◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB通販の集客が伸びないときは、既存客のオンライン移行と新規取引先の獲得を、別々の数字として分けて見るところから始める
- 新規が伸びない原因は「流入がない」か「申込みで止まる」か「比較材料が足りない」かのどれかで、見る場所が異なる
- 直せる順に並べ、まずは一つの経路と一つの壁だけを選んで着手する

既存客の移行と新規集客は同じか
ECサイトを開いて半年、既存の取引先は問題なく移ってくれた。けれども新規の取引先はほとんど増えていない。上司に新規の数を聞かれて答えに詰まったのなら、まず確かめたいのは「その二つを同じ数字で見ていなかったか」という点です。既存客の移行と新規客の獲得は、動く理由も、通る経路も、つまずく場所も違います。この記事では、二つを分けて見るところから、新規の流入経路をどう絞るか、申込みの段階でどこが詰まるか、商品情報が比較検討に足りているかを順に確かめ、最後に着手の順番を決めるところまでを扱います。
移行が進んだことは、新規が伸びる理由にはならない
FAXや電話での受発注をECへ切り替えて半年で既存客が移ったのなら、それは十分な成果です。ただしこの成果は「もともと取引のある相手に、注文の入口を変えてもらった」という性質のものです。相手はすでに自社を知っていて、価格も掛け条件も決まっていました。新規の見込み客には、そのどれもありません。
経済産業省の調査では、BtoBのEC化率は43.1%で、前年比3.1ポイント上昇しています1。取引をオンラインへ移すこと自体は、業界全体で進んでいる流れです。つまり既存客の移行は「遅れていない」ことの確認にはなりますが、新しい取引先が増える理由にはなりません。
まず、二つの数字を別々に並べてみる
月次会議で答えに詰まったのなら、次の会議までにやることは単純です。この半年の受注を、既存の取引先からのものと、初めて取引した相手からのものに分けて数えます。社数と件数の両方で構いません。
この二つを並べると、多くの場合「既存の移行は進み、新規はほぼ横ばい」という形が見えます。この形が見えた時点で、課題は『ECが使われていない』ではなく『新規の入口がない』に変わります。ここを取り違えたまま操作画面の改善や機能追加を続けても、新規の数字は動きません。
流入がまったくない場合は経路の話ですが、ある程度来ているのに新規が増えないなら、見るべき場所は別にあります。
新規はどの経路から流入しているか
経路を名前で書き出し、記録が取れているか確かめる
新規が伸びないと言うとき、そもそも新規がどこから来ているかを記録していないことがあります。まず、自社サイトへの流入経路を名前で書き出します。検索から来たのか、既存客や同業からの紹介で社名を直接調べて来たのか、展示会や既存の営業活動で名刺を交換した相手が後から訪れたのか。

営業出身であれば、これまでの新規開拓がどの経路で成立してきたかを体感で知っているはずです。その経路は、オンラインでも多くの場合そのまま効きます。紙のカタログを請求されてから受注に至っていたのなら、サイト上の同じ役割を担う場所がどこかを探します。
商材の探され方で、追う経路を絞る
すべての経路を同時に育てることはできません。自社の商材が、買い手にどう探されるかで絞ります。型番や規格で指定して探される部品なら、その型番でたどり着けるかどうかが要になります。用途や課題から探される商材なら、用途の側の言葉で説明されたページが要ります。
このとき判断の材料になるのは、他社の平均値ではなく自社のログです。どの言葉で来た人が、どのページを見て、どこで離れたか。半年分あれば、傾向を読むには足ります。
申込みの壁を外しても、比べる材料がなければ見込み客は申込みまで進みません。次は商品情報の側を見ます。
既存の移行と新規の獲得を分けて数え、経路を絞り、申込みの壁と商品情報を点検する。この順で見ていけば、次の月次会議で答えるべき数字と、そのために今週やることが決まります。

既存の移行が進んでいるのに新規が伸びないという形は、卸売やメーカーのBtoB EC立ち上げで繰り返し起きます。自社の受注内訳と商品登録の現状を並べて見れば切り分けられますが、どの数字をどう分けるかの当たりは、同じ立ち上げを数多く見てきた相手のほうが早く付けられます。
半年分の受注の内訳と商品登録の現状を見せたうえで、止まっているのが流入なのか申込みなのか商品情報なのか、どこから手をつけるべきかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
掛け売り対応に必要な機能を、実施の順に並べる
順位は公表された調査に依ります2。

公表された調査に依る順序
- 与信管理
- 締め請求
- 請求書の記載要件
- 電子取引データの保存
- 入金消込
この5つのうち、新規の申込みに直接効くのは先頭の与信管理です。新規の見込み客は、申し込んだあと掛けで買えるのかどうかがその場で分からないと、そこで止まります。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 既存移行 | 紙やFAXで受けていた取引先のうち、何社がECへ移ったか |
| 新規獲得 | この期間に初めて取引を申し込んだ社数 |
| 流入経路 | 新規の流入がどの経路から来ているか記録が取れているか |
| 申込みの壁 | 与信と掛け条件が、申込みの場でその相手に示せるか |
| 商品情報 | 型番・規格・用途のいずれかで、比較して選べる状態か |
| 着手の順 | 経路を一つ、壁を一つ選び、一定期間で数え直す |

与信管理から入金消込までの掛け売り対応は、自社の締め日や請求の運用と噛み合っていなければ機能しません。何を仕組みで持ち、何を今の運用のまま残すかの線引きは、実際の導入例を知っている相手と引いたほうが手戻りが減ります。 自社の与信と掛け条件の決め方を伝えたうえで、新規の申込みをその場で受けられる形にするには何をどの順で整える必要があるかを確かめられます。
よくある質問
新規が増えないのは、サイトの見た目が古いからでしょうか。
見た目が原因であることもありますが、先に確かめる順番があります。まず流入があるかどうか、次に申込みの段階で止まっていないか、その次に比較検討に足る商品情報があるかです。この三つを見ないまま見た目を作り直すと、同じ結果を繰り返すことになります。
新規の取引先には、いきなり掛け売りを認めてよいのでしょうか。
すべてに認める必要はありません。掛け売り対応に必要な機能は与信管理から始まる5つに整理できます2。新規には与信の結果に応じた条件を出す、あるいは初回のみ別の決済とするなど、条件を分けて提示できる形にしておくことが先です。
商品の登録点数は多いほうが有利ですか。
点数そのものより、比較に足る情報が揃っているかどうかです。BtoB ECへ移行した卸売の事例では、約2万点あった商品登録を移行にあわせて精査しています3。載っているだけで選べない商品は、見込み客の判断を止めます。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2024年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB EC掛売り決済の対応方法|2026年取適法と要件」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B 導入事例(株式会社ポディウム様)」(2025年) 経路
画像の出典元
- Low angle view of tall skyscrapers against the sky in London/Photo by Andrea De Santis on Pexels
- Students focused on smartphones and laptops in a modern clas/Photo by Thirdman on Pexels
- Diverse group of professionals working on laptops at a brigh/Photo by cottonbro studio on Pexels
- Three women collaborate using a smartphone and laptop in a p/Photo by Artem Podrez on Pexels
- Low angle of high business towers with glass mirrored windows located in megalopolis downtown against blue sky/Photo by Laura Tancredi on Pexels