。
決めておきたいのは、停止に誰が気づくか、誰にどの手段で知らせるか、直るまでの間は誰が手で巡回するか、その対応の費用が月額に含まれるかの4点です。
画面変更に強いとする製品もありますが2、提供元の説明であり、止まらないことの保証ではありません。
取り込み後の誤りを見つけるために、受注入力のどこで突き合わせるのがよいですか。
取り込みの直後、出荷指示へ渡す前に突き合わせるのが一案です。
取引先ごとに、画面上の注文件数と取り込んだ件数が合っているか、注文番号に重複がないか、対応表にない商品コードがないかを一覧で確かめます。
全件を目で追うのではなく、合わないところだけを追う形にすると、確認の手間を絞れます。
- 1 出典:株式会社一創「Web EDIとは?仕組みとレガシーEDIとの違い・多画面運用の判断を解説」(公開年不明)
- 2 出典:株式会社インターコム(IT Leaders掲載)「Biware EDI Station Auto Webオプションの発表」(2018年)
- 3 出典:ASCII.jp「Web-EDI受注のRPA自動化に関する記事」(公開年不明)
- 4 出典:日経BP 日経クロステック「ISDN終了に関するEDI移行のコラム」(2016年)
- 5 出典:中小企業庁 ミラサポplus「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
画像の出典元
- Close-up of hands typing on a laptop keyboard, focused and professional setting./Photo by Kampus Production on Pexels
- Close-up of hands typing on a laptop keyboard in a library setting./Photo by Donatello Trisolino on Pexels