◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取適法は2026年1月1日から施行され、委託する側には受領拒否や支払遅延、減額など11の禁止事項が課される。
- 支払期日は、物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間で定める。起算日は注文日でも請求日でもない。
- 締めの直後に受領した分は締めを待つ日数が上乗せされるため、締め日と支払サイトの組み合わせによっては60日を超える。取引先ごとに数えて確かめる。
- 洗い出した対象は、取り決めを結び直せば済む点と、システムの設定・機能を変える必要がある点に分ける。
- システム側の対応は、与信管理・締め請求・請求書の記載要件・電子取引データの保存・入金消込の5つを実施順序に沿って進める。
目次

取適法で何が変わるのか
取適法では、物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定める必要があります1。まずこの上限に自社の締め日と支払サイトの組み合わせを当てはめ、60日を超える取引先が出ないかを確かめます。そのうえで、運用の取り決めで直せる点と、BtoB通販サイトの機能として作り込む点に分けて洗い出します。
名称が変わり、委託する側の義務が整理された
2026年から「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わります4。名称の変更だけでなく、委託する側が守るべき義務と、してはならない行為が整理し直されています。
BtoB通販サイトで掛け売りを提供している側から見ると、実務に効いてくるのは二点です。いつまでに払うか(支払期日)と、払うまでの間に何をしてはいけないか(禁止事項)。この二点は、どちらも請求と入金の処理がシステム上でどう組まれているかによって結果が決まります。
委託事業者に課される禁止事項は11項目
取適法では、受領拒否や支払遅延、減額、返品、買いたたきなど11の禁止事項が定められています2。
このうち掛け売り決済の仕組みに直接かかわるのは支払遅延と減額です。支払遅延は支払期日の設定と入金処理の遅れから生じ、減額は請求金額の後からの書き換えから生じます。いずれも担当者の悪意ではなく、締め日や請求書の単位の設定がそのまま結果として現れる領域です。
では、その支払遅延の線引きはどこにあるのか。日数の上限から確かめます。
支払期日は何日までなら大丈夫か
起算日は「物品等を受領した日」
物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定める必要があります1。起算日は注文日でも請求日でもなく、受領した日です。
BtoB通販サイトの掛け売りでは、受注・出荷・締め・請求・入金が別々の日付で動きます。60日の枠を測るときに見るのは、そのうちの受領日と支払期日の二つだけです。
60日は上限であって目安ではない
条文が求めているのは「60日以内のできる限り短い期間」です1。60日に寄せて設定してよいという意味ではなく、60日は超えてはならない線として読みます。
注意が要るのは、締め日と支払サイトの組み合わせです。締め日から数えれば短く見えても、起算日は受領した日です。締めの直後に受領した品は、締めを待つ日数がそのまま上乗せされるため、組み合わせによっては60日を超えます。自社の設定が該当するかどうかは、取引先ごとに数えるほかありません。
自社の掛け売り運用は違反していないか
取引先ごとの締め日と支払サイトを一覧にする
確かめる手順は単純です。取引先マスタから、締め日・支払サイト・請求書の単位を書き出します。次に、それぞれについて「締めの直後に受領した場合の支払期日」を受領日から数えます。この数が60日を超える組み合わせが、直す対象です1。
一覧にすると、多くの場合は取引先ごとの例外設定が積み上がっていることが見えてきます。長年の取引で個別に決めた支払サイトが、マスタ上では同じ区分に混ざっている、という状態です。
運用で直す点と、システムで直す点を分ける
洗い出した対象は二つに分けます。取引先との取り決めを結び直せば済む点(支払サイトの変更、締め日の統一)と、BtoB通販サイトや基幹システムの設定・機能を変えないと実現できない点(取引先ごとの締め日設定、請求書の出力、入金の消込)です。
前者は交渉と書面の差し替えで進みます。後者は開発の順番を決める話になります。システム側で直す点は、機能の単位に置き換えると数えられます。
ここまでで、支払期日の上限と自社の設定との差、そして直す対象の切り分けまでが済みました。残るのは、システム側で持つべき機能を順に並べることです。

支払期日の上限と自社の締め請求の設定が食い違っているかどうかは、条文を読むだけでは判断がつきません。取引先ごとの締め日・支払サイト・請求書の単位がシステム上でどう持たれているかを、実際の設定画面と突き合わせて初めて分かるためです。
現在の締め日と支払サイトの組み合わせで、受領日から起算して60日を超える取引先が出るかどうか、出るとすればどの設定が原因かを確かめられます。無料相談で要件を整理する
掛け売り対応に必要な5つの機能要件
順位は公表された調査に依ります1。
公表された調査に依る順序
- 与信管理:取引先マスタに与信枠・与信残・停止フラグを持ち、受注時に自動判定する
- 締め請求:取引先ごとの締め日・支払サイト・請求書単位を設定する
- 請求書の記載要件:適格請求書の6項目をEC側で出力できるようにする
- 電子取引データの保存:注文書・請求書等のデータについて、保存義務と検索要件を満たす
- 入金消込:ZEDIのDI-ZEDIを用いて総合振込にEDI情報を添付し、自動消込につなげる
既に基幹システムで与信を管理しているなら、2番目の締め請求から着手します。支払期日の上限60日を満たせるかどうかは、この締め請求の設定で決まるためです。
システムのどこを直すか|型ごとの進め方
| 型 | 向く状況 | 規模と費用の目安 |
|---|---|---|
| ASP型カートを使う | 掛け売りの機能を揃えることが先で、商品点数が上限に収まる | 初期費用80,000円、月額費用の上限79,800円、商品点数30,000点まで3 |
| 既存のBtoB通販サイトを作り替える | 商品点数や基幹システムとの連携が上限に収まらない | 導入事例では構築2か月から開発4か月67 |

月額と商品点数の上限で線を引く
上限に収まるかどうかを先に見る
ASP型のBtoB ECカート(Bカート)は、初期費用が80,000円、月額費用は79,800円が上限、商品点数は30,000点まで対応します3。
判断の順序は、費用より先に商品点数です。取り扱う品目が上限に収まるなら、5つの機能要件のうち締め請求や請求書の出力を既成の機能で賄える可能性があります。収まらないなら、この型は候補から外れます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 初期費用 | 80,000円 |
| 月額費用の上限 | 79,800円 |
| 対応する商品点数の上限 | 30,000点 |
事例の規模と期間から当たりをつける
商品点数と期間の実績を並べる
作り替える場合、規模と期間の見当は既存の導入事例から取ります。工業用粘着テープやテープ貼り機器を扱う日東電工CSシステム株式会社では初期掲載商品数が25,000品5、欧州を中心としたスポーツ自転車部品の輸入・卸売りを行う株式会社ポディウムでは移行時に精査した商品登録点数が約20,000点です8。
期間では、業務用食材の通販直販サイトを運営するフーヅフリッジ株式会社で実質的な開発期間が約4か月6、プリントシール事業などを手掛けるフリュー株式会社でBtoB向けECサイトの構築期間が2か月7でした。
着手の順序を四つの段階に置く
進め方は、条文の確認、自社運用の照合、直す対象の切り分け、機能の実装という順になります。順序を崩すと、実装してから支払期日の設定が上限を超えていたと分かる、という戻りが起きます。
| 事例 | 事業 | 数値 |
|---|---|---|
| 日東電工CSシステム株式会社(2020年) | 各種工業用粘着テープやテープ貼り機器を中心に約3,800品種の製品の提案・販売 | 初期掲載商品数 25,000品5 |
| 株式会社ポディウム(2025年) | 欧州を中心としたスポーツ自転車部品の輸入・卸売り | 商品登録点数 約20,000点8 |
| フーヅフリッジ株式会社(2017年) | 飲食店の仕入れに便利な業務用食材の通販直販サイトを運営 | 実質的な開発期間 約4か月6 |
| フリュー株式会社(2016年) | プリントシール事業、コンテンツ・メディア事業、キャラクター・マーチャンダイジング事業、ゲーム/アニメ事業 | 構築期間 2か月7 |
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 施行 | 2026年4 |
| 支払期日の起算 | 物品等を受領した日1 |
| 支払期日の上限 | 60日以内のできる限り短い期間1 |
| 禁止事項 | 11項目2 |
| 必要な機能要件 | 5つ(与信管理・締め請求・請求書の記載要件・電子取引データの保存・入金消込)1 |
| ASP型の上限 | 商品点数30,000点、月額費用79,800円3 |

5つの機能要件のうちどこまでを既存の仕組みで賄えるかは、商品点数や基幹システムとの連携の有無によって変わります。同じ「掛け売り対応」でも、設定の変更で済む場合と作り替えが要る場合に分かれるためです。 商品点数と必要な機能の範囲から、既成のカートで足りるか作り替えが要るかの切り分けと、着手する順序を確かめられます。
よくある質問
取適法はいつから施行されますか。
2026年1月1日から「中小受託取引適正化法(取適法)」に変わります4。
支払期日の起算日は注文日ですか。
注文日ではありません。物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定める必要があります1。
60日以内であれば、何日に設定してもよいですか。
60日は超えてはならない上限です。条文が求めているのは「60日以内のできる限り短い期間」であり、60日に寄せてよいという意味ではありません1。締め日と支払サイトの組み合わせによっては、締めの直後に受領した分が60日を超える場合があるため、取引先ごとに数えて確かめます。
システムの改修は何から手をつけるべきですか。
実施順序では与信管理が最初です。取引先マスタに与信枠・与信残・停止フラグを持ち、受注時に自動判定できるようにします1。既に基幹システムで与信を管理している場合は、締め請求の設定から着手します。
禁止事項のうち、掛け売りの仕組みに関係するのはどれですか。
11の禁止事項には受領拒否や支払遅延、減額、返品、買いたたきなどが含まれます2。このうち支払遅延と減額は、支払期日の設定と請求・入金の処理の組み方がそのまま結果に現れます。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB EC掛売り決済の対応方法|2026年取適法と要件(EC-Rider B2B Ⅱ 公式サイト)」(2026年) 経路
- 2 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB ECの与信管理の進め方|取適法対応の手順(EC-Rider B2B Ⅱ 公式サイト)」(2026年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB EC費用の相場|方式別の料金と総額の考え方(EC-Rider B2B Ⅱ 公式サイト)」(2026年) 経路
- 4 出典:中小企業庁「【2026年1月1日施行】受注者を守る法!手形払い禁止など「取適法」がもたらす変化」(2026年) 経路
- 5 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2020年) 経路
- 6 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B 導入事例(フーヅフリッジ株式会社様)」(2017年) 経路
- 7 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B 導入事例(フリュー株式会社様)」(2016年) 経路
- 8 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(株式会社ポディウム様)」(2025年) 経路
画像の出典元
- 30代後半の日本人男性がタブレット型端末での決済をしている場面/画像:生成AI(自社)
- Red hard hats and safety equipment on a metal roof, emphasiz/Photo by Los Muertos Crew on Pexels
- 60代前半の日本人男性が荷受けと検品場面/画像:生成AI(自社)
- 60代前半の日本人女性が畳み直しと陳列整理をしている場面/画像:生成AI(自社)