◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受注窓口は、経路(どこから来るか)・受け皿(誰が最初に触るか)・台帳(どこに記録されるか)の3点で数えると整理できます。
- 一本化すべきなのは経路ではなく、注文が記録される台帳のほうです。窓口を残したままでも設計は成立します。
- どの窓口で受けた注文かによって、電子帳簿保存法が求める証跡の残り方も変わってきます。
目次
受注窓口の3点セット――経路・受け皿・台帳で数える
受注窓口とは、取引先が注文を入れてくる経路のことで、電話・FAX・メール・Web受注画面・EDIなど複数の経路が並存するのが実務上の前提です*3。一本化すべきなのは経路ではなく、注文が記録される台帳のほうです。
Web受注システムの窓口とは、取引先が注文を入れてくる経路のうち、Web上の画面を通じて注文を受け付ける経路のことです。電話・FAX・メール・EDIといった他の経路と並存させることができ、Web窓口へ寄せる目的は経路の数を減らすことではなく、受けた注文が記録される台帳を1つにすることにあります。
受注窓口を正しく棚卸しするには、経路(どこから来るか)・受け皿(誰が最初に触るか)・台帳(どこに記録されるか)という3点で見る必要があります。「電話とFAXをやめれば解決する」という数え方では、二重入力が起きる原因まで届きません。
経路――取引先の都合で決まり、自社だけでは減らせない
電話・FAX・メール・自社のWeb受注画面・EDI(Electronic Data Interchange。企業間で受発注データを電子的に交換する仕組み)・LINE・訪問・展示会など、注文が入ってくる経路は取引先ごとに異なります。取引先が電話しか使わない場合、自社の意向だけで経路を減らすことはできません。
LINEでの受注のしくみそのものは、経路の一つとして別記事(LINE受発注の仕組み)で解説しています。
受け皿――人が受け皿になっている経路は、その人が不在のとき止まる
受け皿とは、届いた注文を最初に受け取る担当のことです。特定の担当者が電話を受ける場合、営業事務のチームがメールを確認する場合、システムが自動で受け付ける場合があります。
受け皿が特定の1人に依存していると、その人が休んだ日や不在の時間帯に、注文の受け取り自体が止まりかねません。受注業務が特定の担当者に依存する状態の整理は、別記事(BtoB EC受発注の属人化解消)が参考になるでしょう。
台帳――一本化すべき対象は経路ではなく台帳である
台帳とは、受けた注文が最終的に記録される場所のことです。担当者個人のExcel、紙の受注メモ、基幹システム、Web受注システムなど、企業によって形はさまざまですが、その数は実際に数えられます。
受注窓口の課題を「経路の数」で数えると、電話とFAXをやめれば解決したように見えます。しかし実際に業務を止めているのは、台帳が複数に分かれている状態のほうです。
受注窓口を棚卸しするときに確認する3点/順位根拠:重要度
- 経路――注文がどこから来るか。取引先の都合で決まるため、自社の意思だけでは変更できません。
- 受け皿――誰が最初に注文へ触れるか。人が受け皿になっている経路は、その人が不在のとき止まります。
- 台帳――注文がどこに記録されるか。一本化すべき対象はここであり、経路の数そのものではありません。
下の表①の「証跡の残り方」欄は、電子帳簿保存法が定める電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引のこと*1)に当たるかどうかを示しています。
| 表① 経路 | 受け皿の例 | 台帳の例 | 証跡の残り方(電子取引への該当) |
|---|---|---|---|
| 電話 | 受注センターの担当者 | 担当者のメモ・基幹システムへの手入力 | 国税庁の例示に記載がありません*3 |
| FAX(紙・複合機のペーパーレス機能を使わない場合) | 営業事務のチーム | 紙の受注簿・基幹システムへの転記 | 国税庁の例示に記載がありません*3 |
| ペーパーレスFAX(複合機のFAX機能) | システムが自動で受信 | 基幹システム・Web受注システム | 電子取引に当たります*3 |
| メール | 営業事務・受注センター | 基幹システム・Web受注システム | 添付ファイルの場合も含め電子取引に当たります*3 |
| Web受注画面 | システムが自動で受け付け | Web受注システム | 電子取引に当たります*3 |
| EDI | システムが自動で受け付け | 基幹システム・Web受注システム | 電子取引に当たります*3 |
同じ注文が2つの台帳に載ると、突合という仕事が生まれる
Web受発注が事業に与える効果については、別記事(Web受発注システム導入のメリット)で扱っています。本節では、台帳が複数あるときに現場で何が起きるかを見ていきましょう。
Web受注システムに入った注文を、担当者が自分のExcelにも転記する
二重入力が起きるのは、台帳が複数あるためです。Web受注システムに入力された注文を、担当者が自分の管理用Excelにも書き写す運用は珍しくありません。片方の記録を後から直しても、もう片方は古いまま残ります。
どちらが正しいかを決める作業は、台帳が1つなら発生しない
台帳が2つあると、内容が一致しているかを確認する「突合」という作業が日々発生します。Web受注システムを導入しても業務量が減らなかったという状況は、この突合作業に原因があると考えられます。台帳が1つであれば、突合という作業自体が存在しません。
在庫の引当がどの台帳で行われているかで、経路ごとに答えが変わる
同じ取引先に対して、電話では「明日出荷できます」と答え、Web受注画面では「在庫なし」と表示される状況が起こり得ます。原因は在庫の引当がどちらの台帳を基準に行われているかの違いにあります。
台帳が複数残る状態は、企業間取引の電子化が進むなかでも珍しくない
2024年の国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円で、前年比10.6%増となりました*5。BtoB-ECのEC化率も43.1%(前年比3.1ポイント増)に達しています*5。企業間取引の電子化そのものは進行しています。
ただし、この数値はWeb受注システムの普及率を示すものではなく、取引全体の電子化が進んでいる度合いを示す指標です*5。中小企業庁の調査では、2021年時点で受注側の48.5%が電子受発注に対応していたとされています*4。調査の母集団・実施年が異なるため、この2つの数値を単純に比較することはできません*4 *5。ここから読み取れるのは、Webの経路が増えても従来の経路が残る併存状態が、業種を問わず起こり得るという点です。
受け皿が特定の担当者に集中している状態の解消策はBtoB EC受発注の属人化解消で扱っています。注文データをどのシステムが持つかという区分については受注データの管理システムの区分で整理しています。
台帳が複数ある状態でどれだけの二重入力が発生しているかを自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。
Webに寄せやすい注文と、電話が残る注文の見分け方
定番品の反復発注は、取引先にとっても入力の手間が小さい
定番品の反復発注、カタログから選ぶだけの発注、数量だけが変わる定期発注は、Web受注画面に寄せやすい注文です。取引先にとっても入力の手間が小さいため、切り替えへの抵抗が比較的小さい領域だと言えます。
特注品の仕様確認や急な数量変更は、注文というより相談である
特注品の仕様確認、納期の相談、急な数量変更、在庫が無いときの代替提案は、電話が残りやすい領域です。これらはやり取りの性質が注文というより相談であるため、Web画面に載せる意味は薄いといえるでしょう。
取引先側の事情で、一律の切替日を置くと止まる
発注担当者がパソコン操作に慣れていない場合、発注端末を社内に置けない場合、社内規程で従来の方法が定められている場合もあります。取引先ごとに事情が異なるため、全取引先に同じ切替日を課すと運用が止まる可能性があります。
全廃を目標に置かず、台帳を1つにすることを目標に置く
窓口を残しても、その注文が同じ台帳に記録されるなら設計は成立します。目標は経路の数をゼロにすることではなく、台帳を1つにすることです。全廃を前提にした説明は、電話でしか成立しない相談が残る実務には当てはまりません。
残す窓口には、転記の責任が伴う
電話で受けた注文を、誰がいつ台帳へ入力するかを決めていない場合、台帳が1つであっても中身が欠けます。残す窓口を決めるだけでなく、転記の担当と時限をセットで決める必要があります。
電話・FAXからの脱却そのものの進め方は電話・FAX受注からの脱却手順で解説しています。本記事は窓口を残す前提に立ちますが、脱却という選択を取る場合の具体的な手順はそちらを参照してください。
台帳を1本にする8つの手順
ここまでの整理をもとに、台帳を1本にする決め方を手順化します。そのまま社内検討のチェックリストとして使える形にしています。
- 注文が入ってくる経路をすべて書き出します(電話・FAX・メール・自社EC・EDI・LINE・訪問・展示会など)。
- 経路ごとに、受け皿と台帳を書き添えます。誰が最初に触るか、どこに記録されるかを、上の表①の形式でそのまま埋めていきます。
- 台帳がいくつあるかを数えます。ここで初めて、一本化すべき対象の数がわかります。
- 正本(しょうほん。複数の記録のうち内容が正しいと定めた原本のこと)にする台帳を1つ決めます(Web受注システム・基幹システム・既存の受注管理のいずれか)。
- 残す窓口を決めます。前節の基準にもとづき、やめる経路と残す経路を仕分けます。
- 残す窓口ごとに、台帳へ入れる担当と時限を決めます(例:電話で受けた注文は、その日のうちに受注センターが台帳へ入力する)。
- 経路ごとの証跡の残り方を確認します。次節の内容にもとづき、電子取引に当たる経路を洗い出します。
- 決めた範囲を文書にして、見積・要件に反映します。「窓口の一元化一式」ではなく、「経路6つのうちWeb・EDI・メールを台帳Aへ、電話・FAXは転記で台帳Aへ、LINEは廃止」のように、経路と台帳の言葉で書くことがポイントです。
決めた範囲を要件として文書化する段階はBtoB ECの要件定義を、その後の移行プロジェクトとしての進め方は受発注システムの移行プロジェクトを参照してください。BtoB EC導入の全体の流れはBtoB EC導入の進め方で解説しています。
窓口ごとに変わる証跡の残り方――電子帳簿保存法の境界
法令は「注文書」を取引情報として挙げている
電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律。平成十年法律第二十五号)第二条第五号は、電子取引を次のように定義しています。「取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。」*1
その電磁的記録の保存が義務づけられている
同法第七条は、保存義務者に対して次のように定めています。「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」*2 電子帳簿保存法が義務づけているのは、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存であり、Web受注システムの導入そのものを義務づけているわけではありません。
どの経路が電子取引に当たるか
国税庁の一問一答は、電子取引(取引情報。取引に関して受領・交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項のこと)に当たる具体例として、「いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用した取引、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等」を挙げています*3。Web受注画面・メール・EDI・ペーパーレスFAXで受けた注文は、受けた時点でこれに当たります*3。
だから窓口の設計と証跡の設計は同時に決まる
窓口をWebへ寄せるという判断は、その注文が電子取引になるという判断でもあります。具体的な保存の要件(検索要件・真実性や可視性の確保・タイムスタンプ・事務処理規程など)は、別記事(BtoB ECの電子帳簿保存法対応)で扱っています。
紙で受け取った注文書の扱いは、本記事では確認していない
国税庁が電子取引として挙げているのは、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用した取引までであり*3、紙に出力される通常のFAXや電話での口頭受注については、この一問一答に個別の記載がありません。したがって本記事では「紙のFAXは電子取引に当たらない」「電話には保存義務がない」といった断定は行いません。紙で受け取った書類の保存の枠組みについては、電帳法対応を扱う別記事(BtoB ECの電子帳簿保存法対応)を確認してください。
EDIとWebの使い分けについてはEDIとWeb受注の使い分けで整理しています。
まとめ:受注窓口を数えるときの3つの判断軸
本稿では、Web受注システムの窓口をどう扱うかを、経路・受け皿・台帳の3点で整理しました。要点を3つに集約すると次のとおりです。第一に、受注窓口は経路・受け皿・台帳の3点セットで棚卸しする必要があります。第二に、一本化すべき対象は経路ではなく台帳であり、窓口そのものは残してよいということです。第三に、どの経路で受けたかによって電子取引への該当が変わり、証跡の残り方も変わってくるという点です*1 *2 *3。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
受注窓口は1つにしなければいけませんか。
いいえ、経路は複数のままで構いません。一本化すべきなのは、注文が記録される台帳のほうです。電話・FAX・メール・Web受注画面などの経路を残したまま、記録先の台帳だけを1つに寄せれば、二重入力や突合の作業はなくなります。
電話やFAXの窓口を残したままWeb受注システムを入れても意味がありますか。
十分に意味があると言えるでしょう。残した経路で受けた注文を、同じ台帳へ入力する運用を決めておけば、突合の作業自体がなくなります。ただし、転記の担当者と入力の時限を決めていない場合は、台帳の中身が欠けてしまう点に注意が必要です。
取引先がWebでの発注に応じてくれない場合はどうすればよいですか。
取引先ごとに事情が異なるため、一律の切替日は置かず、取引先ごとに扱いを分けます。パソコン操作に不慣れな場合や発注端末を置けない場合など、応じない取引先の経路はそのまま残し、自社側で受けた注文を台帳へ入力する運用に切り替えます。
Web受注画面で受けた注文も保存が必要ですか。
必要です。インターネット上にサイトを設けて取引情報を授受する取引は電子取引に当たり*3、電子帳簿保存法はその電磁的記録の保存を義務づけています*2。具体的な保存方法は、BtoB ECの電子帳簿保存法対応で確認できます。
いまFAXと電話しか使っていない場合、何から手をつければよいですか。
まず経路・受け皿・台帳を書き出し、台帳がいくつあるかを数えることから始めます。台帳が1つであれば、経路をWebへ追加するタイミングは後からでも遅くはないでしょう。中小企業庁の調査では2021年時点で受注側の48.5%が電子受発注に対応しており*4、紙や口頭のやり取りが残る状態は珍しくありません。
- *1 出典:デジタル庁 e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)第二条第五号」(平成十年法律第二十五号・e-Gov法令検索)
- *2 出典:デジタル庁 e-Gov法令検索「電子帳簿保存法 第七条」(同上・e-Gov法令検索)
- *3 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問2」(令和8年7月)
- *4 出典:中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化」(令和3年度取引条件改善状況調査・2021年)
- *5 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)
画像の出典元
- 受注のイメージ/Photo by Giorgio Tomassetti on Unsplash
- 手順のイメージ/Photo by Aiden Frazier on Unsplash
- 電子帳簿のイメージ/Photo by Daniil Komov on Unsplash
- よくある質問のイメージ/Photo by Mel Poole on Unsplash