◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- Web受発注で減るのは、注文を読み取り・聞き取りして書き写す作業と、それに伴う確認です。減るのはWeb経由に切り替わった注文の分だけです。
- 残るのは例外注文の判断、商品・価格マスタの維持、取引先への案内、締め時間後の扱いといった決める作業で、運用ルールとして先に決めておく必要があります。
- 2021年度調査を引用した記事では電子受発注の導入率は受注側48.5%・発注側40.9%で、取引先入力型と取り込み型を取引先ごとに使い分け、注文は一つの受注データにまとめるのが現実的です。
- 販売管理や会計とつながない部分には打ち直しやマスタの二重管理が残るため、価格の正をどこに置くかと、手作業の担い手を決めておきます。
- 効果は、導入前と同じ定義で訂正件数・問い合わせ件数・Web経由比率などを数え、移行の区切りごとに見直して確かめます。
目次

注文から出荷・請求までの転記と確認が、Web受発注でどう変わるか
電話で聞いた品番を受注表に書き写し、FAXの数量が読み取れずに折り返しの電話をかける。
こうした転記と確認は、取引先が注文画面に自分で入力するWeb受発注に変えると、注文が届いた時点でデータになるため、入口の段階から減らせます。
ただし、どれだけ減るかは二つの条件で変わります。
一つは取引先が実際に画面から注文してくれるか、もう一つは受け取った注文を出荷・請求の側へそのまま渡せるかです。
そのため、取引先の入力環境と社内システムとの連携の要否から進め方を選び、例外注文の受け方と効果を確かめる指標を導入前に決めておくことが要になります。
今の注文業務で転記と確認が生じる場所
たとえば、朝にFAXで注文書が届き、昼に電話で追加の注文が入り、夕方にメールで数量の変更が来る日を考えてみます。
受注担当者はFAXの手書きの数字を読み取り、電話の内容をメモに取り、メールの本文から品番と数量を拾って、受注表や販売管理システムへ入力します。
この時点で、同じ注文が取引先の手元と受注側の画面に別々の形で存在し、その間を人の目と手がつないでいます。
転記と確認が起きやすいのは、注文の形が変わる場所です。
手書きの「1」と「7」の読み違い、電話で聞いた品番の聞き違い、変更のメールに気づく前の内容で入力してしまう行き違いは、どれも受け手が注文を解釈し直す場面で生じます。
読み取りに自信がなければ取引先へ折り返し電話をかけることになり、相手が不在なら確認待ちの注文が手元に残ります。
受注の入力が済んでも、転記は終わりません。
出荷担当者へは出荷指示書を作って渡し、月末には受注の記録や納品書の控えから請求書を作り、その内容を会計ソフトへ入力します。
受注表と販売管理が別々なら、同じ注文をもう一度打ち込む場面も出てきます。
注文1件の流れの中で、内容を書き写す場所が受け取り・出荷・請求の段ごとにあり、そのたびに照合の手間と食い違いの余地が生まれています。
Web受発注で注文データの入口が変わる点
Web受発注は、受注側が用意した注文画面に取引先がログインし、商品・数量・希望納期を自分で入力して送る仕組みです。
電子受発注とも呼ばれ、注文が紙や音声ではなく、最初からデータとして受注側に届く点が電話・FAX・メールとの大きな違いです。
入口が変わると、先ほどの読み違いや聞き違いが起きる場面そのものがなくなります。
品番を書いてもらう代わりに登録済みの商品から選んでもらう形にしておけば、存在しない品番や表記ゆれのある注文も入りにくくなります。
電子受発注のメリットとしては、データ入力・転記・書類管理の負担軽減、手作業によるミスの減少、紙やコストの削減、情報共有の即時化が挙げられています1。
ただしこれは一般的な整理であり、どれだけ減るかは注文の件数やWeb経由に切り替わる割合によって会社ごとに違います。
変わらない部分もあります。
届いた注文を受けてよいか、在庫や納期の面で応えられるかを判断するのは、引き続き受注側の仕事です。
また、Webで受けた注文データを出荷や請求の側へ渡す方法が決まっていなければ、画面に表示された注文を見ながら販売管理へ打ち直すことになり、転記は紙から画面へ場所を移すだけになります。
Web受発注で何が減るかは、入口のデータ化と、そのデータをどこまで後ろの工程へ流せるかの二つで決まります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先が画面から注文する
- 取引先の入力環境に左右される
- 注文が届いた時点でデータになる
- 読み違いや聞き違いが起きる場面そのものがなくなる
- 出荷・請求の側へそのまま渡せる
- 渡せなければ販売管理へ打ち直しになり、転記が紙から画面へ移るだけになる
- 転記と確認が減る
- 減る量は注文件数とWeb経由の割合で会社ごとに違う
電話・FAX・メール受注と比べて、Web受発注で減る作業と残る作業
減る作業
入口が取引先の入力に変わったとき、電話・FAX・メールの受注と比べて減るのは、注文を解釈して書き写す作業と、それに伴う確認です。
- FAXの読み取りや電話の聞き取りをして、受注表へ書き写す作業
- 読めない文字や聞き取れなかった品番を確かめる折り返しの電話
- 変更や追加が複数の経路で届いたとき、どれが最新の注文かを探して突き合わせる作業
- 紙の注文書をファイルに綴じ、後から探し出す作業
これらが減るのは、作業が速くなるからではなく、注文の形を変える工程そのものが入口から外れるためです。
取引先が入力した内容がそのまま受注データになるので、受け手が読み直したり聞き直したりする余地がありません。
注文の履歴を取引先側の画面でも見られる形にするなら、「あの注文は届いていますか」という問い合わせも、相手が自分で確かめられるようになります。
一方で、減るのはWeb経由に切り替わった注文の分だけです。
取引先の半分がこれまでどおりFAXで送ってくるなら、FAXの読み取りと転記はその半分について残ります。
減る作業を見積もるときは、取引先の数ではなく、どの取引先がどれだけの注文件数を占めているかで考えると、切り替えの効果が見えやすくなります。
残る作業(例外注文・マスタ・取引先案内)
Web化しても人手が残るのは、書き写す作業ではなく、決める作業です。
電話の受注では担当者がその場で吸収していた判断が、Web受発注では画面の外にこぼれるため、運用ルールとして先に決めておく必要があります。
- 例外注文の判断:特注品、通常より短い納期、在庫が足りない品の注文など、画面の選択肢に収まらない注文を受けるかどうか
- 商品・価格マスタの維持:Web上に表示する商品、取引先ごとの価格、改定の時期をそろえておく作業(マスタとは、商品や価格など取引の土台になる基本情報の台帳のことです)
- 取引先への案内と問い合わせ対応:ログイン方法、注文の手順、締め時間の説明
- 締め時間後に届いた注文の扱い:いつの受付として処理するか、出荷日をどう伝えるか
- 旧経路で届き続ける注文の処理:Webを使わない取引先からのFAXやメール
なかでも見落としやすいのがマスタの維持です。
電話の受注なら、古い価格で注文を受けても担当者が気づいて直せることがありました。
Web受発注では取引先が画面の価格を見て注文し、その内容がそのまま受注データになるため、マスタの誤りは人の目を通らずに先へ進みます。
入口の転記が減るぶん、入口に置く情報の正しさの比重が上がるということです。
締め時間も同じ構造です。
電話なら「今日の分はもう締めました」とその場で伝えられますが、Webの注文画面は夜間や休日にも注文を受け付けます。
たとえば17時締めの会社に19時に入った注文を、翌営業日の受付とするのか、当日扱いで出荷を調整するのかが決まっていないと、担当者ごとに対応が分かれ、取引先への回答もそろいません。
残る作業は量が減っても、判断の質が問われる仕事です。
どこまでを画面とルールで決め、どこからを人が判断するかの線引きは、次に考える進め方の選び方とも関わってきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 減る作業(Web経由に切り替わった注文の分)
- FAXの読み取りや電話の聞き取りと書き写し
- 読めない・聞き取れない点を確かめる折り返しの電話
- どれが最新の注文かを探して突き合わせる作業
- 残る作業(決める作業)
- 例外注文の判断
- 商品・価格マスタの維持
- 取引先への案内と問い合わせ対応
- 締め時間後に届いた注文の扱い
- 旧経路で届き続ける注文
- Webを使わない取引先のFAXやメールは、その分の読み取りと転記が残る
取引先入力型と、既存の受注方法を取り込む型の選び分け
導入率から見る取引先の状況
進め方を選ぶ前に知っておきたいのは、取引先がWebで注文する習慣を持っているとは限らないことです。
中小企業庁の令和3年度取引条件改善状況調査(2021年9〜11月実施、88,800社を対象に22,757社が回答)を引用した記事によると、電子受発注に対応していた企業は受注側で48.5%、発注側で40.9%でした1。
受注側と発注側は同じ調査の中でも別々の回答者の集まりに対する値で、二つを比べて優劣を論じる性格の数字ではありませんが、どちらも半数には届いていません。
2021年の報道では、中小企業庁側が業界ごとに仕様の異なる電子受発注をつなぐ仕組みを整え、導入率を当時の約2割から2023年めどに約5割へ引き上げる目標を示していました2。
この約2割は先の48.5%・40.9%とは出所も定義も異なるため、同じ数字の推移として読むことはできません。
言えるのは、いずれの資料でも、当時は電子受発注を使う企業が半数に届いていない状況が示されていたということです。
もう一つ、導入のきっかけについての手がかりがあります。
同じ記事では、製造業が電子受発注を導入した理由として取引先からの要請が最も多かったとされ、近い将来の導入予定がない企業も一定数あるとされています1。
製造業の回答に限った話ですが、自社だけの判断よりも、取引先から求められて使い始める例が多いことがうかがえます。
これを受注側の立場に当てはめると、取引先に入力してもらえるかどうかは、自社がどれだけ頼みやすい関係にあるかに左右されやすいと考えられます。
大口の取引先に対して「来月からWebで注文してください」と言える立場は、多くの受注担当者にとって当たり前ではありません。
だからこそ、取引先の協力を前提にした進め方と、取引先の注文方法を変えずに社内側から整える進め方を、取引先ごとに使い分ける考え方が出てきます。
2つの進め方の比較表
一つは、取引先に注文画面へ入力してもらう取引先入力型です。
もう一つは、FAX・メール・Excelといった今の注文方法を取引先に残してもらい、受注側が受け取った注文を同じ受注データへ取り込む型です。
取り込み方は、受注担当者が代わりに受注画面へ入力する、決まった書式のExcel注文書を受けて読み込むなど、使う仕組みや設定によって変わります。
表のうち判断が分かれやすいのは、取引先の負担と社内の手間の釣り合いです。
取引先入力型は、相手に注文の手順を変えてもらう代わりに、受注側の転記がなくなります。
取り込み型は、相手に何も求めない代わりに、受注側の入力は残ります。
ただし取り込み型でも、注文がばらばらの受注表やメールの受信箱ではなく一つの受注データにまとまるため、最新の注文を探す手間や、出荷・請求へ渡すときの打ち直しは減らせる余地があります。
価格や納期の扱いも違いが出るところです。
取引先入力型では、取引先が画面に出た価格や納期の目安を見て注文するので、表示する情報が正しいことが前提になります。
取り込み型では受注担当者が入力の時点で価格を確かめられる一方、その確認は人に依存したまま残ります。
どちらの型でも、価格の正しさを誰が保証するかを決めておくことが、後で請求の食い違いを防ぐ土台になります。
どちらから始めるかの判断条件
二つの型は、どちらか一方を選ぶものではありません。
取引先ごとに注文の頻度、相手の入力環境、こちらから頼める関係かどうかが違うため、取引先を分けて考えると選びやすくなります。
- 同じ商品を繰り返し、頻繁に注文してくる取引先:入力の手順を一度覚えてもらえば毎回の転記がなくなるため、取引先入力型の効果が出やすい候補です
- 注文担当者がパソコンで業務をしていて、メールでのやり取りに慣れている取引先:画面での入力に抵抗が少ないと考えられます
- 特注や仕様の相談が多く、注文のたびに打ち合わせが必要な取引先:画面の選択肢に収まらない注文が多いため、取り込み型で受け、受注データの一元化を先に進める方が無理がありません
- 注文方法を変えるよう頼みにくい取引先:取り込み型から始め、相手の都合のよい時期に切り替えを相談します
- 取引先が自社の発注システムを持っていて、そこへの入力を求めてくる場合:自社が相手の画面で注文を受け取る立場になるため、相手のシステムから受注データをどう取り出すかが論点になります
取引先ごとの注文件数に偏りがある場合、件数の多い取引先が入力型に向くか取り込み型に向くかで、最初の効果の大きさは変わります。
取引先ごとの月の注文件数と注文経路を一覧にしてみると、どこから手を付けると転記が最も減るかが見えてきます。

どちらの型から始めても、目指す状態は同じで、入口がどこであれ注文が一つの受注データにまとまっていることです。
そのデータを出荷や請求へどう渡すかが、次の判断になります。
| 項目 | 導入率(%) |
|---|---|
| 受注側 | 48.5 |
| 発注側 | 40.9 |
| 観点 | 取引先入力型 | 既存の受注方法を取り込む型 |
|---|---|---|
| 取引先の負担 | 注文画面への入力手順を覚えてもらう必要がある | 今の注文方法のままで負担は増えにくい |
| 社内の手間 | 受注時の転記がなくなる一方で案内と問い合わせ対応が増える | 受注データへの入力や取り込みが受注側に残る |
| 価格や納期の扱い | 取引先が画面の表示を見て注文するため表示情報の正しさが前提になる | 入力時に担当者が確かめられるが確認は人に依存する |
| 例外注文 | 画面の選択肢に収まらない注文は別の経路で受ける必要がある | 従来どおり担当者がその場で判断しやすい |
| 連携の要否 | 受注データを出荷・請求へ渡せれば取引先の入力が後工程まで生きる | 取り込んだデータを同じく渡せれば打ち直しは入口の一回に減らせる |
Web受発注と商品・価格・在庫・請求システムをどこまでつなぐか
つながらない場合に残る手作業
Web受発注の画面で受けた注文は、それだけでは出荷も請求もされません。
販売管理システムや在庫の台帳、会計ソフトが別に動いているなら、受注データをそこへ移す作業が必要になります。
つながっていない場合に残る手作業は、おおむね次のような形で現れます。
- 受注の打ち直し:Web画面の注文を見ながら販売管理へ同じ内容を入力する
- マスタの二重管理:商品や価格をWeb側と販売管理側の両方に登録し、改定のたびに両方を直す
- 在庫の確認:Web側に在庫数が出ていなければ在庫切れの品の注文が入り、欠品の連絡が残る
- 出荷後の修正:分納や欠品で数量が変わったとき、受注データと請求の数量を別々に直す
- 会計への計上:請求の内容を会計ソフトへ入力し直す
打ち直しは、紙からの転記に比べれば元の文字が正確なぶん、読み違いは起きにくくなります。
それでも件数が多ければ時間はかかり、入力漏れや二重入力の余地も残ります。
マスタの二重管理はさらに厄介で、価格改定をWeb側だけに反映して販売管理側を直し忘れると、取引先が見た価格と請求書の価格がずれます。
この食い違いは注文の時点では見えず、請求書が届いてから取引先に指摘されて初めて分かることになりがちです。
取引先ごとに仕様の違う受発注をどうつなぐかは、個々の会社だけの課題ではありません。
2021年の報道によると、中小企業庁は業界やサプライチェーンの系列ごとに異なる電子受発注システムに接続し、入力データを自動変換する「データ連携基盤」を開発し、2022年中の運用開始を目指すとしていました2。
会計・経理や決済システムとの連携も視野に入れているとされています2。
これは報道時点の計画で、利用を考える場合は現在の提供状況を所管の案内で確かめる必要がありますが、受発注をデータ化しても仕組みどうしがつながらなければ人が間に入って変換し続けることになる、という問題の所在をよく示しています。
連携方法を確認する項目
連携の方法には、受注データをCSVファイル(項目をカンマで区切った表形式のファイル)で書き出して販売管理に読み込む方法や、API(システム同士が決まった手順で自動的にデータを受け渡す仕組み)でつなぐ方法などがあります。
どの方法が使えるかはWeb受発注の仕組みと販売管理の双方の仕様で決まり、同じ名前の機能でも出せる項目や頻度が違うことがあります。
製品を比べる段階で次の点を具体的に聞いておくと、導入後に残る手作業が見積もりやすくなります。
- 受注データを書き出す形式と、取り込みが手動か自動か、どの頻度で行えるか
- 商品コードと取引先コードが販売管理のものと一致するか。
一致しない場合、対応表を誰が保守するか - 価格の正をどちらのシステムに置き、もう一方へどう反映するか
- 在庫数をWeb側に表示するか。
表示するならどの頻度で更新されるか - 分納・欠品・キャンセルで数量が変わったとき、どちらのシステムで直し、相手側へどう伝わるか
- 請求と会計への受け渡しを、販売管理を経由して行うか
このなかで後から変えにくいのは、価格の正をどこに置くかです。
販売管理を正として価格をWeb側へ流すのか、Web側で取引先別の価格を管理するのかで、改定の手順も、食い違いが起きたときにどちらを信じるかも変わります。
導入当初からすべてをつなぐ必要はありませんが、つながない部分については誰がどの頻度で手作業を担うのかを決めておくと、Web化したのに作業が減らないという事態を避けやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受注の打ち直し
- Web画面の注文を見ながら販売管理へ同じ内容を入力する
- マスタの二重管理
- 商品や価格を両方に登録し、改定のたびに両方を直す
- 直し忘れると取引先が見た価格と請求書の価格がずれる
- 在庫の確認
- Web側に在庫数が出ていないと、在庫切れの品の注文が入り欠品の連絡が残る
- 出荷後の修正と会計への計上
- 分納や欠品で数量が変わると、受注データと請求の数量を別々に直す
- 請求の内容を会計ソフトへ入力し直す
取引先に無理なく移行してもらう順序と例外注文の扱い
段階移行の順序
取引先入力型を広げるとき、最初から全取引先に切り替えを求めると、使い方の問い合わせと旧経路の注文が同時に押し寄せます。
取引先からの要請が導入のきっかけになりやすいという調査結果1を裏返せば、受注側から頼む場合は、相手にとっての利点と負担の小ささを示しながら少しずつ広げる方が、受け入れられやすいと考えられます。
進め方の一例は次のとおりです。
- 社内の受け付けルールを決める:締め時間、例外注文の受け方、旧経路の注文をどう受注データへ入れるか
- 注文頻度が高く、話を聞いてもらいやすい取引先の数社で試す
- 試した期間に出た問い合わせや入力の迷いを、案内資料とマスタの修正に反映する
- 対象の取引先を広げ、旧経路は終了の目安を伝えたうえで当面残す
- 旧経路で届く注文は担当者がWebの受注データへ代わりに入力し、記録を一つにまとめる
ルールを最初に置くのは、試行に入ってから決めると、最初の取引先への回答が場当たりになるためです。
試す取引先を選ぶときは、注文件数の多さだけでなく、使いにくい点を率直に伝えてくれる相手かどうかも手がかりになります。
その声で案内資料を直してから対象を広げると、後から参加する取引先の迷いが減ります。
取引先にとっての利点は、受注側の都合とは別に伝える必要があります。
たとえば、営業時間外でも注文を送れる、送った注文の内容を後から画面で見返せる、電話がつながるのを待たなくてよい、といった点は、取引先の購買担当者の手間に関わります。
こうした利点が実際にあるかは使う仕組みと設定によるため、案内の前に自社の画面で確かめておきます。
反対に、ログインの手間や最初の数回の入力に時間がかかることは隠さず伝え、問い合わせ先を一つに決めておくと、切り替えへの抵抗を和らげやすくなります。
例外注文の受付ルール
Web受発注に移ったあとも、画面の外から届く注文はなくなりません。
例外をなくそうとするより、例外がどの経路で届き、誰が判断し、どこに記録されるかを決めておく方が現実的です。
- 締め時間後の注文:何時以降を翌営業日の受付とするか。
急ぎの場合の連絡先と、当日扱いにするかを決める人 - 電話・FAX・メールで届いた注文:受けた担当者がWebの受注データへ代行入力するか。
元の注文書や記録をどこに残すか - 特注・規格外の注文:画面では受けず相談の窓口へ回すのか、備考欄に書いてもらい受注側で確認するのか
- 在庫が足りない品の注文:受け付けたうえで納期を回答するのか、受注を保留にするのか
- 注文後の訂正・取消:取引先が画面で直せる期限と、それを過ぎたときの連絡方法
ここで大事なのは、どの経路で届いた注文も、最後は同じ受注データに入る流れにしておくことです。
電話で受けた注文だけが担当者のメモに残っていると、出荷や請求の段で漏れやすく、取引先から問い合わせがあっても履歴をたどれません。
代行入力の手間は残りますが、注文の記録が一か所にあれば、出荷・請求へ渡す工程は経路に関係なく同じになります。
例外のルールは取引先への案内にも載せ、受注側の担当者によって答えが変わらないようにしておきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 社内の受け付けルールを決める
- 締め時間、例外注文の受け方、旧経路の注文の入れ方
- 注文頻度が高く話を聞いてもらいやすい数社で試す
- 問い合わせや入力の迷いを案内資料とマスタに反映する
- 対象の取引先を広げる
- 旧経路は終了の目安を伝えたうえで当面残す
- 旧経路の注文を代行入力して記録を一つにまとめる
Web受発注の導入後に注文ミスや確認作業が減ったかを確かめる項目
導入前に測っておく指標
Web受発注で注文ミスや確認作業が減ったかどうかは、導入前の状態を数えていなければ比べられません。
導入後に「電話が減った気がする」と感じても、それが注文の時期の偏りによるものなのか、Web化の効果なのかは区別できないからです。
比べやすいのは、件数として数えられる次のような指標です。
- 注文の訂正件数:受注後に品番・数量・納期などを直した件数
- 確認のための問い合わせ件数:注文内容を確かめるために取引先へかけた電話や送ったメール、取引先から受けた「届いているか」の問い合わせ
- 締め時間後に届いた注文の件数
- 受注処理にかかった時間:1日のうち受注の入力と確認に使った時間
- Web経由の注文比率:全注文件数に占める、Webで届いた注文の割合
- 請求時の食い違い件数:取引先から請求内容の誤りを指摘された件数
数え方は、導入前と後で同じ定義・同じ記録方法にそろえます。
たとえば問い合わせ件数なら、「注文内容の確認」と「使い方の質問」を分けて記録しておくと、切り替え直後に使い方の質問が増えても、注文の確認が減っているかどうかを見分けられます。
記録は担当者の机に置いた集計表に正の字で付けるような簡単な方法でもかまいませんが、期間は繁忙期や閑散期を避け、普段の月を1か月程度取ると比べやすくなります。
Web経由の注文比率は、ほかの指標を読むための前提になります。
比率が低いまま訂正件数が変わらなくても、それはWeb受発注の効果がなかったというより、まだ切り替わっていないということかもしれません。
逆に比率が上がっているのに訂正件数が減らないなら、入力画面の分かりにくさやマスタの誤りなど、入口の側に原因がないかを疑う手がかりになります。
見直しの判断時期
見直しの時期は、移行の区切りに合わせると決めやすくなります。
数社での試行が一段落した時点で一度、対象を広げたあとは月ごとなど一定の間隔で、導入前と同じ指標を並べます。
見直しで見るのは、数字が減ったかどうかだけではありません。
訂正の中身を見ると、転記の誤りが減った代わりに価格マスタの誤りによる訂正が目立つ、といった作業の移り変わりが分かります。
そうであれば手を入れる先は取引先への案内ではなくマスタの管理手順ですし、締め時間後の注文が増えているなら、締め時間の案内や翌営業日扱いのルールを見直す番です。
Web受発注の効果は導入した時点で決まるものではなく、こうした見直しを重ねて、残る作業を少しずつルールと画面の側へ移していくことで形になっていきます。
取引先ごとの注文経路と件数、社内の販売管理や在庫の扱いを並べてみると、入力型と取り込み型のどちらから始めるか、どこまでつなぐかは自社だけでは決めきれないことがあります。
相談では、今の受注の流れと取引先の構成をもとに、Web受発注でどの転記が減りどの作業が残るかを整理し、最初に切り替える取引先と連携の範囲を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 減る作業 | 注文を読み取り・聞き取りして書き写す作業と、その確認 |
| 残る作業 | 例外注文の判断、マスタの維持、取引先への案内、締め時間後の扱い |
| 進め方 | 取引先ごとに入力型と取り込み型を使い分け、受注データは一つにまとめる |
| 連携 | 価格の正をどこに置くかと、つながない部分の手作業の担い手を決める |
| 移行 | ルールを先に決め、数社で試してから広げる |
| 効果の確認 | 導入前と同じ定義で訂正・問い合わせ・Web経由比率などを数える |

例外注文のルールや効果を測る指標は、運用を始める前に決めておくほど、後の見直しが進めやすくなります。 導入前に数えておく指標、試行する取引先の選び方、旧経路を残す期間の考え方を、自社の受注状況に合わせて確認できます。
よくある質問
取引先がWebで入力してくれない場合、FAXやメールの注文はどう扱えばよいですか。
無理に切り替えを求めず、既存の受注方法を取り込む型で受ける方法があります。
FAXやメールで届いた注文は受注担当者がWebの受注データへ代わりに入力し、Webで届いた注文と同じ場所に記録をまとめます。
入口の転記は残りますが、最新の注文を探す手間や、出荷・請求へ渡すときの打ち直しは減らせる余地があります。
切り替えは、相手の都合のよい時期に、取引先側の利点と最初の手間を伝えたうえで相談するとよいでしょう。
締め時間後に届いた注文は、運用ルールをどう決めますか。
Webの注文画面は夜間や休日にも注文を受け付けるため、何時以降を翌営業日の受付とするかを先に決めます。
あわせて、急ぎの場合の連絡先と、当日扱いにするかを判断する人を決め、取引先への案内にも載せておくと、担当者ごとに回答が分かれるのを防げます。
導入後は締め時間後の注文件数を数えておくと、ルールや案内を見直す手がかりになります。
既存の販売管理や会計とつなげない場合、何が手作業で残りますか。
Web画面の注文を販売管理へ入力し直す作業、商品や価格をWeb側と販売管理側の両方で管理する作業、分納や欠品で数量が変わったときの修正、請求内容の会計ソフトへの入力などが残ります。
特に価格の二重管理は、改定の直し忘れで取引先が見た価格と請求書の価格がずれる原因になります。
すべてをつながなくても運用はできますが、つながない部分を誰がどの頻度で担うかを決めておくことが大切です。
発注側として使う場合と受注側として使う場合で、見るべき点は何が違いますか。
受注側は、取引先に入力してもらえるか、表示する商品・価格マスタが正しいか、例外注文や締め時間後の注文をどう受けるかが中心になります。
発注側は、自社が相手の注文画面に入力する立場になるため、仕入先ごとに画面が違うと入力先が増える点や、注文した内容を自社の購買記録や在庫管理へどう取り込むかが論点になります。
同じWeb受発注でも、自社がどちらの画面に入力するかで、減る作業と残る作業が入れ替わります。
導入後に何を数えれば、注文ミスや確認作業が減ったか判断できますか。
注文の訂正件数、確認のための問い合わせ件数、締め時間後に届いた注文の件数、受注処理にかかった時間、Web経由の注文比率、請求時の食い違い件数などが比べやすい指標です。
導入前に同じ定義で1か月程度数えておき、導入後も同じ方法で記録します。
Web経由の比率が低いうちは効果が表れにくいため、比率と並べて読むことが大切です。
- 1 出典:オリックス・レンテック株式会社「受発注のデジタル化は製造業にどんなメリットをもたらすか」(中小企業庁 令和3年度取引条件改善状況調査を引用、2021年度)
- 2 出典:日刊工業新聞社(ニュースイッチ)「中小企業庁が中小企業の電子受発注実現へ開発する「データ連携基盤」の全容」(2021年)
画像の出典元
- Three professionals discussing documents over coffee in a modern office setting./Photo by Pavel Danilyuk on Pexels
- Business meeting with professionals discussing financial reports and graphs at a work desk./Photo by Tiger Lily on Pexels