まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

卸価格の手戻りを減らす順序|工程と原因を切り分け、着手点を決める

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 訂正は「見つかった工程」と「食い違いが生まれた工程」を分けて記録すると、対策を打つ場所が分かる。
  • 原因は価格の持ち方、改定の伝わり方、入力・確認の順に問うと振り分けやすく、判定できない件は不明として残す。
  • 最初の一手は、掛率マスタに適用開始日・根拠・承認者・版を持たせて価格を一か所に集める整理。
  • 確認工程とシステム対応は正しい台帳が前提であり、台帳運用の限界は自社の訂正記録で見分ける。
  • 改定は根拠の整理・協議・書面での明示・版の管理で伝え、法令の適用は取引形態ごとに所管の資料で確かめる。

40代後半の日本人女性が窓際での書類確認をしている場面

取引先から「価格が違う」と言われたとき、どの工程で何を直しているのか

取引先から「価格が違う」と連絡が来るたびに、見積書を出し直し、請求書を差し替え、差額の処理まで追いかけている。
訂正は毎回終わらせていても、同じ種類の卸価格の手戻りがまた起きるなら、見直すべきなのは直す作業そのものではありません。
変えられるのは、直した記録の見方です。
訂正を発注から支払までの工程に振り分け、原因を「価格の持ち方」「改定の伝わり方」「入力と確認」に分けると、ルール整備・価格マスタの一元化・確認工程の追加・システム連携のどれから始めるかを決められます。
最初の一手には、掛率マスタに適用開始日・根拠・承認者・版を持たせる整理を勧めます。

見積書・請求書の訂正

卸価格の手戻りで表に出やすいのは、見積書と請求書の訂正です。
ただ、同じ「価格が違う」という指摘でも、見積書の段階で見つかった場合と、請求書を送ったあとに見つかった場合とでは、直す範囲が大きく違います。
見積書の段階なら、正しい単価で書類を作り直して送り直すことが作業の中心になります。
請求書の段階になると、受注時に入れた単価、納品書に印字された単価、請求書の金額、場合によっては取引先からの入金額まで、すでに複数の記録へ同じ誤りが広がっています。

見落とされやすいのは、訂正を「請求書訂正」とだけ記録すると、食い違いがどこで生まれたのかが消えてしまう点です。
たとえば、取引先の掛率を改定したのに受注入力で使う価格一覧が旧い掛率のままだった場合、取引先が気づくのは請求書を受け取ったときです。
記録上は請求の訂正でも、誤りが入り込んだのは受注を入力した時点です。
この区別をしないまま請求書のチェックを厳しくしても、請求の前段で同じ誤りが毎回作られ続けます。

そのため、訂正を記録するときは「見つかった工程」と「食い違いが生まれた工程」を別々に書き留めることを勧めます。
見つかった工程は直す手間の大きさを、生まれた工程は対策を打つ場所を教えてくれます。

価格違いによる再出荷・差額処理・返品

書類の訂正だけで終わらない手戻りもあります。
取引先が価格の食い違いを理由に受領を保留したり、注文と違う条件の商品として返品したりすると、書類に加えて商品の動きが発生します。
返品を受けて正しい条件で出荷し直せば、倉庫の作業と運賃がもう一度かかり、在庫の記録も動きます。

請求後に価格違いが分かった場合の差額処理も、書類の差し替えより重い作業になりがちです。
差額を次回の請求で調整するのか、訂正した請求書を出し直すのか、減額の通知を送るのかは、取引先との取り決めと自社の経理の決まりによって変わります。
どの方法を取るにしても、営業、受注、経理の複数の担当者が同じ取引を見直すことになり、入金の消込にも影響します。

こうした物や支払いを伴う訂正は、件数が少なくても一件あたりの負担が大きくなります。
見積書や請求書の訂正とは分けて数えておくと、後で対策の優先度を考えるときに、件数だけでは見えない重さを判断に入れられます。

6つの標準業務に訂正を振り分ける

訂正を工程ごとに記録するには、工程の区切り方を先に決めておく必要があります。
社内の部署名で分けると、同じ作業を部署ごとに違う名前で呼んでいたり、一人の担当者が複数の工程を兼ねていたりして、区分が揺れます。
そこで物差しとして借りたいのが、流通BMS(卸・メーカーと小売の間で受発注などのデータをやり取りするための業界標準)の業務区分です。
流通BMSの基本形は、「発注、出荷、受領、返品、請求、支払の6業務・8種の標準メッセージ」を中核としています1。

流通BMSはデータ交換の標準であり、価格違いの原因を分類した枠組みではありません。
ここでは、卸と取引先のあいだで価格が受け渡される場面を漏れなく区切るための物差しとして使うだけなので、取引先が実際に流通BMSを使っているかどうかは問いません。
なお、取引先の「発注」は、卸の側から見れば受注にあたります。
見積は6業務より前にあるので、記録するときは「見積」を一つ足しておくと、受注前に見つかった訂正も同じ表に載せられます。

各工程で価格の食い違いがどう現れるかを、卸の側から見ると次のようになります。

  • 見積:提示した単価が、取引先の条件や改定後の価格と合っていない
  • 発注:取引先から届いた発注の単価が、自社の価格表と違う
  • 出荷:納品書に印字した単価が、受注時の単価と違う
  • 受領:取引先の受領データで単価が修正されて戻ってくる
  • 返品:返品として受ける単価が、出荷時の単価と合わない
  • 請求:請求書の金額を取引先が認めない
  • 支払:入金額が請求額と一致しない

この並びで直近の訂正を振り分けると、「請求で見つかっているが、生まれているのは受注の時点」といった偏りが見えてきます。
件数の多さそのものより、見つかる工程と生まれる工程がどれだけ離れているかに注目すると、手戻りが重くなっている理由が分かります。

掛率の改定漏れが請求書で見つかるまでの流れ(本文の一例の模式図)
掛率を改定したのに受注入力で旧い価格一覧を使い、同じ単価が納品書と請求書に広がり、取引先が請求書で気づくまでの流れ

原因は価格の持ち方・改定の伝わり方・入力と確認のどこにあるか

価格の持ち方を見る問い

工程に並べた訂正は、次に原因で分けます。
同じ請求での訂正でも、もともとの価格が社内で二通りあったのか、改定が伝わっていなかったのか、正しい価格を写し間違えたのかで、効く対策が変わるからです。
原因を見分ける問いは三つあり、最初の問いは「取引先別の掛率・特価・改定日が、一か所に決まっているか」です。

掛率は、上代(メーカー希望小売価格などの基準となる価格)に対する仕切価格(卸が取引先に出す価格)の割合です3。
卸では、同じ商品でも取引先ごとに掛率が違い、さらに期間限定の特価や改定日が重なります。
これらが営業担当の手元の表、受注担当が使う価格一覧、請求システムの単価欄といった複数の場所に別々に置かれていると、どこか一つを更新し忘れただけで食い違いが生まれます。

この原因の特徴は、入力した人が自分の見ている表どおりに正しく作業していても、訂正が起きることです。
確認する人を増やしても、確認者が別の表を見ていれば誤りは素通りします。
訂正の記録に「どの価格が正しいのか、社内で確かめるのに時間がかかった」という件が多いなら、価格の持ち方を疑う手掛かりになります。

価格の持ち方を整えるときは、正しい価格を一か所に集めるだけでなく、その価格がいつから、なぜ、誰の判断で、どの版として決まったのかを一緒に残すことを提案します。
具体的には、掛率マスタ(取引先別の掛率や特価を登録する台帳)に「適用開始日・根拠・承認者・版」の4項目を持たせ、通常の掛率から外れる例外価格も承認の流れに載せる整理です3。
適用開始日があれば注文日にどの価格が有効だったかを、根拠と承認者があれば例外価格が正規に決まったものかを、版があれば見積を出した時点でどの価格を使ったかを、後から確かめられます。
この4項目は、次に挙げる二つの問いに答えるための記録にもなります。

掛率そのものの決め方や改定の手順は、卸売の仕切価格・掛率の決め方と改定手順で詳しく整理しています。

改定の伝わり方を見る問い

二つ目の問いは「改定が、受注側や取引先に同じ日付で伝わっているか」です。
価格が一か所に決まっていても、新しい価格をいつから使うのかが社内の受注担当や取引先の発注担当に届いていなければ、旧い価格と新しい価格が入り混じります。

この原因がはっきり出るのは、適用開始日をまたぐ注文です。
取引先は旧価格のつもりで発注し、卸の受注担当は新価格で入力する、あるいはその逆が起こります。
取引先の発注システムに旧い単価が登録されたままなら、取引先から届く発注の単価がそもそも旧価格になっていることもあります。
どちらの担当者も手元の情報に従って作業しているので、入力ミスとして扱うと原因を取り違えます。

見分けるには、台帳の記録と通知の記録を並べます。
台帳に新価格と適用開始日が正しく登録されていたのに、注文日の時点で受注担当や取引先がそれを知らなかったなら、原因は伝わり方にあります。
このとき、適用開始日を「受注日」で判定するのか「出荷日」で判定するのかが取引先との間で決まっていないと、どちらの価格が正しいかの議論から始めることになります。
判定の基準日は、改定を伝える時点で取引先と合わせておきたい項目です。

入力・確認を見る問い

三つ目の問いは「入力するとき、確認する人や仕組みがあるか」です。
正しい価格が一か所にあり、改定も期日どおりに伝わっていたのに訂正が起きたなら、残るのは写し間違いや選び間違いです。

たとえば、取引先を選び間違えて別の掛率が当たる、特価の対象商品なのに通常の掛率で入力する、数字の桁を打ち間違える、といった誤りがこの原因に入ります。
こうした誤りは、価格の持ち方や改定の伝わり方を直しても残ります。
一方で、台帳が整っていれば確認する人が照合する先がはっきりするので、確認の効き目は上がります。

差額の大きさだけで原因を決めないことも大切です。
差額が小さいから桁の打ち間違いではない、差額が大きいから改定漏れだ、と見当をつけることはできます。
しかし実際には、明細の単価、注文日、その日に有効だった版を照合しないと判定できません。

直近の訂正を拾って振り分ける手順

三つの問いは、順番に当てると迷いが減ります。
価格の持ち方が整っていなければ、伝わり方や入力を論じる前提がないからです。
手作業で始めるなら、次の手順で足ります。

  1. 直近1か月分ほどの訂正(見積書の出し直し、請求書の差し替え、差額処理、価格を理由にした返品や再出荷)を一覧にする
  2. 一件ごとに「見つかった工程」と「食い違いが生まれた工程」を書き込む
  3. 注文日の時点で、正しい価格が台帳上に一つに決まっていたかを確かめ、決まっていなければ「価格の持ち方」とする
  4. 決まっていた場合、その価格と適用開始日が受注担当と取引先に届いていたかを確かめ、届いていなければ「改定の伝わり方」とする
  5. 届いていた場合は「入力・確認」とする
  6. 記録が残っておらず判定できない件は「不明」として残す

「不明」を無理に三つのどれかへ押し込まないのがこつです。
不明が多いこと自体が、適用開始日や版が残っていないという、価格の持ち方の弱さを示しています。
振り分けが終わると、原因ごとの件数と、それぞれがどの工程で見つかっているかが一枚の表になります。
これが、次に比べる四つの対策のどれを先に打つかを決める材料になります。

訂正を三つの原因に振り分ける判定の順(模式図)
訂正を一覧にしたあと、台帳上の価格、価格と適用開始日の通知、入力・確認の順に問い、判定できない件は不明として残す流れ

四つの対策を、効く原因・前提・負担で比べる

ルール整備

振り分けた結果を手元に置いて、四つの対策を比べます。
どの対策も手戻りを減らす方向に働きますが、効く原因が違い、ほかの対策が先に済んでいることを前提にしているものもあります。

表で判断が分かれるのは「前提」の列です。
ルール整備と確認工程は、どちらも正しい台帳がある状態を前提にしており、システム対応は台帳の項目と運用の決まりが先に固まっていることを前提にしています。
このため、振り分けで「価格の持ち方」が多かった場合は、価格マスタの一元化から始めるのが筋が通ります。
一元化の後に「入力・確認」の訂正が残るなら確認工程を、取引先や価格条件が増えて台帳と人手の運用で追い切れなくなったらシステム対応を、という順を提案します。

ルール整備は、改定や特価を誰が決め、誰がいつまでに台帳を更新し、誰が受注担当と取引先へ伝えるかを決めることです。
改定の伝わり方に原因が集まっているなら、まず手を付けたい対策です。
たとえば、適用開始日より前に台帳を更新し、更新したことを受注担当へ知らせ、取引先へは書面で新条件を伝える、という順番を決めておけば、改定日をまたぐ注文で誰が何を見ればよいかがはっきりします。

ただし、価格が複数の場所に置かれたままルールだけを決めると、「改定したら三つの表を更新する」といった手順になり、更新漏れの余地は残ります。
ルールが効くのは、更新すべき場所が一つに絞られてからです。

価格マスタ一元化

一元化は、取引先別の掛率、特価とその期限、改定日を一つの台帳に集め、見積を作る営業担当も、受注を入力する担当も、請求を確認する担当も同じ台帳を見るようにすることです。
前の節で挙げた適用開始日・根拠・承認者・版の4項目は、この台帳に持たせます3。

これで減るのは、「どの価格表が正しいのか」を社内で問い合わせる確認と、複数の表を同じ内容に保つための転記です。
一方で、台帳を正しく保つ担当と、例外価格を承認する手間は新たに生まれます。
移行の時点では、ばらばらだった表の値を突き合わせ、食い違っている箇所についてどれが正しいかを決め直す作業も必要です。
この突き合わせの途中で、取引先ごとに約束していた条件が社内で共有されていなかったことが見つかる場合もあり、それ自体が価格の持ち方の訂正を減らす手掛かりになります。

確認工程の追加

確認工程は、見積書や受注入力の単価を、作成者以外の人が台帳と照合する工程です。
一元化しても残る写し間違いや選び間違いに効きます。
台帳が一つに決まっていることが前提で、そうでなければ確認者も別の表を見て誤りを見逃します。

負担は確認者の時間と、確認待ちによる処理の遅れです。
すべての見積と受注を二重に確かめると、手戻りは減っても通常の処理が重くなります。
振り分けの記録を見て、入力・確認の訂正が集まっている条件に絞るのが現実的です。
たとえば、特価が絡む注文、改定直後の注文、新しく取引を始めた取引先の注文に限って確認する、といった絞り方があります。

システム対応・データ連携

システム対応は、台帳の価格を見積や受注の画面へ引き込み、人が単価を打ち込まずに済むようにする仕組みや、取引先と発注・請求のデータを直接やり取りする仕組みを指します。
流通BMSのような標準でデータを交換する場合、発注から請求までの情報を書面や画面から写し直す作業が減ります。
効くのは、入力・確認や改定の伝わり方のうち、転記が原因になっている訂正です。

注意したいのは、システムは台帳の値をそのまま使う点です。
台帳の掛率や適用開始日が間違っていれば、手入力よりも速く、広い範囲に同じ誤りが行き渡ります。
取引先とのデータ連携でも、相手側の発注データに旧い単価が残っていないかを確かめる手順は残ります。
導入の費用や設定の手間は製品や連携の範囲によって大きく変わるため、一律の目安は示せません。
先に台帳の項目と更新のルールを決めておくと、システムへ移すときに何を登録すればよいかが明確になり、要件の検討もしやすくなります。

対策 効く原因 前提 負担
ルール整備 改定の伝わり方(誰がいつ誰に伝えるかが決まっていない) 更新すべき台帳が一つに絞られている 決めた手順を守り続ける手間
価格マスタ一元化 価格の持ち方(正しい価格が複数の場所にある) 取引先別掛率・特価・改定日を集める作業ができる 移行時の突き合わせと台帳の更新・承認の手間
確認工程の追加 入力・確認(正しい価格を写し間違える) 確認者が照合できる正しい台帳がある 確認者の時間と確認待ちによる遅れ
システム対応・データ連携 転記が原因の入力・確認と改定の伝わり方 台帳の項目と運用の決まりが固まっている 導入・設定・取引先との調整
価格の持ち方が多かった場合に勧める対策の順(本文の提案の模式図)
価格マスタの一元化、確認工程の追加、システム対応の順に、それぞれへ進む条件を示した流れ

取引先別価格・特価・改定日が絡むとき、運用で吸収できる範囲とシステムが要る範囲

取引先別掛率

前の節では、システム対応を台帳と人手で追い切れなくなったときの次の段階に置きました。
では、追い切れなくなったことはどう見分ければよいのでしょうか。
取引先数や品目数で一律の線を引ける根拠はないため、ここでは自社の訂正記録で判断する方法を、価格条件ごとに考えます。

取引先別の掛率は、取引先と商品群の組み合わせごとに掛率を一行ずつ持つ形なら、台帳でも管理できます。
運用で続けられているかどうかは、入力する人が迷わず正しい一行に辿り着けるかで分かります。

限界が近いサインは、同じ取引先の中で商品ごとの例外が増え、正しい掛率を探すのに複数の行や表を見比べる必要が出てきたときです。
確認工程を足した後も、訂正の記録に「取引先の取り違え」や「掛率の引き違い」が入力・確認の原因として繰り返し出ているなら、人が探して写す作業そのものを減らす段階に来ています。

期限付きの特価

期限付きの特価は、開始日に加えて終了日を持つ点が通常の掛率と違います。
終了日を過ぎた後も旧い特価で見積や請求を出してしまう訂正は、終了日を誰も見ていないことから起こります。
台帳には、特価の開始日と終了日、終了後に戻る掛率、特価の根拠と承認者を持たせておくと、終了日が近い特価を一覧で拾えます。

台帳で運用できるのは、終了日が近い特価を定期的に見る担当が決まっていて、その担当が見落とさずに追える範囲に収まっている間です。
同時に動いている特価が増え、終了日の確認が担当者の記憶や個人の予定表に頼るようになったら、期限で価格が切り替わる仕組みを検討する時期です。
記録に「期限切れの特価の適用」が繰り返し出ていることが、その判断材料になります。

改定日が複数あるとき

改定日が一つなら、全取引先の価格を同じ日に切り替えれば済みます。
実際には取引先ごとに改定日が違ったり、同じ取引先でも商品によって改定時期がずれたりします。
こうなると、ある注文にどの価格を当てるかは、取引先、商品、注文日の三つを組み合わせないと決まりません。

ここで役立つのが版です。
改定のたびに新しい版を作り、旧い版も適用期間とともに残しておけば、過去の注文についても「この日の注文にはどの版を使うべきだったか」を後から確かめられます3。
あわせて、前の節で触れた判定の基準日(受注日か出荷日か)を取引先ごとに決めておくと、改定日をまたぐ注文で迷う場面が減ります。

運用の限界は、改定日をまたぐ注文に当てる版を、毎回人が台帳を見比べて判断している状態が続くときに表れます。
改定の時期に訂正が集中し、その多くが改定の伝わり方か入力・確認に振り分けられているなら、注文日から版を引き当てる作業をシステムに任せる意味が出てきます。

価格条件 台帳に持たせる項目 台帳で続けられる状態 次の段階を考えるサイン
取引先別掛率 取引先・商品群・掛率・適用開始日・根拠・承認者・版 入力者が迷わず正しい一行に辿り着ける 確認工程を足した後も取引先の取り違えや掛率の引き違いが繰り返す
期限付きの特価 開始日・終了日・終了後の掛率・根拠・承認者 終了日を見る担当が決まり見落としなく追える 期限切れの特価の適用が繰り返す
改定日が複数ある 版ごとの適用期間・判定の基準日 注文ごとに当てる版の判断に迷わない 改定時期に訂正が集中し版の判断を毎回人がしている
価格条件ごとに、システムを考えるサインを見分ける(模式図)
取引先別掛率、期限付きの特価、改定日が複数ある場合について、台帳で続けられる状態と、訂正記録に出るサインを分けた図

価格改定を取引先へ伝えるときの協議と書面の考え方

改定の申し入れから適用開始日までの流れ

改定の伝わり方が原因の中心にあるなら、取引先へ改定を伝える手順そのものを見直すことになります。
卸は取引先に価格を提示する売り手であり、仕入価格が上がれば、それを取引先への卸価格に反映させる立場でもあります。

中小企業庁が2025年に実施した価格交渉促進月間のフォローアップ調査では、受注企業側の集計で、卸売は「価格転嫁してもらいやすい業種」の上位3位に入っています2。
これは受注する中小企業の側から見た転嫁の受け入れられやすさを示すもので、卸が改定をどう通知すべきかや、請求の訂正をどう扱うかについて述べたものではありません。
それでも、卸売は改定を受け入れてもらいやすい側にある業種だと読めます。

受け入れてもらいやすいからこそ、注意したいのは改定の中身よりも伝わり方です。
取引先が値上げに合意していても、いつから、どの商品に、どの価格を当てるのかが双方で食い違っていれば、合意した後の注文で訂正が生まれます。
手戻りを減らす観点からは、改定をコスト根拠の整理、協議の申し入れ、書面での新条件の明示、適用開始日と版の管理の順で進め、各段階で記録を残す運用を提案します3。

コスト根拠の整理は、仕入価格や物流費のどの変化が改定の理由かをまとめる段階で、その内容は台帳の「根拠」の欄にそのまま残せます。
協議の申し入れでは、取引先が受け入れるまでのやり取りを記録しておくと、後で条件の解釈が分かれたときに立ち返る先になります。
書面での新条件の明示は、対象商品、新しい価格または掛率、適用開始日、判定の基準日を一つの文書にまとめて送ることです。
最後に、合意した内容を台帳に新しい版として登録し、受注担当へ知らせます。

書面と台帳の版が一致していれば、取引先から「価格が違う」と連絡が来たときに、どの版を通知していたかをすぐに示せます。
改定を口頭や会話の流れの中だけで伝えていると、どの条件で合意したかを確かめるところから始まり、それ自体が手戻りになります。

取引形態ごとに法令の適用を確認する

価格の決め方については、取引の相手方との協議を求める法令もあります。
たとえば取適法には、協議に応じずに一方的に代金を決めることを禁じる規定がありますが、製造委託などの委託取引を対象とした規定とされています。
商品を仕入れて取引先へ卸す通常の売買がこの対象に当たるかどうかは、取引の中身によって変わり、この記事で一律に判断することはできません。

確かめるときは、その取引が商品の売買なのか、仕様を指定して作らせる委託なのか、自社がどちらの立場にあるのかを整理し、公正取引委員会や中小企業庁が出している資料に照らします。
判断に迷う取引は、所管の窓口や専門家に確認するのが確実です。
法令の適用の有無にかかわらず、根拠を整理し、協議の経過を残し、書面で新条件と適用開始日を示す運用は、改定の伝わり方による訂正を減らすための手順として続ける意味があります。

価格改定を取引先へ伝える四つの段階と残す記録(本文の提案の模式図)
コスト根拠の整理、協議の申し入れ、書面での新条件の明示、適用開始日と版の管理の順に、残す記録を添えた流れ

着手後に手戻りが減ったかを確かめる指標

工程別・原因別の訂正件数

対策を始めたら、効果を確かめる指標にも、振り分けで使った工程と原因の区分をそのまま使います。
着手前に作った一覧と同じ形で記録を続ければ、新たな集計の仕組みを作らずに比較できます。

最初に見るのは、工程別・原因別の訂正件数を、着手前と着手後の同じ長さの期間で比べた結果です。
価格マスタを一元化したなら「価格の持ち方」の件数が、ルールを整えたなら「改定の伝わり方」の件数が減っているかを見ます。
狙った原因の件数が動かず、ほかの原因の件数だけが動いている場合は、対策と原因の対応がずれている可能性があります。

比べる期間は、条件をそろえることが大切です。
改定を含む期間とそうでない期間を比べると、改定の有無による差が対策の効果に見えてしまいます。
改定の時期を含む期間どうし、あるいは含まない期間どうしで比べると、読み違いを減らせます。

件数の合計に加えて、見つかった工程の位置の変化も見ておきたい指標です。
確認工程を足した直後は、これまで請求で見つかっていた誤りが見積や受注の段階で見つかるようになり、記録上の件数がかえって増えることがあります。
これは誤りが前の工程で止まるようになった結果であり、一件ごとに直す手間は軽くなっています。
あわせて「不明」の件数が減っていれば、台帳の版や適用開始日が記録として機能し始めたと読めます。

訂正1件あたりの時間

件数だけでは、手戻りの重さは分かりません。
見積書の差し替えと、返品を受けて出荷し直す訂正とでは、一件にかかる時間も関わる人数も違うからです。
そこで、訂正1件にかかった時間と、差額処理・再出荷の件数を別に記録します。

時間を正確に計る必要はありません。
記録の手間が重くなると記録そのものが続かないので、着手から完了までのおおよその時間を、短い・半日ほど・一日以上、といった大まかな区分で残す程度でも比較には足ります。

ここで示した指標は、手戻りが減ったかを自社の中で比べるための提案であり、業界の平均や目標値と比べるものではありません。
比べる相手は、着手前の自社の記録です。
工程・原因・時間の三つがそろうと、次にどの対策へ進むか、あるいは今の対策をどこまで広げるかを、記録に基づいて決められるようになります。

指標 数え方 読み取れること
工程別・原因別の訂正件数 着手前と同じ区分で同じ長さの期間を比べる 狙った原因に対策が効いているか
見つかった工程の位置 見積・受注で見つかった件と請求以降で見つかった件を分ける 誤りが前の工程で止まるようになったか
不明の件数 原因を判定できなかった件を数える 台帳の版や適用開始日が記録として機能しているか
訂正1件あたりの時間 大まかな区分で残す 手戻りの重さが軽くなったか
差額処理・再出荷の件数 書類の訂正と分けて数える 物や支払いを伴う重い訂正が減ったか
着手後に手戻りが減ったかを見る三つの見方(模式図)
件数、見つかった工程の位置、訂正の重さの三つの見方に分け、着手前の自社の記録と比べる指標を示した図

訂正の振り分けは、自社の取引条件や価格の置き場所によって判定が分かれ、特に「改定の伝わり方」と「入力・確認」の境目は担当者だけでは決めにくいことがあります。

直近の訂正記録の振り分け方と、掛率マスタに持たせる項目を一緒に整理し、どの対策から着手するかを確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
工程の物差し 発注・出荷・受領・返品・請求・支払に見積を加え、見つかった工程と生まれた工程を分けて記録する
原因の切り分け 価格の持ち方、改定の伝わり方、入力・確認の順に問い、判定できない件は不明として残す
最初の一手 掛率マスタに適用開始日・根拠・承認者・版を持たせ、価格を一か所に集める
確認工程とシステム どちらも正しい台帳が前提。台帳の限界は自社の訂正記録で見分ける
改定の伝え方 根拠の整理、協議、書面での明示、適用開始日と版の管理。法令の適用は取引形態ごとに確認する
効果の確かめ方 工程別・原因別件数、見つかった工程の位置、訂正1件の時間を、条件をそろえた期間で比べる

台帳とルールの運用を続けるか、システム連携へ進むかは、取引先別価格や特価の数、改定の重なり方によって変わり、記録の読み方にも慣れが要ります。 自社の訂正記録をもとに、台帳で持ち続ける範囲とシステムに任せる範囲の切り分けを相談できます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

特価の期限が切れたあとも旧価格で請求してしまうのを防ぐには、何を台帳に持たせればよいですか。

特価ごとに、開始日と終了日、終了後に戻る掛率、特価の根拠と承認者を台帳に持たせます。
終了後の価格が書かれていないと、期限を過ぎた後に何を当てるかを入力者がその場で判断することになり、旧い特価がそのまま使われやすくなります。
あわせて、終了日が近い特価を定期的に見る担当を決めておくと、台帳から対象を一覧で拾えます。

取引先ごとに掛率が違う場合、見積書の価格は誰がいつ確認すればよいですか。

一つの形は、見積書を取引先へ出す前に、作成者以外の人が台帳の掛率と照合することです。
ただし全件を確かめると負担が大きいため、特価が絡む見積、改定直後の見積、新しい取引先への見積など、訂正の記録で誤りが集まっている条件に絞る方法があります。
確認者が照合する台帳が一つに決まっていることが前提です。

価格改定の通知は、メールや書面のどちらで、いつまでに出すのがよいですか。

取引先との契約や取引条件に通知の方法や時期の定めがあれば、まずそれに従います。
手戻りを減らす観点では、伝える手段よりも、対象商品、新しい価格または掛率、適用開始日、判定の基準日を一つの文書にまとめて残すことが大切です。
時期は、取引先が自社の発注データを更新できるだけの余裕を持たせることを勧めます。
取引形態によっては協議に関する法令が関わる場合もあるため、所管の資料で確認してください。

価格違いによる差額処理は、請求訂正と返品処理のどちらで行うのですか。

商品が動くかどうかで分けて考えると整理しやすくなります。
商品は取引先の手元に残り、価格だけが違っていたのであれば、請求の側で差額を直すことになります。
価格違いを理由に商品そのものが戻ってくるなら、返品として受けたうえで、必要に応じて正しい条件で出荷し直します。
差額の直し方(請求書の差し替え、差額の請求、次回請求での調整など)は取引先との取り決めと自社の経理の決まりで決まるため、経理担当と事前に方法を合わせておくと迷いません。

訂正件数を数え始めるとき、最低限どの項目を記録すればよいですか。

訂正の日付、取引先、対象の注文や伝票、訂正の種類(見積・請求の訂正、差額処理、返品・再出荷)、見つかった工程、食い違いが生まれた工程、原因の区分(価格の持ち方・改定の伝わり方・入力と確認・不明)を残します。
訂正にかかったおおよその時間も加えると、件数だけでは分からない負担の重さを比べられます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様 基本形」(2007年)
  2. 2 出典:中小企業庁(J-Net21掲載)「価格交渉促進月間 フォローアップ調査」(2025年)
  3. 3 出典:EC-Rider「卸売の仕切価格・掛率の決め方と改定手順」(2026年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top