◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 移行後も紙・FAXが残る理由は、取引先が複数の発注システムへ対応しきれない事情にあることが多く、まず自社側の受け皿の問題と切り分ける
- 併用期間は紙をなくす前に、受信・仕分け・読み取り・システム反映という受け止める経路を決め、人が見る項目を限定しておく
- 移行を依頼する順番は取引件数・関係性・既存システムの保有で決め、契約や商慣習で短期に動かない取引先は別枠に置く
- 停止日を先に確定し、相手の社内手続きと繁忙期から通知の時期を逆算する。条件付きの期限は先送りされ続ける
- 例外として電話・FAXを残すのは全体に占める割合が小さい場合に限り、対象・窓口・入力担当・保存先・見直し時期を文章にしておく
目次

移行したのに紙・FAXの注文が残るのはなぜか
受発注システムは動いていて、取引先への案内も済んでいる。
それでも朝いちばんにFAXの受信を確かめ、届いた注文書を見ながら受注画面へ数量と納期を打ち込む作業が、今日もなくなっていない。
この状態が続く理由は、案内の仕方が悪かったからではなく、注文を出す側が複数の発注システムへ対応しきれないという事情にあることが少なくありません。
だとすれば順番は、紙をなくすことより先に、紙を受け止める経路を決めることです。
そのうえで取引件数・関係性・既存システムの有無で移行を依頼する順番をつけ、停止日を先に置いて通知の時期を逆算する。
件数も金額も小さい取引先だけを例外として残せば、全体の効率を大きく落とさずに紙対応を縮めていけます。
取引先側の要因:複数システムへの対応の複雑さ
併用が長引いている現場でまず押さえておきたいのは、紙が残る理由の多くが自社の努力不足ではないということです。
システムの使い勝手を磨いても、取引先への説明を重ねても減らない部分があるとすれば、原因は相手の側の条件にあります。
そこを見ないまま案内を繰り返すと、担当者の労力だけが積み上がります。
中小企業庁がミラサポplusで紹介している中小企業共通EDIの解説では、下請け構造の三次請け(Tier3)以下の企業について、複数システムへの対応の複雑さから電話やFAXでの受発注が多数を占めると説明されています1。
これは多重下請け構造がある業種を前提にした分析なので、取引構造の違う業種にそのまま当てはまるわけではありません。
ただ、取引先が複数の発注元を抱えているという条件そのものは、下請け構造でなくても起こります。
取引先の側から景色を見ると分かりやすくなります。
発注元が一社なら、ログインIDを覚えて画面の操作に慣れれば済みます。
しかし発注元が五社あって、それぞれ別のシステムで、画面の構成も締め時刻も品目コードの体系も違うとなると、どれを開けばよいかを確かめるところから作業が始まります。
そこで電話とFAXは、相手が誰であっても同じ手順で使える方法として残ります。
自社のシステムが使いにくいから紙が残っているのではなく、相手にとっては自社のシステムが「六つ目の覚えること」になっている、という構図です。
この見え方は、読者が発注側か受注側かで裏返ります。
自社がオンラインで注文を出す側なら、取引先(受注側)が自社の画面を使ってくれず、FAXで注文請書や納期回答が返ってくる形で現れます。
自社が注文を受ける側なら、発注元から紙の注文書が届き続ける形で現れます。
どちらの立場でも、動かしにくいのは相手の社内の体制であり、自社で決められるのは受け止め方と期限の置き方だという点は変わりません。
この負担が取引全体にどれだけ効いているかは、接続方式をそろえた実証の結果からも読み取れます。
同じ解説では、中小企業共通EDIの実証プロジェクト12件において、中小企業の受発注業務時間が平均で51.4%削減されたと報告されています1。
平成28年度補正の事業として実施された12件の結果であり、どの企業でも同じ削減幅になるという数字ではありません。
それでも、方式をそろえると業務時間がこれだけ動くということは、裏を返せば、そろっていない状態で発生している確認や転記の量がそれだけ大きいということでもあります。
自社側の受け皿が整っていないケースとの切り分け
一方で、紙が残る理由をすべて取引先側に置いてしまうと、自社で直せるはずの詰まりを見落とします。
案内を出した後も紙が減らない原因が、受け皿の側にあることは珍しくありません。
ここを取り違えると、相手に頼み続けても状況が変わらないという時間が過ぎていきます。
たとえば、Webの受注画面では規格品しか選べず、特注の寸法指定や数量の相談が必要な注文だけは従来どおりFAXで送ってもらう運用になっている、という場合があります。
この状態だと、取引先は移行に同意していても、注文の内容によって手段を使い分けざるを得ません。
窓口の案内が古いまま残っているケースも同じで、名刺や納品書に印刷された電話番号・FAX番号が生きている限り、急ぎの注文はそちらへ流れます。
どちらも相手の対応力とは関係のない理由です。
切り分けの手掛かりは、紙の注文の偏り方にあります。
同じ取引先がWebと紙を使い分けているなら、原因は相手の対応力ではなく、Webで扱えない注文の種類か、案内の残り方にある可能性が高くなります。
反対に、特定の層の取引先からだけ紙しか届かないのであれば、相手側の事情を前提にした移行の順番と期限の話になります。
注文書の束を一週間分だけ並べて、取引先名と注文の種類で分けてみると、どちらの形か見当がつきます。
この切り分けをしておくと、打ち手が混ざらなくなります。
自社側に理由があるなら、必要なのは取引先への説得ではなく、受注画面で扱える注文の範囲を広げることや、案内の出口を整理することです。
取引先側に理由があるなら、この後の移行の優先順位と停止日の設計が中心になります。
同じ「紙が減らない」という症状でも、進める作業は別のものです。
| 見えている状態 | 取引先側に理由がある場合 | 自社側に理由がある場合 |
|---|---|---|
| 同じ取引先がWebと紙を使い分ける | 急ぎの注文だけ従来の手段に戻している | Web画面で扱えない注文が紙に回っている |
| 案内を出しても紙が減らない | 社内に操作できる担当や端末がない | 窓口の案内が電話・FAX番号のまま残っている |
| 紙の注文が特定の層に偏る | 接続先ごとの方式が増えて対応しきれない | 取引先ごとの移行状況を把握していない |
紙注文とシステム注文が混在する期間、二重入力やミスをどう防ぐか
FAXの自動仕分けとシステム連携
併用の期間をどれだけ短くしても、その間に届く紙の注文は人が受け止めることになります。
ここを手作業のままにしておくと、移行が終わるまで負担が下がらず、現場から見れば「システムを入れたのに仕事が増えた」という時期が続きます。
併用期間の設計で先に手をつけるべきなのは、紙をなくすことではなく、紙がどの経路を通って受注データになるのかを決めてしまうことです。
受け止め方の一つが、FAXの受信そのものをクラウド側へ移す方法です。
リコーの『受注業務効率化パック』では、クラウド上でFAXを送受信し、受信したFAXを得意先や担当者ごとに自動で仕分けできるとされています2。
複合機から出てきた紙の束を朝に仕分けて各担当の机へ配る作業や、担当者が休んだ日に注文書が机に積まれたままになる状態は、この段階で形が変わります。
届いた注文が今どこにあるかを探す時間は、仕分けの時点で減る部分です。
もう一つが、Webで受け付けた注文を基幹側へ渡す経路です。
同サービスでは、Webで受注した内容を販売管理システムへ連携でき、入力漏れやミスを防げるとされています2。
気をつけたいのは、これが製品ページで示されている機能の説明であって、どれだけミスが減ったという数値が示されているわけではない点です。
連携によって確実に消えるのは、同じ内容を二つの画面へ打ち直す転記そのものであり、実際にどこまで効くかは、どの項目を連携するか、連携できない項目を誰が補うかという運用の決め方に左右されます。
この区別は、併用期間の工数の見積もりに直結します。
転記が減っても、紙で届いた注文の内容が正しく取り込まれたかを確かめる作業は残ります。
「仕組みを入れたから確認はいらない」ではなく、「確認する対象が、全項目の打ち直しから、読み取り結果の突き合わせに変わる」と捉えるほうが、見通しは合います。
併用期間の受け皿を考えるときの軸は、入り口がいくつあっても、最後は受注データとして一列に並ぶ形にできているかどうかです。
Webから入った注文、FAXから入った注文、電話で受けた注文が、それぞれ別の台帳に溜まっていると、納期回答も在庫の引き当ても入り口ごとに確認することになります。
入り口は当面増えたままでよいので、合流する地点を一つに決めておく。
これが、併用を「二重運用」ではなく「入り口が複数ある一つの運用」に変える分かれ目になります。
OCRによる帳票データ化
紙の注文をデータにするときに最初につまずくのが、書式のばらつきです。
取引先ごとに注文書のレイアウトが違い、品番の欄の位置も、数量と納期の並びも、備考の書き方もそろっていません。
取引先が数社なら読み取り位置を個別に設定する方法でも回りますが、数十社になると設定と保守のほうが負担になります。
この点について、TISIの『Paperoid』では、帳票読み取りAIにより、読み取り箇所を範囲指定せずに多様なレイアウトの帳票をテキスト化できるとされています3。
取引先ごとの定義づくりを前提にしない読み取りであれば、併用期間の途中で新しい書式の注文書が増えても、受け止め方を作り直す手間は小さくなります。
こちらも同社の製品ページで示されている機能であり、読み取りの精度や、どの業種の帳票でどこまで対応できるかという数値は示されていません。
導入を検討するときは、自社に実際に届いている注文書を何種類か渡して、読み取り結果を見てから判断する形になります。
データ化した後に何が残るかも、先に決めておくところです。
手書きで追記された「納期は相談」「前回と同じ梱包で」といった指示、訂正線で消された数量、取引先の社内品番と自社の品目コードの対応付けは、文字として読み取れても処理が決まりません。
読み取りを入れる価値は、こうした判断の必要な部分だけに人の時間を寄せられることにあります。
逆に言えば、どの項目は自動で通し、どの項目は必ず人が見るのかを決めないまま入れると、全件を目視で照合する運用になり、打ち込みが照合に置き換わっただけ、ということも起こり得ます。
電話で受けた注文は、紙にすら残らないという点で扱いが別になります。
受けた人がその場で受注画面へ入れるのか、メモに書き取ってから後でまとめて入れるのかで、抜け落ちる場所が変わります。
後者にするなら、メモの様式を決めて、誰がいつ入力したかが残るようにしておく。
併用期間は電話の件数自体を減らしにくいので、受けた内容がデータになるまでの経路を短くしておくことが、確認漏れを減らす現実的な手当てになります。
紙とデータを混在させたまま放置しないための計画
受け止める仕組みが整うと、併用の痛みは下がります。
ところが、痛みが下がると移行そのものが止まります。
紙でも回るようになった結果、取引先へ移行を依頼する動機が社内から消えてしまう、という逆転が起きやすいところです。
これを避けるために、受け皿の整備と並行して移行の工程を置いておきます。
EC-Rider B2B Ⅱの移行ガイドでは、①受注チャネルと取引先の棚卸、②移行方式の決定、③業務・システム要件の確定、④取引先の段階移行、⑤旧チャネルの停止、という五つの段階で進める方法が示されています4。
同社が移行支援の考え方として公開している手順であり、業界で定まった標準というものではありませんが、いま起きている併用を「いつまでも続く状態」ではなく「④の途中」として位置づけられる点に意味があります。
工程の中に置かれていれば、次に何が来るのかを社内で共有できます。
もう一つ、同ガイドでは、紙とデータが混在する状態を放置せず、停止日を境に記録の保存先を電子データへ一本化する計画をあらかじめ立てておくべきだとされています4。
これは整理整頓の話ではありません。
注文の記録が紙のファイルとシステムに分かれていると、後から「あの注文はいつ、どの数量で受けたか」を調べるとき、必ず両方を見ることになります。
併用が一年続けば、一年分の問い合わせ対応と棚卸しがその二重の探し方に付き合うことになるので、どの時点から保存先をそろえるかを先に決めておく意味があります。
保存先を決める作業は、停止日を決める作業と一緒に進むものでもあります。
いつから電子データだけを正とするのかが決まっていないと、紙の原本を念のため残す運用が続き、結局どちらが正しいのかを都度確かめることになります。
ここまでが、併用期間を回すための準備です。
準備ができたうえで、次に決めるのは誰から移すかという順番になります。
取引先のどこから優先的に完全移行を進めるか
取引件数・関係性・既存システム保有で判断する
受け皿と工程が決まったら、次は順番です。
取引先が数十社あれば、全社に同じだけの説明と調整の時間を割くことはできません。
どこから手をつけるかを決めないまま一斉に案内を出すと、返事が来た順に対応することになり、結果として件数の少ない取引先に工数が吸われることがあります。
順番を決めるには、手元に一覧が要ります。
移行の工程でも最初に置かれているのが受注チャネルと取引先の棚卸でした4。
取引先名、月あたりの注文件数、いま使っている手段(Web・FAX・電話・メール)、注文の種類、自社側の担当者。
この程度の欄があれば足ります。
完璧な一覧を作ろうとすると棚卸しだけで数か月かかるので、直近の数か月分の実績から埋められるところだけ埋めて、優先順位をつけながら足していくほうが進みます。
同じ移行ガイドでは、優先順位の基準として、取引件数が多い取引先、自社と関係性が深く協力を得やすい取引先、すでにクラウドサービス等のシステムを保有している取引先、という三つが挙げられています4。
この三つは、それぞれ別のことを見ています。
取引件数は、移したときに自社で減る作業量の大きさです。
月に百件届く取引先を移せば、同じ一回の説明で消える転記は、月に二件の取引先の場合とは比べものになりません。
関係性は、依頼が通るかどうかの見込みです。
相手の社内で誰が判断するか分かっていて、相談できる窓口があるなら、移行の話は検討の俎上に乗ります。
既存システムの保有は、相手側の負担の小ささです。
すでに業務でクラウドのサービスを使っている取引先であれば、新しい画面を使うこと自体への抵抗が小さく、社内に操作できる人がいます。
実際の取引先一覧では、三つがきれいにそろう相手ばかりではありません。
件数は多いが関係が薄い取引先と、件数は少ないが関係が深い取引先のどちらを先にするか、という形で迷いが出ます。
減る作業量だけを見れば前者ですが、前者は交渉に時間がかかりやすく、途中で止まると工数だけが出ていきます。
移行の初期は、関係が深く既存システムもある取引先から着手して、社内に「移行後の運用がきちんと回る」という実例を作ってから件数の多い相手に向かうほうが、説明の材料がそろいます。
件数の基準を外すという意味ではなく、どの順で当たるかという話です。
この基準に含まれていない要素もあります。
契約書で注文書の様式が定められている取引先、相手の基幹システム側の改修がないと接続できない取引先、業界の商慣習として紙の押印が残っている取引先は、件数が多くても短期では動きません。
三つの基準で並べたうえで、こうした制約がある相手は別枠に置いておくと、進まない案件に工数を注ぎ続ける状態を避けられます。
別枠に置くことは諦めることとは違い、制約が外れる時期(契約の更新、相手のシステム更改)を一覧に書き添えておけば、次に声をかける機会が決まります。
紙対応はいつまで、どの範囲まで続けるべきか
停止日を先に決め、通知を逆算する
最後に残るのが、紙をいつ止めるかです。
ここを「取引先の移行が進んだら」と置いた時点で、期限は事実上なくなります。
移行が進むかどうかは相手の都合に左右されるので、条件付きの期限は先送りされ続けるためです。
同じ移行ガイドでは、停止日を先に確定させ、そこから逆算して取引先への通知時期を決める順序が有効だとされています4。
順番が逆になっていないかは、確かめやすい点です。
通知を出してから反応を見て停止日を決めるのではなく、停止日があるから通知の中身が決まる、という組み立てになります。
逆算するときに見るのは、相手の社内で必要になる手続きの時間です。
新しい発注方法に切り替えるには、相手の側でも担当者を決め、場合によっては社内の承認を取り、操作を覚える期間が要ります。
取引先の繁忙期にその作業を重ねると、移行そのものが後回しになります。
どれくらい前に通知すべきかという期間の目安は、ここで参照している資料には示されていません。
自社の取引先の規模、相手の決裁にかかる時間、繁忙期の位置から、各社が決めることになります。
通知の中身も、停止日が決まっていると書きやすくなります。
いつから従来の方法が使えなくなるのか、代わりにどの手順で注文するのか、操作に詰まったときにどこへ連絡すればよいのか。
この三点が揃っていれば、取引先の担当者は社内で説明できます。
逆に、停止日のない「順次切り替えをお願いします」という案内は、受け取った側で優先順位が付かず、手元に残り続けます。
停止日を決めるときにもう一つ要るのが、社内の合意です。
紙を止めると、営業部門から見れば「取引先に手間をかけさせる判断」になります。
受注部門だけで日付を決めて案内を出すと、取引先からの問い合わせが営業に入った時点で例外が認められ、停止日が形骸化します。
いつ、どの範囲で止めるのかと、例外を認める権限が誰にあるのかを先に決めておくことが、日付を守る条件になります。
小口取引先は例外として残す判断
では、停止日までに全社が移行しなかった場合はどうするか。
一律に打ち切れば、注文を受けられない取引先が出ます。
かといって例外を無制限に認めれば、紙の運用が別の形で残ります。
この点について同ガイドでは、件数や金額が小さい取引先であれば、例外として限定的に電話・FAXを残しても全体の効率化効果は大きく損なわれないとされています4。
ここで効いているのは「小さい」という前提です。
全体の取引に占める割合が小さいからこそ、例外を残しても効率化の効果が保たれるという話なので、小口の取引先が件数の大半を占めている事業では同じ判断にはなりません。
自社の取引が少数の大口に集中しているのか、多数の小口に分散しているのかで、残せる例外の範囲は変わります。
棚卸しの一覧に件数を入れてあれば、上位何社で全体の何割を占めるかはその場で確かめられます。
例外を残すと決めたら、何を例外とするのかを文章にしておきます。
対象の条件(年間の取引件数や金額の基準)、受け付ける窓口、届いた注文を誰がシステムへ入力するか、記録をどこに保存するか、そしていつ見直すか。
このうち記録の保存先は、停止日を境に電子データへ一本化するという先ほどの考え方4とつなげて、例外の取引先についても紙のまま保管せず、入力後のデータ側に記録が残る形にしておくと、調べる場所が分かれません。
明文化が効くのは、例外の広がり方を止められるからです。
基準が書かれていないと、「あの会社は電話で受けているのだから」という形で例外が増えていきます。
見直しの時期を決めておけば、相手の担当者や体制が変わったタイミングで、改めて移行を打診する機会も作れます。
紙を一枚残らずなくすことが目的ではありません。
紙で受けている分がどの取引先で、どれだけあって、いつ見直すのかを自社が把握できている状態にすること。
そこまで来れば、併用はもう放置されている状態ではなく、管理されている状態です。
残った例外に毎月どれだけ手が取られているかが見えていれば、次に止めるかどうかの判断も、感覚ではなく数で決められます。
自社の取引先一覧に当てはめるときは、次の条件をどこまで満たしているかから見ていくと、限られた工数をどこへ割くかの判断が付けやすくなります。
併用期間の受け皿をどこまで仕組みで通すか、どの取引先から移行を依頼するかは、取引先の数と注文の種類、いま使っている手段の組み合わせによって答えが変わります。<br>一般論だけでは線引きが決まらず、手元の取引先一覧を見ながら整理する段階で止まりやすいところです。
現在の受注チャネルと取引先ごとの件数を一緒に見ながら、どこから移行を依頼し、どこを当面の例外として残すかの線引きと、そのときに自社側へ残る確認作業の範囲を確かめられます。無料相談で要件を整理する
取引先移行の優先順位チェック項目(取引件数・関係性・既存システム保有)
移行を依頼する順番を決めるために、自社で減る作業量・依頼の通りやすさ・取引先側の負担の小ささという条件で並べた項目です。
- 取引件数が多く、移行できれば自社で減る転記の量が大きい取引先
- 自社と関係性が深く、相談の窓口があって協力を得やすい取引先
- すでにクラウドサービス等のシステムを保有していて、社内に操作できる人がいる取引先
契約書で注文書の様式が定められている、相手側のシステム改修が必要といった制約がある取引先は、条件を満たしていても短期では動かないため、別枠にして例外の検討へ回します。
要点の整理
| 判断する場面 | 見極めの基準 |
|---|---|
| 紙が残る理由を特定する | 同じ取引先がWebと紙を使い分けているか、特定の層からだけ紙が届くか |
| 併用期間の受け皿を決める | 受信・仕分け・読み取り・システム反映のどこまでを仕組みで通し、どの項目を人が見るか |
| 移行の順番を決める | 取引件数の多さ、関係性の深さ、既存システムの保有。契約や商慣習の制約がある相手は別枠 |
| 停止日を決める | 停止日を先に確定し、相手の社内手続きと繁忙期から通知の時期を逆算する |
| 例外を残すか決める | 件数・金額が小さく、全体に占める割合が小さいか。対象・窓口・保存先・見直し時期を明文化 |
停止日の置き方と例外の基準は、決めた後で動かしにくく、取引先への通知を出してからでは修正が効きにくい部分です。<br>自社の取引構成で、どこまで一斉に止められて、どこから例外にするのかは、件数の分布を見ないと判断できません。 停止日から逆算した通知の時期、併用期間に紙の注文を受け止める経路、例外として残す範囲の決め方について、自社の取引先構成に当てはめた形で検討できます。
よくある質問
紙注文のOCR化と、自社での手入力を続けることは、どちらを優先して検討すべきですか
判断の材料になるのは、紙で受ける状態がどれくらい続く見込みか、取引先ごとの書式が何種類あるか、月あたりの件数がどれくらいかの三つです。
停止日まで数か月で、書式も件数も限られているなら、入力の担当と手順を決めて人手で通し切るほうが早いことがあります。
逆に、書式が数十種類あって期間も読めない場合は、読み取りの仕組みを検討する側に傾きます。
帳票読み取りAIには、読み取り箇所を範囲指定せずに多様なレイアウトの帳票をテキスト化できるとされるものがあり3、取引先ごとの設定を前提にしない点が、書式の多い状況では効きます。
どちらを選ぶ場合でも、入力後の記録の保存先は電子データ側に寄せておく4と、後から探すときに場所が分かれません。
取引先への旧チャネル停止の通知は、どのくらい前に送るべきですか
ここで参照している資料には、何か月前という期間の目安は示されていません。
示されているのは、停止日を先に確定させ、そこから逆算して通知の時期を決めるという順序です4。
逆算するときに見るのは、相手の社内で担当者を決めて承認を取り、新しい手順を覚えるまでにかかる時間と、取引先の繁忙期の位置です。
決裁に時間のかかる規模の取引先が多いなら、その分だけ早める。
繁忙期に移行作業が重なるなら、その期間を避けて通知と切り替えの時期を置く。
一律の日数を決めるより、取引先の層ごとに通知の時期を変えるほうが、停止日を守りやすくなります。
小口取引先の電話・FAX対応を例外として残す場合、社内ルールとして何を明文化すべきですか
少なくとも、対象の条件、受付の窓口、入力の担当、記録の保存先、見直しの時期は書いておきたいところです。
対象の条件は、年間の取引件数や金額のように後から判定できる形にしておくと、「あの会社も」という広がり方を止められます。
記録の保存先については、停止日を境に電子データへ一本化するという考え方4に沿って、例外の取引先でも紙のまま保管せず、入力後のデータに記録が残るようにしておくと、問い合わせへの対応で探す場所が分かれません。
加えて、例外を認める権限が誰にあるのかを決めておくと、現場ごとの判断で例外が増える状態を避けられます。
複数の取引先システムへの対応が難しい受注側・下請け側は、まず何から手をつければよいですか
最初に効くのは、どの発注元から、どの手段で、月に何件の注文が来ているかを一覧にすることです。
移行の工程でも、受注チャネルと取引先の棚卸が最初の段階に置かれています4。
一覧ができると、対応先を減らす交渉をどこから始めるか、自社側で受け止める仕組みをどこに入れるかが見えます。
自社側の手当てとしては、受信したFAXを得意先や担当者ごとに自動で仕分ける仕組み2や、書式の異なる帳票をテキスト化する読み取り3が、入り口の数を減らせない間の負担を下げる方向に働きます。
なお、接続の方式をそろえる取り組みとして中小企業共通EDIの実証が行われ、12件のプロジェクトで受発注業務時間が平均51.4%削減されたと報告されています1。
平成28年度補正の事業における12件の結果であり、同じ削減幅が自社でも出るという数字ではありませんが、方式の統一が業務時間に効く方向であることの手掛かりにはなります。
- 1 出典:中小企業庁「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!(ミラサポplus)」(2018年)
- 2 出典:株式会社リコー「受注業務効率化パック」(2026年)
- 3 出典:TISI株式会社「FAX受発注業務DXサービス Paperoid」(2026年)
- 4 出典:株式会社フライトソリューションズ「電話・FAX受注から脱却する方法|移行5ステップ(EC-Rider B2B Ⅱ)」(2026年)
画像の出典元
- A business professional in a brown suit analyzes printed reports at a desk with a computer./Photo by RDNE Stock project on Pexels