◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB通販は、価格・支払い・閲覧の範囲が取引先ごとに変わる注文の仕組みで、誰が見ても同じ画面が出る一般消費者向けの通販とは前提そのものが違います
- 業者ごとに提案も見積の額も違って見えるのは、取引の条件をどこまで仕組みに持たせるか(取引先別価格・掛け売り・会員制)の範囲が業者ごとに異なるためです
- 自社の受注方法を見積の有無・掛け売りの要否・取引先の数の三つで書き出せば、要る機能は絞り込めます。機能が定まってから仕組みを選べば、比較の軸がぶれません
目次

BtoB通販とふつうの通販は何が違う?
BtoB通販とふつうの通販の違いは、「買い手が誰か」ではなく「取引の条件を仕組みの中に持たせるかどうか」に出ます。一般消費者向けの通販は、誰が見ても同じ価格が並び、その場で支払いが済みます。取引先向けの通販は、A社とB社で単価が違い、支払いは月ごとの掛け売りで、そもそも価格を見せてよい相手が限られます。この前提の差が、取引先ごとの価格設定・掛け売りと与信管理・会員制という機能の差になり、そのまま見積の額の差になります。ですから、機能の一覧を先に比べるのではなく、いま自社がFAXや電話でどう受注しているかを書き出し、そのどこを画面に置き換えるのかを決めるのが先です。
同じ「ネット注文」でも、前提となる取引が違う
普段お使いの通販は、買う人がその場で商品を選び、その場で支払いを済ませます。売り手は相手が誰かを知らなくても取引が成り立ちます。一方、取引先向けの注文は、すでに取引の関係ができあがっている相手との間で起きます。単価も支払いの条件も、相手ごとに約束済みです。
つまりBtoB通販とは、その「すでにある約束」を画面の上で再現する仕組みだと考えると分かりやすくなります。FAXの注文書に取引先ごとの単価が印字されているなら、その単価を画面にも出さなければいけません。ここが、一般消費者向けの通販と根本的に違うところです。
違いは価格・支払い・閲覧の範囲の三つに出る
具体的な違いは、大きく三つに集まります。第一に価格の見せ方で、取引先ごとに異なる単価を出せるかどうか。第二に支払いの方法で、注文のたびの前払いではなく、月ごとにまとめて請求する掛け売りに対応できるかどうか。第三に閲覧できる範囲で、誰でも商品と価格を見られるのか、承認した取引先だけに見せるのかです。
もう一つ、注文する人の立場も違います。取引先向けでは、注文するのは会社の担当者であって、買う本人ではありません。担当者が代わっても注文の履歴が会社に紐づいて残る必要があります。この四つの観点で並べると、違いの全体像がつかめます。
業者ごとに提案の中身が違って見えるのは、この三つないし四つのうち、どこまでを標準で持っているかが違うからです。価格を一つしか持てない仕組みに取引先別価格を足せば、その分だけ見積は膨らみます。
ここまでで、BtoB通販とふつうの通販の違いが価格・支払い・閲覧の範囲に出ることと、掛け売りには与信管理がついてくることが見えました。では、自社の場合に何を確かめればよいのか。相談に進む前に、手元で書き出せる項目を順に並べます。
価格を取引先ごとに変えられる?
取引先ごとの価格は、BtoB通販の中心にある機能
変えられます。ただし、これは一般消費者向けの通販に後から付け足す機能ではなく、取引先向けの仕組みでは中心に置かれている機能です。ここを見落として一般消費者向けの仕組みを選ぶと、後から作り込みが必要になり、費用も期間も膨らみます。
確かめ方は単純です。いまの注文書や価格表を並べて、同じ商品に何通りの単価が存在するかを数えてください。取引先の数だけ単価があるのか、それとも卸値のランクがいくつかあって取引先をそこに割り当てているのか。この区別が、そのまま設定の手間の差になります。
価格を出す範囲をどこまで分けるかで、見積の額が変わる
価格の出し分けには段階があります。全社共通の一つの価格、取引先のランクごとの価格、取引先ごとの個別価格、さらに商品ごとの例外価格。下にいくほど柔軟ですが、設定と保守の手間は増えます。
また、価格だけでなく「見せる商品の範囲」を分けたい場合もあります。特定の取引先にだけ扱わせている商品があるなら、他の取引先の画面には出さない設定が要ります。ここまで必要かどうかで、提案の中身は大きく変わります。自社の実態に照らして、どの段階までが本当に要るのかを先に決めてください。
書き出してみると、自社の受注がどの形に近いかが見えてきます。受注の形が違えば、先に確かめるべき機能も変わります。ここからは、よくある三つの型に分けて見ていきます。
掛け売りや請求書払いはできる?
掛け売りに必要な機能は5つに整理できる
できます。取引先向けの通販では、むしろ掛け売りが前提です。ただし「掛け売りができる」と書かれていても、その中身は業者によって差があります。注文時に請求書払いを選べるだけの仕組みもあれば、締め日ごとの請求のまとめや入金の消込まで含む仕組みもあります。
この点について、BtoB ECの掛け売り対応に必要な機能は5つに整理でき、実施の順序に沿って優先順を付けられるという整理が示されています1。数が5つと分かっていれば、業者の資料を読むときに「このうちいくつを標準で持っているのか」という読み方ができます。機能名を一つずつ突き合わせるより、この読み方のほうが早く差が見えます。
与信管理は5つのステップで進む
掛け売りとひと続きで考えなければいけないのが与信管理です。請求書払いを受け付けるということは、代金を後から回収するということで、相手ごとにいくらまで未回収を許すかを決めておく必要があります。
BtoB ECの与信管理は大きく5つのステップで進み、各ステップの成果物を先に押さえておくと途中で迷いにくくなる、とされています2。営業事務の立場では、いま社内の誰が与信の判断をしているのかを確かめておくと話が早く進みます。その判断を画面の中に持ち込むのか、これまでどおり人が判断して結果だけを登録するのか。この分かれ目が、必要な機能の範囲を決めます。

誰でも注文できる?会員制が必要?
会員制にするかどうかは、価格を誰に見せるかで決まる
取引先ごとに単価が違うなら、価格は承認した相手にしか見せられません。ですから、取引先向けの通販はログインを前提とした会員制になるのがふつうです。ログインしていない人には商品の情報だけを見せ、価格は伏せるという作り方もよく採られます。
逆に、価格を公開しても差し支えがなく、新規の取引先を広く受け入れたい場合は、公開の範囲を広げる選択もあります。自社がどちらを望むのかは、営業の方針そのものです。担当者だけで決めず、上司に確かめておくべき項目です。
承認までの段階を決めておく
会員制にすると決めたら、取引先が注文できるようになるまでの段階を先に決めます。申し込みを受けて内容を確かめ、取引先として登録し、掛け売りの可否と単価を割り当て、ようやく注文が受けられる状態になります。
この段階のうち、どこを画面の操作に置き換え、どこを人の判断として残すのか。ここを決めずに業者に相談すると、提案の前提がそろわず、見積が比べられなくなります。
BtoB通販は、取引先との既存の約束を画面の上で再現する仕組みです。ですから、比べるべきは機能の多さではなく、自社の約束ごとをその仕組みが受けきれるかどうかです。価格の出し分け、掛け売りと与信、見せる範囲。この三つに自社の実態を当てはめれば、業者ごとの提案の差が何に由来するのかも読めるようになります。
機能の一覧を眺めているだけでは、自社の受注のどこが引っかかるのかは見えてきません。取引先向けの通販を数多く手がけてきた相手に、いまのFAXと電話の受注の流れをそのまま見てもらうのが、遠回りに見えて最も早い道筋です。
いまの受注の流れのうち、どこが画面の操作に置き換わり、どこが人の判断として残るのか。その線引きを、自社の注文書や価格表を見ながら一緒に引いてもらえます。無料相談で要件を整理する
相談の前に自社で書き出す確認項目
- 同じ商品に単価が何通りあるか(取引先ごとか、ランクごとか)
- 取引の前に見積を挟むか、価格表どおりに注文が来るか
- 掛け売りが要る取引先と、前払いでよい取引先の割合
- 取引先の数と、そのうち注文が毎月ある先の数
- 扱う商品の点数と、いま現役で動いている商品の点数
- 与信の判断を社内の誰がおこなっているか
この並びに優劣の順序はありません。
この六つが埋まれば、業者に渡す前提がそろいます。埋めた内容は、次に挙げる型のどれに近いかを見分けるためにも使えます。
自社に要る機能はどう見極める?
| 型 | ふだんの受注の形 | 先に確かめる機能 |
|---|---|---|
| 見積・交渉が中心の型 | 注文のたびに価格を相談して決める | 取引先ごとの個別価格と、見積から注文へのつながり |
| 定番品のリピートが中心の型 | 決まった商品を決まった単価で繰り返し注文が来る | 商品情報の整理と、過去の注文からの再注文 |
| 取引先が多く小口注文が中心の型 | 一件あたりは小さいが、注文の件数が多い | 掛け売りと請求のまとめ、与信の管理 |

見積を挟む取引が多いなら、価格の出し方から決める
価格を画面に出すか、出さずに引き合いだけ受けるか
注文のたびに価格を相談して決めている場合、すべての単価を画面に出すのは難しいことがあります。この型では、まず「画面に出せる価格」と「その都度決める価格」を仕分けてください。
仕分けたうえで、定番の商品だけ価格を出して注文を受け、それ以外は引き合いとして受ける、という作り方が採れます。全部を一度に置き換えようとせず、置き換えられるところから始めるほうが、現場の負担も見積の額も抑えられます。
見積から注文へ、同じ情報が引き継がれるか
この型でつまずきやすいのが、見積と注文が別々に管理されてしまう点です。見積で出した単価が注文にそのまま引き継がれないと、結局は手作業での突き合わせが残り、FAXのころと手間が変わりません。
業者に相談するときは、「見積で提示した価格で、そのまま注文を受けられますか」と具体的に尋ねてください。この一問で、提案の中身の差がはっきりします。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 画面に出せる価格の範囲 | 定番品と都度見積の商品の比率 |
| 見積と注文のつながり | 提示した単価がそのまま注文に載るか |
見積を挟む取引は、価格をどこまで画面に出すかの判断が難しく、ここを誤ると導入後も手作業が残ります。同じ形の取引を扱った経験のある相手に、仕分けの線を相談するのが確実です。
定番として価格を出せる商品と、その都度決めるべき商品の境目をどこに引くか。提示した単価がそのまま注文へ引き継がれる形にできるかを、実際の見積書をもとに確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
繰り返しの注文が多いなら、商品情報の整理が先
移行の山場は機能ではなく商品情報
決まった商品が決まった単価で繰り返し注文される型では、必要な機能はそれほど複雑になりません。代わりに負担が集中するのが、商品情報の整理です。品番・名称・入数・単価が紙や表計算にばらばらに散っていると、そのままでは画面に載せられません。
欧州を中心としたスポーツ自転車部品の輸入・卸売りをおこなう株式会社ポディウムでは、BtoB ECサイトへの移行にあたり、2万点ほどあった商品登録をかなり精査したと述べられています3。点数の多い卸売では、移行の作業量が商品情報の側に出ることがうかがえます。
いま動いている商品だけに絞る
すべての商品を移そうとすると作業は終わりません。直近で注文が動いている商品に絞り、そこから広げるほうが現実的です。絞り込みは営業事務の手元でも進められる作業で、業者を選ぶ前から着手できます。
この型では、過去の注文から同じ内容をそのまま呼び出して再注文できるかどうかも確かめてください。繰り返しの注文が多いほど、この一機能が受注の手間を大きく減らします。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 商品情報の状態 | 品番・入数・単価がそろって一覧になっているか |
| 移す商品の範囲 | 直近で注文が動いている商品に絞れているか |
| 再注文のしやすさ | 過去の注文から同じ内容を呼び出せるか |
この型で負担が集中するのは商品情報の整理で、機能の選定よりも作業の段取りが成否を分けます。点数の多い卸売の移行を扱ってきた相手に、どこから手を付けるかを相談する価値があります。
手元の商品情報のままで移せるのか、どの項目をそろえ直す必要があるのか。移す商品をどこまで絞ってよいのかも含めて、作業の量を先に見積もれます。無料相談で自社の条件を持ち込む
取引先が多いなら、掛け売りと与信の設計を先に
注文の件数が増えるほど、請求と回収の手間が効く
一件あたりは小さくても件数が多い型では、注文を受けること自体より、締め日ごとの請求のまとめと入金の確認に手間がかかります。ここを画面の側で受けられるかどうかで、導入後の負担が変わります。
掛け売り対応に必要な機能は5つに整理でき、実施の順序に沿って優先順を付けられるとされています1。取引先が多いこの型では、この順序をそのまま導入の段取りとして使うのが合理的です。
与信の判断を、どこまで仕組みに持たせるか
取引先が多いと、与信の判断を人が一件ずつおこなうのは続きません。与信管理は大きく5つのステップで進み、各ステップの成果物を先に押さえておくと途中で迷いにくいとされています2。
まずは取引先ごとの上限額を決めて登録し、それを超える注文が来たときに止まる、という形から始めるのが現実的です。判断の基準そのものは社内で決めるものですから、業者に丸ごと委ねるのではなく、決めた基準を仕組みに反映できるかを確かめる、という順で相談してください。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 請求のまとめ | 締め日ごとに取引先単位でまとめられるか |
| 入金の確認 | 入金と請求の突き合わせが画面で追えるか |
| 与信の上限 | 取引先ごとの上限額を登録し、超過時に止められるか |

取引先の数が多いほど、請求のまとめと入金の確認、そして与信の判断が積み上がります。この部分を仕組みに任せられるかどうかは、実際の運用を知る相手でないと判断が難しい箇所です。
締め日ごとの請求のまとめや取引先ごとの上限額の扱いを、自社の締めの運用に合わせて組めるか。与信の判断のうち何を人が残すべきかも整理できます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 価格 | 同じ商品の単価が取引先ごとか、ランクごとかを数える |
| 支払い | 掛け売りが要る取引先と前払いでよい取引先を分けて把握する |
| 与信 | 上限額を誰がどう決めているかを社内で確かめる |
| 閲覧の範囲 | 価格を見せてよい相手が限られるなら会員制を前提とする |
| 取引先の数 | 毎月注文がある先の数で、請求と回収の手間の大きさを見積もる |
| 商品の点数 | いま注文が動いている商品に絞り、移す範囲を先に決める |
| 受注の形 | 見積中心・リピート中心・小口多数のどの型に近いかを見分ける |
必要な機能が定まれば、あとはそれを受けられる仕組みを選ぶだけです。ただし同じ要望でも、もともと備えている仕組みと後から作り込む仕組みとでは費用の出方が変わるため、前提をそろえて伝えられる状態にしてから相談するのが得策です。 書き出した自社の受注の条件を持ち込めば、それが標準の機能の範囲で収まるのか、作り込みが要るのかを切り分けてもらえます。比べられる形の見積を得るための土台になります。
よくある質問
BtoB通販を始めたら、FAXや電話での注文はやめなければいけませんか?
やめる必要はありません。取引先によって使いやすい方法は違いますし、すべてを一度に切り替えると現場が混乱します。まず画面での注文に移りやすい取引先から始め、FAXと並行させながら少しずつ比率を移していくやり方が現実的です。業者に相談するときも、併用の期間をどう扱うかを前提として伝えてください。
取引先ごとに価格を変えると、取引先が増えるたびに設定が手作業になりませんか?
取引先の数だけ個別に単価を持たせるとそうなります。多くの場合は、卸値のランクをいくつか作り、取引先をそこに割り当てる形で手間を抑えられます。まず自社の単価が本当に取引先ごとに違うのか、実はいくつかのランクに収まるのかを数えてみてください。ここが分かると、必要な設定の量が見積もれます。
掛け売りは、すべての取引先に出す必要がありますか?
必要はありません。掛け売りを出す相手と前払いでよい相手を分けて設定できるのがふつうです。分ける基準は与信の判断にあたります。BtoB ECの与信管理は大きく5つのステップで進み、各ステップの成果物を先に押さえておくと途中で迷いにくいとされています2。まずは社内で誰がその判断をしているかを確かめてください。
商品の点数が多いと、移行は大変になりますか?
点数が多いほど、商品情報の整理に時間がかかります。欧州を中心としたスポーツ自転車部品の輸入・卸売りをおこなう株式会社ポディウムでは、BtoB ECサイトへの移行にあたり2万点ほどあった商品登録をかなり精査したとされています3。裏を返せば、この精査は業者を選ぶ前から自社で進められる作業です。
業者ごとに見積の額が大きく違うのはなぜですか?
取引先ごとの価格、掛け売りと与信、会員制と見せる範囲。これらをもともと標準で持っている仕組みと、後から作り込む仕組みとでは、同じ要望でも費用の出方が変わるためです。ですから、機能の一覧ではなく自社の要望を先に固め、同じ前提で各社に伝えるのが、額を比べられる状態にする近道です。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB EC掛売り決済の対応方法|2026年取適法と要件(EC-Rider B2B Ⅱ 公式サイト)」(2026年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB ECの与信管理の進め方|取適法対応の手順(EC-Rider B2B 公式サイト)」(2026年) 経路
- 3 出典:EC-Rider B2B Ⅱ(公式サイト)「導入事例 株式会社ポディウム様」(2025年) 経路
画像の出典元
- 30代後半の日本人女性が倉庫事務所での受注対応をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 20代前半の日本人男性が電話での問い合わせ対応をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 30代前半の日本人男性が電話での問い合わせ対応をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 20代後半の日本人女性が倉庫事務所での受注対応をしている場面/画像:生成AI(自社)