◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 卸価格は「得意先の格付け」「数量」「個別合意」の三つの軸に分かれており、まずどの軸で分かれているかを書き出すことから始める
- 切替の仕組みは階層型と個別設定型の二つで、区分で説明がつく価格は階層型、つかない価格は個別設定型に寄せる
- どちらの型にも収まらない特別価格は無理に載せず、別運用にする先と見直しの期限を決めて切り分ける
目次

卸価格はどんな軸で分かれているか
取引先ごとに違う卸価格をそのままECへ移せるかどうかは、その価格が何の軸で分かれているかを先に見極めれば判断できます。卸価格の多くは、得意先の格付け・数量・個別合意という三つの軸の組み合わせで決まっています。このうち格付けと数量は区分として書き出せるため、区分に掛け率を割り当てる階層型の仕組みに寄せられます。残るのは担当者の一存や過去の経緯で決まった個別合意の価格で、これをすべてシステムに載せようとすると設定が膨らみ、運用が続かなくなります。収まらない分は別運用にすると先に決めてから移行の段取りを組むのが、手戻りの少ない進め方です。
得意先の格付けで分かれる価格
最も多いのが、得意先を区分に分けて区分ごとに掛け率を決めている形です。取引量や取引年数、代理店か小売かといった区別で格付けを置き、その格付けに紐づく掛け率を適用します。この形は「なぜこの価格なのか」を区分の名前で説明でき、担当者が替わっても引き継げます。
まず確かめたいのは、現行の価格表にある掛け率が、格付けの数だけの種類に収まっているかどうかです。同じ格付けなのに掛け率が違う得意先が並んでいるなら、格付け以外の軸が混ざっています。
数量で分かれる価格
次に多いのが、注文数量に応じて単価が変わる形です。一定数以上でいくら、という数量帯の区切りを持ち、帯ごとに単価や掛け率を割り当てます。
ここで見ておくのは、数量帯の区切りが得意先をまたいで共通かどうかです。共通なら商品側の設定として持てますが、得意先ごとに区切りが違う場合は、格付けと数量の掛け合わせになり、設定の数が一気に増えます。
個別合意で決まった価格
三つ目が、特定の得意先と個別に合意した価格です。長年の取引の経緯や、特定商品だけの特別扱い、担当者の判断で決めたものなどが含まれます。区分では説明できず、根拠が人の記憶にしか残っていないこともあります。
この軸に入る価格をどれだけ抱えているかが、移行の難しさをほぼ決めます。得意先と商品の組み合わせで数えたときに、ごく一部にとどまるのか、価格表の相当部分を占めるのかを、早い段階で把握しておきます。
軸への仕分けを進めると、必ずどの軸でも説明できない価格が残ります。この残った分をどう扱うかが、移行の成否を分けます。
自社の価格パターンは型に収まるか
現行の価格表を軸ごとに並べ替える
エクセルの価格表を、そのまま眺めていても型には収まりません。得意先の列の隣に「格付け」「数量帯」「個別合意」の欄を足し、一行ずつどの軸で今の価格になっているかを書き込んでいきます。書き込めない行が、根拠をたどれない価格です。
この作業は情報システム担当だけでは終わりません。価格の経緯を知っているのは営業担当なので、書き込めない行を一覧にして、担当者に照会する時間を段取りに入れておきます。
収まる分と収まらない分を分ける
並べ替えが終わると、格付けと数量で説明がつく行と、個別合意として残る行に分かれます。前者は区分の設計に落とし込めるので、システムの階層型の仕組みにそのまま乗ります。後者は得意先と商品の組み合わせごとに価格を持たせる必要があり、設定の手間も更新の手間も別物になります。
判断の目安は、個別合意の行がどれだけ広がっているかです。特定の数社に限られているなら、その数社だけを別扱いにすれば全体の設計は単純に保てます。一方で多くの得意先に散らばっているなら、個別設定を前提にした仕組みを選ぶ必要があります。
移行前のデータ整理の段取り
型が見えたら、移行までの順番を決めます。棚卸し、軸への仕分け、型の見極め、例外の切り分けという順で進めると、後戻りが起きにくくなります。
ここで大事なのは、整理と移行を同時にやらないことです。使われていない古い特別価格や、すでに取引のない得意先の行を残したまま移すと、システム側に不要な設定が積み上がります。移す前に消すものを決めておきます。
載せる価格と載せない価格の線引きができたら、最後に決めるのが運用側の話です。誰がどの単位で価格を変えるかを決めないまま移行すると、公開後に設定が誰にも触れなくなります。
例外の価格はどう扱うか
すべてを載せようとしない
システム化の検討でつまずきやすいのが、例外をすべて仕組みに載せようとすることです。一社のためだけの設定を積み重ねると、設定を入れる人も確かめる人も自社の中で一人しかいない状態になり、その人が離れた時点で運用が止まります。
載せるかどうかは、件数と更新の頻度で判断します。件数が少なく、かつ年に一度程度しか変わらない価格なら、システムに載せずに従来どおり電話や個別の見積で対応しても支障は出にくくなります。逆に件数が少なくても毎月変わるなら、手作業のほうが負担になります。
別運用にするときの決めごと
別運用にすると決めたら、放置せずに三つを書き残します。対象の得意先はどこか、誰が価格を管理するか、いつ見直すかです。とくに見直しの期限を入れておかないと、例外が固定化して次のシステム更改でも同じ悩みを繰り返します。
また、別運用の得意先がECサイトを使う場合、その得意先に見せる価格をどう扱うかを決めておきます。標準の価格を見せて注文後に調整するのか、その得意先だけはEC上で注文を受けないのかで、社内の手順が変わります。
価格変更は誰がどの単位で行うか
切替の単位を決める
卸価格の切替は、ログインした人に紐づいて働きます。そこで、価格が変わる単位を会社なのか、部署や支社なのか、担当者個人なのかを決める必要があります。本社と支社で仕入条件が違う得意先や、事業部ごとに取引条件が分かれている得意先があるなら、会社単位だけでは足りません。
反対に、すべての得意先で会社単位に統一できるなら、設定も確認も単純になります。細かく分けられることと、細かく分ける必要があることは別なので、実際に条件が分かれている得意先があるかどうかで決めます。
変更できる人と手順を決める
単位が決まったら、価格を変更できる人を絞ります。営業担当が自分の担当先の価格を直接変えられる形にするのか、変更の申請を受けて管理部門がまとめて反映する形にするのかで、事故の起きやすさが変わります。
どちらを選ぶ場合でも、いつ・誰が・どの得意先の価格を・いくらに変えたかが後から追えるようにしておきます。取引先から価格の相違を指摘されたときに、経緯をたどれるかどうかが対応の速さを決めます。
ここまでで、自社の卸価格を軸に分け、収まらない分を切り分け、運用の担い手を決めるところまで進みました。次は、システム側にどんな切替の型があるのかを見て、自社の価格パターンと照らし合わせます。

自社の価格が何の軸で分かれているかは、社内の価格表を眺めるだけでは判別しきれないことが多く、同じ整理を数多く手がけてきた相手と一緒に見るほうが早く片づきます。
現行の価格表を持ち込んで、どこまでが区分で説明でき、どこからが例外なのかの線引きを確かめられます。無料相談で要件を整理する
移行前に確かめておきたいこと
- 同じ格付けなのに掛け率が違う得意先がいないか
- 数量帯の区切りが得意先をまたいで共通か、得意先ごとに違うか
- 個別合意の価格が、特定の数社に限られているか全体に散らばっているか
- 根拠をたどれない価格が価格表に残っていないか
- 本社と支社、事業部で条件が分かれている得意先があるか
- 現在の価格を誰が決め、誰が変更しているか
- もう取引のない得意先や使われていない価格が残っていないか
この並びに優劣の順序はありません。
確かめる項目が固まったら、システム側の切替の型と照らし合わせていきます。型はおおまかに二つに分かれます。
価格を切り替える仕組みにはどんな型があるか
| 型 | 価格の決まり方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 階層型 | 得意先の区分や組織階層に応じて掛け率を割り当てる | 格付けと数量でおおむね説明がつく |
| 個別設定型 | 得意先と商品の組み合わせごとに価格を直接持つ | 個別合意が多く区分に収まらない |
階層型-区分と組織階層で切り替える
区分に掛け率を割り当てる
階層型は、得意先をいくつかの区分に分け、区分ごとに掛け率を持たせる形です。個々の得意先に価格を持たせるのではなく、「この得意先はこの区分」と決めるだけで価格が定まるため、設定の数が得意先数に比例して増えません。新規の得意先が増えても、区分を割り当てるだけで済みます。
得意先の中でも組織によって条件が分かれる場合に備え、組織階層に応じた切替を持つ仕組みもあります。組織階層に応じた卸価格の切替については、組織階層を5階層まで構成できるとされています1。本社・事業部・支社・部署といった単位で条件が分かれている得意先を抱えているなら、どこまでの深さが必要かを実態に照らして決めます。
階層型を選ぶときの注意
階層型は管理が軽い一方で、区分に収まらない価格を抱えると途端に苦しくなります。一社だけのために新しい区分を作り始めると、区分の数が得意先の数に近づき、階層型の利点が消えます。区分を増やす前に、その価格は本当にシステムで持つ必要があるのかを戻って考えます。
また、上位の区分と下位の組織で条件が食い違ったときにどちらを優先するかを、設計の段階で決めておきます。後から決めようとすると、公開後に想定と違う価格が出てから慌てることになります。
| 決めること | 確かめる点 |
|---|---|
| 区分の数 | 現行の掛け率が区分の数だけの種類に収まるか |
| 階層の深さ | 本社・事業部・支社・部署のどこまで条件が分かれているか |
| 適用の順序 | 上位の区分と下位の組織で食い違ったときどちらを優先するか |
| 区分の割り当て | 新規の得意先を誰がどの基準で区分に入れるか |
区分の数や組織階層の深さは、実際の得意先の条件に照らして決める必要があり、仕組みの制約を知っている相手と詰めたほうが手戻りが出ません。
自社の得意先の条件が、区分と組織階層の組み合わせで表現しきれるかを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
個別設定型-得意先ごとに価格を持たせる
組み合わせごとに価格を持つ
個別設定型は、得意先と商品の組み合わせごとに価格を直接持たせる形です。区分では説明できない価格をそのまま表現できるため、長い経緯のある取引や、特定商品だけの特別扱いにも対応できます。
その代わり、設定の数は得意先と商品の掛け算で増えます。商品を追加したとき、価格改定があったときに、どの組み合わせを更新するのかを毎回洗い出す必要が出てきます。移行時の登録だけでなく、その後の更新をこなせるかで判断します。
二つの型を組み合わせる
実務では、どちらか一方だけを選ぶ必要はありません。大半の得意先は階層型の区分で扱い、区分に収まらない一部だけを個別設定にする組み合わせが現実的です。この場合、個別設定がある組み合わせを優先し、なければ区分の掛け率を使う、という適用の順序を決めておきます。
組み合わせで進めるときも、個別設定に入れる基準は文章にしておきます。基準がないと、営業担当からの依頼が来るたびに個別設定が増え、数年で元のエクセルと同じ状態に戻ります。
| 決めること | 確かめる点 |
|---|---|
| 価格を持つ単位 | 得意先と商品のどの組み合わせで持たせるか |
| 登録と更新の手順 | 誰が入力し、誰が内容を確かめるか |
| 適用の順序 | 個別設定と区分の掛け率のどちらを優先するか |
| 追加の基準 | どんなときに個別設定を増やしてよいか |

個別設定は移行時の登録より、その後の更新の負担が問題になるため、運用まで見た相談が要ります。
個別設定に残す範囲と、価格改定時にどれだけの更新が発生するかの見通しを確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 得意先の格付け | 区分ごとの掛け率で現行価格を説明できるか |
| 数量 | 数量帯の区切りが得意先をまたいで共通か |
| 個別合意 | 合意した相手・時期・期限をたどれるか |
| 型の選び方 | 区分で説明がつくなら階層型、つかない分は個別設定型 |
| 例外の扱い | 件数が少なく更新が稀なら別運用にし、見直しの期限を決める |
| 切替の単位 | 会社・事業部・支社・担当者のどこで条件が分かれているか |
| 変更の権限 | 誰が変更でき、誰が確かめ、履歴をたどれるか |
軸の整理と型の見極め、例外の切り分け、権限の設計は互いに関わるため、順番を含めて一度に相談したほうが全体の段取りが立ちます。 自社の価格パターンをもとに、移行までにやるべきことと、その順番を確かめられます。
よくある質問
担当者の一存で決めている価格があります。システム化できますか。
金額そのものは登録できますが、その前に根拠を確かめる作業が要ります。誰がいつ何を理由に決めたかをたどれない価格をそのまま移すと、後から変更の可否を判断できなくなります。該当する得意先を一覧にして営業担当に照会し、続けるものは正式な合意として記録し直し、経緯が不明なものは標準の区分に戻せないかを検討します。
特別価格の得意先が少数だけあります。全部システムに載せるべきですか。
件数と更新の頻度で判断します。件数が少なく年に一度程度しか変わらないなら、システムに載せずに従来どおり個別に対応しても支障は出にくいものです。ただし別運用にする場合は、対象の得意先・管理する担当・見直しの期限の三つを書き残してください。期限を決めないと例外が固定化します。
得意先の本社と支社で卸価格が違います。分けられますか。
組織階層に応じた卸価格の切替を持つ仕組みであれば分けられます。組織階層は5階層まで構成できるとされているため1、本社・事業部・支社・部署といった単位で条件を分けることが可能です。ただし細かく分けられることと分ける必要があることは別なので、実際に条件が分かれている得意先があるかを確かめてから深さを決めます。
価格改定のたびに全得意先を更新するのは大変です。
階層型に寄せておくと、区分ごとの掛け率を変えるだけで対象の得意先すべてに反映されるため、更新の手間は抑えられます。負担が大きくなるのは個別設定の分で、ここは組み合わせごとに更新が必要です。だからこそ、個別設定に入れる範囲をあらかじめ絞っておくことが改定時の負担を左右します。
エクセルの価格表をそのまま取り込めますか。
取り込む前に整理が必要です。使われていない古い特別価格や取引のない得意先の行を残したまま移すと、不要な設定が積み上がり、後から棚卸しがしづらくなります。軸への仕分けを終えて、移さない行を決めてから取り込みに進んでください。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB卸価格を取引先ごとに切り替える方法とは?区分の型と改定運用の考え方」(2026年) 経路
画像の出典元
- Aerial view showcasing the grid-like pattern of a residentia/Photo by Nick Adams on Pexels
- 20代前半の日本人男性が立ち会議をしている場面/画像:生成AI(自社)
- Stunning aerial shot of a Dublin, CA residential area showca/Photo by Deane Bayas on Pexels