◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 二重管理の不安は、全取引先を一律に移す前提から生じる。取引先ごとにWeb画面・データ連携・従来手段の併用を選ぶ。
- 自社の作業がどれだけ減るかは、取引先の数よりも、どれだけの発注がシステム上でやり取りされるかで決まる。
- 併用分も発注側がシステムに登録すれば記録は一箇所にまとまる。併用には取引先ごとに見直しの期限を置く。
- 協力的な少数先で試行し、入力ミスと問い合わせの件数で手順を固めてから対象を広げる。
- 取適法の適用対象の取引では、取引先への利用料の負担や利用の強制を避け、書面を求められたら遅滞なく交付する。
目次

Web受発注を入れても取引先が使わない、という不安はどこから来るのか
電話やFAXで発注書を送り、納期の回答を待って、その内容をExcelに書き写す。
この手間を減らそうと発注側でWeb受発注システムの導入を考えると、別の不安が出てきます。
取引先が使ってくれなければ、FAXとWebの二重管理になるだけではないか、という不安です。
この心配は的外れではありません。
ただ、全取引先を一度にWeb画面へ移す前提をやめれば、打てる手は増えます。
取引先ごとにWeb画面・データ連携・従来手段との併用を選び、協力的な先から試して広げます。
応じない先には、併用の期限とルールを決めます。
利用を強いる依頼にならないよう、頼み方もあわせて設計します。
共通EDIが取引先の導入を前提とする問題
企業間で発注や納期回答をデータでやり取りする仕組みを、EDI(電子データ交換)と呼びます。
このうち、発注側と受注側が同じ方式をそろえて使う共通EDIについては、取引先が導入しなければ運用できないことが課題として報じられています1。
発注側だけが仕組みを整えても、受け取る側が対応していなければ、その取引先への発注は従来の方法に戻るしかありません。
この課題への答えとして中小企業庁が構想したのが「データ連携基盤」です。
業界や系列ごとに異なる受発注システムに接続し、入力されたデータを自動で変換することで、取引先を含めて既存のシステムを変えずに運用できるとされました1。
これは2021年時点の構想を伝えた報道で、市販の製品がすべてこう動くという意味ではありません。
それでも、「取引先が使ってくれるか」という問題の重さは、取引先側に何を変えてもらう仕組みかによって変わる、という点はここから読み取れます。
発注側が用意した画面に取引先がアクセスし、発注内容を確認して回答を入力する形のシステムでは、取引先に求めるのはその画面を開いて操作する習慣です。
取引先の担当者が日々画面を確認しなければ、発注は登録されていても読まれていない状態になります。
結局は電話で「発注をご覧いただけましたか」と確かめることになり、手段が一つ増えただけになってしまいます。
受注側の対応状況には差がある
では、受注側の企業は実際にどの程度対応しているのでしょうか。
中小企業庁の「令和3年度取引条件改善状況調査」(令和3年9月〜11月実施、調査対象88,800社のうち22,757社が回答)を引用したオリックス・レンテックの記事によると、受注側企業のうち電子受発注に2021年までに対応と回答したのは48.5%、「当面対応の予定なし」は34.8%でした2。
この数字は受注側企業全体の回答で、自社の取引先がどちらに入るかを示すものではありません。
また、「対応」と答えた企業が、自社が選ぶシステムの画面や形式でそのまま受けられるとは限りません。
発注元ごとに方式が違えば、対応していても別の方式かもしれないからです。
それでも、この差が示すことははっきりしています。
受注側には、対応済みの企業と、当面は対応しない企業がどちらも相当数いるということです。
取引先が数十社あれば、両方が混じっていても不思議ではありません。
「入れても使われないのでは」という不安は、取引先全体を一つの集団として見たときに生まれます。
取引先を対応の状況ごとに分けて考えれば、すぐ移れる先、時間がかかる先、当面は移らない先に、それぞれ別の受け方を用意する設計に変えられます。
| 仕組み | 取引先に求めること | 取引先が導入しない場合 |
|---|---|---|
| 共通EDI | 同じ方式の導入 | 運用できない |
| データ連携基盤(構想) | 既存システムの変更を前提としない | 異なる受発注システムへ接続しデータを自動変換する想定 |
| 受注側企業の回答 | 割合 |
|---|---|
| 2021年までに電子受発注に対応 | 48.5% |
| 当面対応の予定なし | 34.8% |
▼ 図の内容を文字で読む
- すぐ移れる先
- 2021年までに対応と回答した企業は48.5%(受注側全体の回答)
- 時間がかかる先
- 対応していても別の方式かもしれない
- 当面は移らない先
- 当面対応の予定なしは34.8%(受注側全体の回答)
発注側の得るものと、取引先に求める操作を分けて考える
自社の作業と取引先の作業を書き分ける
取引先ごとの受け方を考える前に、導入で自社の何が変わり、取引先に何を頼むのかを分けて書き出しておくと、判断がぶれにくくなります。
両方を一つの「導入効果」にまとめてしまうと、取引先が使わない場合の影響が見えなくなるからです。
たとえば、月に数十件の資材発注を10社ほどの取引先へ出している担当者を考えてみます。
今はExcelで発注書を作ってFAXで送り、納期は電話かFAXの返信で受け取って、その内容をExcelに書き写しています。
入荷の際には、そのExcelと納品書を見比べて照合します。
Web受発注に切り替えると、発注側では発注書の作成と送信が画面への登録で済むようになります。
取引先の回答が同じ画面に返ってくれば、書き写す作業もなくなります。
発注と回答の履歴が一箇所に残るので、FAXの束や受信メールから過去の発注を探す手間も減ります。
一方、取引先の作業はどう変わるでしょうか。
FAXを受け取って紙で確認していた担当者は、画面にログインして発注を確認し、納期を入力する手順に変わります。
ここまでなら、作業量はそれほど変わらないかもしれません。
問題は、取引先が自社の販売管理や受注管理のシステムを使っている場合です。
画面で受け取った内容を自社システムへ転記する作業が残り、発注元ごとに別の画面を開く手間が加わることもあります。
発注側の転記が減っても、その分の転記が取引先側に残る形です。
データ連携基盤の構想が、入力データの自動変換によって既存システムをつなぐ方向を示したのも、この転記の問題に関わっています1。
効果が取引先の利用率で決まる理由
先ほどの10社のうち、6社がWeb画面で受けてくれて、4社はFAXのままだったとします。
FAXの4社分は、発注書の作成も回答の書き写しも、従来どおり残ります。
さらに、Webで受けた分の履歴はシステムに、FAX分はExcelや紙に、と記録が二箇所に分かれれば、ある資材の発注状況を確かめるたびに両方を見ることになります。
これが「二重管理」の正体です。
つまり、自社の作業がどれだけ減るかは、システムの機能よりも、どれだけの発注がシステム上でやり取りされるかで決まります。
これは調査で示された数値ではなく、作業の流れから導いた見立てです。
そのうえで言えば、取引先の数より発注の量で考えるほうが実態に近くなります。
取引先が10社でも、発注の半分を占める1社がWebで受けてくれれば、残り9社がFAXのままでも、その1社分の転記はなくなります。
反対に、件数の少ない取引先ばかりが移っても、効果は小さくとどまります。
そう考えると、問いは「導入すべきか」だけではなくなります。
どの取引先にどの受け方を当てれば、自社の転記と照合のどこが減り、どこが残るのか。
次に考えるのは、その振り分けです。
▼ 図の内容を文字で読む
- 6社がWeb画面で受ける:残り4社はFAXのままになる
- FAX分の作業が残る:発注書の作成も回答の書き写しも従来どおり
- 記録が二箇所に分かれる:Webの分はシステム、FAXの分はExcelや紙
- 確認のたびに両方を見る:これが二重管理になる
取引先ごとに受け方を決める判断条件
Web画面で受けてもらう場合
受け方は大きく、取引先に自社のWeb画面で受けてもらう、データ連携で受ける、従来の手段と併用する、の三つに分けて考えられます。
どれを当てるかは、取引先がすること、取引先側に残る作業、そして取引先の事情で変わります。
下の表の目安は、ここまでの作業の整理から考えた振り分けの一例です。
Web画面で受けてもらう形は、取引先が専用のシステムを持っていなくても始めやすい受け方です。
FAXを受け取って紙で管理している取引先なら、紙が画面に変わるだけでなく、過去の発注を画面で探せるようになります。
取引先側にも得るものがある、と説明できる受け方です。
向かないのは、取引先がすでに自社の受注システムを持ち、発注元も多い場合です。
前の節で見たように、画面で受けた内容を自社システムへ打ち直す作業が取引先に残ります。
取引先の担当者が「御社の画面だけ別に見なければならない」と感じれば、FAXのほうが楽だと言われる理由にもなります。
依頼する前に、その取引先が今どうやって受注を記録しているかを聞いておけば、断られる理由を先に把握できます。
データ連携で受ける場合
データ連携は、自社と取引先のシステムの間で、発注や回答のデータを直接やり取りする受け方です。
取引先が自社システムで受注を管理している場合、画面からの打ち直しがなくなるので、取引先の負担を減らせる可能性があります。
中小企業庁が構想したデータ連携基盤も、異なる受発注システムに接続してデータを自動変換し、取引先を含めて既存システムを変えずに運用することを目指していました1。
ただし、それは構想としての方向です。
自社が検討する製品が、取引先のどのシステムとどの形式でつながるかは、製品ごとに異なります。
接続の設定や試験には取引先側の協力も要るので、取引量が多く、取引先にもシステムの担当者がいる先から検討するのが現実的です。
取引先の数が少なく取引量もそれほど多くない段階では、全取引先に連携を用意するより、主要な一、二社だけを候補にするほうが準備の負担に見合います。
従来手段を併用する場合
受注側で「当面対応の予定なし」と答えた企業が一定数いることを踏まえると、従来手段との併用は、移行が終わるまでの仮の措置と考えるより、受け方の一つとして最初から設計に入れておくほうが現実に合います。
問題は併用そのものではなく、記録が二箇所に分かれることでした。
そこで、FAXや電話で受けた発注・回答も、発注側の担当者がシステムへ登録するという運用が考えられます。
書き写しの手間は残りますが、記録はシステムの一箇所にまとまり、発注状況を確かめるときに見る場所は一つになります。
取引先が画面を使わなくても発注側の担当者が代わりに登録できるかは、製品によって違うので、導入前に確かめておきたい点です。
取引先をどの受け方に振り分けるかの目安としては、取引量、取引先が自前の受注システムを持っているか、取引先の担当者が新しい画面に慣れているか、発注内容の変更や追加がどれくらい多いか、といった点が挙げられます。
変更の多い取引では、電話での行き違いが起きやすく、画面に履歴が残ることの価値が大きくなります。
どの取引先にも当てはまる正解はないので、目安で仮に振り分け、試行で確かめながら直していく前提で考えるとよいでしょう。
| 受け方 | 取引先がすること | 取引先側に残る作業 | 向きやすい取引先の目安 |
|---|---|---|---|
| Web画面 | 発注側の画面で確認・回答 | 自社システムがあれば転記 | 自前の受注システムがない先 |
| データ連携 | 自社システムからデータでやり取り | 接続の準備と試験 | 自前の受注システムがあり取引量が多い先 |
| 従来手段の併用 | これまでどおりFAX・電話・メール | 変化なし(発注側がシステムに登録) | 当面対応の予定がない先・試行前の先 |
▼ 図の内容を文字で読む
- Web画面
- 自前の受注システムがない先
- 自社システムがあれば転記が残る
- データ連携
- 自前の受注システムがあり取引量が多い先
- 接続の準備と試験が要る
- 従来手段の併用
- 当面対応の予定がない先・試行前の先
- 受けた分は発注側がシステムに登録
依頼から試行、段階的な切り替えまでの進め方
協力的な少数先で試行する
振り分けが決まったら、いきなり全取引先へ案内を送るのではなく、協力してくれそうな少数の取引先で試すところから始めます。
ここで示す進め方は、公的な資料で効果が確かめられた手順ではなく、ここまでの整理から考えた一つの組み立て方です。
最初にするのは、取引先ごとの聞き取りです。
今どの手段で発注を受けているか、自社の受注システムがあるか、画面を操作する担当者は誰か。
振り分けの表を埋めるための情報であり、断られる理由を事前に知る機会にもなります。
試行先には、取引の頻度が高く結果が早く分かる先、担当者と連絡が取りやすい先、すでに他の発注元との間で電子受発注に対応している先を選ぶと進めやすくなります。
依頼の際は、なぜ切り替えたいのか、取引先側でしてもらう作業は何か、取引先に費用を求めないこと、使い方が分からないときの問い合わせ先、そして当面はFAXや電話でも受けることを伝えます。
取引先が気にするのは、自分たちの手間が増えるのか、断ったら取引に響くのか、という点だと考えられるからです。
試行中に確かめたいのは、試行先での入力ミスと問い合わせの件数です。
数量や納期の入力違いがどの項目で起きたか、どんな問い合わせが何件来たかを記録しておくと、手順書のどこを直すべきかが見えてきます。
同じ質問が何度も来るなら、画面の見方や操作の説明が足りていないということです。
こうして手順と問い合わせ先が固まってから対象を広げれば、二社目以降には固まった手順で説明できます。
試行と並行して進められる作業もあります。
残りの取引先への聞き取り、FAX分をシステムへ登録する担当と期限の取り決め、社内向けの運用ルールづくりは、試行の結果を待たずに始められます。
併用期間と期限を決める
併用を受け方の一つとして認めるとしても、期限のない併用は二重管理をそのまま固定してしまいます。
どの取引先をいつまで従来手段で受けるのかを決めておかないと、「いずれ移ってもらう」予定のまま何年も経つことになりかねません。
期限は、一律の月数で決めるより、試行の結果と取引先ごとの事情で置くほうが無理がありません。
試行先で問い合わせが落ち着き、手順書が固まった時点を目安に、次のグループの切り替え時期を決める、といった置き方です。
また、期限は「その日からFAXを受け付けない日」とするより、「受け方を取引先と改めて話し合う日」と位置づけるほうが、次の節で見る法的な線引きとも整合します。
併用の間は、運用のルールも決めておきます。
受け付ける窓口をどこにするか、FAXや電話で受けた分を誰が何日以内にシステムへ登録するか、FAXとシステムの内容が食い違ったときにどちらを正とするか、の三つです。
特に三つ目は、取引先が画面とFAXの両方で回答してきたときに迷いやすい点です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先ごとの聞き取り
- 協力的な少数先で試行
- 入力ミスと問い合わせから手順を固める
- 固まった手順で対象を広げる
応じない取引先への対応と、利用を求めるときの法的な線引き
購入・利用強制に当たる行為
併用の期限を決めても、移ってくれない取引先は残ります。
そのとき「使ってもらえないなら取引を見直す」と言いたくなるかもしれませんが、ここには法的な線引きがあります。
2026年1月に下請法から改称された取適法では、委託事業者が指定する役務などを、正当な理由なく強制的に中小受託事業者に利用させ、対価を支払わせることが購入・利用強制として禁止されています(第5条第1項第6号)3。
また、自己のために経済上の利益を提供させ、中小受託事業者の利益を不当に害することも違反になります(第5条第2項第2号)3。
これらの規定は、取適法の適用対象となる取引に限られます。
適用には資本金などの要件があり、自社と取引先との取引が該当するかは個別に確かめる必要があります。
個々の依頼が違反に当たるかどうかも、取引の内容や依頼の経緯によって判断されるもので、一律には言えません。
そのうえで、Web受発注の導入で注意したい設計は見えてきます。
取引先に利用料やアカウント料を負担させる形や、使わない取引先への発注を減らすことをほのめかす頼み方は、適用対象の取引では購入・利用強制や不当な経済上の利益の提供要請と受け取られるおそれがあります。
依頼はあくまで依頼として伝え、応じられない取引先には理由を聞き、従来手段での受け付けを続けるか、データ連携など別の受け方を検討するほうが、取引関係も損ないにくい進め方です。
応じない理由には、操作に人手を割けない、自社システムへの打ち直しが負担になる、社内の情報管理の決まりで外部の画面を使いにくい、といったものが考えられます。
理由によって打てる手は違います。
操作の負担なら説明や手順書で、打ち直しの負担ならデータ連携で、社内の決まりならしばらく従来手段で、と分けて考えられます。
電磁的方法で発注するときの条件
電子で発注すること自体にも条件があります。
取適法の運用基準では、発注内容の明示を、メールやEDIなどで取引先の機器の画面に明瞭に表示する方法で行えるとされています4。
一方で、取引先から書面を求められた場合は、遅滞なく書面を交付することとされています4。
交付しなくてよい例外は、取引先から電磁的方法を求められ、閲覧できる状態にある場合などに限られます4。
ここでも、適用対象となる取引であることが前提です。
実務に置き換えると、Web画面で発注している取引先から紙の発注書を求められたら、画面と同じ内容を印刷して渡せる手順を用意しておくということです。
画面に発注内容が表示されていても、項目が省略されて読み取りにくい、取引先の機器で表示が崩れる、といった状態では、明瞭に表示しているとは言いにくくなります。
試行の段階で、取引先の画面で発注内容がどう見えているかを一度確かめておくと安心です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 操作の負担
- 操作に人手を割けない
- 説明や手順書で対応
- 打ち直しの負担
- 自社システムへの打ち直しが負担
- データ連携を検討
- 社内の決まり
- 情報管理の決まりで外部の画面を使いにくい
- しばらく従来手段で受ける
Web受発注システムの導入前に確認する費用負担・既存システム連携・取引先条件
取引先に求めない費用
ここまでの整理を、契約前の確認に落とし込みます。
最初に確かめたいのは、取引先側に費用が発生しない料金体系かどうかです。
製品によっては、発注側の利用料とは別に、取引先側のアカウントや機能に費用がかかる場合も考えられます。
前の節で見たとおり、取引先に利用料を負担させる形は、取適法の適用対象の取引では購入・利用強制に当たるおそれがあります3。
適用対象でない取引でも、費用を求められれば取引先が断る理由になります。
見積もりを取るときは、取引先の数が増えたときに誰の費用がどう変わるのかを、提供者に具体的に聞いておくと判断しやすくなります。
金額は製品と契約条件によって異なるため、複数の提供者の条件を同じ前提で並べて比べることになります。
費用以外の負担も確認します。
取引先に必要な端末やネットワーク環境、アカウントの発行や初回設定の作業、説明会への参加の有無など、取引先にしてもらうことの一覧を提供者から出してもらえれば、依頼の際にそのまま伝えられます。
基幹システムとの連携方式
二重管理は、取引先との間だけで起きるとは限りません。
Web受発注システムと、自社の販売・購買・在庫を管理する基幹システムがつながっていなければ、発注データや取引先からの納期回答を、基幹システムへ手で打ち直すことになります。
取引先とのFAXがなくなっても、社内の転記が残れば、記録が二箇所に分かれる構図は変わりません。
連携の方式は、ファイルを書き出して取り込む形から、自動でデータをやり取りする形まで考えられ、製品や基幹システムの側が何に対応しているかによって変わります。
確認したいのは、発注データがどの方向に、どのタイミングで流れるか、そして取引先の回答がどこに戻るかです。
回答が基幹システムに戻らなければ、入荷予定を見るたびにWeb受発注の画面を別に開くことになります。
あわせて、併用期間の運用と書面への対応も、契約前に提供者へ確かめておきます。
FAXや電話で受けた分を発注側が代わりに登録できるか、発注内容を書面として印刷できるかは、ここまで見てきた運用を回せるかどうかに直結します。
| 確認項目 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 取引先側の費用 | 取引先にアカウント料や利用料がかからないか |
| 取引先側の作業 | 必要な端末・環境、初回設定、説明会の有無 |
| 基幹システムとの連携 | 発注データがどの方向にいつ流れるか |
| 回答の戻り先 | 取引先の納期回答が基幹システムに戻るか |
| 代理登録 | FAXや電話で受けた分を発注側が登録できるか |
| 書面対応 | 発注内容を書面として印刷して渡せるか |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先側の負担
- アカウント料や利用料がかからないか
- 必要な端末・環境、初回設定、説明会の有無
- 基幹システムとの連携
- 発注データがどの方向にいつ流れるか
- 取引先の納期回答が基幹システムに戻るか
- 併用と書面への対応
- FAXや電話で受けた分を発注側が登録できるか
- 発注内容を書面として印刷して渡せるか
取引先ごとの受け方は、取引先の一覧と現在の発注の流れを並べてみないと決めにくく、担当者一人で振り分けると判断が偏りやすいためです。
現在の発注方法と取引先の状況をもとに、どの取引先から試すか、どこに転記が残るかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 二重管理の原因 | 記録が二箇所に分かれること。併用分も発注側がシステムに登録すれば記録は一つにまとまる |
| 受け方の振り分け | 取引量、取引先の受注システムの有無、画面操作への慣れ、発注変更の多さ |
| 試行 | 協力的な少数先で始め、入力ミスと問い合わせ件数で手順を直す |
| 併用の期限 | 取引先ごとに、受け方を話し合う時期として置く |
| 法的な線引き | 取適法の適用対象の取引では、利用料の負担や利用の強制を避ける。書面を求められたら遅滞なく交付する |
| 契約前の確認 | 取引先側の費用と作業、基幹システムとの連携と回答の戻り先、代理登録と印刷の可否 |
契約前に確かめる内容は、自社の基幹システムや取引先との条件によって変わるためです。 取引先側の負担や基幹システムとの連携について、提供者に何を確認すべきかを洗い出せます。
よくある質問
取引先が使ってくれない場合、FAXとの併用はいつまで続けてよいですか。
決まった期間はありません。
試行先で問い合わせが落ち着き、手順が固まった時点を目安に、取引先ごとに見直しの時期を決める方法が考えられます。
期限は、FAXを一方的に打ち切る日ではなく、受け方を取引先と改めて話し合う日と位置づけると、取引関係を損ないにくくなります。
期限を決めないまま併用を続けると、記録が二箇所に分かれた状態が固定されやすくなります。
取引先にシステム利用料を負担してもらうことはできますか。
取適法の適用対象となる取引では、指定する役務などを正当な理由なく強制的に利用させて対価を支払わせることは購入・利用強制に当たり、自己のために経済上の利益を提供させて中小受託事業者の利益を不当に害することも違反になります3。
取引先に利用料を負担させる設計は避け、費用は発注側で持つ前提で製品を選ぶのが無難です。
適用対象かどうかは資本金などの要件で決まるため、個別の取引は専門家に確認してください。
電子で発注しているとき、取引先から紙の発注書を求められたらどうすればよいですか。
取適法の運用基準では、書面を求められた場合は遅滞なく交付することとされています4。
電子での発注を続ける場合でも、画面の発注内容を印刷して渡せる手順を用意しておけば対応できます。
適用対象となる取引であることが前提です。
取引先の数が少ない場合も、データ連携まで検討する必要がありますか。
必ずしも必要ではありません。
データ連携は、取引先が自社の受注システムを持ち、取引量が多い場合に取引先の打ち直しを減らせる受け方で、接続の準備には双方の手間がかかります。
取引先が少ないなら、Web画面と従来手段の併用で始め、取引量の多い一、二社だけを連携の候補にする考え方もあります。
ただし、自社の基幹システムとWeb受発注のつなぎ方は、取引先の数とは関係なく検討が必要です。
最初の試行はどんな取引先で始めるのがよいですか。
取引の頻度が高く結果が早く分かる先、担当者と連絡が取りやすい先、すでに他の発注元との間で電子受発注に対応している先が候補になります。
試行中は入力ミスと問い合わせの件数を記録し、手順書を直してから対象を広げます。
- 1 出典:日刊工業新聞社(ニュースイッチ)「中小企業庁が中小企業の電子受発注実現へ開発する「データ連携基盤」の全容」(2021年)
- 2 出典:オリックス・レンテック株式会社「受発注のデジタル化は製造業にどんなメリットをもたらすか」(中小企業庁「令和3年度取引条件改善状況調査」の引用)
- 3 出典:公正取引委員会「委託事業者の禁止行為」(取適法、2026年施行)
- 4 出典:公正取引委員会「取適法の運用基準」(令和7年制定、令和8年改正)
画像の出典元
- High angle view of a businessman working at a desk with a laptop, tablet, and documents./Photo by RDNE Stock project on Pexels