◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 卸価格の階層は、システムの仕様から考えるのではなく、自社が今どんな単位で価格を分けているかを言葉にするところから決める
- 区分の単位を書き出して上から並べれば、自社の価格階層が何段階になっているかが数えられる
- 得意先の組織階層に応じた卸価格の切替については、組織階層を5階層まで構成できるとされている例がある1
- 階層が足りない場合は、価格表の分割・適用条件の追加・区分の統合のいずれかで補う
- 改定のたびに誰がどの階層を直すかまで決めて、はじめて価格マスタは運用に載る
目次

卸価格はどんな単位で分けて考えればよいか
得意先ごとに卸価格を切り替えたいとき、最初に確かめるべきは「システムが何階層持っているか」ではなく「自社が何階層で価格を分けているか」です。Excelと手作業で回している状態では、価格の分け方は表の列や担当者の記憶の中に散らばっていて、段階として数えられる形になっていません。まず得意先個社・企業グループ・販売地域・取引条件といった区分の単位を書き出し、それを上から順に並べて段階を数えます。その段階数と、検討しているシステムが持つ価格切替の階層数を照らし合わせれば、「思ったより階層が浅くて対応できない」という導入後のつまずきは事前に避けられます。得意先の組織階層に応じた卸価格の切替については、組織階層を5階層まで構成できるとされています1。自社の段階数がその範囲に収まるのか、収まらないなら運用でどう補うのかを、導入の判断より前に決めておくことが要点です。
「誰に」で分ける軸と「どの条件で」で分ける軸
卸価格の区分は、大きく「誰に売るか」と「どの条件で売るか」の二種類の軸に整理できます。前者は得意先個社、得意先が属する企業グループ、販売地域や配送圏といった相手そのものの属性です。後者は数量、支払条件、契約区分、キャンペーンの適用期間といった取引のしかたに関する条件です。
Excel管理が続いている現場では、この二つの軸が一枚の表の中で混ざっていることがよくあります。得意先名の列の隣に数量帯の列があり、さらに別のシートに地域別の掛率がある、という状態です。混ざったままでは階層として数えられないため、まずは軸ごとに分けて書き出します。
掛け合わせで粒度が決まる
実際の販売価格は、これらの軸の掛け合わせで決まります。同じ得意先でも数量帯が違えば価格が変わり、同じグループでも事業所ごとに条件が違うことがあります。この掛け合わせの数がそのまま価格マスタの行数になり、扱う品目が多いほど組み合わせは膨らみます。
たとえば工業用粘着テープやテープ貼り機器などの製造販売を手がける企業の法人向け販売サイトでは、約3,800品種の製品を取り扱う例があります2。品種数が大きいほど、区分の単位を一つ増やす判断が価格マスタ全体の重さに直結します。区分を増やす前に、その区分が本当に価格を変える理由になっているかを確かめてください。
「例外」を区分と分けて扱う
洗い出しの途中で、どの軸にも当てはまらない個別の値決めが必ず出てきます。長年の取引で据え置いている価格や、特定案件だけの特価です。これらを無理に軸へ押し込むと区分が不必要に深くなります。例外は例外として別枠に置き、区分の階層とは切り離して数えるのが、階層を浅く保つ第一歩です。
ここまでで、自社の区分を数えてシステムの階層と照らす筋道と、足りないときの補い方が見えました。次に、設計を始める前に確かめておきたい点を並べます。
自社の価格区分は何階層になっているか
書き出した単位を上から並べて数える
区分の単位が出そろったら、広い側から狭い側へ順に並べます。標準の卸価格があり、その下に地域があり、その下に企業グループがあり、さらに個社があり、最後に個社の中の事業所がある、といった並びです。並べたときの段の数が、自社の価格階層の段階数です。
ここで大事なのは、実際に価格が違っている段だけを数えることです。組織上は地域本部があっても、地域で価格を変えていないなら、それは価格階層の一段ではありません。組織図の段数と価格階層の段数は別物として扱ってください。
数えた結果を一枚に残す
数えた段階と、それぞれの段で価格が変わる理由を一枚にまとめておきます。この一枚は、システム選定の場でそのまま照合表として使えますし、導入後に価格マスタを組むときの設計図にもなります。上司から「システム化できないか」と聞かれた段階で示せる材料としても、この一枚が最も説明しやすい形です。
確認点が整理できたら、自社の価格区分がどの型に近いかを見極めます。型ごとに、組み方と注意すべき点が変わります。
システム側は何階層まで価格を切り替えられるか
組織階層に応じた切替の上限を確かめる
自社の段階数が出たら、検討しているシステムが持つ価格切替の階層数と突き合わせます。得意先の組織階層に応じた卸価格の切替については、組織階層を5階層まで構成できるとされています1。自社で数えた段階がこの範囲に収まるなら、区分をそのままの形で価格マスタへ載せられます。
確認するときは「階層に対応しているか」ではなく「何階層まで持てるか」と数で聞いてください。対応の有無だけを聞くと、浅い階層しか持てない仕組みでも「対応している」と答えが返ってきます。
階層とは別に、条件での切替も確かめる
組織階層は「誰に」の軸の話です。数量帯や契約区分といった「どの条件で」の軸は、階層とは別の仕組みで扱われることがあります。自社の区分が条件側に厚いなら、階層数だけを見ても足りるかどうかは判断できません。両方の軸について、どこまで表現できるかを分けて確かめます。
階層が足りない時はどう運用でしのぐか
補い方は三つの方向に分かれる
自社の段階数がシステムの階層数を超えた場合、取れる手は大きく三つの方向に分かれます。一つは価格表そのものを分ける方法で、階層で表しきれない区分を別の価格表として持ち、得意先に割り当てます。二つ目は適用条件を足す方法で、階層ではなく条件側で差を吸収します。三つ目は区分を統合する方法で、価格差が小さい段を上の段にまとめてしまいます。
現場としては統合が最も抵抗の大きい選択ですが、長い目で見れば最も軽い運用になります。数えた段のうち、価格差がわずかで、かつ取引先にも説明のついていない段があれば、それは統合の候補です。
例外は別枠に逃がす
個社ごとの特価を階層で表そうとすると、階層はいくらあっても足りません。例外は個社の価格として別枠に持ち、階層はあくまで標準の考え方を表す骨格として保つ。この切り分けができていれば、階層が浅くても運用は回ります。
ただし例外を別枠に置く運用は、例外が増え続けると破綻します。例外を登録するときに理由と見直し時期を残す決まりを併せて作っておいてください。

価格改定は誰がどこを更新する運用にするか
階層ごとに担当を割り当てる
階層が設計できても、改定のたびに誰がどこを直すかが決まっていなければ、Excel時代と同じミスが場所を変えて再発します。標準の卸価格は誰が決めて誰が入れるのか、グループ単位の掛率は本部担当か営業担当か、個社の例外価格は誰の承認で動かせるのか。階層の段ごとに担当と承認者を割り当てます。
適用時期と例外の突き合わせを手順に入れる
改定でつまずきやすいのは、上の階層を直したのに下の階層の例外がそのまま残り、意図しない価格が出てしまう場面です。上の段を触ったら、その下にぶら下がる例外を必ず突き合わせる。この一手順を決まりとして残しておけば、階層の深さにかかわらず事故は減ります。
適用時期も同じです。年・年度のどの時点から新価格を適用するかを先に決め、切り替わりをまたぐ注文の扱いを合わせて決めておきます。
卸価格の階層は、深ければよいものでも浅ければ困るものでもありません。自社が価格を変えている理由の数だけ段があればよく、それ以上は運用の重さになるだけです。区分を洗い出し、段階を数え、システムの階層数と照らす。この順番を守れば、導入後に「対応できない」と気づく事態は避けられます。
自社の価格区分を数えた段階で、その段数がシステムの階層で表せるかどうかは、仕様の一覧を読むだけでは判断しきれません。実際の得意先構造を見せながら確かめるほうが早く決着します。
洗い出した区分の一覧を持ち込めば、どの段を階層で表し、どの段を条件や例外で受けるかの割り振りと、その場合に残る運用の手間まで確かめられます。無料相談で要件を整理する
階層を設計する前に確かめておきたい点
- 価格が実際に変わっている段と、組織図の上だけの段を分けて数えているか
- 得意先個社の例外価格を、階層とは別枠として切り離しているか
- 「誰に」の軸と「どの条件で」の軸を、それぞれ別に数えているか
- 検討中のシステムについて、対応の有無ではなく何階層まで持てるかを数で確認しているか
- 扱う品目の数と区分の掛け合わせが、価格マスタとして維持できる量に収まるか
- 改定時に上の段を直したあと、下の例外を突き合わせる手順が決まっているか
- 価格差の小さい段を上にまとめる判断を、誰が下せるかが決まっているか
この並びに優劣の順序はありません。
これらの確認は、自社の価格区分がどの型に近いかによって、重く効く点が変わります。
区分の型ごとの組み方と注意点
| 型 | 主に分ける単位 | 価格が動くきっかけ | 階層の深さ |
|---|---|---|---|
| 個社型 | 得意先ごと(個社単位) | 個別の値決め交渉 | 浅い |
| グループ型 | 親会社と傘下の事業所 | 本部での取り決め | 深くなりやすい |
| 地域型 | 販売地域・配送圏 | 物流条件や商慣行の違い | 中くらい |
| 条件型 | 数量帯・支払条件・契約区分 | 取引条件そのものの変更 | 階層より条件側が厚い |
得意先ごとに価格を決めている場合
階層は浅くてよいが、数が増える
個社ごとに値決めをしている場合、区分の階層自体は浅くなります。標準価格と個社価格の二段で足りることも珍しくありません。問題は深さではなく件数で、得意先が増えるほど維持すべき価格の行が増えていきます。
この型では、階層数よりも「個社価格をまとめて更新できるか」「登録した価格の由来をたどれるか」を確かめることが先です。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 個社価格の一括更新 | 対象を絞って掛率や金額をまとめて変えられるか |
| 価格の由来 | いつ誰がなぜその価格にしたかを残せるか |
| 標準価格との関係 | 個社価格が未設定のとき標準へ戻るか |

個社ごとの価格が多い場合、判断の分かれ目は階層の深さではなく件数の維持しやすさに移ります。件数がどこまで増えると運用が重くなるかは、実際の得意先数と品目数を当てはめないと見えません。
手元の得意先数と品目数を当てはめて、個社価格の一括更新や標準価格への戻し方がどう動くかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
企業グループ単位で価格が決まっている場合
階層が最も深くなりやすい型
本部と傘下の事業所で受発注の窓口が分かれている場合、この型になります。本部で取り決めた価格を傘下の事業所へ適用し、一部の事業所だけ例外を持つ、といった構造です。組織の段が価格の段にそのまま重なるため、ここで数えた段階が自社の階層数を決めることになります。
得意先の組織階層に応じた卸価格の切替について、組織階層を5階層まで構成できるとされている例があります1。自社のグループ構造がその段数に収まるかを、代表的な得意先で試しに数えてみてください。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 段の数 | 本部から末端の納入先まで何段あるか |
| 価格の継承 | 上の段の価格が下へ引き継がれるか |
| 例外の置き場 | 下の段だけ違う価格をどう表すか |
本部と事業所の段が重なる構造では、自社のグループ階層がそのまま価格階層になります。代表的な得意先の組織図を見ながらでないと、何段必要かの結論が出ません。
実際の得意先の組織構造を持ち込んで、何段で表せるか、どの段に例外を置くのが軽いかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
販売地域や配送圏で価格を変えている場合
価格差の理由を説明できる形にする
物流費や商慣行の違いから地域で価格を変えている場合、区分の単位は比較的少なく済みます。一方で、地域区分と得意先区分が交差したときにどちらを優先するかを決めておかないと、担当者ごとに解釈が分かれます。
優先順位を先に決め、その順序を価格マスタの組み方に反映させることが、この型での要点です。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 区分の境目 | どの単位で地域を切るか |
| 優先順位 | 地域と個社が食い違うときどちらを取るか |
| 見直しの頻度 | 物流条件の変更をいつ反映するか |
地域と個社の指定が食い違ったときにどちらを優先するかは、運用の決めごとと仕組みの挙動が一致している必要があります。文書上の説明だけでは食い違いに気づきにくい部分です。
自社の地域区分と優先順位の考え方を当てて、想定どおりの価格が出るかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
数量や取引条件で価格が変わる場合
階層ではなく条件側の表現力を見る
数量帯、支払条件、契約区分といった条件で価格が動く場合、必要なのは階層の深さではなく条件の組み合わせを表現できるかどうかです。階層数だけを基準に選ぶと、この型では判断を誤ります。
条件と階層の両方を持つ場合は、どちらが先に効くかという適用の順序も併せて確かめてください。順序が曖昧なままだと、同じ注文で人によって違う価格が出ます。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 条件の種類 | 数量帯や支払条件をいくつ持てるか |
| 適用の順序 | 階層と条件のどちらを先に見るか |
| 期間の扱い | 期間限定の条件を設定できるか |

数量帯や支払条件で価格が動く場合、階層数の確認だけでは足りるかどうかを判断できません。条件の組み合わせと適用の順序まで踏み込む必要があります。
自社で使っている条件の種類と組み合わせを持ち込み、どこまで表現できるか、階層と条件のどちらが先に効くかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 区分の洗い出し | 「誰に」と「どの条件で」を分けて書き出す |
| 段階の数え方 | 価格が実際に変わっている段だけを数える |
| システムの確認 | 対応の有無ではなく何階層まで持てるかを数で聞く |
| 階層不足の補い方 | 価格表の分割・条件の追加・区分の統合から選ぶ |
| 例外の扱い | 階層に押し込まず別枠に置き、理由と見直し時期を残す |
| 改定の運用 | 階層の段ごとに担当と承認者を割り当てる |
| 改定時の確認 | 上の段を直したら下の例外を突き合わせる |
階層設計は、導入してから作り直すと価格マスタと運用手順の両方をやり直すことになります。区分の洗い出しが終わった段階で、仕組み側の制約と突き合わせておくのが最も手戻りの少ない進め方です。 数えた段階数と例外の持ち方を示せば、そのまま価格マスタとして組めるか、補う運用が必要になるか、改定時の担当をどう割るかまで、導入前に確かめられます。
よくある質問
階層は多いほうが将来のために安全ですか。
必ずしもそうとは言えません。使わない段を持っておくと、価格改定のたびにどの段を触るべきかの判断が増え、更新漏れの起点になります。今の取引で価格が実際に変わっている段だけを設計し、将来必要になったときに増やせるかどうかをシステム側の上限で確かめておく、という考え方のほうが運用は軽くなります。
自社の階層が足りているかどうか、どの時点で確認すべきですか。
システムの選定に入る前です。自社の区分を洗い出して段階を数え、その数を持ってベンダーに「何階層まで構成できるか」と尋ねる順序にしてください。逆にすると、提示された仕様に自社の運用を合わせる形になり、導入後に無理が出ます。
Excelで管理している価格表は、そのまま移せますか。
そのままでは移せないことがほとんどです。Excelの表は「誰に」と「どの条件で」の軸が混在していることが多く、まず軸ごとに分解する作業が必要になります。分解の過程で、実は価格差の根拠がない区分や、担当者しか知らない例外が見つかります。この洗い出し自体が、階層設計の中身になります。
個社ごとの特価が多すぎて階層に収まりません。
特価は階層で表そうとせず、例外として別枠に持つのが基本です。そのうえで、登録時に理由と見直し時期を残す決まりを設けてください。例外そのものを減らす取り組みは別の話として進め、階層設計は標準の考え方を表すことに集中させます。
価格改定のとき、どこまで自動で反映させるべきですか。
上の階層の価格を変えたときに下の階層へ引き継ぐところまでは仕組みに任せ、個社の例外価格は人が突き合わせる、という切り分けが現実的です。例外まで自動で上書きすると、取引先との取り決めが意図せず変わってしまう恐れがあります。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム BtoB卸価格を取引先ごとに切り替える方法とは?区分の型と改定運用の考え方」(2026年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2018年) 経路
画像の出典元
- Professionals in a meeting room engaged in a collaborative b/Photo by Gustavo Fring on Pexels
- A group of professionals engaged in a discussion in a confer/Photo by Jopwell on Pexels
- 40代後半の日本人男性が搬入口での台車の移動をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 50代後半の日本人男性が検品台での数量確認をしている場面/画像:生成AI(自社)