◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 「最短4カ月」などの表記は、SAP連携前提のテンプレート単体の標準導入のように構成と諸条件が付いた期間であり、市場全体の相場ではない
- 期間の起点と終点が資料に書かれていない場合があり、取引先の利用開始まで含むかは提供元に確かめる必要がある
- 自社の期間は連携・マスタ・取引先別設定・取引先展開の作業量で変わり、自社側の準備が遅れれば稼働の日も後ろへずれる
- 段階導入か一括切替かは、取引先の数と慣れ、並行運用の負担、設定を一度に整えられるかで判断する
- 2021年度の調査で電子受発注に対応と回答した企業は受注側48.5%、発注側40.9%で、展開計画の手掛かりにはなるが導入期間の根拠にはならない
目次

Web受発注システムの「最短◯カ月」だけでは自社の開始時期を決められない理由
Web受発注システムの導入を決めたあと、社内や取引先から「いつから使えるのか」と聞かれ、提供元の資料にある「最短◯カ月」をそのまま答えてよいか迷う場面は少なくありません。
確認できた公式資料では、「最短」はカスタマイズなしなどの諸条件を付けた標準導入の期間として示されています。
取引先が使い始める日までを含むとは書かれていません。
自社の期間は、基幹システムとの連携、マスタ整備、取引先ごとの価格や承認の設定、取引先への展開で変わります。
起点と終点、条件を提供元に確かめ、一部の取引先から始める前提で組むと、答えられる日付が見えてきます。
社内・取引先に期間を問われたときの困りごと
期間を問う人によって、知りたい中身が少しずつ違います。
営業部長が知りたいのは、FAXや電話で受けている注文をいつ減らせるかです。
受注担当者が知りたいのは、新しい画面で注文を処理し始める日と、それまでに覚える操作です。
得意先や仕入先などの取引先が知りたいのは、自社の担当者がいつからログインして注文を入れればよいか、FAXをいつまで送ってよいかです。
同じ「いつから使えるか」でも、指している日が三つあります。
システムが社内で動き始める日、取引先が使い始める日、旧来の受発注をやめる日です。
提供元の資料にある月数がこのどれに当たるのか分からないまま一つの日付を答えると、食い違いが起きます。
社内からは「もう使えるはずでは」と言われ、取引先からは「案内が来ない」と言われます。
答えに詰まるのは、担当者の準備不足というより、手元の数字がどこからどこまでの期間かを示していないことが原因です。
まず、公式資料の表記を一つ取り上げて、数字に何が付いているかを読んでみます。
公式表記の一例:最短4カ月に付く諸条件
日立システムズのWeb受注テンプレート(SAPソリューション)のページには、SAPシステムとの連携を前提としたWeb受注テンプレート単体の標準導入は最短4カ月で構築可能と書かれています1。
同じページには、期間や金額にはカスタマイズ無しなどの諸条件があると注記されています1。
この一文には、期間の範囲を狭める言葉がいくつも入っています。
「SAPシステムとの連携を前提」は、受注データを渡す先の基幹システムがあらかじめ決まっているという意味です。
「テンプレート単体」は、用意された受注の仕組みをそのまま使う範囲を指します。
「標準導入」と「カスタマイズ無し」は、自社の業務に合わせた作り込みをしない場合の話です。
そのうえで「最短」とあるので、条件がそろって最も早く進んだ場合の期間だと読めます。
つまり4カ月は、SAPを基幹システムとして使う企業が、用意された仕組みに業務を合わせて導入する場合の期間です。
この製品の特定の構成についての数字であり、Web受発注システム全般の相場でも、小規模なクラウド型サービスの期間でもありません。
ほかの製品資料に別の月数や日数が書かれていても、前提の構成や条件が違えば、数字だけを並べて比べることはできません。
起点と終点が書かれていない場合の読み方
もう一つ見落としやすいのが、期間の起点と終点です。
先のページには、4カ月をどの時点から数え始め、どの時点で終えるのかは書かれていません1。
「構築可能」という言い方からは、システムを組み上げるまでの期間と読むのが自然です。
それ以上のことは、ページからは判断できません。
起点の候補には、契約の締結、要件確認の打ち合わせ開始、作業開始の日などがあります。
終点の候補には、システムの構築完了、社内での稼働開始、取引先の利用開始、FAXや電話の受付をやめる日があります。
起点が契約日か打ち合わせ開始日かで、社内の稟議や契約手続きの期間が含まれるかどうかが変わります。
終点が構築完了なら、その後に社内の操作練習や取引先への案内が続きます。
社内や取引先に日付を伝えるときは、提供元の構築が終わる見込みの日と、その後に自社で進める作業の期間を分けて示すとよいでしょう。
相手ごとに知りたい日を答えやすくなります。
そのためには、提供元の作業に何が含まれているかを知る必要があります。
▼ 図の内容を文字で読む
- システムが社内で動き始める日
- 受注担当者が新しい画面で注文を処理し始める
- 取引先が使い始める日
- 取引先の担当者がログインして注文を入れ始める
- 旧来の受発注をやめる日
- FAXや電話での受付を終える
最短が成り立つ前提条件:標準導入の作業範囲とカスタマイズの有無
標準導入に含まれる作業
先のテンプレートでは、導入作業の内容として環境構築・テンプレート導入・マスター設定支援・教育・稼働支援が挙げられています1。
受発注の仕事に置き換えると、次のような作業です。
- 環境構築:システムを動かすための土台を用意する作業
- テンプレート導入:あらかじめ作られた受注の画面や処理を組み込む作業
- マスター設定支援:商品や取引先などの基本データ(マスタ)を登録する作業の支援
- 教育:システムの操作方法を伝える作業
- 稼働支援:使い始めの時期に運用を支える作業
注目したいのは、マスタが「設定支援」と書かれている点です。
「支援」という書き方からは、登録する商品の一覧や取引先の情報そのものは、導入する会社が用意する前提と読むのが自然です。
どこまでを提供元が入力し、どこからを自社が準備するのかはページに書かれていません。
品番や単価の一覧を誰が整えるのかは、見積もりの段階で確かめておきたい点です。
また、この作業内容に取引先への案内や利用登録が含まれるとは書かれていません1。
教育の対象が社内の受注担当者だけなのか、取引先の担当者まで含むのかも、ページの記載からは分かりません。
前の節で見た終点の問題とつなげると、最短4カ月の範囲で取引先が使い始めるところまで進むとは限らない、ということになります。
取引先が使い始めるまでの期間は、提供元に別途確かめる項目として切り分けておきます。
カスタマイズ・連携の追加で外れる条件
同じページでは、SAPとの連携はテンプレートに組み込み済みで、カスタマイズなどがある場合は別途プログラム修正が必要だと説明されています1。
最短の期間は、組み込み済みの連携と標準の画面・処理をそのまま使うことで成り立っていると読めます。
では、どんなときに条件から外れるのでしょうか。
たとえば、得意先ごとに単価の決め方が違って標準の画面では表しきれない場合や、注文を受けたあとに社内の承認を何段階も通している場合を考えてみます。
今の業務をそのまま再現しようとすると画面や処理に手を加えることになり、それがカスタマイズにあたります。
基幹システムがSAPでなければ、組み込み済みの連携はそもそも使えません。
カスタマイズや連携の追加でどれだけ期間が延びるかは、ページには書かれていません。
延びる幅は修正の量で決まります。
そのため、一般的な月数を当てはめるより、自社の業務のどこが標準と合わないかを先に洗い出すほうが確かです。
その一覧をもとに、提供元から追加の期間と費用を出してもらいます。
業務を標準の仕組みに合わせるか、仕組みを業務に合わせるかは、期間を左右する判断でもあります。
フルスクラッチが長期化しやすいという記述
開発方式の観点では、TS-BASEを運営する竹田印刷の記事に、フルスクラッチ(既存の仕組みを使わず一から個別に開発する方式)は理想的なシステムを構築できる分、導入までの期間が長期間になりやすいという記述があります3。
ただし月数は示されておらず、クラウド型サービスや一部を作り込む方式の期間についての記述もありません。

日立システムズの資料と並べると、二つの資料は異なる立場から同じ方向を指しています。
用意された仕組みをそのまま使うほど期間は短く示され、自社に合わせて作るほど長くなりやすい、という方向です。
ただし、どちらの資料からも方式ごとの標準的な月数は読み取れません。
言えるのは、期間の数字は構成と条件に強く左右されるため、条件をそろえずに製品どうしの「最短」を比べても判断材料にならない、というところまでです。
| 観点 | 標準導入として書かれている作業 | 別途・記載のない作業 |
|---|---|---|
| システム | 環境構築・テンプレート導入 | カスタマイズ(別途プログラム修正) |
| データ | マスター設定支援 | 品番・単価などマスタの元データの準備 |
| 人 | 教育・稼働支援 | 取引先への案内・利用登録 |
| 期間の範囲 | 最短4カ月(諸条件付き) | 取引先の利用開始・旧方式の停止まで |
導入期間を延ばす要因を作業単位で見積もる:連携・マスタ・取引先別設定・取引先展開
自社の作業を4つに分けて数える
最短の数字が自社にそのまま当てはまらないとすれば、自社の期間は何で決まるのでしょうか。
ここでは編集部の提案として、導入に伴う自社側の作業を、連携・マスタ・取引先別設定・取引先展開の4つに分けて数える方法を紹介します。
それぞれの作業にかかる日数の相場は確認できていません。
ここで扱うのは月数ではなく、作業の大きさを測るものさしです。
連携は、Webで受けた注文を基幹システムや販売管理システムへ渡す仕組みです。
今は受注担当者がFAXの注文書を見ながら販売管理の画面へ打ち直しているとします。
連携ができれば、この転記が減ります。
その代わり、どの項目をどの欄へ渡すかの対応付けや、実際に注文を流して確かめるテストが必要になります。
作業の大きさを決めるのは、連携先の数、注文を送るだけか在庫や出荷の情報も戻すのか、連携の仕組みが標準で用意されているか、といった点です。
マスタは、商品・取引先・配送先などの基本データです。
商品の一覧が部署ごとのExcelに分かれていたり、同じ商品に複数の品番が付いていたりすると、登録の前に整理が必要です。
作業が止まるのは、件数が多いときだけではありません。
誰が正しい一覧を持ち、誰が最終的に決めるのかが決まっていないときにも止まります。
品目数、データの置き場所、整理の担当者を数えておきます。
取引先別設定は、取引先ごとに表示する商品、単価や掛率、注文の承認ルールなどを登録する作業です。
全取引先が同じ価格表で注文するなら設定は少なくて済みます。
取引先ごとに個別の単価を結んでいる場合は、その数だけ設定と確認が必要です。
価格パターンや承認ルールが何通りあるかを数えると、作業量の目安になります。
取引先展開は、取引先に新しい受発注の方法を案内し、利用者の登録や操作の説明をして、実際に使い始めてもらうまでの作業です。
取引先の社数や、各社の担当者がWebでの注文に慣れているかどうかで、案内の手間や問い合わせの量が変わります。
前の節で見たとおり、この作業が提供元の標準導入に含まれるとは限らないため、自社の計画に組み込んで考えます。
提供元の作業と自社の作業の切り分け
4つの作業を数えたら、それぞれを「提供元の標準導入に含まれるもの」「別途の追加になるもの」「自社だけで進めるもの」に分けます。
先のテンプレートを例にすると、マスター設定支援は標準導入に含まれ、カスタマイズは別途のプログラム修正になります1。
この区分を自社の作業一覧に当てはめると、次のように整理できます。
- 標準導入に含まれる:環境構築、テンプレートの組み込み、マスタ登録の支援など、提供元が資料に挙げている作業
- 別途の追加になる:標準の画面や処理に合わない業務への対応、標準で用意されていない連携
- 自社だけで進める:マスタの元データの整理、取引先ごとの価格や承認ルールの決定、取引先への案内
こう分けると、自社だけで進める作業が提供元の作業と並行して進み、しかも提供元の作業の前提になっていることが見えてきます。
マスタの元データがそろわなければ、提供元が登録を支援する段階に進めず、テスト用の注文も流せません。
つまり、マスタが遅れると注文のテストが進みません。
取引先ごとの価格が決まっていなければ、画面に表示される単価が正しいかも確かめられません。
提供元の構築が予定どおり進んでも、自社側の準備が遅れれば、その分だけ稼働の日は後ろへずれます。
連携の設計やテストにどれだけかかるか、取引先別の価格や承認の設定が標準の範囲に収まるかは、自社の業務を見てもらわなければ提供元も答えられません。
作業一覧と数えた量を持って相談すれば、「最短」に何が上乗せされるのかを具体的に示してもらいやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 連携
- 連携先の数
- 在庫や出荷の情報も戻すか
- 連携の仕組みが標準で用意されているか
- マスタ
- 品目数
- データの置き場所
- 整理の担当者
- 取引先別設定
- 価格パターンの数
- 承認ルールの数
- 取引先展開
- 取引先の社数
- 担当者のWeb注文への慣れ
一部の取引先から始めるか、全体を一度に切り替えるか
判断条件で比べる
取引先展開の作業量が見えてくると、次に迷うのが切り替え方です。
一部の取引先から先に始める段階導入と、全取引先を同じ日に切り替える一括切替のどちらが早く済むかを実測で示した資料は、確認できていません。
そこで期間の数字ではなく、どちらが自社の条件に合うかを、次の三つの条件で比べる考え方を編集部として提案します。
- 取引先の数とITへの慣れ
- 旧来の受発注との並行運用の負担
- マスタや価格の設定を一度に整えられるか
一つ目の取引先の数と慣れは、展開時の問い合わせの量に関わります。
取引先が数社で、どの担当者もWebでの注文に慣れているなら、一度に切り替えても案内と問い合わせ対応は回しやすいでしょう。
取引先が数十社、数百社あり、普段FAXで注文してくる担当者が多い場合は事情が違います。
同じ日に全員が初めて画面を触ると、受注担当者に操作の質問が集中します。
しかも、その間も通常の注文を処理しなければなりません。
二つ目の並行運用は、段階導入を選んだときの負担です。
一部の取引先はWebで注文し、残りはFAXや電話のまま、という期間がしばらく続きます。
その間、受注担当者は二つの経路から注文を受け取ります。
同じ注文がFAXとWebの両方で届いていないか、FAXの注文を基幹システムへ転記し忘れていないか、といった確認が旧来の仕事に加わります。
並行期間が長引くほどこの二重の確認も続く点は、段階導入で見落としやすい負担です。
三つ目のマスタと価格の設定は、一括切替の前提条件です。
全取引先を同じ日に切り替えるには、その日までに全取引先分の価格と承認ルールを登録し、確認を終えておく必要があります。
取引先ごとの個別単価が多い会社では、この準備が終わるまで切り替えの日を決められません。
段階導入なら、先に始める取引先の分だけ設定を整えれば動き出せます。
まとめると、取引先が少なくWebに慣れていて、設定を一度に整えられるなら一括切替を、取引先が多く設定のパターンも多いなら段階導入を検討する、という整理になります。
ただし、これは条件からの見立てです。
段階導入のほうが全体の期間が短くなると確かめたものではありません。
最初の数社で確かめること
段階導入を選ぶなら、最初に始める数社は、全体へ広げる前に自社の見立てを確かめる機会になります。
取引先の中から、注文の頻度がある程度あり、新しい方法に協力を得やすい会社を選ぶと、使い始めてからの様子がつかみやすくなります。
その期間に見ておきたいのは、たとえば次のような点です。
- Webで受けた注文のうち、受注担当者が電話やメールで内容を問い合わせ直した件数
- Webを案内した後もFAXや電話で届いた注文の件数と、その理由
- 取引先の担当者から寄せられた操作の質問の内容
- 画面に表示された単価や商品が、取引条件と食い違っていた件数
- 基幹システムへの転記が実際にどれだけ減ったか
FAXに戻る注文が多ければ、操作の説明か画面の分かりにくさに原因があるかもしれません。
単価の食い違いが見つかれば、ほかの取引先の設定も同じ手順で見直す必要があります。
こうした点を直してから次の取引先へ広げ、また同じ点を確かめる。
この繰り返しで展開を進めると、次の取引先に何日ほど見込めばよいかを、自社の実績から見積もれるようになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 全取引先を同じ日に切り替える一括切替
- 取引先が少なくWebでの注文に慣れている
- 全取引先分の価格と承認ルールを切り替えの日までに整えられる
- 一部の取引先から始める段階導入
- 取引先が多く設定のパターンも多い
- 先に始める取引先の分だけ設定を整えれば動き出せる
- FAXやWebの二つの経路で受ける並行運用が続く
▼ 図の内容を文字で読む
- 対象の取引先で使い始める
- 問い合わせ・FAXへの戻り・単価の食い違いを確かめる
- 操作の説明や設定を直す
- 次の取引先へ広げる
Web受発注システムの依頼前に決めておくことと、提供元に確認する項目
社内で先に決める項目
ここまでの話を、提供元に見積もりを依頼する前の準備に置き換えます。
社内で先に決めておきたいのは、次の4点です。
- 最初に対象とする取引先と商品の範囲
- マスタの元データを整え、最終的に決める担当者
- 取引先ごとの価格や承認のルールを新しい仕組みに載せる必要があるか
- 社内や取引先に伝える「使える日」を、どの時点の日とするか
対象の範囲が決まっていないと、提供元はすべての取引先と商品を前提に見積もるしかありません。
見積もりの前提が、自社が知りたい範囲とずれてしまいます。
マスタの担当者が決まっていないと、提供元のマスター設定支援を受ける相手が社内にいないため、作業が止まります。
価格や承認のルールを新しい仕組みに載せるかどうかは、標準の範囲に収まるか、カスタマイズが必要になるかの分かれ目です。
「使える日」の定義は、最初の節で見た三つの日のどれを答えるかを、社内であらかじめそろえておくためのものです。
提供元への確認5項目
提供元に確かめたいのは、次の5点です。
いずれも、製品ページの期間表記だけでは読み取れない点です。
- 期間の起点と終点(契約日と作業開始日のどちらから数え、構築完了・社内稼働・取引先の利用開始のどこで終わるか)
- 「最短」に付く諸条件の内容
- 取引先の利用開始までの作業が範囲に入るか
- 連携の有無と、それに伴う追加作業
- カスタマイズが必要になった場合の追加期間と費用
1と3は、社内向けと取引先向けに伝える日付を分けるための確認です。
終点が構築完了で、取引先への展開が範囲外なら、提示された期間のあとに自社で展開の期間を足すことになります。
2と5は、最短の数字が自社にどこまで当てはまるかを判断するための確認です。
前の節で数えた取引先別の価格パターンや承認ルールを示し、それが諸条件の内側に収まるのか、カスタマイズになるのかを聞くと、答えが具体的になります。
4は、受注担当者の転記がどこまで減るかと、連携のテストにかかる期間の両方に関わります。
回答がそろえば、提供元の作業期間、自社の準備期間、取引先展開の期間を並べて、どの作業が日付を決めているかが見えてきます。
提供元が公表していない項目は、個別の回答に頼るしかありません。
口頭で聞いた内容を見積書や提案書の記載と照らし合わせておくと、あとで範囲の食い違いが見つかったときに確かめやすくなります。
取引先が使い始めるまで:普及状況から見た展開の見込み
取引先の導入率と読み方(2021年度)
取引先展開の負担を見込むうえで、取引先側が電子的な受発注にどの程度慣れているかは気になるところです。
オリックス・レンテックの記事は中小企業庁の「令和3年度取引条件改善状況調査」を引用し、回答のあった22,757社のうち、電子受発注に2021年までに対応と回答した受注側企業は48.5%だったと紹介しています2。
発注側企業の導入率はさらに低く、全体で40.9%と報告されています2。
調査は2021年9〜11月に、88,800社を対象に行われました2。
自社がどちらの立場で導入するかによって、見るべき値が変わります。
得意先から注文を受けるためにWeb受注の仕組みを入れる会社にとって、画面で注文を入れるのは得意先、つまり発注側です。
仕入先へ注文を出すためにWeb発注の仕組みを入れる会社にとっては、注文を受け取る仕入先が受注側にあたります。
どちらの値で見ても、2021年度の時点では、電子受発注に対応と回答しなかった企業が半数を超えていたことになります。
ただし、この値を読むときには限界があります。
まず、2021年度の値であり、現在の普及水準を示すものではありません。
発注側の40.9%は、何社を母数にした割合なのかが引用元に明示されていません。
また、原典の報告書から直接取った値ではなく、記事での引用として示された値です。
そして何より、導入率は取引先がどれだけ電子的な受発注に慣れているかの手掛かりにはなっても、導入期間の根拠にはなりません。
展開計画への反映の仕方
全国の割合からは自社の取引先の状況は分からないため、展開の計画には、自社の取引先を一社ずつ見た情報を使います。
手元で分かるのは、各取引先が今どの方法で注文しているか、すでにほかの会社のWeb受発注の画面を使っているか、担当者がメールやWebでのやり取りに慣れているか、といったことです。
電子受発注に対応している取引先にとっても、自社の新しい画面は別の操作になります。
取引先から見れば、取引のある会社ごとに別々の画面へログインし、それぞれの操作を覚えることになるからです。
他社の仕組みに慣れていることは追い風になりますが、自社の画面の案内や利用登録が不要になるわけではありません。

反対に、FAXや電話で注文している取引先が多い場合は、先に見た段階導入の条件に当てはまりやすくなります。
こうした取引先には、利用開始の前に操作の説明に加えて、Webで注文するとどの手間が減るのか、FAXでの注文をいつまで受け付けるのかを伝えておく必要があります。
取引先が使い始めるまでの日数について、一般的な目安として使える資料は確認できていません。
展開の期間は、最初の数社で実際にかかった日数を手掛かりに、自社で見積もることになります。
| 項目 | 導入率(%) |
|---|---|
| 受注側 | 48.5 |
| 発注側 | 40.9 |
最短の条件に自社の業務が収まるか、取引先別の価格や連携がどこまで標準で扱えるかは、自社の作業一覧を見たうえでなければ判断しにくいため。
作業一覧をもとに、標準導入で進められる範囲と、追加作業や取引先展開として別に見込むべき範囲を切り分けて確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 「最短」の読み方 | 構成(例:SAP連携前提のテンプレート単体)と諸条件(カスタマイズなし等)が付いた標準導入の期間 |
| 起点と終点 | 契約日か作業開始日か、構築完了・社内稼働・取引先の利用開始のどこまでかを提供元に確認 |
| 期間を左右する自社作業 | 連携・マスタ・取引先別設定・取引先展開の量を数える |
| 切り替え方 | 取引先の数と慣れ、並行運用の負担、設定を一度に整えられるかで判断 |
| 取引先の普及状況 | 2021年度に電子受発注に対応と回答した企業は受注側48.5%、発注側40.9%。導入期間の根拠にはしない |
取引先の数や注文方法によって、段階導入と一括切替のどちらが合うか、どの取引先から始めるかの判断が変わるため。 自社の取引先の状況をもとに、最初に始める取引先の選び方と、利用開始までに準備する事項を整理できます。
よくある質問
「最短◯日」と書かれている場合、取引先が使えるようになる日と同じですか
同じとは限りません。
確認できた日立システムズのWeb受注テンプレートの資料では、最短4カ月は標準導入の構築期間として示されており、作業内容に取引先への展開が含まれるとは書かれていません1。
終点が構築完了なのか取引先の利用開始なのかを提供元に確かめ、範囲外であれば展開の期間を自社で足して考えます。
基幹システムと連携するかどうかで、導入期間は大きく変わりますか
変わる可能性はありますが、その幅を示す一般的な資料は確認できていません。
連携が標準で用意されていれば最短の条件に入ります。
ただし、日立システムズの例はSAP連携がテンプレートに組み込み済みの場合の話です1。
標準外の連携や項目の対応付けが必要な場合は、その設計とテストの分を提供元に見積もってもらいます。
カスタマイズを避けると、どこまで期間を短縮できますか
どこまで短くなるかは製品と業務によるため、一律には言えません。
カスタマイズなしで標準導入に収まれば、提供元が示す最短の条件に近づきます1。
ただし、取引先ごとの単価や承認ルールを標準に合わせて変えるなら、その業務変更を社内と取引先で合意する時間が別に必要です。
作り込みで延びる期間と、業務を合わせる手間を比べて判断します。
一部の取引先から始める場合、旧受発注と並行する期間をどう見積もればよいですか
並行期間の一般的な目安は確認できていないため、最初の数社で実際にかかった日数をもとに見積もるのが現実的です。
Webを案内してからFAXや電話の注文がどれだけ残ったか、問い合わせがいつ落ち着いたかを記録しておくと、次の取引先に必要な日数の手掛かりになります。
並行中は二つの経路の注文を照らし合わせる確認が続くため、その負担も計画に入れておきます。
提供元に見積もりを依頼するとき、期間について最初に聞くことは何ですか
まず、期間の起点と終点です。
契約日から数えるのか作業開始日から数えるのか、構築完了で終わるのか取引先の利用開始まで含むのかで、同じ月数でも社内や取引先に伝える日付が変わります。
そのうえで、最短に付く諸条件と、自社の業務がその条件に収まるかを聞きます。
- 1 出典:株式会社日立システムズ「Web受注テンプレート(SAPソリューション)」(2026年)
- 2 出典:オリックス・レンテック株式会社「受発注のデジタル化は製造業にどんなメリットをもたらすか」(2021年度調査の引用)
- 3 出典:株式会社竹田印刷「Webの受発注システムの選び方とコストの目安」(2023年公開・2026年更新)